インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年6月30日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告は、インフルエンサーと呼ばれる諸活動を行うものであるところ、原告に対して批判的な投稿をツイッター(現X)において繰り返す被告に対して、名誉を毀損され、また、名誉感情を侵害された旨主張して不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件各ツイートは、原告が、自身の妊娠に向けた一連の活動に関して虚偽の投稿をするような人物であり、また、そのことに関して多数人から批判を受けるような人物であるとの印象を一般の閲覧者に与えるもので、原告の社会的評価を低下させるものというべきである。
②本件各ツイートは、SNS等を通じて多数人に対して情報を発信し、書籍を出版するなどの活動をしている原告が行った、妊娠に向けた一連の活動についての情報発信に関するものであること等を踏まえると、公共の利害に関するものであり、専ら公益を図る目的で行われたものと認められる。
③原告自身が過去の自らの「炎上」について記載していることなどに照らすと、本件各ツイートの投稿が社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認めるに足りないものである。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、刑事事件に発展するリスクもありますので、一歩間違えるとその後の人生に大きな悪影響を与えかねない問題となり、最大限注意をする必要があります。
ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、慎重にその後の対応方針を検討するためにも、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。