新車・中古車の販売から、車検、整備、パーツ交換、カーリース、レンタカーなどを含む自動車関連業界では、多くの広告が展開されています。比較サイトや折込チラシ、Webページでの価格訴求が目立ちますが、価格の誤認、有利誤認表示、整備内容の誇張、保証の不明確な表示などは景品表示法や特定商取引法違反にあたる可能性があり、注意が必要です。
このページの目次
1 「車両本体価格」と「支払総額」の区別を明確に
中古車販売などで多いのが、「車両本体価格を目立たせ、諸費用・税金・整備費用を小さく表記する」ことで、実際の支払額より安く見せる手法です。
例えば、
①「本体価格29.8万円!」と表示しながら、登録費用・整備費用・リサイクル料・法定費用などを別途請求
②総支払額の記載がなく、「本体価格」のみを強調している広告
③条件付き(ローン契約必須、保証なしなど)で安く見せているが、条件の説明が小さい
こうした表示は、消費者にとって実質的な負担がわかりにくく、有利誤認表示に該当する可能性があります。「支払総額(税込・諸費用込)を明示し、条件をわかりやすく記載すること」が基本です。
2 整備・点検内容の表現には事実性を
「納車前整備済」「法定12ヶ月点検実施」「安心の100項目点検」などの表示もよく見られますが、実際には内容が限定的であるにもかかわらず、包括的・完璧な整備がなされているかのような印象を与えると、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
特に注意が必要な点としては、
①一部のチェック項目しか実施していないのに「全項目点検」と表示
②「プロの整備士が点検」とあるが、整備士資格を持たないスタッフが作業
③実施していない整備内容を含めた「パック整備」表示をしている
広告上では、整備の内容・範囲・担当資格者の有無・保証の範囲などを明確に表記することが求められます。
3 「長期保証付き」「安心保証プラン」などの保証表示にも要注意
「3年保証付き」「エンジン保証つき」といった安心感を与える保証表示も、実際の保証内容・対象範囲・条件を広告上で明示しない場合、誤認を招く表示となります。
たとえば、
①無償保証ではなく「有料延長保証」にもかかわらず「3年保証」と表示
②「保証付き」と書いているが、対象部品が極めて限定的(例:エンジン本体のみ)
③保証対象に制限があるのに、それを目立たない場所に小さく記載
保証をうたう場合には、以下の情報を広告に盛り込むことが重要です。
①保証期間・対象範囲・免責事項・利用条件
②保証を受けるための手続き・点検の必要性など
4 リーガルチェックのポイント
自動車販売・整備業界における広告の法務チェックポイントとしては、
①表示された価格が「支払総額」か「車両本体価格」かを明確に区別しているか
②諸費用・条件(ローン契約等)をわかりやすく説明しているか
③整備・点検内容が実際の作業内容・担当者資格と一致しているか
④保証表示がその内容・条件・範囲と一致しているか
⑤比較表示(例:他社より安い)がある場合、根拠を説明できるか
自動車は高額な商品であり、広告の表示内容は契約判断に直結します。だからこそ、誠実で透明な情報提供が、顧客の信頼獲得とリピートにつながる最大の武器となるのです。
弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。