Archive for the ‘発信者情報開示請求関連’ Category

リツイート(リポスト)や「いいね」でも訴えられる?

2026-05-31

「共感したから『いいね』を押しただけ」

SNSにおいて、これらの行為は日常的に行われています。

しかし、そのワンタップが、時には数百万円の損害賠償請求に繋がる可能性があることをご存知でしょうか。

今回は、拡散行為(リポスト/リツイート)と、賛同行為(いいね)の法的責任について、最新の裁判例を交えてみていきます。

1 リツイートは「投稿と同じ」とみなされる

他人の誹謗中傷投稿をリツイート(リポスト)する行為について、裁判所は厳しい判断を下しています。

過去の裁判例において、裁判所は「リツイートは、元の投稿内容をそのまま自身のフォロワーに表示させる行為であり、自身の発言として発信したのと同等の責任を負う」と判断しました。

つまり、「他人が書いた悪口だから自分は関係ない」という言い訳は通用しません。

コメントなしのリツイートであっても、その内容が名誉毀損に当たる場合、リツイートした人自身も損害賠償責任を負うことになります。

2 「いいね」を押しただけで違法になる?

これまでは、「いいね」を押す行為は単なる好意的な反応に過ぎず、違法性は問えないと考えられていました。

しかし、状況が変わりつつあります。

2022年の東京高裁判決において、執拗に他者を侮辱する投稿に対して繰り返し「いいね」を押した行為が、名誉感情を侵害する違法行為であると認定されました。

もちろん、すべての「いいね」が直ちに違法になるわけではありませんが、

①悪意を持って執拗に行われた場合

②社会的な影響力がある人物が行った場合

③ハラスメントの一環として行われた場合

などは、法的責任を問われるリスクがあります。

3 安易な拡散(拡散希望)のリスク

「犯人はこいつだ!拡散希望!」

ネット上の私刑(リンチ)や、デマ情報の拡散に加担してしまうケースも後を絶ちません。

もし拡散した情報が「人違い」や「デマ」だった場合、元の投稿者だけでなく、拡散した全員が法的責任を問われる可能性があります。

「みんながやっているから大丈夫」ではありません。被害者が本気になれば、拡散者を片っ端から特定して訴えることも物理的には可能です。

4 もし訴えられたら、または被害に遭ったら

自分が拡散してしまった側で、開示請求の意見照会書が届いた場合は、すぐに弁護士に相談し、適切な回答書を作成する必要があります。場合によっては早期の示談が最善策となります。

逆に、自分の悪口が拡散されて被害に遭っている場合は、元の投稿者(発信源)を特定すると同時に、悪質な拡散者に対しても法的措置を検討しましょう。デマの拡散を止めるには、毅然とした対応が必要です。

退職者による書き込みへの対応

2026-05-26

「転職会議」「OpenWork(旧Vorkers)」「キャリコネ」「en Lighthouse(旧カイシャの評判)」などの転職口コミサイト

これらは求職者にとって有用な情報源ですが、企業にとっては退職者(元社員)による恨み節や、事実と異なる書き込みの温床となりがちです。

こうした専門サイトの削除は、一般的な掲示板とは異なる難しさがあります。

1 各サイトの削除ポリシーと傾向

これらのサイトは、「会員登録した元従業員」から情報を集めるビジネスモデルであり、投稿者の匿名性を強く守る傾向があります。また、サイト側も「多少のネガティブ情報も、求職者にとっては有益」というスタンスを取っているため、問い合わせフォームからの任意の削除依頼には、なかなか応じてくれません。

「事実と異なる」と主張しても、「投稿者の主観的な体験・感想ですので削除できません」と返答されるのが関の山です。

2 削除・特定のための法的手段

任意の削除が難しい場合、裁判所への「仮処分申立て」を行います。

ここで重要になるのが「虚偽の事実」であることの立証です。

例えば、「サービス残業を強要された」と書かれた場合、会社側は「タイムカードと給与明細を照らし合わせ、全額支払われている」という客観的な証拠を提出します。

裁判所が「真実ではないことが明らか」と判断すれば、サイト運営者に対して削除命令やIPアドレスの開示命令が出されます。

3 投稿者は誰か?-退職者の特定

開示請求が進み、プロバイダから契約者情報が開示されれば、投稿者が「どの元社員か」が特定できます。多くの場合、円満退社しなかった人物や、在職中にトラブルがあった人物です。

特定後は、損害賠償請求を行うだけでなく、「退職時の秘密保持誓約書違反」を問える可能性もあります。

4 サイト側とのガイドライン攻防

裁判まで行かなくても、各サイトの「ガイドライン違反」を精緻に指摘することで、削除に成功するケースもあります。

①個人名の記載: 上司や同僚の実名が出ている。

②プライバシー侵害: 社内の特定の個人しか知らない事情が書かれている。

③過度な暴言: 批評を超えた侮辱的表現がある。

転職口コミサイトの悪評は、数年にわたって採用活動の足を引っ張り続けます。

「どうせ消えない」と諦めず、特に悪質なものから優先的に法的対処を行うことが、優秀な人材を確保するための投資となります。

競合他社による嫌がらせの口コミ―不正競争防止法や偽計業務妨害での対抗措置

2026-05-21

「ある時期から急に、低評価の口コミが増えた」「内容が具体的ではなく、同業者しか知らないような専門用語が使われている」

もしこのような不自然な口コミがあれば、それは競合他社による組織的なネガティブキャンペーン(嫌がらせ)かもしれません。

ライバルを蹴落とすための誹謗中傷は、単なる名誉毀損を超えた重い責任を問える可能性があります。

1 「不正競争防止法」違反としての責任

不正競争防止法では、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為(信用毀損行為)」を不正競争行為として禁止しています(同法2条1項15号)。

もし加害者が競合他社であると特定できた場合、この法律に基づいて以下の請求が可能です。

①差止請求: 書き込みの削除や、今後同様の行為を行わないよう求める。

②損害賠償請求: 売上の減少分だけでなく、信用の回復に必要な措置(謝罪広告など)の費用も請求できます。

2 「偽計業務妨害罪」での刑事告訴

嘘の情報を流して他人の業務を妨害する行為は、刑法の「偽計(ぎけい)業務妨害罪」(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当します。

競合他社が身分を隠して(あるいは業者を使って)大量の虚偽口コミを投稿し、お店の予約を妨害したり、問い合わせ対応に忙殺させたりする行為は、立派な犯罪です。警察が捜査に入れば、会社のパソコンなどが押収され、相手企業にとっては致命的なダメージとなります。

3 同業者の特定は難しい?

「ライバル社がやっている気がするが、証拠がない」という場合がほとんどでしょう。

しかし、発信者情報開示請求を行うことで、意外な尻尾が掴めることがあります。

①IPアドレスが会社のものだった: 脇の甘い従業員や経営者が、会社のWi-Fiから投稿しているケースがあります。IPアドレスからプロバイダを特定し、それが法人契約であれば、相手企業を特定できる可能性が高まります。

②投稿のタイミングや内容の類似性: 複数のアカウントを使っていても、接続元が同じであったり、投稿のクセが似ていたりすることから、同一人物による自作自演が暴かれることがあります。

4 泣き寝入りせず調査を

同業者からの嫌がらせは、放置すればエスカレートし、自社の存続に関わります。「もしかして?」と思ったら、疑心暗鬼になる前に弁護士へ調査を依頼してください。法的な証拠を掴めば、相手に対して強力な反撃が可能になります。

企業のネット風評被害対策

2026-05-06

現代のビジネスにおいて、インターネット上の評判(レピュテーション)は企業の資産そのものです。「検索したら悪口が出てくる」というだけで、売上の低下や採用活動の不振に直結するリスクがあります。

本日は、企業が直面する風評被害の実態と、弁護士を入れることで何が変わるのかについて解説します。

1 風評被害が企業に与える「3つの実害」

ネットの書き込みを「たかがネット」と軽視していると、ボディブローのように経営にダメージを与えます。

①売上・集客への影響

飲食店やサービス業では、口コミサイトの点数が0.1下がるだけで数%の売上減になると言われています。BtoB企業でも、取引開始前の与信調査でネガティブな情報が見つかり、契約が見送られるケースがあります。

②採用活動(リクルーティング)への影響

求職者のほぼ100%が、応募前に対象企業を検索します。「ブラック企業」「パワハラがある」といった書き込みがあれば、優秀な人材ほど応募を避けます。内定辞退の増加にも直結します。

③従業員のモチベーション低下

自社が悪く書かれているのを見るのは、既存社員にとっても辛いものです。「うちの会社、こんなに評判が悪いの?」と不安になり、離職率の増加を招きます。

2 「表現の自由」と「企業の名誉」

企業には、個人と同様に「名誉権」や「信用」を守る権利があります。

しかし、企業は社会的な存在であるため、個人に比べて「批判を受け入れるべき範囲(受忍限度)」が広く解釈される傾向にあります。

「料理が美味しくない」「サービスが悪かった」といった顧客の感想レベルや、「残業が多い」といった事実に基づく労働環境への批判は、正当な批評として保護される可能性が高く、簡単には削除できません。

一方で、「事実無根の嘘」「過度な罵倒」「誹謗中傷」については、法的措置により削除や特定が可能です。

3 法務部ではなく外部弁護士に依頼するメリット

多くの企業には法務担当者がいますが、ネット風評被害対策は非常に専門的なノウハウ(IPアドレスの仕組み、各サイトの削除基準、海外法人への送達など)を要する特殊分野です。 通常の企業法務(契約書チェックなど)とは勝手が違うため、社内で対応しようとすると時間がかかり、その間に被害が拡大してしまいます。

ネット問題に特化した外部弁護士であれば、「どの書き込みなら消せるか」の目利きが早く、最短ルートでの削除・開示請求が可能です。

投稿者の特定後の示談交渉

2026-04-16

犯人を特定した後、必ずしもすぐに裁判を起こす必要はありません。

まずは相手方に内容証明郵便を送り、「話し合い(示談)」での解決を持ちかけるのが一般的です。

裁判には時間と費用がかかりますが、示談には独自のメリットがあります。ここでは、被害者にとって有利な条件で示談をまとめるためのポイントを解説します。

1 示談(和解)のメリット

(1)被害者側のメリット

①早期解決の模索

裁判なら半年〜1年かかるところ、示談なら数週間〜数ヶ月で解決金が手に入ります。

②回収の確実性

「いつまでに支払う」と合意して振り込ませるため、判決を取っても支払わない相手より確実にお金を回収できます。

③柔軟な条件

お金だけでなく、「謝罪文の掲載」「接近禁止」「データの完全消去」など、判決の場合には命じられない条件を盛り込むことができます。

(2)加害者側のメリット

①秘密保持: 裁判は公開されますが、示談なら誰にも知られずに解決できます。

②前科回避: 刑事告訴を取り下げる条件で示談すれば、前科がつくのを防げます。

2 示談交渉で盛り込むべき「条項」

口約束や簡単なメールでの合意は危険です。必ず「示談書(合意書)」を作成し、少なくとも以下の条項を盛り込み無ことが重要です。

①解決金の支払い: 金額、支払期日、振込先を明記。

②投稿の削除: 問題の投稿だけでなく、コピーサイトや保存データも含めた削除義務。

③口外禁止(守秘義務): トラブルの内容や示談条件を第三者(SNS含む)に漏らさないこと。

④誹謗中傷の禁止: 今後、二度と被害者を誹謗中傷しないこと。

⑤接触禁止: ネット、リアルを問わず被害者に接触しないこと。

⑥違約金条項: もし約束を破って再び書き込みをした場合、〇〇万円を支払うというペナルティ。

当事者同士で交渉すると、感情的になり話がまとまらないばかりか、逆に相手から「脅された」と言いがかりをつけられるリスクもあります。 第三者である弁護士が代理人として間に入ることで、冷静かつ法的に隙のない示談書を作成し、最大限の被害回復を目指すことができます。

X(旧Twitter)での誹謗中傷・裏垢特定-匿名アカウントを訴えるためのステップ

2026-03-17

日本国内で圧倒的な利用率を誇るX(旧Twitter)。

その匿名性の高さと拡散力の強さから、誹謗中傷トラブルが最も多発しているプラットフォームの一つです。

「捨て垢(捨てアカウント)だからバレない」、「裏垢(裏アカウント)だから特定されない」 そう高を括って攻撃してくる加害者がいますが、法的な手続きを踏めば特定は十分に可能です。今回はX特有の開示請求のポイントを解説します。

1 X(Twitter)の特定は「ログイン情報」が鍵

かつて、Twitterの書き込み特定は非常に難易度が高いとされていました。なぜなら、投稿時のIPアドレスが短期間で削除される、あるいは保存されていないケースがあったからです。

しかし、現在は法改正や実務の進歩により、「ログイン型」の開示請求が主流になりました。 具体的には、「その投稿をした時」のIPアドレスだけでなく、「そのアカウントにログインした時(直近のログイン履歴)」のIPアドレスを根拠に特定を進めることができます。これにより、以前よりも特定の成功率は上がっています。

2 「裏垢」「捨て垢」でも特定できる?

結論から言うと、特定できます。

どんなに匿名性の高い「裏垢」や、作りたての「捨て垢」であっても、そのアカウントにログインして操作している以上、必ず通信会社を経由しています。

「普段使っている本垢(本アカウント)とは別のメールアドレスで作ったから大丈夫」と勘違いしている加害者もいますが、開示請求で追うのは登録メールアドレスではなく「接続元の回線契約者」です。

自宅のWi-Fiや自分のスマホ回線を使って裏垢にログインしていれば、そこから本名や住所に辿り着くことができます。

3 リポスト(リツイート)や引用ポストも対象

自分が書いた文章でなくとも、他人の誹謗中傷投稿を拡散する行為(リポスト/リツイート)も、法的責任を問われる可能性があります。

過去の最高裁判決でも、リツイート行為によって名誉毀損が成立すると認められた事例があります。「みんなが拡散しているから」という理由は通りません。悪質な拡散行為に対しても、発信者情報開示請求を行うことは可能です。

4 Xでの被害対策:スピード勝負の理由

X社は米国法人であり、日本の法律とは異なる運用ルールを持っています。 特に注意すべきは、「IPアドレスなどのログ保存期間が短い」可能性がある点と、「アカウントが削除されるとログも消える」リスクがある点です。

相手が「ヤバい」と気づいてアカウントを削除してしまうと、特定の手がかりが完全に消滅してしまうことがあります。そのため、被害に気づいたら、相手に警告したり反応したりする前に、まずはURLとスクリーンショットを確保し、水面下で弁護士に相談することが鉄則です。

開示請求にかかる費用の相場|弁護士費用と実費、相手に請求できる範囲

2026-03-12

「誹謗中傷の犯人を特定したいけれど、費用倒れにならないか心配」

これは多くの相談者が抱える切実な悩みです。

発信者情報開示請求は高度な専門性が求められる手続きであり、ある程度の費用がかかります。ここでは、費用の内訳と相場、そして「相手にどこまで請求できるか」について解説します。

1 開示請求にかかる費用の内訳

費用は大きく分けて「弁護士費用」と「実費(裁判所等へ払うお金)」の2つです。

弁護士費用の相場は、手続きの段階や難易度によりますが、一般的な目安は以下の通りです。

(1)着手金(手続き開始時に払うお金)

①IPアドレス開示(仮処分など):20万円〜30万円程度

②住所氏名開示(訴訟など):20万円〜30万円程度

(2)報酬金(特定成功時に払うお金)

10万円〜30万円程度

実費も含めて合計すると、特定完了までに50万円〜80万円程度かかるケースが一般的です。

2 相手に費用を請求できるか?

「悪いのは相手なのだから、かかった費用は全額相手に払わせたい」

当然の感情ですが、現在の日本の裁判実務では、弁護士費用の「全額」を相手に認めさせることは難しいのが現状です。

損害賠償請求において認められる「調査費用(特定にかかった費用)」は、実際に掛かった費用の「1割〜数割程度」、あるいは「相当と認められる額(数万円〜数十万円)」に制限される場合があります(事案によってはかなりの割合を認められるケースも相当程度存在します)。

つまり、特定にかかった費用(例:60万円)が、慰謝料と調査費用の認定額(例:合計50万円)を上回り、金銭的には赤字(費用倒れ)になってしまうケースも珍しくありません。

3 それでも開示請求を行うメリット

金銭的な収支だけを見ればマイナスになる可能性があるにもかかわらず、多くの方が開示請求を行うのはなぜでしょうか。

①「お金の問題ではない」という正義感:泣き寝入りせず、相手に責任を取らせたいという気持ちの解決。

②再発防止・抑止力:「身元がバレた」「訴えられた」という事実が、加害者への強力な制裁となり、二度と誹謗中傷をしなくなります。

③刑事処罰への道:特定できれば、刑事告訴を行い、前科をつける(処罰を与える)手続きへ進むことができます。

4 費用対効果を一緒に考えましょう

当事務所では、ご相談時に「慰謝料の見込み額」と「かかる費用の概算」を提示し、経済的なメリット・デメリットを隠さずお伝えします。 その上で、「赤字でもやる価値がある」と判断された場合に、全力でサポートさせていただきます。まずは見積もりだけでもお気軽にご相談ください。

IPアドレスが開示されても犯人が特定できないケースとは?公衆Wi-Fiや海外プロキシの課題

2026-03-07

発信者情報開示請求を行えば、100%必ず犯人が見つかるわけではありません。

残念ながら、法的な手続きを尽くしても「技術的な壁」や「物理的な壁」によって、個人の特定に至らないケースが存在します。

依頼者の期待と費用のミスマッチを防ぐためにも、当事務所ではリスクについて事前に正直にご説明しております。今回は、特定が困難になる代表的なケースをご紹介します。

1 公衆Wi-Fi(フリーWi-Fi)からの投稿

カフェ、ホテル、コンビニ、駅などの「公衆無料Wi-Fi」を利用して書き込みが行われた場合です。この場合、IPアドレスから辿り着けるのは「そのカフェのルーター」や「その施設」までです。

「その日、その時間に、その店にいた誰か」までは絞り込めますが、そこから「誰が使ったか」を特定するには、利用登録情報や防犯カメラの映像などが必要になります。しかし、会員登録不要のWi-Fiであったり、防犯カメラの保存期間が過ぎていたりすると、個人の特定は極めて困難になります。

2 ネットカフェからの投稿

ネットカフェの場合、入店時に会員証の提示が必要な店舗であれば、利用した個室やパソコンの特定から、入店記録を照合して犯人を特定できる可能性があります。しかし、本人確認が不要な店舗や、PCを使わずに店舗のWi-Fiに自分のスマホを繋いで投稿した場合などは、特定の難易度が上がります。

3 海外プロキシ・VPN・Torの利用

「プロキシサーバー」や「VPN」といった技術を使い、接続元を偽装・経由して投稿された場合です。特に、ログを保存しない方針(ノーログポリシー)を掲げる海外のVPNサービスや、匿名化ツール「Tor(トーア)」を経由されると、追跡が事実上不可能になるケースが多いです。ただし、「VPNを使っているから絶対安全」と過信している加害者が設定ミスをしているケースもあるため、最初から諦める必要はありません。

4 海外プロバイダの壁

IPアドレスの割り当て元が海外のサーバー会社である場合、日本の裁判所の命令が届かない、あるいは無視されることがあります。現地の弁護士を雇って現地の裁判所で手続きをする必要が出てくると、費用対効果の面で現実的ではなくなることが多いです。

5 それでも弁護士に依頼する意味

「特定できないリスク」があることは事実です。しかし、多くの一般ユーザーによる誹謗中傷は、ご自宅のWi-Fiやスマートフォンのキャリア回線から行われており、これらは特定可能です。

「高度な隠蔽工作をしているかもしれないから」と躊躇するよりも、「もし特定できれば責任を追及したい」という意思があるならば、まずは調査(IPアドレスの開示)を試みてみる価値はあります。まずは初回の段階で「特定の見込み」について、専門家の見解を聞いてみてください。

書き込みの犯人を特定できる期間(タイムリミット)-ログ保存期間の壁に注意

2026-03-02

「もう少し様子を見てから相談しよう」、「仕事が落ち着いたら対応しよう」

そう考えている間に、犯人を特定する唯一の手がかりである「アクセスログ」が消滅し、永久に特定不可能になってしまうケースが多発しています。今回は、このシビアな「タイムリミット」についてご紹介します。

1 「ログ」には保存期間がある

犯人特定の手がかりとなる「IPアドレス」や「タイムスタンプ」といった通信記録(アクセスログ)。これらは、プロバイダ(通信会社)のサーバーに永遠に残っているわけではありません。

プロバイダごとに保存期間は異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

①携帯キャリア(docomo、au、SoftBankなど):約3ヶ月

②固定回線プロバイダ:約3ヶ月〜6ヶ月

つまり、書き込みが行われてから3ヶ月が経過すると、特定できる可能性が激減します。

「3ヶ月」というのは、弁護士を探し、契約し、裁判所に申し立てを行い、開示命令が出るまでの期間を考えると、極めて短い時間です。

2 「書き込み削除」の罠

被害者心理として、「まずは目障りな書き込みを消したい」と考え、サイト管理者に削除依頼を出すことがあります。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

サイトによっては、「記事データを削除すると同時に、サーバー上のアクセスログも消去される」仕様になっている場合があります。投稿を削除したがために、いざ犯人を訴えようとした時には証拠(ログ)が残っていない、という事態になりかねません。

犯人特定を希望する場合は、削除依頼を出す前に、必ずログの保全(発信者情報開示請求)を先行させる必要があります。

3 投稿から時間が経ってしまった場合

「もう3ヶ月以上経っているから無理でしょうか?」というご相談もいただきますが、決して諦める必要はありません。以下の可能性があります。

①ログイン型サービスの場合:最近のログイン履歴が残っていれば、そこから特定できる可能性があります。

②プロバイダによっては長期間保存している:一部のプロバイダでは、6ヶ月以上ログを保存している場合もあります。

4 今すぐやるべきこと

この記事を読んでいる今、誹謗中傷の書き込みからどれくらいの時間が経過しているでしょうか? もし数週間以内であれば、急いでください。1ヶ月以上経っているなら、一刻を争います。

まずは以下の2点を確保し、すぐに弁護士へ連絡することをお勧めします。

①URL(書き込みがあるページの厳密なアドレス)

②投稿日時などがわかるスクリーンショット(PDF保存が望ましい)

「時間切れ」で泣き寝入りすることだけは避けましょう。

「改正プロバイダ責任制限法」で何が変わった?新しい裁判手続について

2026-02-25

2022年10月に施行された「改正プロバイダ責任制限法」。

ネット上の誹謗中傷被害に遭い、法的措置を検討している方にとって、この法改正は非常に強力な武器となります。

「以前は大変だったと聞くけれど、今はどうなったの?」 「具体的に何が楽になったの?」

今回は、改正によって被害者の負担がどのように軽減されたのか、旧法との違いを見ていきましょう

1 最大の変更点-「2回の裁判」が「1回」に

これまでの発信者情報開示請求において、被害者にとって最大の壁は「手続きの煩雑さ」でした。犯人を特定するためには、原則として以下の2つの異なる裁判手続きを行う必要があったのです。

①コンテンツプロバイダ(SNS運営者など)に対する仮処分(IPアドレスの開示)

②アクセスプロバイダ(携帯キャリアなど)に対する訴訟(住所・氏名の開示)

この「2段階」のハードルにより、特定までに1年近くかかったり、その間にログが消えてしまったりするケースが後を絶ちませんでした。

今回の改正により新設された「発信者情報開示命令」という手続き(非訟手続)では、この2つのステップを1つの手続きの中で一体的に行うことが可能になりました。これにより、裁判所への申し立てが一本化され、迅速な救済が期待できるようになりました。

2 「ログイン型」投稿の特定がスムーズに

Twitter(現X)やInstagram、YouTubeなどのログイン型サービス(アカウントにログインして利用するサービス)では、投稿時のIPアドレスだけでなく、「ログイン時のIPアドレス」等の情報も開示対象として明記されました。

以前は、投稿時の通信ログが保存されていない場合、特定を断念せざるを得ないことがありました。しかし改正法により、ログイン時の情報(侵害関連通信)も開示の対象となったことで、SNSでの誹謗中傷における特定の成功率向上が期待されています。

3 証拠の散逸の防止

新しい手続きでは、裁判所がコンテンツプロバイダに対して「アクセスプロバイダの情報(どの通信会社を使ったか)」を提供するよう命令できます。そして、その情報をもとに、被害者はアクセスプロバイダに対して「開示命令の申し立て」を行うことができます。

この際、アクセスプロバイダに対して「ログを消さないよう命令してほしい(消去禁止命令)」を出すことも可能になり、手続き中に証拠が散逸されるリスクを減らす仕組みも整備されました。

4 適切な手続の利用が必要な理由

手続きは簡素化・迅速化されましたが、「誰でも簡単に自分でできるようになった」わけではありません。

新しい「非訟手続」を利用するか、従来の「訴訟」を選択するかは、事案の性質やプロバイダの対応方針によって使い分ける必要があります。また、依然として法的な主張立証(権利侵害の明白性の証明)は厳格に求められます。

適切な手続を利用するためにも、最新の運用に精通した弁護士にご相談ください。

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