人材紹介・派遣業界における広告のルールとリーガルチェック

人材紹介・派遣業界では、求職者を惹きつけるために、求人情報や就業先の魅力をアピールする広告が数多く展開されています。ですが、表現の仕方を誤ると、職業安定法・景品表示法・労働者派遣法などの法令に抵触するおそれがあり、他の業種とは異なる慎重さが求められる領域です。

1 求人広告と法規制

まず、求人広告で最も基本となるのが、職業安定法およびその下位法令である「職業紹介事業者指針」、「募集情報等提供事業に関する指針」などの規制です。これらでは、求職者が就業先を選ぶにあたって誤解を招かないよう、正確かつ最新の情報を掲載することが義務付けられています。

たとえば、以下のような広告表現は法的リスクを伴います。

①実際には埋まっている求人を「募集中」と表示し続ける

②月収例に「残業代込み」「インセンティブ込み」の金額のみを掲載し、内訳を明示しない

③「正社員登用率90%」と表示しながら、根拠となるデータがない

④「未経験歓迎」と書かれていても、実際には実務経験が必須

このような表示は、職業安定法違反や景表法の優良誤認表示に該当する可能性があります。特に、給与・雇用条件・勤務地といった『生活に直結する情報』については、誇張やあいまいな表現は避けなければなりません。

また、派遣業界では労働者派遣法にも留意する必要があります。派遣スタッフを募集する際には、派遣先企業名、業務内容、派遣期間、労働条件等の詳細を明示することが求められています。特定の派遣先との関係性や待遇面について、実態と異なる内容を記載した場合、行政指導や許可取消のリスクもあり得ます。

2 リーガルチェックのポイント

さらに、最近では、求人情報をSNS広告で拡散したり、動画・漫画形式のコンテンツを活用するケースも増えています。こうした表現方法においても、消費者(求職者)が事実と異なる内容を信じる可能性がある場合は、不当表示とされる可能性があります。

リーガルチェックのポイントとしては、以下のような視点が重要です。

①募集情報は事実に即しているか(虚偽表示の排除)

②給与・休日・福利厚生などの条件が明確かつ具体的に示されているか

③表現の裏付けとなるエビデンスやデータが存在するか

④法律に基づく表示義務(例:派遣契約に関する明示事項)が守られているか

人材業界における信頼性は、求人広告の正確さに大きく左右されます。 過剰な演出や『釣り広告』のような手法は、短期的な反応を得られたとしても、長期的には企業の評判やコンプライアンスに悪影響を及ぼしますので十分な注意が必要でしょう。

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