「プロの代理店に『お任せ』で作ってもらった広告で、まさか行政処分を受けるなんて…」 薬機法や景表法違反で措置命令や課徴金を受けた広告主が、制作を担当した広告代理店やコンサルタントに対して損害賠償を請求したいと相談に来るケースがございます。
このページの目次
1 大原則は「広告主の責任」
まず認識しなければならないのは、法律上、広告表現に対する第一義的な責任を負うのは、その広告によって利益を得ている「広告主」自身であるという点です。
措置命令や課徴金納付命令といった行政処分は、基本的に広告主に対して下されます。たとえ広告主が「代理店が勝手にやった」「自分たちは薬事の知識がなく、プロを信じて校了しただけだ」と主張したとしても、最終的にそのクリエイティブを承認(校了)して世に出した以上、対外的な責任を免れることはできません。
行政のロジックでは、「自社の商品をどう売るかの最終決定権は広告主にあり、管理監督責任がある」とみなされるからです。
2 代理店への求償(請求)は可能か?
では、代理店は無傷で済むのでしょうか?
民事上の契約責任(善管注意義務違反)を問える可能性はあります。例えば、
①「薬機法チェック済み」と謳っていたのに違反していた。
②契約書に「法令遵守保証」や「損害賠償条項」がある。
③明らかに違法性が高いと予見できた表現を、代理店側が「このくらいなら大丈夫」「他社もやっている」と強く推奨し、広告主を誤認させた場合。
これらの場合は、広告主が被った損害(課徴金相当額や広告修正費用、ブランド毀損による損害)の一部または全部を請求できる可能性があります。
3 契約書の重要性
このような泥沼のトラブルを防ぐには、感情的な議論ではなく、「契約」と「プロセス」による事前防衛が全てです。
まず、発注時の業務委託契約書を精査してください。「万が一、法令違反によって損害が生じた場合の責任分担」や、賠償額の制限(キャップ)の有無を明確にしておくことが不可欠です。代理店が提示する標準契約書には、代理店側の責任を極めて限定的にする条項が含まれていることが多いため、修正交渉が重要になります。
そして何より、「プロに任せきり」にしない運用体制を構築してください。
①代理店から上がってきた制作物に対し、社内にダブルチェックの体制を設ける。
②必要に応じて、代理店とは利害関係のない第三者機関(弁護士や薬事コンサルタント)によるリーガルチェックを挟む。
広告は諸刃の剣です。大きな利益をもたらす可能性がある一方で、ひとたび牙を剥けば企業の社会的信用を根底から揺るがします。「知らなかった」では済まされないリーガルリスクに対し、広告主自身が主体性を持って向き合うこと。それが、自社とブランドを守る唯一の道なのです。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
