学習塾、予備校、通信講座、資格スクール、英会話教室など、教育・スクール業界では、受講者の成績向上や合格実績を訴求する広告が日常的に展開されています。
しかし、こうした広告は、消費者(受講希望者や保護者)の期待値が高い分、表示内容に根拠がなかったり誤認を招く表現を用いると、法的リスクが非常に高くなる分野です。
1 景表法にはご注意ください
教育業界の広告が規制される主な法律は、景品表示法です。特に、「優良誤認表示」に該当するかどうかが焦点になります。
たとえば以下のような表現は、注意が必要です。
①「合格率95%!※当社比」など、算出根拠があいまいな成功実績
②「偏差値30から東大合格」など、実例の誇張や再現性の説明がない表示
③「受講生の8割が年収アップ」などのデータ表示に、出典や調査方法が明記されていないケース
④「日本最大級」「No.1」「絶対合格」など、定義や比較根拠が不明確なスローガン
このような表示は、合理的な根拠資料がない限り、違法とされる可能性が高く、過去にも大手スクール事業者が行政処分を受けた事例があります。
特に「合格率」「成績アップ率」などは、数字で訴求することで説得力が増す一方、その裏付けとなる調査対象・期間・対象者数・条件などが明示されていなければ、景表法違反と判断されるリスクがあるため、非常に慎重な運用が求められます。
2 口コミの利用にもご注意ください
また、「保護者の声」「生徒の体験談」などもよく使われる手法ですが、実在の人物の発言であることを示す根拠が必要です。
架空の感想、あるいは事実と異なる脚色がされている場合は、消費者を誤認させる表示となる可能性があります。
教育業界では、広告内容が未成年者やその保護者に与える影響も大きく、企業としての説明責任と誠実さがより強く求められます。そのため、広告制作の際には、以下のようなチェック体制を整えることが推奨されます。
①合格実績や成績向上に関する表示には、必ずエビデンス(資料)を準備する
②表現の「再現性」や「条件」を明確に記載する(例:「当社模試を複数回受講した生徒に限る」など)
③インタビュー形式や体験談には、実在性と事実性を担保する証拠を保持する
④比較表現やナンバーワン表示は、出典・調査主体・調査時期・方法を明記する
特に競争が激しい都市部では、少しでも差別化を図ろうとするあまり、誇張や不適切な表示に踏み込んでしまうケースも見受けられますが、それは短期的な効果にとどまり、法的リスクやブランド毀損につながる恐れがあります。
弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートしております。広告法務でお悩みの場合はお気軽にご相談ください。