スポーツ・フィットネス業界の広告と法的リスク

パーソナルジム、フィットネスクラブ、ヨガ・ピラティススタジオ、オンラインフィットネスなど、健康志向の高まりとともにスポーツ・フィットネス業界は成長を続けています。集客のために「短期間で理想の体に!」「絶対に痩せる!」といった成果訴求型の広告が多く見られますが、こうした表現には景品表示法や健康増進法に基づく厳しいルールがあり、違反すると行政指導・処分の対象になりかねません。

1 「成果保証」「短期間で痩せる」などの断定表現は危険です

この業界で最も問題となりやすいのは、「体重減少」や「筋肉増加」などの身体的変化を断定的に表現する広告です。たとえば以下のような表現は、根拠資料のないまま使用すると、景表法の優良誤認表示に該当するおそれがあります。

①「2カ月でマイナス10kg確実」

②「1回でウエスト-5cm!」

③「週1通うだけで腹筋が割れる」

④「返金保証付き!絶対に結果が出ます」

これらの表現を行う場合には、統計的に再現可能なデータや試験結果など、合理的な根拠資料が求められます。また、「保証」とうたう場合は、その保証条件(例:出席率、食事指導の遵守等)を明示しなければ、誤認を招くリスクが高まります。

2 ビフォーアフター写真の使用には特に注意が必要です

ビジュアルによる訴求が強いこの業界では、「ビフォーアフター写真」がよく使用されますが、これも誤認を招く表示として過去に多数の行政処分がなされています。

リスクのある使い方としては、

①特殊な条件で成功した一例を、全員に当てはまるように見せる

②照明・衣装・角度などを調整し、実際以上の変化があるように見せる

③加工アプリなどで画像を修正している

こうした写真を使用する場合は、「個人の結果であり、全ての方に効果を保証するものではありません」などの注意書きを明示することが最低限必要です。また、加工の有無を含め、誠実な表示であることが求められます。

3 体験談・口コミの活用とステマ規制

「私は3カ月で10kg痩せました!」「人生が変わった!」といった体験談・口コミも有効な広告手段ですが、消費者が実際の利用者の声だと信じてしまうため、内容の真実性・実在性が厳しく問われます。

さらに、インフルエンサーを起用して広告投稿を行う場合には、ステルスマーケティング規制(2023年景表法改正)の対象となるため、企業が関与している投稿には「#PR」など広告である旨の明示が必要です。

4 リーガルチェックのポイント

スポーツ・フィットネス広告における法務チェック項目としては、

①「確実に痩せる」「絶対成果」といった断定表現を使用していないか

②表示されている成果(体重減少・筋肉量等)に根拠資料があるか

③ビフォーアフター写真に加工や演出が含まれていないか、注意書きがあるか

④保証制度の表示に条件や免責の明示があるか

⑤口コミ・体験談が実在の声かつ許諾を得ているか

⑥インフルエンサー投稿にステマ表示(#広告等)がなされているか

スポーツや健康に関するサービスは、身体的・精神的影響が大きいため、誠実な情報提供が不可欠です。信頼を得る広告とは、単に成果を約束するものではなく、そのプロセスや前提条件を丁寧に伝えることによって生まれます。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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