健康食品業界は、広告表現の自由度が高い一方で、薬機法や景品表示法の違反が特に多く指摘される分野です。サプリメントや栄養補助食品などの商品は、体調の改善や健康維持への期待が高いため、広告でもつい「効く」「治る」といった表現を用いたくなりがちですが、それが法的リスクを招く原因になります。
1 健康食品は医薬品ではありません
まず大前提として、健康食品は医薬品ではありません。
そのため、「○○が治る」「糖尿病が改善する」「がん予防に効果がある」など、治療効果や疾病の予防・治癒を示唆する表現は、薬機法に違反します。これは明確な違法表現であり、行政指導・指名公表・業務停止といった厳しい処分が行われることもあります。
では、曖昧な言い回しなら大丈夫かというと、そうではありません。
「体が軽くなった」「毎朝スッキリ」といったぼかした表現でも、消費者が“疾病の改善効果がある”と受け取る可能性があれば、違法とされるケースもあります。実際に、こうした主観的表現が景品表示法の「優良誤認表示」として摘発された事例もあります。
また、健康食品の広告では、「モニター100人中98人が効果を実感!」のように統計的な数字を使った訴求がよく見られます。
しかし、こうした表示を行う場合には、調査方法やサンプルの妥当性、データの公正性が問われます。調査が偏っていたり、第三者による検証がされていなかったりすると、「合理的根拠資料」としては認められません。
2 ステマ規制にはご注意ください
さらに、インフルエンサーマーケティングとの親和性が高い業界でもあり、SNS上での口コミ投稿や体験談も活用されています。
これについても、2023年の景表法改正により、いわゆる「ステマ規制」が導入され、企業から報酬や無償提供を受けているにもかかわらず、広告であることを明示しない投稿は違法となりました。
健康食品業界においては、以下のようなチェックポイントが特に重要です。
①効能効果の表現は医薬品的でないか(薬機法)
②誇大広告・根拠のない効果表示になっていないか(景表法)
③体験談やアンケート結果は裏付け資料があるか
④広告であることが明確に表示されているか(ステマ対策)
これらを適切に管理するためには、広告制作の初期段階から法務部門や顧問弁護士が関与し、エビデンス(根拠)と表現の整合性を一貫してチェックする体制が不可欠です。
「信頼される商品は、信頼される広告から」。健康を扱う業界だからこそ、誠実な広告表現が、長期的なブランド価値を支えることになるのです。