相手方から煽られた結果の誹謗中傷

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。

もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年3月13日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告はある株式会社の代表取締役の地位にある人物であり、被告はある研究所の上席研究員の地位にある者である。そして、被告が原告に関してツイッター(現「X」)上において繰り返し侮蔑的な発言を繰り返したとして、原告は、名誉毀損であることを理由として、被告らに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①被告の一連の投稿は、侮辱的な表現を含むものであるが、そもそも従前からの原告による侮辱的な表現に誘発されたものとも考えられることから、被告による一連の表現が社会通念上許される限度を超える侮辱行為とは認められない。

②また、各投稿それ自体が被告の慰謝を要するほどの社会的評価の低下をもたらすものとは言えず、社会通念上許される限度を超える侮辱行為とも認められないし、また、原告の名誉感情を違法に侵害するものとも認められない。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

相手方から煽られたことから誹謗中傷に類する投稿を行った場合には、場合によっては違法性が阻却される可能性はあります。しかしながら、そもそもこのようなトラブルに巻き込まれること自体が多くの人にとっては非常に重い負担となりますので、トラブルに巻き込まれないようにすることが重要です。

何らかの投稿を行う場合には、不特定多数の人が見ることができますので、常に名誉毀損や侮辱に発展する可能性があります。この点はくれぐれもご注意いただき、まずは投稿を行わないで済まないかどうか、投稿することを中止することを念頭に冷静に対応していただくことが重要です。

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