エンタメ・イベント業界の広告と法的注意点

コンサート、演劇、展示会、テーマパーク、オンライン配信イベントなど、エンタメ・イベント業界では、非日常的な体験や感情に訴える広告が多用されます。その表現は自由度が高く、キャッチーであることが求められますが、「満足度」「限定」「話題沸騰」などの表現には、景品表示法をはじめとする法的リスクが潜んでいます。

1 「満足度○%」「話題沸騰」などの実績表示は根拠が必要

エンタメ広告でよく見られる「観客満足度98%!」「リピーター続出」「SNSで話題沸騰中」などの表現は、魅力的ではあるものの、根拠が不明確な場合は優良誤認表示に該当するおそれがあります。

リスクがあるケースとしては、

①アンケート調査の母数が極端に少ない、または自社スタッフによる調査のみ

②「話題沸騰」は一部SNS投稿や自社アカウントの発信にとどまる

③実際は再演なしの単発公演なのに「大好評につき再演決定」のような印象操作

また、満足度や評価、話題性を表示する際には、以下の情報を可能な限り明示することが推奨されます。

①調査実施主体・時期・対象人数・調査方法

②使用しているSNSやメディアの名称(例:X(旧Twitter)、Instagramなど)

③具体的なデータの引用(例:ハッシュタグ投稿数、視聴回数等)

2 「限定」「先着順」「残りわずか」の表示に潜む『誤認誘引』

「限定100名様」「チケット残りわずか」「先着特典あり」など、限定性を強調する表現は、ユーザーの購買意欲を刺激する効果が高い一方で、実態が伴っていない場合には有利誤認表示となり、景表法違反の対象となります。

問題となる例としては、

①実際には人数制限がないにもかかわらず「先着100名」などと表示

②「残りわずか」と表示しておきながら、在庫数は十分に存在

③「1日限り」と告知しつつ、同内容を複数日開催

これらの表示を行う場合には、数量・期間の根拠となる証拠資料を保管しておき、適切に更新・運用する体制が求められます。

3 体験談・インフルエンサー投稿にもステマ規制の影響

近年では、イベント来場者の「体験談」や「SNSでの感想」をそのまま広告に転用したり、インフルエンサーにPR投稿を依頼したりするケースが増えています。ここでも注意すべきは、ステルスマーケティング(ステマ)規制です。

2023年の景表法改正により、「広告であるにもかかわらず、それと分からない表示」は不当表示に該当することとなりました。

ポイントとしては、

①インフルエンサーに金銭や招待等の対価を提供した場合は、「#PR」「広告」などの明示が必要

②一般客の体験談を広告に使用する場合、実在性の確認と本人の許諾が必要

③投稿内容を広告主が編集・指示している場合、「広告表示義務」が発生

4 チェックポイントまとめ

エンタメ・イベント広告での主な法的チェックポイントとしては、

①「満足度」「話題性」の表示に客観的データや調査根拠があるか

②限定性・数量・期間表示が実際の運用と一致しているか

③チケット価格・座席・サービス内容が広告表示と齟齬がないか

④体験談・SNS投稿の転用が許諾・ステマ表示を適切に行っているか

エンタメ業界は感性を刺激する表現が命ですが、その自由な発想が誤認や誇張につながらないよう、法的リスクを常に意識した表現運用が求められます。“楽しかった”の記憶を“また行きたい”に変えるには、広告への信頼が欠かせません。

次回は、「スポーツ・フィットネス業界における広告と“成果保証”“身体変化”の表示リスク」を解説いたします。

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