インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。
もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年9月15日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
被告は、インターネット上のブログを運営する人物であるが、自身が開設したブログ上において原告が在日韓国・朝鮮人であることを理由に侮辱するなどの差別的な内容の記事を投稿した。原告は、当該投稿によって名誉が毀損され、あるいは原告を侮辱して原告の人格権である民族的アイデンティティーに関する権利を侵害されたと主張し、これに対して、名誉毀損を理由として、被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件記事は、原告がラップで平和へのメッセージを伝えた旨が記載された本件配信記事を引用しており、同記事の内容からは原告が反日的反社会的言動を行ったとは認められないから、これに対して反論する意図で作成したものとは到底解されない。また、上記のとおり本件各記載は、いずれも根拠なく原告を中傷して侮辱するものであり、反日的、反社会的言動を行う人物への反論という体裁すら整っていない。
②憲法14条1項、差別的言動解消法及び人種差別撤廃条約の趣旨及び内容に反する人種差別に該当する内容の本件各記載は、上記の住居において平穏に生活する権利等の人格権に対する違法な侵害行為に当たる。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
自分自身としては社会的な使命感や必要性を感じて投稿した内容であっても、内容によっては第三者に対する誹謗中傷や侮辱に該当することはよくあるトラブルの一つではあります。まずは冷静になって自身が投稿する内容が問題となる可能性があるかどうかは慎重にご検討いただく必要があります。