美容業界では、化粧品・エステ・美容機器など、見た目の変化や体感効果を訴求する広告が多く見られます。
しかし、こうした広告表現は、消費者の期待を大きく喚起する一方で、景品表示法違反や薬機法違反のリスクが非常に高い分野でもあります。
このページの目次
1 景表法上の注意点
まず、広告法務において最も重要なのは、景品表示法への適合性です。
たとえば、「たった1回でシミが消える」、「10歳若返る美肌へ」といった表現は、優良誤認表示に該当するおそれがあります。これらは、科学的・医学的根拠がない限り、消費者を誤認させる表示として問題視される可能性が高いものです。
また、美容業界では薬機法(旧薬事法)も重要な規制法令です。
化粧品はあくまで「皮膚を清潔にする」「肌を整える」といった効能の範囲が限定されており、「シミが消える」「ニキビが治る」などの治療効果を示唆する表現は、医薬品の効能表示にあたるため違法となります。実際、薬機法違反により行政処分を受けた広告事例も多数存在します。
2 ステマ規制にはご注意を
さらに、SNSやインフルエンサーを活用した美容広告では、ステマ規制にも注意が必要です。企業が報酬を提供しているにもかかわらず、インフルエンサーが「個人の感想」として投稿を行った場合、それが広告であることを明示していなければ、景表法上のステマ表示として行政処分の対象になる可能性があります。
美容業界では、感覚的・印象的な表現が好まれる傾向にありますが、それだけに「エビデンス(合理的根拠)」の確認が重要です。第三者機関による臨床試験、ユーザーアンケート、過去の販売実績などが裏付け資料として活用されるケースが多いですが、表示との整合性が取れていないと無効と判断されることもあるため、注意が必要です。
3 広告製作段階での対策
広告制作の段階では、以下のような対策が有効です。
①表現ごとに薬機法と景表法の両面からチェックを行う
②効果・効能を示唆する文言には必ず根拠資料を添える
③「個人の感想」表示の乱用を避け、統計的裏付けを検討する
④ステマと誤認されないよう、広告表示の明確化を徹底する
美容に関する表現は、消費者の「期待」を裏切るとクレーム・炎上・行政指導といった深刻なトラブルに直結します。だからこそ、攻めのマーケティング戦略と守りのリーガルチェックは、表裏一体である必要があります。
弊事務所では、広告法務に関して総合的なサポートを提供しております。広告法務でお悩みの場合はお気軽にご相談ください。