飲食・外食業界の広告と法的リスク

レストラン、カフェ、ファストフードチェーン、デリバリーサービス、食品メーカーなど、飲食・外食業界では、日々さまざまな広告が展開されています。SNSや動画広告、ポスターなど多彩な媒体で魅力的に訴求される一方で、食品に関する表示には厳格なルールが課されており、違反すると行政処分や社会的信用の低下を招くリスクがあります。

1 飲食業界における広告規制

まず、飲食業界における広告で注意すべき主要な法令は、以下の3つです。

①景品表示法(景表法)

②食品表示法

③健康増進法(特定保健用食品等)

2 景表法上の規制

特に景表法では、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」が禁止されており、実際より著しく優れている、有利であると誤認される表現を使うと違法になります。

たとえば、以下のような表現が問題となる可能性があります。

①「無添加」「オーガニック」「国産100%」などの表示に根拠がない

②「他店の倍の量!」などの比較広告に客観的裏付けがない

③「今だけ半額」などの価格表示に、実際は“常時キャンペーン状態”で通常価格が存在しないケース

こうした表現は、根拠資料がない場合や表示が曖昧な場合に措置命令・課徴金納付命令の対象となることがあります。

2 食品表示法上の規制

次に、食品表示法にも注意が必要です。この法律は、原材料名、栄養成分、アレルゲン表示、消費期限などについて詳細に定められています。

たとえば、以下のような誤表示は法令違反です。

①実際には使用していない食材を「使用」と表示する(例:「北海道産バター使用」)

②加工食品において、加熱処理の有無を誤認させる表示をする(例:「生ハム風」なのに“生”と誤認させる)

③内容量をごまかす(例:「お肉たっぷり」と書かれているが、実際には少量しか使用していない)

また、健康訴求(ヘルスクレーム)に関する表現は、健康増進法の規制対象となります。「○○を食べると痩せる」「血圧が下がる」といった表示は、特定保健用食品や機能性表示食品でなければ使うことができません。

一般の食品でこのような表現を行うと、違法表示と判断されます。

3 リーガルチェックのポイント

飲食業界の広告でリーガルチェックすべきポイントは以下の通りです。

①「無添加」「国産」などの表示に根拠資料はあるか(証明可能か)

②価格表示は実態と合致しているか、キャンペーンは一時的なものか

③栄養成分や原材料の表記に誤りや誇張はないか

④健康効果を示唆する表現は、法的に許容される商品かどうか

⑤ビジュアルと実物の乖離が著しくないか(例:写真と実物のサイズ・量の差)

飲食業界では、広告が「美味しそう」「安心できそう」といった印象を左右します。しかし、印象操作に頼りすぎた表現は、違法リスクとブランド毀損の二重のリスクを招きかねません。

法令に則った誠実な広告こそが、「また食べたい」「信頼できる」という顧客の声につながります。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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