問題行動を通報することは名誉毀損に該当するかどうか

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年8月18日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告が、同じ会社の同僚である被告が原告によるストーカー行為等の内容を含むメールを会社内で送信したことにより、原告の名誉を棄損し、またプライバシーを侵害したとして、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①被告が勤務先会社に報告した内容は、従業員間のトラブルの防止や被告の勤務先会社の信用毀損の防止等の目的で一定の範囲で情報共有されることが見込まれるのであって、被告が報告した直接の担当者のみならず一定の広がりのある範囲で情報が伝達される可能性が高いといえる。したがって、被告による一連の行為によって原告の社会的評価は低下するものといえる。

②もっとも、被告は、警察からも被告勤務先会社との情報の共有を指示されていたこと等からすると、被告が被告勤務先会社に報告する行為は,その業務に関わる正当な理由のあるものといえ名誉毀損行為の違法性を阻却するといえる。

③これらの諸事情を比較すると、被告の報告する理由に関する諸事情は、原告のプライバシー情報に関わる事実を公表されない法的利益を優越し、被告の行為が不法行為としての違法性を有するものとはいえない。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません特に名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもありますので、最大限注意をする必要があります。

ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

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