インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年9月14日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
マンションの居住者である原告が、マンション管理組合の理事である被告らに対して、同人らが別の理事らに送信した電子メールにより名誉権及び名誉感情が侵害された等として、不法行為による損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①その性質上外部へ公表することが予定されたものとはいえないこと、本件管理会社の3名の従業員がその業務の一環として受信した本件メールを不特定多数の者に漏出させることは考え難いこと、本件メールの内容が本件マンションの住人に広く知れ渡った様子はうかがえないことなどからすると、本件メールやその内容が上記15名から他人へと漏出して不特定多数の者に伝播する可能性は乏しいものであったということができる。よって公然性は認められない。
②本件メールによる原告の名誉感情の侵害につき、被告らに故意ないし過失があるものとは認められない。よって、その余の点について検討するまでもなく名誉感情の侵害を理由に被告らの不法行為責任の成立を主張する原告の主張はいずれも理由がなく採用できない。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。そのため、心持として、投稿することを控えるべきかということを改めて検討していただくことが余計なトラブルを回避するための最も効果的な方法です。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもありますので、最大限注意をする必要があります。
ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。