インターネット上では、ユーザーの意見を集めるためのアンケートや人気投票が頻繁に行われています。選挙制度を模した「推し活」投票、企業の商品評価、キャンペーン参加型アンケートなど、形式は多岐にわたりますが、その信頼性が評価や賞に直結することも多くなっています。
しかしながら、これらの仕組みを意図的に操作し、特定の選択肢を有利・不利にする不正行為が問題視されるケースが増加しています。本記事では、ネット上の投票・アンケートに対する不正操作の法的評価と、企業や主催者側が講じるべき対応策について解説します。
このページの目次
1 不正操作の典型的な手口
①複数アカウントの使用による多重投票
1人1票が原則のアンケートに、複数のSNSアカウントを用いて不正投票する行為。
②自動投票プログラム(BOT)の使用
プログラムを用いて、短時間に大量の投票を行う。
③他者のIPを使った成りすまし投票
VPNやプロキシを経由し、重複を回避して大量投票する行為。
④組織的な操作(いわゆる“組織票”)
特定の団体が構成員に指示を出して一斉に投票を行うケースも、状況によっては公正性を損なう行為と見なされ得ます。
2 法的責任が問われる可能性
①信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条・234条)
企業や主催者が提供するサービスの公正性・信用を損なう行為は、刑事上の信用毀損罪・業務妨害罪に該当する可能性があります。
②不正アクセス禁止法違反
ログインが必要なアンケートに、他人のアカウントを無断利用して投票した場合には、不正アクセス禁止法に抵触するおそれがあります。
③不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
不正投票によって、特定の参加者が受賞を逃したり、企業のキャンペーンが中止になった場合などは、損害賠償請求の対象となり得ます。
3 主催者・企業側がとるべき対応
①1人1票の制限技術を導入する
IP制限、Cookie管理、ログイン必須化など、投票の多重化を技術的に抑止する仕組みが必要です。
②利用規約で不正行為の禁止を明示する
規約違反時の無効措置・法的対応の可能性を明文化することで、抑止力を高めます。
③不自然な投票行動の検知・対応
短時間に大量投票がある場合には、早期に調査・無効化を行うなど、透明性の確保が重要です。
④第三者機関による集計・監査の導入
重要な賞レースや表彰を伴う場合は、外部監査を導入することで、公平性への信頼を高めることができます。
「ネット上のアンケートや投票は遊びだから」「バレなければ問題ない」といった認識が、不正の温床になっています。
しかしその結果、第三者の権利・評価・社会的信用が損なわれる以上、法的な責任を免れることはできません。
企業や主催者としては、事前の対策・告知、異常時の対応フローを整えておくことが、信頼維持とリスク管理の両面から重要です。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
