不動産業界における広告表現と景表法・宅建業法の注意点

不動産業界においては、マンションや戸建住宅、土地、賃貸物件などの広告が日常的に行われています。物件の魅力をアピールすることは販売促進に不可欠ですが、その表現内容については景品表示法だけでなく、業界特有の宅地建物取引業法(宅建業法)にも注意が必要です。

1 景表法にはご注意ください

まず景品表示法においては、不動産広告も「不当表示」の規制対象となります。

たとえば、「駅徒歩5分」と表示されているにもかかわらず、実際には信号や踏切などを考慮するとそれ以上かかる場合、優良誤認表示として問題となる可能性があります。

不動産広告では、「徒歩1分=80メートル」で計算するという業界基準がありますが、あくまで実際の距離や所要時間との乖離がないよう注意が必要です。

また、「先着○名様限定価格」や「今だけキャンペーン」などの価格訴求に関しても、有利誤認表示のリスクがあります。これらの表現を行う際は、通常価格が明確であること、割引や特典の期間・条件が明確であり、かつその実態が裏付けられる資料があることが求められます。

2 宅建業法にもご注意ください

さらに、宅建業法では、不動産広告に特有の規制が設けられています。

たとえば、物件の概要、所在地、取引態様(売主・代理・媒介など)などを必ず明示しなければならないとされています。加えて、未完成物件の広告を行う場合には、建築確認を受けた後でなければならないという制限もあり、タイミングを誤ると違法広告とみなされる可能性があります。

他にも、宅建業法施行規則では以下のような禁止事項が列挙されています。

①「完全南向き」など、事実と異なる誇大表現

②「絶対に値上がりします」など、将来の不確定な事項について断定する表示

③実際には提供できない設備やサービスの記載(例:未設置のオートロック、ペット可など)

これらは、宅建業法違反として業務停止処分や指導の対象となる可能性があります。

不動産業界は高額商品を扱うため、消費者が広告から得る情報の影響は非常に大きいといえます。そのため、誇張された表現や根拠の乏しい表示は、単なる軽率なミスでは済まされません。

不動産広告における法務チェックのポイントは、以下のとおりです。

①表示内容に誤認を与える表現がないか(景表法)

②表示された価格・条件に客観的な裏付けがあるか

③宅建業法に基づく必要事項がすべて記載されているか

④実際の物件状況や提供条件と広告表現が整合しているか 制作段階からリーガルチェックを導入し、チェックリストの運用や定期的な監査を行うことで、トラブルの未然防止と企業の信用維持につながります。

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