FX自動売買ツール、投資シグナル配信、株式投資スクール、暗号資産の売買ノウハウなど、投資関連サービスの広告では、実績や期待収益を強調したLPがよく使われます。
しかし、投資商品・投資関連サービスの広告では、利益を保証するような表現や、将来の収益が確実であると誤認させる表現は、金融商品取引法、景品表示法、消費者契約法などの観点から問題となる可能性があります。
「絶対に儲かる」と明記していなくても、LP全体の構成によっては、断定的判断の提供や誇大広告にあたると指摘されることがあります。
今回は、FX自動売買ツール販売会社から相談を受けた事例をもとに、財務局から「断定的判断の提供の疑いがある」と指摘された場合の対応と、投資関連LPを適法化するポイントを解説します。
このページの目次
相談内容:「絶対に儲かる」とは書いていないのに財務局から連絡が来た
FX自動売買ツールを販売するN社の社長から、次のような相談を受けました。
当社では、FXの自動売買プログラムを販売しています。
LPで「月利20%を目指せる」「過去の実績では勝率90%」と宣伝していたところ、財務局から「断定的判断の提供の疑いがある」と連絡が来ました。
私は「絶対に儲かる」とは一言も書いていません。
LPには「投資は自己責任です」という注釈も入れています。
それなのに違法だと言われるのは納得できません。どう反論すればよいのでしょうか。
N社としては、「利益保証はしていない」「自己責任の注釈を入れている」という認識でした。
しかし、投資関連広告では、個別の文言だけでなく、LP全体として、消費者や投資家にどのような印象を与えるかが問題になります。
断定的判断の提供とは何か
断定的判断の提供とは、不確実な事項について、確実であるかのように告げる行為をいいます。
金融商品取引の分野では、相場の変動、利益の発生、損失の有無、将来の利回りなどは、いずれも不確実な事項です。
そのため、顧客に対して、将来の利益が確実であるかのように伝えることは問題になります。
第二種金融商品取引業協会の用語解説でも、断定的判断の提供等とは、不確実な事項について断定的判断を提供し、または確実であると誤認させるおそれがあることを告げる行為をいうとされています。
つまり、問題になるのは、「絶対」「確実」という言葉を使ったかどうかだけではありません。
投資家が「このツールを使えば高確率で利益が出る」「損をする可能性は低い」と誤認するような広告全体の作りになっていれば、断定的判断の提供や誇大表示と評価される可能性があります。
「絶対」と書かなくても問題になる表示
N社のLPには、確かに「絶対に儲かる」「元本保証」といった直接的な表現はありませんでした。
しかし、LP全体を見ると、次のような問題がありました。
- 右肩上がりの利益グラフだけを大きく掲載している
- 損失が出た期間のデータを表示していない
- 「負けなし」「常勝」「プロ級の利益を自動で狙う」といった表現がある
- 「月利20%を目指せる」という表示の根拠が不明確
- 「勝率90%」の集計期間や取引回数が記載されていない
- 最大ドローダウンや連敗期間が表示されていない
- リスク説明が極端に小さい文字で表示されている
- 背景色と同化して注釈が読みにくい
- 「投資は自己責任です」という一文だけで、具体的なリスク説明がない
これらを総合すると、LPを見た一般消費者は、「このツールを使えば高い確率で利益が出る」と受け止める可能性があります。
将来の投資成果は不確実です。
それにもかかわらず、利益が安定的に得られるかのような印象を与えるLPは、たとえ「絶対」という言葉を使っていなくても、問題となり得ます。
「投資は自己責任です」と書けばよいわけではない
N社は、LPの下部に「投資は自己責任です」と記載していました。
しかし、その記載は非常に小さく、背景色に近いグレー文字で表示されていました。
また、LP全体では利益実績や成功イメージが大きく強調されており、リスク説明は目立たない位置に置かれていました。
このような場合、形式的に注釈を入れていても、リスク告知として十分とはいえません。
投資関連広告では、次のようなリスクを、投資家が認識できる形で明瞭に表示する必要があります。
- 元本割れのリスク
- 為替変動リスク
- レバレッジにより損失が拡大するリスク
- 過去の実績が将来の成果を保証しないこと
- 自動売買プログラムが相場急変時に損失を出す可能性
- バックテストと実運用結果が異なる可能性
- システム障害や通信障害のリスク
- 証拠金維持率低下によるロスカットの可能性
「自己責任」という一文だけでは、投資家が具体的なリスクを理解したとはいえません。
財務局への初動対応
金融庁・財務局から連絡が来た場合、最初の対応が非常に重要です。
ここで、根拠なく強く反論したり、問題のLPを掲載し続けたりすると、当局から「改善意思がない」と見られるおそれがあります。
今回のケースでは、まず次の対応を行いました。
1. 問題LPの公開停止
財務局から指摘を受けたLPについては、直ちに公開を停止しました。
あわせて、同様の表現を使っていた広告、SNS投稿、メールマガジン、アフィリエイト記事も確認し、問題のある表示を一時停止しました。
2. 表示内容の棚卸し
N社が使用している広告素材を一覧化しました。
確認対象は、次のとおりです。
- LP
- バナー広告
- SNS広告
- YouTube広告
- メールマガジン
- セミナー資料
- アフィリエイト広告
- 販売代理店用の営業資料
- 購入者向け説明資料
投資関連サービスでは、LPだけを修正しても、他の広告媒体に同じ問題表現が残っていると、再度指摘を受ける可能性があります。
3. 財務局への報告
弁護士が代理人として、財務局に対し、次の内容を報告しました。
- 指摘を受けたLPを直ちに停止したこと
- 問題表示の原因は広告審査体制の不備にあったこと
- 意図的に利益保証を行う趣旨ではなかったこと
- 広告表示を全面的に見直すこと
- 今後、社内審査フローを整備すること
- 必要に応じて登録の要否を検討すること
当局対応では、「違法ではないはずだ」と感情的に争うのではなく、問題点を整理し、改善方針を具体的に示すことが重要です。
LPの適法化:実績表示を正確にする
販売再開に向けて、LPを全面的に改修しました。
まず見直したのは、実績表示です。
「勝率90%」という表示をする場合、少なくとも次の情報を併記する必要があります。
- 集計期間
- 対象通貨ペア
- 取引回数
- 勝ち取引・負け取引の件数
- 平均利益
- 平均損失
- 最大損失
- 最大ドローダウン
- バックテストか実運用か
- スプレッド・手数料を考慮しているか
- ロスカットの有無
- 運用資金額
- レバレッジ条件
- 過去実績は将来の成果を保証しないこと
例えば、修正前の表示は次のようなものでした。
過去実績 勝率90%
月利20%を目指せる自動売買ツール
これを、次のように修正しました。
過去のバックテスト結果では、2023年1月から2025年12月までの期間において、対象通貨ペア○○、取引回数○○回、勝率○○%という結果が確認されています。
ただし、バックテストは過去データに基づく検証であり、将来の利益を保証するものではありません。実際の運用では、相場変動、スプレッド、約定環境、通信状況等により、損失が発生する可能性があります。
重要なのは、数字を消すことではなく、数字の意味と限界を正確に表示することです。
「月利20%を目指せる」の見直し
「月利20%を目指せる」という表現も問題になりました。
「目指せる」という言葉は、一見すると保証ではないように見えます。
しかし、根拠がないまま高い利回りを示すと、投資家に過度な期待を抱かせるおそれがあります。
特に、次のような表示は危険です。
- 月利20%も夢ではない
- 初心者でも毎月安定収益
- 放置するだけで資産形成
- 副業感覚で自動収入
- プロ並みの運用を完全自動化
- 勝てるロジックを搭載
- もう裁量トレードで悩まない
今回のLPでは、「月利20%」という数値を前面に出す構成をやめ、ロジックの説明、リスク、利用条件を中心にした表示に変更しました。
修正後は、次のような構成にしました。
- ツールの機能説明
- 売買ロジックの概要
- バックテストの前提条件
- 実運用との違い
- リスク説明
- 適した利用者・適さない利用者
- 損失が発生するケース
- サポート内容
- 料金体系
投資ツールの広告では、「どれだけ儲かるか」よりも、「どのような仕組みで、どのようなリスクがあるか」を中心に説明する必要があります。
リスク告知を明瞭に表示する
リスク説明は、LPの末尾に小さく入れるだけでは不十分です。
今回の改修では、LPの複数箇所にリスク告知を入れ、購入ボタンの直前にも重要リスクを表示しました。
例えば、次のような表示です。
本ツールは、FX取引における売買判断を自動化するためのプログラムです。
FX取引は為替相場の変動により損失が発生する可能性があり、元本は保証されません。
相場急変時、スプレッド拡大時、通信障害時、ロスカット発生時には、想定を超える損失が生じる可能性があります。
過去の運用結果、バックテスト結果、シミュレーション結果は、将来の利益を保証するものではありません。
また、購入ボタンの直前に、次の確認項目を設けました。
- 元本保証がないことを確認しました
- 過去実績が将来の利益を保証しないことを確認しました
- 損失が発生する可能性があることを確認しました
- 自己の判断と責任で取引を行うことを確認しました
形式的なチェックボックスだけでは足りませんが、重要事項を購入直前に認識してもらう導線は有効です。
金融商品取引業の登録が必要かを確認する
今回、広告表示以上に重要だったのが、N社の事業モデルそのものです。
N社は「自動売買ツールを販売しているだけ」と説明していました。
しかし、実際には次のようなサービスも行っていました。
- 会員向けに売買ロジックのアップデートを提供している
- 相場状況に応じた設定変更を案内している
- 利用者に推奨通貨ペアや稼働タイミングを知らせている
- LINEグループで運用アドバイスをしている
- 月額課金でシグナル配信を行っている
- 購入者ごとに運用設定を提案している
このような場合、単なるソフトウェア販売ではなく、投資助言・代理業に該当する可能性があります。
自動売買ソフトの販売についても、誰でも自由に購入でき、単独で機能する売り切り型ソフトであれば投資助言・代理業に該当しない方向で整理されることがありますが、継続課金で投資情報を提供する場合や、継続的に投資情報データ・サポート等を提供する場合には、登録が必要となる可能性がありますウェブ。
また、投資助言・代理業者は、広告規制、断定的判断の提供の禁止、誠実公正義務、業務管理体制整備などの規制に服しますウェブ。
無登録営業のリスク
もし、登録が必要な投資助言・代理業に該当するにもかかわらず、無登録でサービスを提供していた場合、広告表示の問題にとどまりません。
無登録営業として、行政処分、警告、刑事罰のリスクが生じます。
特に、FX、暗号資産、株式、バイナリーオプション、自動売買ツールなどの分野では、当局の監視も厳しくなっています。
そのため、今回のケースでは、LPの修正と並行して、N社のサービスを次の観点から精査しました。
- ツールは売り切りか、継続課金か
- 購入後に投資情報を提供しているか
- 個別銘柄・通貨ペア・売買タイミングを助言しているか
- 利用者ごとに設定提案をしているか
- 自社が顧客資金を預かっていないか
- FX業者への送客や紹介報酬があるか
- 登録業者との提携の実態があるか
- 名義貸しに該当するおそれがないか
その結果、N社の一部サービスは投資助言・代理業に該当する可能性が高いと判断されました。
そこで、販売スキームを一時停止し、登録業者との適法な提携、または自社での登録取得を検討することになりました。
登録業者との提携にも注意が必要
「登録業者と組めばよい」と考える会社もありますが、提携の実態によっては、名義貸しや無登録営業と評価されるリスクがあります。
登録業者の名前だけを借り、実際には無登録会社が顧客対応、助言、広告、販売を行っているような場合は危険です。
提携する場合には、少なくとも次の点を明確にする必要があります。
- 誰が顧客に投資助言を行うのか
- 誰が広告審査を行うのか
- 顧客との契約主体は誰か
- 報酬は誰が受け取るのか
- 苦情・紛争対応は誰が行うのか
- 登録業者の内部管理体制が実際に機能しているか
- 無登録会社が助言行為を行っていないか
形式的な提携ではなく、実態として金商法に適合した運用が必要です。
投資ツールLPのチェックポイント
FX自動売買ツールや投資関連サービスの広告では、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 「必ず儲かる」「絶対勝てる」「元本保証」などの表現を使っていないか
- 「月利○%」「勝率○%」の根拠を明示しているか
- 集計期間、取引回数、対象条件を表示しているか
- 最大ドローダウンや損失期間を表示しているか
- バックテストと実運用を区別しているか
- 過去実績が将来の成果を保証しないことを明示しているか
- リスク説明が小さすぎないか
- 利益グラフだけを強調していないか
- 利用者の成功体験だけを掲載していないか
- アフィリエイト広告でも同じルールを守らせているか
- 投資助言・代理業の登録が必要なスキームになっていないか
- 登録業者との提携が名義貸しになっていないか
- 財務局から連絡が来た場合の対応フローがあるか
まとめ:投資関連広告は「絶対」と書かなければ安全、ではない
投資関連サービスの広告では、「絶対に儲かる」と書いていなければ安全というわけではありません。
LP全体として、消費者や投資家に「高確率で利益が出る」「損をする可能性は低い」「自動で安定収益が得られる」と誤認させる構成になっていれば、断定的判断の提供や誇大広告として問題になる可能性があります。
特に、FX自動売買ツールでは、次の点が重要です。
- 利益実績や勝率を表示する場合は、前提条件とリスクを明確にすること
- リスク説明を小さな注釈に押し込めず、投資家が認識できる形で表示すること
- 継続的なシグナル配信や設定助言を行う場合、投資助言・代理業の登録要否を確認すること
金融ビジネスでは、「知らなかった」「広告代理店に任せていた」「他社も同じ表現をしている」という説明は通用しにくい分野です。
LP制作、広告配信、アフィリエイト運用、販売スキームの設計段階から、金融商品取引法、景品表示法、消費者契約法を踏まえたリーガルチェックを行うことが不可欠です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
