「売上ランキング1位」「お客様満足度ランキング上位獲得」「業界No.1の支持率」——こうした「ランキング表示」は、消費者に強い印象を与え、広告効果の高い表現として多くの企業が活用しています。しかし、このランキング表示が事実に基づいていなかったり、誤解を招く形で使われていたりすると、景品表示法に違反する可能性があります。広告担当者としては、そのリスクを正しく理解し、適切な表現であるかを慎重にチェックする必要があります。
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1 景品表示法における「優良誤認表示」とは?
景品表示法では、「実際のものより著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)」を禁止しています。ランキング表示は、一見客観的な数値・評価に見えますが、その根拠が不明確だったり、調査の対象や手法が限定的だったりすると、消費者に誤認を与える可能性があるのです。
たとえば以下のような表示は、リスクが高いとされます:
①出典や調査主体が明記されていない「〇〇ランキング1位」
②狭い範囲(例:自社顧客のみ)での調査結果を、業界全体に通用するかのように表示
③短期間・特定時間帯の一時的な順位を、「継続的なNo.1」として表示
2 適法な「ランキング表示」に必要な4要素
ランキング表示を広告で使用する際には、以下の4つの情報を明確に表示することが求められます。
①調査主体(誰が調査したか)
例:「株式会社〇〇調査研究所 調べ」「〇〇書店販売データによる」
②調査対象(何を・どこで調査したか)
例:「2023年1月~12月 全国ドラッグストア100店舗の販売実績に基づく」
③調査方法(何を基準に順位付けしたか)
例:「POSデータの販売個数に基づき集計」「アンケートによる満足度評価」
④調査時期(いつのデータか)
例:「2023年12月時点」「2023年上半期」
これらを広告上で明記するか、少なくとも容易に確認できるようにしておくことが、適法表示の基本です。
3 「No.1」や「トップクラス」表示との違い
「ランキング1位」と「No.1」は同様に見られがちですが、景表法上では微妙に扱いが異なる場合があります。「No.1」は自社調査や業界団体の調査でも表示可能とされる一方、客観的裏付け資料がないまま使うと、やはり優良誤認表示とされるリスクがあります。
曖昧な表現(例:「人気急上昇中」「売れてます」)も、裏付けがなければリスクがあるため、裏付け資料の存在を前提に、明確で具体的な表示を心がけましょう。
4 リーガルチェックのポイント
①ランキングの出典、調査主体、時期、方法、対象は明記されているか?
②「1位」表示の根拠資料を提出できる状態にあるか?
③実態より過度に優位である印象を与えていないか?
④一時的なデータを恒常的なものとして表示していないか?
ランキング表示は、適切に運用すれば非常に効果的なマーケティング手法です。しかしその裏には、消費者の期待を裏切らない「根拠」と「透明性」が必要不可欠です。企業の信頼は、事実に基づく表現から築かれます。
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