インターネット上の誹謗中傷は、拡散性が極めて高く、放置すれば被害が雪だるま式に拡大していく可能性があります。特にSNSや匿名掲示板では、たった一つの悪質な書き込みが瞬時に拡散し、取り返しのつかない事態に発展するケースが少なくありません。
被害を食い止め、精神的な苦痛を軽減するために、まず最初に行うべき法的措置が「削除請求」です。加害者の特定(発信者情報開示請求)には数ヶ月を要することが多いのに対し、削除請求は迅速性が求められます。
このページの目次
1 任意の削除請求とは?法的手段との違い
削除請求には、主に「任意の手続き」と「裁判所を通じた手続き(仮処分)」の2種類があります。
任意の削除請求とは、被害者側からサイトやSNSの運営者(管理者)に対し、問題の書き込みが名誉毀損やプライバシー侵害などの「権利侵害」にあたることを示し、任意の判断で削除するよう求める手続きです。
【任意の手続きの特徴】
①メリット: 裁判所を通さないため、費用が比較的安価で、迅速な対応が期待できる。
②デメリット: 運営者が独自に定めた基準(利用規約違反など)に基づき判断するため、法的に権利侵害が認められる場合でも、削除されないことがある。
運営者がこの任意の請求に応じない、または対応が遅い場合は、裁判所へ削除の仮処分を申し立てるという、より強制力のある法的手段に移行します。
2 任意の削除請求の手順と注意点
サイト管理者は、プロバイダ責任制限法に基づき、権利侵害の明白性があれば投稿を削除する義務を負います。任意の削除請求を効果的に行うための手順と注意点は以下の通りです。
(1)証拠の保全を最優先する
削除請求を行う前に、必ず問題の書き込みの証拠を保全してください。書き込みが削除されると、その証拠は失われてしまいます。
①証拠保全の具体例: 該当ページのスクリーンショット、URL、投稿日時、ユーザー名などを記録します。
②注意点: 証拠の保全は、後の発信者情報開示請求や損害賠償請求の際にも極めて重要となります。
(2)サイト管理者の窓口を確認する
各SNSや掲示板には、削除依頼のための専用フォームやガイドラインが設けられています。まずはその窓口を探し、その運営者が定めた手順に従うことが基本です。
①SNSの場合: 各プラットフォーム(X、Instagram、Facebookなど)のヘルプセンターや報告機能を利用します。
②匿名掲示板などの場合: サイト内の問い合わせフォームや、運営者に直接メールを送る方法が一般的です。
(3)権利侵害の根拠を明確に示す
単に「不快だから削除してほしい」という感情論では、削除は認められません。「なぜその書き込みが違法な権利侵害(名誉毀損、プライバシー侵害など)にあたるのか」を論理的に説明する必要があります。
3 まとめ:弁護士による迅速な対応がカギ
任意の削除請求は、被害を食い止めるための最初の防御策です。しかし、迅速かつ効果的に削除を実現するためには、法的根拠を明確にし、説得力のある形で請求を行う必要があります。
①証拠保全が遅れると、削除された痕跡も特定困難になります。
②権利侵害性の主張が不十分だと、時間だけが過ぎて被害が拡大します。
当事務所では、誹謗中傷対策の経験豊富な弁護士が、証拠保全からサイト管理者への法的通知書の送付、そして必要に応じた裁判所への仮処分申立てまで、一連の手続きを迅速かつ的確に代行いたします。手遅れになる前に、まずは一度ご相談ください。

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