インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
本日は、1つの事例として、大阪地方裁判所判決令和5年10月26日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告が撮影した写真に関して、被告が一部を加工の上SNSに投稿するとともに『花を潰している』という趣旨のコメントを加えた。これに対して、原告はプロバイダ等に対して発信者情報開示請求を行い被告を特定した上で、被告に対して名誉毀損であるとして慰謝料請求等を行った事案です。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件投稿は、被告投稿画像とこれを批評する『花を潰してる』との文を内容とするものであるから、本件モデルが花を踏んでいるとの事実を摘示するものといえる。そして、本件投稿は、不特定多数の者が閲覧でき、閲覧者は、本件作品の撮影者が花を踏む態様の撮影手法を採用する者であると認識するのが自然である。以上によれば、本件投稿は、本件作品の撮影者である原告の社会的評価を客観的に低下させる行為と認められる。
②原告がSNSにおいてフォロワーを多数有し、コンテストの入賞歴を有する写真家であった事実は認められるが、この事実をもって原告による撮影行為が「公共の利害に関する事項」に該当するとはいえない。また、被告による本件投稿の目的は、本件作品の感想又は批評の被告なりの表明にあり、「その目的が専ら公益を図ることにあった」ともいえない。また、真実を摘示したことについての的確な立証もない。よって、被告の上記主張を採用することはできず、本件投稿について違法性が阻却されると認めることはできない。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。心持としては、第三者に対する否定的な評価を含む内容を不特定多数が閲覧する可能性があるインターネット上に投稿する場合には、最大限の注意を払い、可能であれば投稿することを控えるべきかということを改めて検討していただくことが余計なトラブルを回避するための最も効果的な方法です。
ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、トラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。