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1 医療広告ガイドラインについて
美容外科、歯科、皮膚科、AGAクリニック、自由診療クリニックなど、医療機関による広告はここ数年で非常に多様化しています。しかし、医療に関する広告には特有の厳格な法規制が存在し、一般的な業種とは異なる広告ルールが適用されます。中でも中心となるのが、医療法および医療広告ガイドラインです。
まず大前提として、医療機関の広告には、原則として掲載できる事項が限定されているという特徴があります。たとえば、広告できるのは以下のような情報に限られています。
①診療科目、診療時間、所在地、医師の氏名
②診療内容の具体的な説明(ただし公正で客観的なものに限る)
③治療実績や設備、費用(一定の条件下で表示可能)
このように、「医療広告は原則禁止、例外的に許可された内容のみ可」というスタンスであることを理解しておくことが重要です。
2 問題となる広告表現
問題となる広告表現には、以下のようなものがあります。
①「絶対に治ります」「100%成功」などの断定的表現
②「痛くない」「1日で治療完了」などの主観的・誇張的表現
③芸能人や有名人の写真を用いた治療結果の例示(体験談含む)
④ビフォーアフター写真の掲載(特定条件下を除き原則不可)
これらの表現は、医療法によって禁止されているか、あるいは「医療広告ガイドライン」により厳しく制限されています。特にビフォーアフター写真や体験談の掲載については、2023年現在でも違反広告の代表例として繰り返し指摘されています。
さらに、自由診療クリニックや美容医療の分野では、景品表示法の「優良誤認表示」に該当する可能性もあります。たとえば、「二重術で理想の目元に!」「10歳若返る美肌治療」など、実際より著しく優れていると誤認させる表現は、医療法と景表法の双方に違反するリスクがあります。
3 リーガルチェックのポイント
医療機関の広告における主なリーガルチェック項目は以下のとおりです。
①医療広告ガイドラインに定められた事項以外の表示をしていないか
②治療の安全性・効果について断定的な表現をしていないか
③ビフォーアフター写真や体験談を無条件に掲載していないか
④根拠のない「安さ」「安心」「人気」などの表示を行っていないか
⑤自由診療の価格は税込・自費であることを明確に表示しているか
なお、医療広告の監視は年々強化されており、都道府県の衛生主管部局や厚労省が指導・勧告を行うケースも増加しています。違反広告が問題視されれば、改善命令、公表、最悪の場合は行政処分に発展する可能性もあります。
医療広告は、患者の健康や命に直接関わる情報であるからこそ、「安心・信頼」の根拠は法令遵守に裏打ちされる必要があるのです。
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