打消し表示の法的有効性:消費者に伝わる表示の鉄則

広告には、スペースや時間の制約から、メインのメッセージを補足したり、条件を限定したりするために、小さな文字やアスタリスクで注意書きを付記することが頻繁にあります。これが打消し表示です。

法務担当者は、「*ただし、効果には個人差があります」といった打消し表示を入れれば、誇大広告のリスクを避けられると考えがちです。

しかし、景品表示法(景表法)の観点から見ると、打消し表示は万能の免罪符ではありません。不適切な打消し表示は、優良誤認表示を解消できず、かえって消費者を誤認に導くとして規制の対象となり得ます。

1 打消し表示の法的限界:「メインの誤認は解消できない」

打消し表示の役割は、メインの表示によって生じた消費者の誤解を解消すること、または重要な前提条件を補足することにあります。

しかし、景表法は、メインの表示がすでに「著しく優良であると誤認させる」レベルに達している場合、打消し表示をもってしてもその誤認は解消されないという立場をとっています。

【具体的なNG例】

メインのメッセージで「誰でも飲めば1週間で必ず-5kg!」と断定的に謳っているとします。これは、科学的根拠がない限り、優良誤認表示(不当表示)に該当します。この下に「*効果には個人差があります」と記載したところで、消費者はすでにメインの断定的なメッセージに強く影響を受けて購入を決断するため、不当表示は解消されないと判断されます。

打消し表示は、誤認が生じない程度の曖昧さや限定的な条件を補足する場合にのみ、有効性を持ちます。

2 打消し表示が有効となるための3つの要件

打消し表示が消費者の誤認を解消し、適法なものとして認められるためには、消費者庁が示す以下の3つの要件をクリアする必要があります。

これらは、「消費者に正しく伝わること」を担保するための鉄則です。

3 法務担当者が注意すべき打消し表示の実務

打消し表示を効果的かつ法的に安全に使用するために、法務部門は以下の実務的なリスクをチェックする必要があります。

(1)リスク1:情報量の多さによる「打ち消し効果の減衰」

打消し表示があまりにも長く、多くの情報を含む場合、消費者はそれを読み飛ばしがちになります。消費者の注意を分散させ、結果として重要な限定条件が伝わらないリスクが生じます。打消し表示は簡潔に、かつ本質的な限定条件のみを記載するようにすべきです。

(2)リスク2:スマホなど表示媒体による差異

パソコン画面では適切に見える文字の大きさや位置も、スマートフォンなどの小さな画面で表示した際に判読が困難になることがあります。すべての表示媒体において、要件2の「視認性」が確保されているかを検証しなければなりません。

(3)リスク3:景表法と特定商取引法との関係

特に定期購入やサブスクリプション広告において、解約条件や総額に関する表示は、景表法だけでなく特定商取引法の規制も受けます。特商法では、「最終確認画面」などにおいて、解除条件や価格に関する情報を誤認のおそれが無いように表示することが義務付けられています。この場合は、景表法の基準よりもさらに厳格な表示の明瞭さが求められます。

4 まとめ:打消し表示は「保険」ではなく「補足」

打消し表示は、あくまでメインの表現が適法であることを前提として、その適用範囲を正確に補足するための手段です。

誇大な広告表現を「免罪符」で合法化しようとする姿勢は、景表法の趣旨に反します。企業の法務担当者や経営者は、広告企画の段階から、客観的な事実に基づいた表現をメインとし、打消し表示は「消費者に正確な情報を提供する」ための最後の確認プロセスと位置づけるべきです。

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