インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。
もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年10月1日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告と被告は、同じ芸能グループで活動していた人物であるが、被告が自身のツイッター(現「X」)において、原告が以前性風俗店に勤務していたという趣旨の投稿を行った。これに対して、原告は、名誉毀損及び営業上の損害が発生したことを理由として、被告らに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば本件各ツイートは、いずれも、原告が性風俗店で働いたことがある事実又は原告が現在も性風俗店で働いている事実を摘示するものと理解されるのが通常である。そうすると、本件各ツイートは原告の社会的評価を著しく低下させるものと認められる。
②被告は、各投稿について鍵アカウントで行ったと主張するが、被告の承認を受けている者は複数いたものと認められることに加え、承認するか否かは被告の任意の判断に委ねられており本件各ツイート時点で被告の承認を受けていなくてもその後に承認を受けることにより本件各ツイートを閲読できるようになること、また、被告の承認を受けた者は本件各ツイートのデータを複製等することによって容易に他者へ拡散させることが可能であることに鑑みると、本件各ツイートが不特定多数の者に伝播する可能性があったというべきである。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
また、鍵アカウントにおける投稿であっても、不特定多数に伝播する可能性が十分にあることから、名誉毀損や侮辱に該当すると考えるべきであることはくれぐれも注意する必要があります。