限定価格の強調と景表法

広告において「限定割引」や「限定特価」といった表現が使われることはよくあります。

このような広告表示は、消費者にお得感を与え、購買意欲を高める効果的な方法です。しかし、これらの表現が不適切に使用された場合、景品表示法(以下「景表法」)に違反する可能性があります。

今回は、これらの広告表示がどのような場合に景表法に違反するかについて、具体例を交えながらご説明します。

1 景表法の基本的な規定

景表法では、不当な表示によって消費者に誤解を与え、不利益を被らせる行為を禁止しています。特に、次の2つの類型が「限定割引」や「限定特価」といった広告表示で問題となる可能性が高いです。

①有利誤認表示

実際にはそれほどお得でないのに、消費者に著しく有利な条件であると誤認させる表示。

②おとり広告

広告で特価商品を謳いながら、実際には十分な在庫を用意していない、または消費者を誤解させる表示。

2 よくある問題点と具体例

(1)根拠のない割引表示

「通常価格10,000円の商品が、限定割引で50%オフ!」と広告されている場合、実際にはその商品が通常価格10,000円で販売された実績がなかったり、販売期間が極端に短かったりすると、有利誤認に該当します。

消費者に「今買わなければ損をする」という誤解を与えるため、景表法上問題となります。

例えば、あるオンラインショップが「通常価格15,000円のバッグを、期間限定特価10,000円!」と広告しました。しかし、そのバッグは過去6か月間、15,000円で販売された実績がほとんどなく、常に10,000円程度で販売されていました。このケースでは、通常価格が虚偽であるため、景表法における有利誤認表示に該当しました。

(2)在庫不足によるおとり広告

「数量限定!先着50名様に特価3,000円!」と広告されていても、実際には在庫がわずか数点しか用意されていなかった場合、消費者を店舗やウェブサイトに誘引するための不当な広告とみなされることがあります。これが「おとり広告」に該当します。

例えば、家電量販店が「大型冷蔵庫、限定50台を特別価格50,000円で販売!」と新聞広告を掲載しました。しかし、広告開始直後に店舗を訪れた消費者が「既に売り切れた」と告げられたため調査が行われたところ、実際には5台しか在庫がなかったことが判明しました。この事例では、おとり広告として景表法違反が認定されました。

(3)割引期間の事実と異なる表示

「今週末限定特価!」と広告されているにもかかわらず、実際には翌週以降も同じ価格で販売が継続されている場合も問題です。消費者に「この期間を逃すと値段が上がる」という誤解を与える行為は、景表法の有利誤認に該当します。

例えば、家具店が「週末限定で全品20%オフ!」とチラシを配布しましたが、その後も同じ価格で販売が続けられていました。このケースでは、「限定」という表示が消費者を誤認させたとして行政指導を受けました。

3 広告表現で悩んだ場合は専門家にご相談ください

「限定割引」や「限定特価」といった表現は、消費者に強い購買意欲を与える一方で、不適切な使用によって景表法に違反するリスクも高まります。

事業者の皆さまには、広告表示を適正に管理し、消費者に誤解を与えないよう配慮することを強くお勧めします。

広告表現に関して少しでも不明確な点がある場合には、まずは専門家にご相談ください。

keyboard_arrow_up

0358774099 問い合わせバナー 無料法律相談について