「ビフォーアフター写真」の使い方とリスク

「たった1週間でこの変化!」「劇的変化をご覧ください」「ビフォー → アフター」

視覚的インパクトの強い“ビフォーアフター”写真は、特に美容、ダイエット、医療、リフォーム業界などでよく用いられる広告手法です。しかし、表現の仕方や演出によっては、景品表示法の優良誤認表示に該当する可能性があるため、非常に慎重な運用が必要です。

1 なぜビフォーアフター写真がリスクになるのか?

ビフォーアフター写真は、実際に商品やサービスを使用した結果として提示されるものですが、消費者はこれを「誰にでも、同じような変化が起きる」と受け取ってしまう可能性があります。

以下のような場合、法的リスクが生じます。

①個別の事例を、あたかも“一般的な効果”のように見せる

②撮影条件の違い(ライティング、姿勢、衣装、表情など)により変化を誇張して見せる

③加工アプリや画像編集ツールで実態以上に“盛って”いる

これらは、消費者の判断に影響を与える不当な表示として、景品表示法の「優良誤認表示」に該当する可能性があります。

2 行政処分事例にも多数

実際に、次のようなビフォーアフター広告が措置命令や行政指導の対象となったことがあります。

①エステサロンの広告で「1回でウエストマイナス8cm」と表示 → 効果に再現性なし

②健康食品のビフォーアフターで劇的な痩身画像を使用 → 科学的根拠なし

③リフォーム会社の施工事例に、実際の顧客とは無関係な画像を「当社施工例」として使用

たとえ実際の利用者の写真であっても、使い方や印象操作によって“誤認表示”になるリスクがあることに注意が必要です。

3 表示上の工夫と注意点

ビフォーアフター写真を安全に使用するためには、以下のポイントを押さえましょう。

①個人差があることの明示

「※個人の感想です。効果には個人差があります。」という注意書きは必須です。

②再現性があると受け取られないよう配慮する

広告の中で「すべての人に同様の効果を保証するものではありません」と明記する。

③加工・演出を行わない/その旨を表示する

光の当て方や表情だけで印象が大きく変わることもあるため、誠実な演出にとどめる。

④実際の使用者のものであることの確認と同意

本人の同意がないまま写真を使うと、肖像権・パブリシティ権侵害のリスクもあります。

“目で見てわかる”変化は、広告において非常に効果的ですが、その反面、誇張や誤認の温床にもなりやすい表現です。

信頼を得るビジュアル広告とは、「魅せる」だけでなく、「事実を誠実に伝える」こと。その視覚の裏にある真実が、消費者の心を動かします。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

keyboard_arrow_up

0358774099 問い合わせバナー 無料法律相談について