インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年11月22日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
病院の院長である原告が、被告がSNS上に投稿した一連の投稿によって名誉を毀損され、精神的損害を被ったと主張して、被告に対して不法行為に基づき損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件投稿全体を一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断すると、引用部分に記載された内容が本件SNSに投稿されているという事実のみならず、その内容のような事実が存在したことを摘示したものと理解され、被告が本件投稿を行うことにより、引用部分を含めて本件SNSの利用者が閲読可能な状態になる以上、被告の行為により原告の社会的評価は低下するものといえる。
②被告は、本件投稿をした当時インターネット上に原告の診療態度等について批判的な言動を行うレビュー記事があったことや写真週刊誌等で専門家から原告の対応に批判的な言及がされていた旨主張するが、被告は、これを裏付ける証拠を一切提出していない。
③本件投稿に引用された部分は既に本件SNSに投稿されていたものであること、本件投稿については、本件投稿後、コメントやリツイートはされていないこと等の本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告が被った精神的損害に対する慰謝料としては20万円が相当である。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもあることを踏まえますと、可能であれば不用意な投稿することを控えるべきかということを改めて検討していただくことが余計なトラブルを回避するための最も効果的な方法です。 ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。