クラウドファンディングは、商品開発や社会活動、映像作品制作など、さまざまなプロジェクトを実現するための資金調達手段として定着しています。特に近年は、SNS等と連動したキャンペーンが行われ、個人や小規模団体でも大きな資金を集められる時代となりました。
しかしその一方で、集めた資金の使途に不透明さがあったり、リターン(返礼品)が届かない、プロジェクト自体が頓挫するといったトラブルも頻発しています。本記事では、クラウドファンディングに関する典型的な炎上・法的トラブルと、起案者・支援者の責任や救済について解説します。
このページの目次
1 よくあるクラウドファンディングのトラブル例
①リターン未達・大幅遅延
支援者に対して約束された商品や体験が、長期間届かない・実行されない。
②プロジェクト中止・撤退
「目標達成後に開発困難となった」「体調不良により継続できない」などの理由で実行が放棄される。
③虚偽の説明・誇大表示
過去の実績や開発状況について虚偽があり、支援者をミスリードした。
④資金の私的流用
集まった資金が、当初の目的とは異なる用途に使用されていた。
2 プラットフォームの仕組みと法的性質
クラウドファンディングには大きく分けて2つの方式があります。
①All-or-Nothing方式:目標金額に到達した場合のみ資金が引き出される
②All-in方式:目標未達でも集まった分を受け取れる
多くのプラットフォームでは、利用規約上「プロジェクトの実行は起案者の責任であり、プラットフォームは関与しない」旨が明記されており、支援者と起案者との間に個別契約が成立する形式をとっています。
3 起案者が負う法的責任
①契約責任(債務不履行)
支援者との間でリターンを提供する契約が成立している場合、それが履行されなければ債務不履行となり、返金や損害賠償を請求される可能性があります。
②不法行為責任(民法709条)
明らかな虚偽説明・詐欺的な資金調達であったと判断されれば、不法行為に基づく損害賠償請求の対象となります。
③刑事責任(詐欺罪など)
資金を集める意思のみで、最初から実行の意思がなかったとされる場合は、詐欺罪(刑法246条)に問われる可能性も否定できません。
4 裁判例・問題化した実例
東京地裁では、クラウドファンディングを通じて数百万円を集めた起案者がリターンを履行せず、不誠実な対応を続けた結果、返金と慰謝料の支払いを命じられた例があります(詳細非公開)。また、SNS上では「開発者が音信不通になった」「そもそも商品化の目処が立っていなかった」などの事案が炎上につながっています。
5 支援者側の対処法
①プロジェクトページ・契約条件を確認
「リターンの到着はいつか」「All-or-NothingかAll-inか」など、条件を明確に理解することが重要です。
②証拠の保存(ページ、やりとり、投稿)
万が一のトラブルに備え、支援内容・リターンの説明・連絡履歴などは保存しておきましょう。
③内容証明郵便や簡易裁判の検討
起案者が誠実に対応しない場合、法的手段による請求(内容証明郵便・支払督促など)を行うことで返金を求めることも可能です。
クラウドファンディングはあくまで「資金の預託を受けて、目的を実行する」という信頼ベースの契約関係です。起案者は資金を得た時点で法的・道義的責任が発生していることを自覚し、誠実な対応を心がける必要があります。
一方、支援者としても「購入」や「投資」ではないことを理解しつつ、トラブル時には法的手段での対応を検討すべきです。

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