「優良誤認表示」の判断基準と事例:商品・サービスの品質に関する嘘を防ぐ方法

企業の広告活動で最も摘発例が多いのが、優良誤認表示です。

優良誤認表示とは、一言でいえば「品質や内容についての嘘や誇張で、消費者に誤解を与える広告」を指します。企業の信頼性を直接損なうリスクがあるため、法務担当者や経営者は、自社広告がこの規制に抵触しないよう、その判断基準を深く理解しておく必要があります。

1 優良誤認表示の判断基準

優良誤認表示は、景品表示法第5条第1号に規定されています。

具体的には、商品または役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示を指します。

この条文に基づき、優良誤認表示が成立するかどうかは、以下の2つの視点から判断されます。

(1)客観的事実との比較:「事実に反しているか?」

広告に記載された品質、性能、効果、原産地、成分などの内容が、実際の商品の客観的な事実と異なっているかを確認します。

単なる「素晴らしい」「最高の使い心地」といった主観的な感想や、曖昧な表現は直ちに規制の対象とはなりにくいですが、以下のような具体的な効果や数値を謳う表現は、その裏付けとなる客観的な証拠が必須となります。

①効能・効果:「シミが完全に消える」「体脂肪が劇的に減る」

②成分・含有量:「高級成分を配合」「天然水100%使用」

③製造方法・産地: 「熟練の職人による手作り」「限定された畑で採れた原料」

(2)消費者の認識:「著しく優良であると誤認させるか?」

表示が事実に反していたとしても、それが消費者に「著しく」優れていると誤認させる程度でなければ、優良誤認表示には該当しません。

しかし、消費者庁は、消費者の商品選択に影響を与える程度の誤認であれば、「著しい」誤認にあたると広く解釈する傾向にあります。

特に、健康や美容に関わる商品の場合、消費者は広告の効果・効能に強く引きつけられるため、誇大広告は「著しい」誤認と判断されやすくなります。

2 法務担当者の最重要チェックポイント:「合理的根拠の提示」

優良誤認表示の規制において、法務・経営者が最も重視すべき実務上のポイントは、「合理的根拠の提示」の義務です。

消費者庁は、広告に記載された効果や性能について、その表示を裏付けるデータや資料(合理的根拠)の提出を事業者に求めることができます。この合理的根拠が提出できない場合、その表示は「不当表示」(優良誤認表示)とみなされ、法違反となります。

3 合理的根拠として認められるための要件

合理的根拠として認められるには、次の2点を満たす必要があります。

①表示された効果・性能を裏付ける客観的な資料があること。

例:専門機関による試験結果、学術論文、業界団体の基準適合証明書など。

②その資料が、社会通念上及び専門的見地からみて、表示内容を裏付けるものと認められること。

例:試験方法の妥当性(被験者数、条件設定、統計処理など)が科学的に認められる水準であること。

「自社に都合の良いデータだけを選ぶ」「試験条件が一般の使用実態と大きく異なる」といった恣意的なデータは、合理的根拠とは認められません。客観的かつ科学的な証明が求められることを肝に銘じましょう。

4 まとめ:経営者がとるべき予防策

優良誤認表示を回避することは、企業の信頼を守る上で最も重要な法務課題の一つです。

経営者や法務担当者は、広告制作部門に対し、以下の点を徹底させる必要があります。

①表示の根拠資料の事前準備:広告に記載する効果・性能は、公開前に必ず客観的な資料で裏付け、それを最低でも3年間は保管する。

②最上級表現の原則禁止:「業界初」「唯一の」「史上最強」など、根拠を示すのが極めて難しい最上級表現の使用は、明確な証拠がない限り避ける。

③法務部門による審査の仕組み化:広告案の最終化前に、表示内容と根拠資料の整合性を法務部門がチェックする社内審査体制を構築する。

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