建設・住宅リフォーム業界の広告と法的留意点

戸建て建築、マンションリフォーム、外壁塗装、水回り工事など、建設・リフォーム業界では、インターネットや折込チラシを通じた広告が盛んに行われています。住宅という高額な取引対象を扱うこの業界では、施工実績や価格、保証制度などに関する表示が消費者の判断に大きな影響を与えるため、景品表示法や建設業法、消費者契約法などの法的リスクに特に注意が必要です。

1 「施工実績」「地域No.1」の表示には客観的根拠を

建設・リフォーム業界では、信頼性や安心感を与えるために「年間施工実績1,000件以上」「地域シェアNo.1」などの表示が多用されます。こうした実績・優位性の表示は、消費者に大きな訴求力を持ちますが、裏付けとなる合理的根拠資料がなければ、優良誤認表示として景表法違反となるおそれがあります。

典型的なNG例としては、

①実際には対応件数ベースなのに「施工件数1,000件」と誇張

②特定の狭い地域(自社営業エリア)のみを母集団にした「No.1」表示

③自社アンケートや顧客満足度調査を客観的ランキングのように見せる

これらの表現を行う場合、出典・調査機関・調査期間・対象範囲を明確に記載し、必要に応じて根拠資料を提示できる体制を整えておくことが求められます。

2 「価格比較」「○○円~」の表示の落とし穴

「他社より30%安い!」「水回りリフォーム一式98,000円~」などの価格訴求は非常に効果的ですが、実際の契約価格と著しく乖離している場合や、適用条件が明確でない場合、有利誤認表示に該当します。

注意すべき点としては、

①表示された価格での施工実績がごく少数しか存在しない

②条件付き価格であるにもかかわらず、適用条件が小さく表示されている

③「比較対象の他社」の具体性がなく、比較根拠が不明確

こうした価格表示を行う際には、「最低価格」「標準価格」の定義や条件を明確にし、適用実績を保管することが重要です。

3 「保証付き」「安心施工」の表示にも誤認リスク

「10年保証」「安心の自社施工」「施工後も安心フォロー」といった保証・サポート体制の訴求もよく見られますが、実態と広告表示に乖離があると問題になります。

以下のようなケースでは注意が必要です。

①実際には「一部部位のみ保証」だが「全体10年保証」と誤認させる表示

②アフター対応が委託業者によるものであるにもかかわらず「自社対応」と表示

③保証を受けるには有料点検契約が必要なのに、その条件を明示していない

保証制度は、契約後のトラブルにもつながりやすいため、条件・範囲・期間などを広告上で正確に表示する必要があります。

4 チェックポイントまとめ

建設・住宅リフォーム広告での法務チェック項目としては、

①実績・No.1表示に客観的な根拠(出典・範囲・時期)があるか

②表示された価格は、現実に適用された例が十分に存在するか

③比較表示は、どの競合と比較しているか、根拠を説明できるか

④保証制度・施工体制の表示が誇張されていないか・条件が明示されているか

⑤リスティング広告・ランディングページでも、広告であることの明示(ステマ対策)がなされているか

建設・住宅リフォーム業界では、「一生に一度」の買い物を支える立場として、広告に対する誠実さが企業の信頼を左右します。売上重視の過剰表現ではなく、根拠ある安心の提示が選ばれる理由になるのです。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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