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成約済み物件を掲載し続けてしまった場合の対応
不動産仲介業では、SUUMO、LIFULL HOME’S、at homeなどの不動産ポータルサイトが集客の中心になっています。
そのため、ポータルサイトに掲載している物件情報の更新漏れは、単なる事務ミスでは済まないことがあります。
特に、既に成約済みの物件を掲載し続けてしまうと、「おとり広告」と判断され、不動産公正取引協議会による調査や処分、主要ポータルサイトへの掲載停止につながる可能性があります。
今回は、賃貸物件の仲介業者から相談を受けた事例をもとに、成約済み物件を掲載し続けてしまった場合の対応と、ポータルサイト掲載停止処分を回避するためのポイントを解説します。
相談内容:成約済み物件を1か月近く掲載し続けてしまった
賃貸物件を扱う不動産仲介業者の店長であるMさんから、次のようなご相談を受けました。
繁忙期で忙しく、SUUMOやHOME’Sに掲載していた物件情報の更新を怠ってしまいました。
その結果、既に申込みが入り、成約済みとなっていた人気物件を、1か月近く掲載し続けてしまいました。
その物件を見て来店したお客様から「釣り物件ではないか」と通報され、不動産公正取引協議会から「おとり広告の疑いで調査する」と連絡が来ています。
もしおとり広告と認定されると、主要ポータルサイトへの掲載が1か月以上停止されると聞きました。
ポータルサイトに掲載できなくなると、反響が止まり、店舗の売上が大きく落ちてしまいます。どう対応すればよいでしょうか。
Mさんとしては、「わざと残したわけではなく、繁忙期の更新漏れだった」という認識でした。
しかし、不動産広告の規制では、故意に客寄せをした場合だけでなく、成約済み物件の削除漏れによって、実際には取引できない物件を掲載し続けた場合も問題になります。
成約済み物件の掲載は「おとり広告」になり得る
不動産広告におけるおとり広告とは、実際には取引できない物件を、あたかも取引可能であるかのように広告することをいいます。
不動産のおとり広告については、景品表示法上の不当表示として指定されており、次のような表示が問題になります。
- 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件の表示
- 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件の表示
- 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件の表示
そのため、成約済み物件を掲載し続けることは、「物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件」の広告として、おとり広告に該当する可能性があります。
「うっかり」でも処分対象になる
Mさんが最も驚いていたのは、「故意ではなくても、おとり広告になるのか」という点でした。
結論としては、故意に客寄せをするつもりがなかったとしても、成約済み物件を相当期間掲載し続けていれば、おとり広告として問題になります。
実際、全日本不動産協会の解説でも、物件が既に契約済みで取引できなくなっているにもかかわらず、インターネット上で広告表示を続けることは、売ることのできない物件について広告することになり、おとり広告として禁止されるとされています。
また、インターネット広告は最新情報に更新しやすい媒体であるため、消費者から見ると、掲載中の物件は実際に取引できるものと受け止められます。
そのため、「忙しかった」「担当者が退職した」「更新を忘れていた」という事情だけでは、責任を免れることは困難です。
1か月近い掲載継続は重く見られる
今回のケースでは、成約済み物件が1か月近く掲載され続けていました。
数時間から1日程度のタイムラグであれば、システム上の反映遅延や実務上の更新タイミングとして説明できる場合もあります。
しかし、1か月近くとなると、単なる反映遅延とは言いにくく、物件情報の管理体制に重大な不備があったと評価される可能性が高くなります。
不動産公正取引協議会の資料でも、契約済みとなったにもかかわらず、長いもので3か月半以上、短いものでも28日間継続して広告していた事例について、厳重警告・違約金の措置が紹介されていますウェブ。
Mさんのケースでも、「約1か月」という期間は、厳しい評価を受けるおそれがある水準でした。
ポータルサイト掲載停止のリスク
不動産公正取引協議会による処分の中でも、実務上最も大きな影響を与えるのが、ポータルサイト掲載停止です。
協議会の資料によれば、公正競争規約違反については、注意、警告、厳重警告、厳重警告・違約金といった処分があり、厳重警告・違約金の場合には、事業者名や違反概要の公表、ポータルサイト掲載停止につながることがあります。
また、掲載停止措置については、賃貸・売買を問わず、表示規約の適用を受ける物件が対象となり、掲載停止期間は1か月以上とされています。
賃貸仲介業者にとって、繁忙期に主要ポータルサイトへ掲載できなくなることは、反響の大幅減少に直結します。
そのため、調査段階での弁明対応と再発防止策の提示が極めて重要です。
協議会への対応方針:故意性の否定と再発防止策の具体化
不動産公正取引協議会から調査の連絡を受けた場合、まず行うべきことは、事実関係の正確な整理です。
感情的に「わざとではない」「忙しかっただけだ」と主張しても、不十分です。
協議会が確認するのは、実際にどのような広告が、いつからいつまで掲載され、なぜ削除されなかったのか、今後同じことを防ぐ体制があるのかという点です。
今回のケースでは、弁護士がMさんの代理人として事情聴取に同行し、弁明書を提出しました。
ポイントは、次の2つです。
1. 故意に客寄せをしたものではないこと
まず、M社が「人気物件を残して集客しようとした」わけではないことを、客観的資料で説明しました。
具体的には、次の資料を整理しました。
- 当該物件が成約済みとなった日
- 成約情報が社内で共有された日時
- ポータルサイトへの掲載開始日
- 掲載削除が遅れた原因
- 担当者の退職・異動や引継ぎ状況
- 管理会社・元付業者とのやり取り
- 来店客への説明内容
- 通報後に直ちに削除した記録
- 他の成約済み物件についての掲載状況
特に重要なのは、「問い合わせを得るために意図的に残した」という悪質性を否定することです。
ただし、故意でないことを強調するだけでは足りません。
過失による更新漏れであっても違反になり得るため、原因分析と再発防止策をセットで示す必要があります。
2. 再発防止策を具体的に示すこと
協議会対応で最も避けるべきなのは、「今後は気をつけます」という抽象的な説明にとどまることです。
おとり広告は、担当者の注意力だけに依存している限り、再発します。
そのため、仕組みとして防ぐ対策を示す必要があります。
今回、M社では次のような再発防止策を導入しました。
- 毎日午前10時に、掲載中物件の空室確認を実施する
- 管理会社・元付業者への確認履歴を記録する
- 成約済み・申込み済みとなった物件は、当日中に全媒体から削除する
- 営業担当者と広告担当者によるダブルチェック体制にする
- 削除完了後のスクリーンショットを保存する
- ポータルサイトごとの反映タイミングを管理表に記載する
- 週1回、店長が掲載中物件のランダムチェックを行う
- 退職・異動時には広告管理権限と担当物件の引継ぎリストを作成する
- 物件管理システムを導入し、広告媒体との連携漏れを減らす
- 全社員に不動産広告規制の研修を実施する
不動産広告では、物件情報の変動が早く、更新漏れが起こりやすい業務構造があります。
だからこそ、個人の注意ではなく、毎日の確認、記録化、ダブルチェック、システム導入によって再発防止を図ることが重要です。
弁明書で記載した主な内容
今回提出した弁明書では、次の内容を整理しました。
- 本件物件が成約済みであったにもかかわらず掲載が残っていた事実
- 掲載継続により来店者に誤解を与えたことへの謝罪
- 故意に集客目的で掲載を残したものではないこと
- 削除漏れが発生した具体的原因
- 通報後、直ちに掲載を削除したこと
- 来店者に謝罪し、他物件への強引な誘導を行っていないこと
- 過去に同種の処分歴がないこと
- 広告管理フローを見直したこと
- システム導入と日次確認の運用を開始したこと
- 今後、定期的に広告掲載状況を監査すること
弁明では、違反を否定し切ろうとするよりも、事実を正確に認めたうえで、悪質性が低いことと、再発防止策が実効的であることを示す方が有効な場合があります。
ポータルサイト掲載停止を回避するための交渉
M社にとって最も重要だったのは、ポータルサイト掲載停止を回避することでした。
そのため、弁明書では、厳重警告・違約金相当ではなく、より軽い措置にとどめるべき事情として、次の点を強調しました。
- 初めての違反であること
- 問題発覚後、直ちに掲載を削除したこと
- 当該顧客に謝罪し、強引な営業をしていないこと
- 故意に客寄せ目的で掲載を残した証拠がないこと
- 削除漏れの原因が特定されていること
- 日次確認・ダブルチェック・システム導入という具体的改善策を既に実施していること
- 店舗全体で広告規制の研修を実施したこと
- 今後、第三者による定期監査を受けること
その結果、今回は、初犯であること、直ちに削除・謝罪を行ったこと、具体的な改善策を実施したことが考慮され、掲載停止を伴わない軽い措置にとどめることができました。
社内体制の抜本改革
今回の件を受けて、M社では広告管理体制を抜本的に見直しました。
特に、次の3つの仕組みを導入しました。
1. 掲載中物件の毎日チェック
掲載中の全物件について、毎日、取引可能性を確認する体制にしました。
確認項目は、次のとおりです。
- 申込みの有無
- 成約の有無
- 募集停止の有無
- 賃料・管理費の変更
- 初期費用の変更
- 写真・間取りの正確性
- 取引態様の表示
- 広告媒体ごとの掲載状況
確認結果は、担当者名、確認日時、確認先を含めて記録します。
2. 成約時の即時削除フロー
成約済みとなった物件については、営業担当者が広告担当者に連絡するのではなく、システム上で削除依頼が自動通知されるフローに変更しました。
また、削除後は、各媒体から実際に非掲載になっていることを確認し、スクリーンショットを保存する運用にしました。
「削除依頼を出した」だけではなく、「実際に削除された」ことまで確認する点が重要です。
3. 第三者による広告監査
M社では、毎月、掲載中物件の一部をランダムに抽出し、外部の専門家が広告表示を確認する体制を導入しました。
監査項目は、次のとおりです。
- 成約済み物件が掲載されていないか
- 取引条件に誤りがないか
- 賃料・管理費・初期費用が正確か
- 「駅徒歩」「築年数」「専有面積」などの表示が正確か
- 特定用語や禁止表現を使っていないか
- 写真や間取りが実際の物件と一致しているか
- リフォーム済み表示に時期・内容が記載されているか
監査結果は店長と本部に共有し、改善履歴を残すことにしました。
不動産会社が確認すべき広告管理チェックポイント
不動産仲介業者は、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 成約済み物件を当日中に削除するルールがあるか
- 掲載中物件について毎日または定期的に空室確認しているか
- 確認日時・確認者・確認先を記録しているか
- 営業担当者と広告担当者の情報共有フローがあるか
- 担当者の退職・異動時に広告管理の引継ぎをしているか
- ポータルサイトごとの反映タイミングを把握しているか
- 削除依頼後、実際に非掲載になったことを確認しているか
- 管理会社・元付業者からの情報を定期的に確認しているか
- 広告表現に関する社内研修を実施しているか
- 店長や本部による抜き打ちチェックを行っているか
- 不動産公正取引協議会から連絡が来た場合の対応フローがあるか
まとめ:おとり広告は「削除漏れ」でも会社を揺るがす
不動産広告において、成約済み物件を掲載し続けることは、単なる更新漏れでは済まされません。
物件が実在していても、既に成約済みで取引できない状態であれば、おとり広告として問題になります。
故意に客寄せをした場合はもちろん、過失による削除漏れであっても、掲載期間が長く、管理体制が不十分であれば、処分対象となる可能性があります。
特に、主要ポータルサイトへの掲載停止は、不動産仲介業者にとって売上に直結する重大なリスクです。
重要なのは、次の3点です。
- 成約済み物件を発見したら、直ちに全媒体から削除すること
- 不動産公正取引協議会への対応では、故意性の否定と具体的な再発防止策を示すこと
- 担当者任せではなく、日次確認、記録化、ダブルチェック、システム化によって再発を防ぐこと
不動産広告は、集客のための道具であると同時に、法令・規約違反のリスクが常にある業務です。
クリーンな広告運用を徹底することが、ポータルサイト掲載停止や信用失墜を避け、長く事業を続けるための最も確実な方法です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
TikTokでバズった曲を使ったら警告文が届いた場合の対応
TikTokやInstagramリールでは、流行している楽曲に合わせて店舗紹介や商品紹介を行う動画が多く投稿されています。
美容室、飲食店、アパレルショップ、クリニックなどでも、スタッフが踊る動画、施術風景を見せる動画、ビフォーアフターを見せる動画などに人気曲を付けて投稿し、集客につなげているケースがあります。
しかし、アプリ内で選べる楽曲であっても、企業アカウントが自社の宣伝目的で使用する場合には、著作権や原盤権の問題が生じることがあります。
今回は、美容室チェーンから相談を受けた事例をもとに、TikTokやInstagramリールで商用利用不可の音源を使用してしまった場合の対応と、今後のSNS運用で注意すべきポイントを解説します。
相談内容:アプリ内の曲を使っただけなのに、権利者から内容証明が届いた
美容室チェーンの広報担当であるLさんから、次のようなご相談を受けました。
TikTokやInstagramリールで、お店の宣伝動画を投稿しています。
流行っているJ-POPや洋楽に合わせてスタッフが踊ったり、カットモデルを見せたりする動画がバズり、集客につながっていました。
ところが先日、音楽著作権管理団体やレコード会社から内容証明が届き、「商用利用における無断使用である。過去の動画も含めて使用料と損害賠償を支払え」と請求されました。
TikTokのアプリ内にある曲を使っただけなのに、なぜ違反になるのでしょうか。
みんな使っていると思うのですが、当社だけ問題になるのでしょうか。
Lさんとしては、「TikTokやInstagramのアプリ内で選べる曲だから、自由に使ってよい」と考えていました。
しかし、SNS上で楽曲を利用する場合、個人の非営利利用と、企業の広告・宣伝利用では、権利処理の考え方が大きく異なります。
企業アカウントの投稿は「商用利用」と評価されやすい
今回の最大の問題は、美容室チェーンの公式アカウントで、自社店舗の宣伝動画として楽曲を使用していた点です。
個人ユーザーが、趣味でダンス動画や日常動画を投稿する場合と、企業が集客・採用・ブランディングのために動画を投稿する場合では、利用目的が異なります。
企業アカウントが次のような目的で動画を投稿する場合、商用利用と評価されやすくなります。
- 店舗やサービスの宣伝
- 商品・メニューの紹介
- 来店予約への誘導
- 採用広報
- キャンペーン告知
- ブランド認知の向上
- 広告配信や投稿のブースト
TikTokの公式ヘルプでも、一般的な音楽ライブラリを商用利用することはできず、動画広告、ブランドコンテンツ、商業的なオーガニック投稿には商用音楽ライブラリを使用する必要があると説明されていますウェブ。
つまり、アプリ内で選べる楽曲であっても、「個人が楽しむ投稿」と「企業が宣伝に使う投稿」では、使える範囲が異なるということです。
「アプリ内で選べる曲」でも広告利用まで許されるとは限らない
TikTokやInstagramなどのプラットフォームは、JASRACやNexToneなどの著作権管理団体と包括的な利用許諾契約を結んでいる場合があります。
そのため、一定の範囲では、ユーザーが個別にJASRAC等へ申請しなくても、アプリ内の楽曲を使って動画を投稿できる仕組みになっています。
しかし、この仕組みには限界があります。
第一に、包括契約がカバーするのは、主に作詞家・作曲家の著作権です。
市販のCD音源や配信音源には、著作権とは別に、レコード会社や実演家が持つ原盤権・著作隣接権が関係します。
第二に、プラットフォーム上で使える楽曲であっても、企業の広告・宣伝利用までは許諾されていない場合があります。
JASRACが管理するのは作詞者・作曲者の著作権であり、レコード会社が持つ原盤権や実演家の権利は別の権利です。市販音源を動画に使う場合には、JASRAC等への手続だけでは足りず、レコード会社などへの許諾が必要になることがありますウェブ。
そのため、「アプリ内にある曲だから使ってよい」という理解は危険です。
著作権と原盤権は別の権利
音楽利用で特に誤解が多いのが、著作権と原盤権の違いです。
楽曲には、少なくとも次のような権利が関係します。
1. 楽曲の著作権
作詞家や作曲家が持つ権利です。
歌詞やメロディーなど、音楽の著作物そのものに関する権利です。
LegalOnナレッジでも、音楽の著作物は、音によって表現されている著作物であり、楽曲や楽曲を伴う歌詞等が含まれると整理されていますLegalOnナレッジ。
2. 原盤権・著作隣接権
レコード会社やアーティスト、演奏者などが持つ権利です。
同じ楽曲でも、どの音源を使うかによって、原盤権者が異なります。
例えば、同じ曲であっても、次のように権利関係は変わります。
- 有名アーティストのCD音源
- ライブ音源
- カラオケ音源
- 自社で演奏・録音した音源
- ロイヤリティフリー音源
- 商用楽曲ライブラリの音源
JASRAC等に著作権の利用許諾を得ても、市販音源をそのまま使う場合には、原盤権者から別途許諾を得る必要があることがあります。
今回のように、J-POPや洋楽の市販音源を美容室の宣伝動画に使った場合、権利者から見れば「自社の楽曲・音源を無断でCMに使われた」と受け止められる可能性があります。
権利者からの請求に対する初動対応
Lさんの会社に届いた内容証明では、過去の動画を含めて、使用料と損害賠償が請求されていました。
このような通知が届いた場合、最初に行うべきことは、次の対応です。
1. 指摘された動画を確認する
まず、どの動画が、どの楽曲・音源について、どの権利者から問題視されているのかを確認します。
確認すべき事項は、次のとおりです。
- 投稿したSNS
- 投稿日時
- アカウントの種類
- 使用した楽曲名
- 使用した音源の出所
- 再生回数
- 広告配信の有無
- 商品・店舗・サービスの宣伝性
- 権利者が主張している権利の内容
- 請求額の算定根拠
通知書に書かれている金額をそのまま受け入れるのではなく、請求の根拠を精査する必要があります。
2. 問題動画を速やかに削除・非公開にする
権利侵害の可能性がある動画については、早急に削除または非公開にします。
今回のケースでは、指摘された動画だけでなく、過去に投稿した動画のうち、J-POP、洋楽、市販音源、流行曲を使っているものをすべて確認し、権利処理が確認できないものは削除しました。
著作権侵害がある場合、権利者は侵害の停止や予防を求めることができます。LegalOnナレッジでも、著作権者や著作隣接権者は、侵害者または侵害のおそれがある者に対し、侵害の停止または予防を請求できると整理されていますLegalOnナレッジ。
したがって、問題がある動画を放置したまま交渉することは避けるべきです。
3. 過去動画を棚卸しする
SNS運用では、過去に投稿した動画がそのまま残っていることが多くあります。
そのため、1本だけ対応しても、同じ問題が別動画で再発する可能性があります。
今回のケースでは、過去投稿を次のように分類しました。
- 商用利用可能な音源を使っている動画
- アプリ内の一般楽曲を使っている企業宣伝動画
- 外部から取り込んだ市販音源を使っている動画
- 流行曲に合わせたスタッフのダンス動画
- 広告配信に利用した動画
- 他SNSへ転用した動画
権利処理が確認できない動画は、削除または差し替え対象としました。
使用料・損害賠償請求への交渉
届いた請求書には、再生回数などを前提とした高額な使用料が記載されていました。
そこで、弁護士が代理人として介入し、次の観点から交渉を行いました。
1. 故意に無断利用したものではないこと
Lさんの会社は、楽曲を無断で使ってよいと開き直っていたわけではなく、アプリ内で選択できる楽曲であることから、商用利用も許されると誤認していました。
もちろん、誤認があれば責任を免れるとは限りません。
しかし、悪質な権利侵害ではないこと、指摘後直ちに削除したこと、再発防止策を講じたことは、和解交渉上重要な事情になります。
2. テレビCMと同じレートで算定することが相当か
権利者側は、企業の宣伝利用であることを理由に、高額な広告利用料を前提とした請求をしていました。
しかし、SNS投稿の実態、投稿期間、広告配信の有無、再生回数、地域性、店舗規模などを踏まえると、テレビCMと同じようなレートで算定することが相当とは限りません。
そこで、Web動画広告としての相場、投稿実態、早期削除、再発防止策などを踏まえ、包括的な和解金での解決を提案しました。
3. 再発防止策を提示する
権利者との交渉では、単に金額を争うだけでなく、今後同じ問題を起こさない体制を示すことも重要です。
今回のケースでは、次の再発防止策を提示しました。
- 商用利用不可音源を使った過去動画の削除
- 企業アカウントで使用できる音源ルールの策定
- 投稿前チェックフローの導入
- 商用楽曲ライブラリまたは権利処理済み音源のみ使用する運用への変更
- スタッフ向けSNS研修の実施
- 外部制作会社との契約条項の見直し
その結果、当初請求額から大幅に減額された和解金で解決することができました。
今後はTikTokの商用楽曲ライブラリを使う
TikTokで企業が音楽を使えないわけではありません。
TikTokには、企業やブランドが商用利用できる楽曲を集めた「商用音楽ライブラリ」が用意されています。TikTokの公式ヘルプでも、商用音楽ライブラリは商用利用が許可された多数の楽曲を集めたライブラリであり、動画広告、ブランドコンテンツ、商業的な投稿では商用音楽ライブラリを使用する必要があると説明されていますウェブ。
そのため、L社には、今後のTikTok運用について次のルールを設けるよう助言しました。
- 企業アカウントでは、原則として商用楽曲ライブラリ内の音源のみ使用する
- 一般楽曲ライブラリの流行曲は使用しない
- スタッフ個人の感覚で音源を選ばない
- 広告配信に使う動画は、必ず事前に法務・広報責任者が確認する
- TikTokで使える音源を、InstagramやYouTubeショートにそのまま転用しない
- 他SNSにも投稿する場合は、プラットフォーム横断で使える権利処理済み音源を使用する
特に注意すべきなのは、TikTokで商用利用できる音源であっても、そのままInstagramやYouTubeショートで使えるとは限らない点です。
プラットフォームごとに音源のライセンス条件は異なるため、1本の動画を複数SNSに投稿する場合は、最初から複数媒体で利用可能な音源を選ぶ必要があります。
Instagramリールでも同様に注意が必要
Instagramでも、ビジネスアカウントや企業の宣伝投稿では、利用できる楽曲が制限されることがあります。
Instagramの音楽機能も、個人利用と商用利用で扱いが異なります。
ビジネスアカウントで一般の人気楽曲を使った投稿を行うと、動画のミュート、削除、アカウント制限、権利者からの請求につながる可能性があります。
Instagramで企業が音楽を利用する場合は、次のような対応が必要です。
- Instagram上で商用利用可能な音源を選ぶ
- Metaの提供する商用利用可能な音源を確認する
- 外部のロイヤリティフリー音源を使用する
- 自社で制作したオリジナル音源を使用する
- 有名曲を使う場合は、著作権・原盤権の許諾を個別に取得する
「TikTokで使えたからInstagramでも使える」という運用は避けるべきです。
有料素材サイトやオリジナル音源の活用
企業アカウントで安全にSNS動画を運用するには、次のような音源を使うことが現実的です。
1. 商用利用可能なSNS公式ライブラリ
TikTokであれば商用音楽ライブラリを利用します。
InstagramやFacebookでは、ビジネス利用に対応した公式音源やサウンドコレクションを確認します。
ただし、利用できる範囲は各プラットフォーム内に限定される場合があります。
2. 有料素材サイトの音源
Audiostock、Artlist、Epidemic Soundなど、商用利用ライセンスが明確な音源サービスを利用する方法です。
この場合も、次の点を確認する必要があります。
- SNS投稿に使えるか
- Web広告に使えるか
- 店舗広告に使えるか
- 複数媒体で使えるか
- 利用期間の制限があるか
- クレジット表記が必要か
- 二次利用や編集が認められるか
「ロイヤリティフリー」と書かれていても、利用範囲に制限があることがあります。
3. 自社オリジナル音源
最も安全性が高いのは、自社でオリジナル音源を制作する方法です。
美容室チェーンであれば、ブランドイメージに合う短いジングルやBGMを制作し、TikTok、Instagram、YouTube、Web広告で共通利用することも考えられます。
ただし、外部作曲家や制作会社に依頼する場合は、契約書で次の点を明確にしておく必要があります。
- 著作権の譲渡または利用許諾の範囲
- 原盤権の帰属
- SNS、Web広告、店内放送などでの利用可否
- 利用期間
- 利用地域
- 改変・編集の可否
- 第三者権利を侵害していないことの保証
「踊ってみた」動画には振付の権利も関係する
音源だけでなく、振付にも注意が必要です。
スタッフが流行曲に合わせて踊る動画では、楽曲の権利だけでなく、振付が著作物として保護される可能性があります。
特に、有名アーティストのダンス、ミュージックビデオの振付、ダンスチャレンジとして広まっている振付を、企業アカウントが店舗宣伝に使う場合には、次の点を確認する必要があります。
- 振付が創作性のある著作物と評価される可能性
- 振付師や所属事務所が利用を管理しているか
- 商用利用が許諾されているか
- 企業広告での利用が禁止されていないか
- 楽曲だけでなくダンス自体がブランドの宣伝に使われていないか
「みんなが踊っているから使ってよい」とは限りません。
個人の投稿として黙認されているものでも、企業広告として使うと権利者から問題視される可能性があります。
外部制作会社に依頼する場合の注意点
SNS動画の制作を外部会社に依頼している場合でも、権利侵害が起きれば、企業アカウントの運営者である広告主が請求を受けることがあります。
そのため、制作委託契約では、少なくとも次の内容を定める必要があります。
- 使用する楽曲・効果音・画像・映像素材は権利処理済みのものに限定する
- 商用利用可能な範囲を事前に確認する
- TikTok、Instagram、YouTube、広告配信など利用媒体を明記する
- 第三者の著作権、著作隣接権、肖像権、パブリシティ権を侵害しないことを保証させる
- 権利者から請求を受けた場合の対応・補償義務を定める
- 納品時に利用素材一覧とライセンス情報を提出させる
「制作会社に任せていた」という説明だけでは、権利者への対応として不十分になることがあります。
企業SNS運用で確認すべきチェックポイント
企業がTikTokやInstagramリールで動画を投稿する場合、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 企業アカウントで一般楽曲ライブラリの人気曲を使っていないか
- 商用利用可能な音源であることを確認しているか
- TikTokの商用音楽ライブラリ内の楽曲を使っているか
- InstagramやYouTubeへ転用してもよい音源か
- 市販音源やCD音源を外部から取り込んでいないか
- JASRAC等の著作権だけでなく原盤権も確認しているか
- 広告配信やキャンペーン投稿に使用していないか
- スタッフが個人感覚で流行曲を選んでいないか
- 振付やダンスにも権利リスクがないか
- 投稿前のチェックフローがあるか
- 過去動画の棚卸しを行っているか
- 外部制作会社との契約で権利保証を取っているか
- 権利者から通知が届いた場合の対応フローがあるか
まとめ:企業SNSでは「アプリで選べる曲=自由に使える曲」ではない
TikTokやInstagramでは、多くの楽曲がアプリ内で簡単に選べるため、自由に使えるように見えます。
しかし、企業アカウントが店舗や商品の宣伝のために楽曲を使う場合、それは商用利用と評価される可能性があります。
個人ユーザーの非営利投稿では問題になりにくい利用でも、企業の広告・宣伝投稿では、著作権、原盤権、著作隣接権、振付の権利などが問題になります。
特に注意すべきポイントは、次の3つです。
- アプリ内で選べる楽曲でも、企業の広告利用まで許されているとは限らない
- JASRAC等の著作権処理だけでは足りず、原盤権の許諾が必要になる場合がある
- TikTokで使える音源を、InstagramやYouTubeなど他のSNSに転用できるとは限らない
SNS運用を個人の感覚で行うと、後から権利者から高額な請求を受けることがあります。
企業アカウントで動画を投稿する場合は、商用利用可能な音源を使う、投稿前に権利チェックを行う、外部制作会社との契約で権利処理を明確にするなど、プロとしての権利管理体制を整えることが重要です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
アフィリエイターが勝手に「癌が治る」と書いた場合、広告主も薬機法違反の責任を問われるのか
健康食品やサプリメントの販売では、アフィリエイト広告を活用して集客を行うケースが多くあります。
アフィリエイト広告は、成果報酬型で販売促進を行える便利な仕組みです。
一方で、広告主が直接作成していない記事やLPであっても、過激な効能効果表現が使われた場合、薬機法や景品表示法上の責任を問われるリスクがあります。
特に、健康食品について「癌が治る」「医者も驚く効果」「血糖値が正常化する」など、医薬品的な効能効果を標ぼうする表示は、薬機法違反として刑事事件に発展する可能性があります。
今回は、サプリメント販売会社から相談を受けた事例をもとに、アフィリエイターが作成した違法記事について、広告主が警察から事情聴取を求められた場合の対応を解説します。
相談内容:面識のないアフィリエイターの記事について大阪府警から連絡が来た
サプリメント販売会社の社長であるKさんから、次のようなご相談を受けました。
大阪府警から電話があり、当社の商品を紹介しているアフィリエイトサイトについて事情聴取したいと言われました。
確認すると、当社とは面識のないアフィリエイターが勝手に作ったサイトで、「癌が消えた」「医者も驚く効果」といったデタラメな体験談とともに、当社の商品が紹介されていました。
警察は「広告主である御社の指示ではないか」と疑っていますが、私は本当に指示していません。
ASPを通しているだけで、誰が記事を書いたのかも知りません。
それでも、広告主である私が逮捕されるのでしょうか。
Kさんとしては、「アフィリエイターが勝手に書いた記事であり、自社は関係ない」という認識でした。
しかし、現在の広告規制実務では、「アフィリエイターが勝手にやった」「ASPに任せていた」という説明だけでは十分とはいえません。
アフィリエイト広告でも薬機法違反になり得る
薬機法では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの効能効果に関する虚偽・誇大広告が禁止されています。
また、未承認医薬品について効能効果を広告することも禁止されています。
健康食品やサプリメントは、原則として医薬品ではありません。
そのため、健康食品について「癌が治る」「肝臓病が改善する」「糖尿病に効く」など、疾病の治療・予防効果をうたうと、未承認医薬品の広告と評価されるおそれがあります。
今回の記事では、次のような表示が使われていました。
- 癌が消えた
- 医者も驚く効果
- 末期でも改善した
- 薬に頼らず治った
- 利用者の体験談として、病気が治ったかのように記載している
これらは、健康食品の広告表現として極めて危険です。
「アフィリエイターが勝手に書いた」では済まない理由
かつては、広告主側が「アフィリエイターが勝手に作った記事であり、当社は関与していない」と主張するケースも少なくありませんでした。
しかし、現在では、アフィリエイト広告に対する行政・警察の見方は厳しくなっています。
アフィリエイト広告では、広告主がASPを通じて商品紹介を依頼し、成果に応じて報酬を支払う仕組みになっています。
広告主が記事の細部を直接作成していなくても、自社商品の販売促進のために広告ネットワークを利用している以上、広告主が全く責任を負わないとは限りません。
つまり、「直接書いていない」というだけでは、広告主の責任を否定する決定的な理由にはなりません。
ステラ漢方事件以降、警察の見方は厳しくなっている
アフィリエイト広告と薬機法違反の関係で特に重要なのが、いわゆるステラ漢方事件です。
この事件では、健康食品について、医薬品として承認されていないにもかかわらず、「肝臓疾患の予防に効果がある」などと広告した疑いで、広告主である健康食品販売会社の従業員だけでなく、広告代理店や制作会社の関係者も薬機法違反容疑で逮捕されましたウェブ。
報道では、問題となった広告はアフィリエイト広告であり、第三者の体験談を装った記事風広告で、「脂肪肝が正常値に」「肝臓が半年で復活」といった医薬品的な効果が表示されていたとされていますウェブ。
この事件が広告業界に与えた影響は大きく、広告主、代理店、制作会社、アフィリエイターのいずれも、薬機法違反の責任を問われ得ることが明確になりました。
警察が見るポイントは「認識」と「黙認」
警察が広告主の関与を調べる際に重視するのは、単に記事を誰が書いたかだけではありません。
重要なのは、広告主が違法な広告の存在や内容を認識し、それを黙認または承認していたといえるかどうかです。
例えば、次のような事情があると、広告主の関与を疑われる可能性があります。
- ASPの管理画面で、問題サイトからの流入や獲得件数を確認していた
- 違法表現を含む記事のURLを社内で共有していた
- 「表現は強いが獲得できているので止めない」といったメールやチャットがある
- アフィリエイターに特別単価を出していた
- 過去に同様の違法表現を指摘されていたのに放置していた
- 広告代理店やASPに対して、強い訴求を求める指示をしていた
- 記事内容を事前に確認し、修正指示を出していた
- 苦情や行政指導を受けた後も掲載停止しなかった
このような証拠がある場合、「広告主は知らなかった」という説明は通りにくくなります。
特に、違法な表現で獲得が伸びていることを認識しながら放置していた場合、明示的な指示がなくても、黙示の共謀が疑われるリスクがあります。
まず行うべきこと:関与していないことを客観的に整理する
警察から事情聴取を求められた場合、最初に行うべきことは、事実関係の整理です。
感情的に「知らない」「関係ない」と主張するだけでは不十分です。
K社が違法記事の作成や掲載に関与していなかったことを、客観的資料に基づいて説明できるようにする必要があります。
今回のケースでは、次の資料を確認しました。
- ASPとの契約書
- 広告代理店との契約書
- アフィリエイト運用に関するメール・チャット
- ASP管理画面の閲覧権限やログ
- 成果承認のフロー
- 広告審査ルール
- 社内の広告チェック記録
- 過去にASPへ送付した法令遵守依頼
- 問題サイトを認識した日時
- 認識後に行った提携解除・掲載停止依頼の記録
- 当該アフィリエイターとの直接連絡の有無
- 特別単価交渉の有無
重要なのは、「知らなかった」という主張を、時系列と証拠で裏付けることです。
警察への対応方針:弁護士意見書で関与の不存在を説明
今回のケースでは、弁護士が意見書を作成し、警察に対して次の点を説明しました。
- K社は、ASPに対して法令遵守を求める契約・運用ルールを設けていた
- 問題となったアフィリエイトサイトの作成者とは直接の接点がなかった
- K社は、当該記事の内容を事前に確認・承認していなかった
- K社が「癌が治る」などの表現を指示した事実はない
- 問題サイトを認識した後、直ちにASPに掲載停止と提携解除を依頼した
- 同様の再発防止策として、アフィリエイト広告の審査体制を強化した
警察対応では、捜査機関に対して不必要に敵対的な姿勢を取るべきではありません。
一方で、事実と異なる疑いに対しては、証拠に基づいて明確に反論する必要があります。
刑事事件を回避できても、行政処分リスクは残る
仮に刑事事件として不起訴になったとしても、それで全てが終わるわけではありません。
薬機法、景品表示法、健康増進法などの広告規制では、行政からの指導、広告中止命令、措置命令、課徴金などのリスクが残ります。
特に景品表示法では、自社が供給する商品の表示について、広告主が責任を問われやすい構造になっています。
アフィリエイト広告であっても、自社商品の販売促進に使われている以上、表示管理体制が不十分であれば、広告主が行政対応を迫られる可能性があります。
また、薬機法についても、健康食品について医薬品的効能効果をうたう広告が出ていた場合、広告主としての管理体制が問題視される可能性があります。
そのため、警察対応と並行して、行政処分リスクを見据えた再発防止策を整える必要があります。
広告主に求められる管理体制
アフィリエイト広告を運用する広告主には、単にASPに任せるだけでなく、実効的な管理体制が求められます。
今回のケースでは、次のような体制を整備しました。
1. アフィリエイト広告の事前審査制
アフィリエイターが自由に記事を公開する方式を改め、事前に広告内容を確認する制度に変更しました。
具体的には、次のルールを設けました。
- アフィリエイターが作成した記事・LPは、公開前にK社へ提出する
- K社または弁護士が薬機法・景品表示法の観点から確認する
- 承認済みの広告だけを掲載可能とする
- 未承認広告から発生した成果は承認しない
- 違反広告を掲載したアフィリエイターは提携解除の対象とする
特に健康食品、サプリメント、化粧品、医薬部外品などは、表現規制が厳しい分野です。
成果報酬型だからといって、広告内容を事後確認だけにする運用は危険です。
2. 禁止表現リストの整備
アフィリエイター向けに、使用禁止表現のリストを作成しました。
例えば、サプリメント広告では、次のような表現を禁止しました。
- 癌が治る
- 糖尿病に効く
- 血圧が下がる
- 医師も認めた治療効果
- 薬をやめられる
- 病院に行かずに改善
- ○日で完治
- 副作用なし
- 体験談として疾病の改善を示す表現
- 医薬品と誤認させる表現
禁止表現リストは、契約書や管理画面に載せるだけでなく、アフィリエイターが実際に理解できる形で配布することが重要です。
3. 定期的なパトロール
公開後の広告についても、定期的に巡回監視を行う体制を構築しました。
具体的には、次の方法を組み合わせました。
- 商品名での検索
- 広告主名での検索
- ASP管理画面上の高成果メディアの確認
- SNSや動画サイトでの商品紹介の確認
- 外部業者による広告パトロール
- 違反疑義サイトのスクリーンショット保存
- 違反発見時の削除依頼・提携解除記録の保存
重要なのは、単に「監視している」と言うだけでなく、監視記録を残すことです。
後に行政や警察から説明を求められた際、いつ、どの範囲を確認し、どのような対応をしたのかを示せるようにしておく必要があります。
4. ASP・代理店との契約改訂
ASPや広告代理店との契約も見直しました。
新たに、次のような条項を追加しました。
- 薬機法、景品表示法、健康増進法、特定商取引法等を遵守する義務
- アフィリエイターにも同等の遵守義務を課す義務
- 広告素材・記事・LPの事前提出義務
- 未承認広告の掲載禁止
- 違反発覚時の即時削除義務
- 違反アフィリエイターの提携解除義務
- 違反広告から発生した成果報酬の不払い
- 広告主が被った損害、弁護士費用、調査費用の賠償義務
- 調査協力義務
- 掲載媒体・アフィリエイター情報の開示義務
契約で責任分担を明確にしておくことは、違反発生時の対応だけでなく、平時の抑止力としても重要です。
5. 成果承認フローの見直し
従来は、売上が発生すれば機械的に成果承認していました。
しかし、違法広告から発生した売上に報酬を支払ってしまうと、違法広告を事実上後押ししていたと評価されるおそれがあります。
そこで、次のような成果承認フローに変更しました。
- 高成果メディアは成果承認前に広告内容を確認する
- 未承認記事からの成果は保留する
- 違反表現が確認された場合は成果否認する
- 違反が重大な場合は提携解除する
- 成果承認・否認の理由を記録する
「成果が出ているから放置する」という運用は、最も危険です。
むしろ、成果が急増している広告ほど、表現が過激になっていないか確認する必要があります。
今回の解決:不起訴となったが、運用体制を全面的に見直し
今回のケースでは、K社が違法記事の作成に関与していなかったこと、当該サイトを認識した後に速やかに掲載停止を求めたこと、ASPに対して法令遵守を求める運用をしていたことなどを説明し、結果としてK社長は不起訴となりました。
もっとも、警察から事情聴取を受けること自体、経営者にとって大きな負担です。
また、不起訴になったからといって、アフィリエイト広告の管理を従来どおりに戻すことはできません。
K社では、その後、アフィリエイト広告を全面的に見直し、事前審査、定期パトロール、契約改訂、成果承認フローの変更を実施しました。
アフィリエイト広告を運用する企業のチェックポイント
サプリメント、健康食品、化粧品、医薬部外品などを扱う企業は、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- アフィリエイターが作成する記事を事前に確認しているか
- ASPや代理店に任せきりになっていないか
- 薬機法・景品表示法上の禁止表現リストを整備しているか
- 「癌が治る」「医師も認めた」などの疾病・治療効果表現を禁止しているか
- 高成果メディアの広告内容を定期的に確認しているか
- 違反広告を発見した場合の削除・提携解除フローがあるか
- 違反対応の記録を残しているか
- ASP・代理店契約に法令遵守義務や損害賠償条項を入れているか
- 未承認広告からの成果を否認できる仕組みがあるか
- 広告審査を弁護士や専門部署が確認する体制があるか
- 警察・行政から連絡があった場合の初動対応フローがあるか
まとめ:アフィリエイト広告は「任せる広告」ではなく「管理する広告」
アフィリエイト広告は、広告主が直接記事を書かなくても、多数の媒体で商品を紹介してもらえる強力な広告手法です。
しかし、その一方で、アフィリエイターが成果を上げるために過激な表現を使うリスクがあります。
特に健康食品やサプリメントについて、疾病の治療・予防効果をうたう表現が使われると、薬機法違反として刑事事件に発展する可能性があります。
「アフィリエイターが勝手に書いた」
「ASPに任せていた」
「広告主は記事を作っていない」
このような説明だけでは、広告主の責任を免れるには不十分です。
広告主としては、アフィリエイト広告を開始する段階から、事前審査、禁止表現リスト、定期パトロール、契約条項、成果承認フローを整備し、違法広告を発生させない仕組みを作る必要があります。
「売れれば何でもいい」という広告運用は、もはや通用しません。
アフィリエイト広告は、強力な集客手段であると同時に、管理を誤れば刑事事件や行政処分につながる諸刃の剣です。
サプリメントや健康食品の広告主は、薬機法・景品表示法に適合した管理体制の下で、慎重に運用することが重要です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
「解約ボタンが見つからない」と消費者センターに通報された定期通販サイトの緊急改修
健康食品やサプリメントの定期通販では、「初回500円」「初回限定価格」「お試し価格」といった訴求がよく使われます。
しかし、初回価格を大きく表示する一方で、定期購入であること、2回目以降の価格、解約条件などを分かりにくく表示している場合、特定商取引法上の問題が生じる可能性があります。
特に、2022年6月に施行された改正特定商取引法により、通信販売の「最終確認画面」における表示義務は大きく強化されました。定期購入であることや解約条件を分かりにくくして購入率を上げるような画面設計は、現在では非常にリスクの高い運用です。
今回は、健康食品D2Cメーカーから相談を受けた事例をもとに、消費者センターから指導を受けた定期通販サイトの問題点と、カートシステムの改修対応について解説します。
相談内容:「解約できない」という相談が消費者センターに多数寄せられた
健康食品D2CメーカーのEC責任者であるJさんから、次のようなご相談を受けました。
当社では、「初回500円」のサプリメント定期コースを販売しています。
先日、消費者センターから連絡があり、「御社のサイトで申し込んだ高齢者から、解約の仕方が分からない、電話もつながらない、これは詐欺ではないかという相談が多数寄せられている」と指導を受けました。
解約方法はLINEまたは電話のみにしており、購入画面では「定期購入」の文字を小さく表示して、CVRを上げる工夫をしていました。
しかし、消費者センターの担当者からは「特商法違反の疑いがある。全額返金に応じるべきだ」と言われています。
当社のサイトは違法なのでしょうか。
Jさんとしては、「利用規約や特商法に基づく表記には定期購入と書いている」「解約方法も記載している」という認識でした。
しかし、通信販売では、単にどこかに記載していれば足りるわけではありません。
特に、注文確定直前の「最終確認画面」で、消費者が契約内容を容易に確認できるように表示しているかが重要です。
法的見解:現在の画面仕様は特商法違反となる可能性が高い
Jさんにカートの最終確認画面を見せてもらったところ、現在の画面仕様は、改正特定商取引法に違反する可能性が高いものでした。
改正特商法では、通信販売の最終確認画面において、消費者が注文確定の直前に、重要な契約条件を簡単に確認できるよう表示することが求められています。
表示すべき主な事項は、次の6項目です。
- 分量
定期購入の場合は、定期コースであること、各回の数量、回数、総量など - 販売価格・対価
初回価格だけでなく、2回目以降の価格、送料、支払総額など - 支払の時期・方法
各回の請求時期、支払方法など - 引渡し・提供時期
初回発送時期、2回目以降の発送時期など - 申込期間
申込期限がある場合、その具体的な期間 - 申込みの撤回・解除に関する事項
解約方法、解約期限、連絡先、違約金や不利益の有無など
消費者庁も、通信販売の最終確認画面では、分量、販売価格、支払時期、引渡時期、申込期間、申込みの撤回・解除に関する事項を簡単に最終確認できるよう表示する必要があり、表示していない場合や誤認させる表示をした場合は特商法違反となると説明しています。
問題点1:「定期購入」であることが分かりにくい
Jさんのサイトでは、ファーストビューに「初回500円」という表示が大きく出ていました。
一方で、「定期購入」「2回目以降も自動で商品が届く」「解約しない限り継続する」といった重要情報は、小さな文字で、画面下部に表示されていました。
このような画面設計では、消費者が「1回限りのお試し購入」と誤認するおそれがあります。
定期購入である以上、最終確認画面では、少なくとも次のような情報を明確に表示する必要があります。
- 定期購入であること
- 何回目まで購入義務があるのか
- 回数縛りがない場合でも、解約しない限り継続すること
- 各回の商品数量
- 各回の発送予定
- 支払総額または一定期間の支払額の目安
「規約に書いてある」「ページの下までスクロールすれば分かる」というだけでは不十分と評価される可能性があります。
問題点2:2回目以降の価格と支払総額が分かりにくい
今回のサイトでは、初回価格である「500円」が大きく強調されていました。
一方で、2回目以降の価格、送料、支払総額は、目立たない場所に小さく表示されていました。
定期通販では、初回価格が安くても、2回目以降の価格が高くなることが少なくありません。
そのため、最終確認画面では、初回価格だけでなく、2回目以降の価格や支払総額を消費者が容易に確認できるようにする必要があります。
例えば、次のような表示が望まれます。
初回:500円(税込)
2回目以降:6,980円(税込)
お届け回数:解約のお申し出がない限り継続
3回受け取った場合の支払総額:14,460円(税込)
送料:各回○○円
初回価格だけを強調し、2回目以降の価格や総額を分かりにくくする画面は、定期購入トラブルの典型例です。
問題点3:解約条件が注文後にしか確認できない
最も問題だったのは、解約条件の表示です。
Jさんのサイトでは、「注文する」ボタンを押した後に、初めて解約条件のリンクが表示される仕様になっていました。
しかし、解約方法や解約期限は、注文確定前に消費者が確認できなければ意味がありません。
特に、定期購入では、解約できる時期、解約方法、連絡先、受付時間などが購入判断に直結します。
最終確認画面では、例えば次の情報を明確に表示する必要があります。
- 解約は次回発送予定日の何日前までに行う必要があるか
- 解約方法は電話、メール、マイページ、LINEなどのいずれか
- 電話番号、受付時間
- LINEでの解約手順
- 解約時に違約金や追加費用が発生するか
- 回数縛りがある場合、途中解約できるか
解約方法を電話やLINEに限定する場合には、その方法が実際に機能していることも重要です。
「電話がつながらない」「LINEの手続が複雑で完了できない」という状態では、表示上は解約可能に見えても、実質的には解約を妨げていると評価されるおそれがあります。
問題点4:「注文する」ボタンの文言が不明確
Jさんのサイトでは、最終確認画面のボタン文言が単に「申し込む」となっていました。
しかし、定期購入であることが分かりにくい画面で「申し込む」とだけ表示すると、消費者は「初回500円の商品を1回だけ申し込む」と誤認する可能性があります。
定期購入の場合には、注文ボタンの文言にも注意が必要です。
例えば、次のような文言に変更することが考えられます。
注文を確定する(定期購入)
または、
定期コースの注文を確定する
ボタン文言だけで全ての説明が足りるわけではありませんが、最終確認画面全体として、消費者が「定期購入を申し込む」と認識できる設計にすることが重要です。
消費者には取消権が認められる可能性がある
改正特商法では、最終確認画面の表示に不備があり、消費者が誤認して申込みをした場合、消費者が申込みの意思表示を取り消せる場合があります。
つまり、事業者が「返品不可」「定期購入なので解約は次回以降」「規約に同意している」と主張しても、最終確認画面の表示が不十分であれば、返金対応が必要になる可能性があります。
今回のケースでは、以下の事情が重なっていました。
- 初回500円の表示が大きく、定期購入であることが分かりにくい
- 2回目以降の価格が目立たない
- 解約条件が注文確定前に十分表示されていない
- 解約方法がLINEまたは電話に限定されている
- 電話がつながりにくいという苦情が多数ある
- 高齢者からの相談が複数寄せられている
このような状況では、消費者センターから返金対応を求められるリスクが高く、個別事案については誠実な解決を優先すべきと判断しました。
消費者センターへの対応:まずは誠実に是正方針を示す
消費者センターから指導を受けた場合、最初に重要なのは、感情的に反論しないことです。
「規約に書いてあるから返金しない」
「購入者が読んでいないだけだ」
「当社のカート仕様は以前からこの形だ」
このような対応をすると、消費者センターとの関係が悪化し、相談件数の増加、消費者庁や都道府県への情報提供、適格消費者団体による差止請求など、より大きな問題に発展するおそれがあります。
今回のケースでは、次の方針を助言しました。
- 現在の最終確認画面に分かりにくい点があったことを認める
- 問題となっている申込みについては、速やかに解約・返金に応じる
- 電話がつながりにくい状況を改善する
- 解約方法を複数用意する
- カートシステムを改修する
- 改修予定と再発防止策を消費者センターに報告する
ここで重要なのは、「返金するかどうか」だけではありません。
今後同じトラブルが発生しないよう、サイトの表示と運用を根本的に改善することです。
カートシステムの改修:最終確認画面で一目で分かる表示にする
根本的な解決のため、Jさんの会社では、カートシステムの最終確認画面を改修しました。
改修の中心は、次の3点です。
改修1:定期購入であることを明確に表示
修正前は、「初回500円」の表示が最も目立ち、「定期購入」の文字は小さく表示されていました。
修正後は、商品名欄や注文内容欄に、次のように明記しました。
商品名:サプリメント定期コース
初回500円、2回目以降6,980円で自動継続する定期購入です。
解約のお申し出がない限り、毎月1回商品をお届けします。
これにより、消費者が注文確定前に「定期購入であること」を認識できるようにしました。
改修2:2回目以降の価格・支払総額を表示
修正後の最終確認画面では、初回価格だけでなく、2回目以降の価格や一定期間の支払額を同じ画面内に表示しました。
初回:500円(税込)
2回目以降:6,980円(税込)
送料:各回○○円
3回受け取った場合の支払総額:14,460円(税込)
支払方法:クレジットカード決済
支払時期:各回の商品発送時に決済
価格を大きく見せる工夫よりも、誤認を防ぐ表示を優先することが重要です。
改修3:解約方法・期限・連絡先を最終確認画面に表示
修正前は、解約条件が注文後のリンクでしか確認できませんでした。
修正後は、最終確認画面内に次のような情報を表示しました。
解約をご希望の場合は、次回発送予定日の10日前までに、マイページ、メール、電話またはLINEからお手続きください。
電話番号:○○-○○○○-○○○○
受付時間:平日10時から17時まで
LINEで解約する場合は、メニュー内の「定期コース解約」からお手続きください。
解約手数料はかかりません。
また、電話がつながらないという苦情が出ていたため、電話以外の解約手段も整備しました。
解約方法を分かりやすくすることは、短期的には解約率を上げるように見えるかもしれません。
しかし、解約できないことによるクレーム、チャージバック、SNS炎上、行政対応のコストを考えると、長期的には事業者にとっても有益です。
注文ボタンの文言を変更
注文ボタンについても、単なる「申し込む」から、次のように変更しました。
注文を確定する(定期購入)
さらに、ボタンの直前に、以下の確認文を追加しました。
上記の定期購入条件、2回目以降の価格、解約方法を確認しました。
これにより、消費者が注文確定前に重要事項を確認しやすい構成にしました。
CVRよりも、クレームを生まない購入体験を優先する
改修にあたり、Jさんは次のように懸念していました。
これだけ定期購入だと大きく書くと、CVRが落ちるのではないでしょうか。
確かに、定期購入であることや2回目以降の価格を明確に表示すれば、短期的には購入率が下がる可能性があります。
しかし、分かりにくい表示で購入数を増やしても、後から大量の解約・返金・チャージバックが発生すれば、事業としては不安定になります。
さらに、消費者センターへの相談が増えれば、行政指導や処分、適格消費者団体からの差止請求、決済代行会社の審査落ちなど、事業継続に直結するリスクが生じます。
定期通販で本当に重要なのは、誤認による購入を増やすことではありません。
商品内容、価格、解約条件に納得した顧客に購入してもらい、長期的な信頼関係を築くことです。
改修後の変化:クレームとチャージバックが減少
カートシステムの改修後、一時的にCVRは低下しました。
しかし、その後、次のような改善が見られました。
- 「定期購入だと思わなかった」という苦情が減少
- 「解約できない」という消費者センターへの相談が減少
- 電話窓口へのクレームが減少
- チャージバックやカード会社への不正利用申請が減少
- 決済代行会社の審査が通りやすくなった
- 顧客対応にかかる社内工数が減少
また、弁護士監修のもとで「特定商取引法に基づく表記」や返品・解約ポリシーも見直し、広告、LP、カート、注文確認メールの表示を統一しました。
これにより、サイト全体として、消費者が契約内容を理解しやすい導線に改善することができました。
定期通販サイトが確認すべきチェックポイント
健康食品、化粧品、サプリメントなどの定期通販を運営する場合、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 最終確認画面に「定期購入」であることを明確に表示しているか
- 初回価格だけでなく、2回目以降の価格を表示しているか
- 支払総額または一定期間の支払額の目安を表示しているか
- 各回の支払時期を表示しているか
- 初回と2回目以降の発送時期を表示しているか
- 解約方法、解約期限、連絡先を注文確定前に表示しているか
- 解約方法が実際に機能しているか
- 電話がつながらない状態を放置していないか
- LINE解約の手続が複雑すぎないか
- 「初回500円」「お試し」などの表示で1回限りと誤認させていないか
- 注文ボタンの文言が定期購入であることと矛盾していないか
- 特商法に基づく表記、利用規約、LP、カート表示の内容が一致しているか
- 注文確認メールにも契約条件を分かりやすく記載しているか
まとめ:定期通販は「解約しやすさ」まで含めて設計する必要がある
定期通販ビジネスでは、初回価格を下げて新規顧客を獲得する手法がよく使われます。
しかし、「定期購入であることを分かりにくくする」「2回目以降の価格を目立たなくする」「解約方法を複雑にする」といった方法で購入率を上げようとすると、特商法違反のリスクが高まります。
特に、最終確認画面では、消費者が注文確定前に次の情報を容易に確認できるようにする必要があります。
- 定期購入であること
- 初回・2回目以降の価格
- 支払時期・方法
- 発送時期
- 申込期間
- 解約方法・解約期限・連絡先
定期通販において、解約のしやすさは単なる顧客サービスではありません。
法令遵守と事業継続のために不可欠な要素です。
小手先のカート設計で購入率を上げても、後から返金、行政対応、決済停止、炎上対応に追われるようでは意味がありません。
健康食品、化粧品、サプリメントなどのD2C通販を運営する事業者は、LP制作やカート改修の段階から、特定商取引法に適合した表示設計になっているかを確認することが重要です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
美容クリニックのビフォーアフター写真は削除すべき?保健所から医療広告ガイドライン違反を指摘された場合の対応
美容クリニックのホームページやInstagramでは、施術前後の変化を示す「ビフォーアフター写真」や症例写真が、集患上重要な役割を果たすことがあります。
しかし、ビフォーアフター写真は、医療広告ガイドライン上、特に注意が必要な広告表現です。
必要な説明が不足したまま掲載していると、保健所から「医療広告ガイドライン違反の疑いがある」として、修正指導や掲載中止を求められることがあります。
今回は、実際に美容外科クリニックから相談を受けた事例をもとに、ビフォーアフター写真を削除せず、医療広告ガイドラインに適合する形で掲載を継続するための対応方法を解説します。
相談内容:保健所から「ビフォーアフター写真を修正・削除するように」と指導された
美容外科クリニックを開業して3年になるI医師から、次のようなご相談を受けました。
ホームページやInstagramに、二重整形や鼻整形などの症例写真を多数掲載していました。
ところが先日、管轄の保健所から連絡があり、「医療広告ガイドライン違反の疑いがあるため、直ちに修正するか、掲載を中止してください」と指導を受けました。
特に「詳しい説明のないビフォーアフター写真は禁止です」と言われています。
しかし、症例写真をすべて削除すると、新規患者の問い合わせが大きく減ってしまうのではないかと不安です。
写真を残したまま、適法に修正する方法はないのでしょうか。
美容医療では、患者が施術を検討する際に症例写真を参考にするケースが多くあります。
そのため、ビフォーアフター写真をすべて削除することは、クリニックの集患に大きな影響を与えかねません。
もっとも、医療広告ガイドラインに違反した状態で掲載を続けると、行政指導にとどまらず、報告命令、立入検査、中止命令などにつながるリスクもあります。
ビフォーアフター写真は「全面禁止」ではない
医療広告ガイドラインでは、治療等の内容や効果について患者に誤認を与えるおそれのあるビフォーアフター写真は、原則として広告できないものとされています。
もっとも、ビフォーアフター写真がすべて禁止されているわけではありません。
術前・術後の写真に、通常必要とされる治療内容、費用、主なリスク・副作用等の詳細な説明を付すことで、広告として掲載できる場合があります。
つまり、問題は「ビフォーアフター写真を載せていること」自体ではなく、写真だけを掲載し、治療内容・費用・リスク・副作用などの重要情報を十分に説明していないことにあります。
今回の違反ポイント:写真の下に「二重埋没法」としか書かれていなかった
I医師のクリニックのホームページを確認したところ、症例写真の下には、次のような簡単な記載しかありませんでした。
二重埋没法
このような表示では、患者にとって次の情報が分かりません。
- どのような施術なのか
- 費用はいくらかかるのか
- 治療期間や通院回数はどの程度か
- どのようなリスクや副作用があるのか
- 腫れや内出血、左右差などが生じる可能性があるのか
特に自由診療の美容医療では、費用やリスク・副作用に関する情報が不足すると、患者が施術内容や効果を誤認するおそれがあります。
そのため、写真の直下に施術名だけを記載する方法は、医療広告ガイドライン上、非常にリスクの高い掲載方法です。
解決策:症例写真ごとに必要情報を追記する
今回のケースでは、症例写真をすべて削除するのではなく、各症例写真の近くに必要な説明を追記する方針を取りました。
必要な情報を別ページにまとめて掲載するだけでは、患者が症例写真を見た際に十分な情報を確認できない可能性があります。
そのため、症例写真のすぐ近くに、患者が見落とさない形で情報を表示することが重要です。
具体的には、各症例写真の下に、以下のような項目を追加しました。
症例写真に併記すべき表示例
施術名
○○式二重埋没法
施術の説明
医療用の糸を使用して、まぶたに二重のラインを形成する施術です。切開を伴わず、患者様のまぶたの状態に応じてデザインを行います。
施術の価格
88,000円(税込)
※モニター価格を表示する場合には、通常価格・適用条件・追加費用の有無も併記します。
治療期間・回数
通常1回の施術です。
施術後の経過確認のため、必要に応じて再診を行う場合があります。
主なリスク・副作用
腫れ、内出血、痛み、感染、左右差、糸の露出、ラインの消失、再施術が必要となる可能性があります。
効果や経過には個人差があります。
ポイントは「リスク・副作用」を正直に書くこと
美容医療の広告では、どうしても「きれいになった」「変化が分かりやすい」といったメリットを前面に出しがちです。
しかし、医療広告ガイドライン上は、良い結果だけを強調し、リスクや副作用を小さく扱うことは問題となり得ます。
ビフォーアフター写真を掲載する場合には、治療内容や費用だけでなく、主なリスク・副作用も分かりやすく表示する必要があります。
特に美容医療では、以下のような記載漏れが起こりやすいため注意が必要です。
- 「腫れ」「内出血」だけでなく、感染や左右差なども記載しているか
- ダウンタイムの目安を記載しているか
- 効果には個人差があることを記載しているか
- 未承認医薬品・未承認医療機器を使用する場合に必要な説明をしているか
- モニター価格を表示する場合に、通常価格や条件を明示しているか
「ネガティブな情報を書くと患者が離れるのではないか」と考えて記載を避けると、かえって医療広告ガイドライン違反のリスクが高まります。
InstagramやSNSの症例写真にも注意が必要
今回のクリニックでは、ホームページだけでなくInstagramにも多数の症例写真が掲載されていました。
SNS投稿であっても、医療機関名や施術内容が分かり、患者の来院を誘引する内容であれば、医療広告として規制対象になり得ます。
そのため、Instagramの症例投稿についても、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 写真だけを掲載していないか
- 施術内容、費用、治療期間・回数、リスク・副作用を記載しているか
- 投稿文の中で効果を断定していないか
- 「必ず変わる」「誰でも自然に仕上がる」などの誇大表現がないか
- 写真を加工・修正していないか
- ハッシュタグやプロフィール欄の記載を含めて、全体として誤認を招かないか
ホームページを修正しても、SNSに違反表示が残っていると、引き続き指導対象となる可能性があります。
サイト全体の広告表現も併せてチェック
保健所から指導を受けた場合、問題はビフォーアフター写真だけとは限りません。
今回も、ホームページ全体を確認したところ、次のような表現が見つかりました。
NG表現1:「地域No.1」「最高峰の技術」
「地域No.1」「最高峰」「トップクラス」「最高水準」などの表現は、他の医療機関と比較して自院が優れていると受け取られる可能性があります。
客観的な根拠がないまま使用すると、比較優良広告や誇大広告として問題となるおそれがあります。
修正例
修正前
地域No.1の美容外科クリニック
最高峰の技術で理想の二重を実現
修正後
二重施術に対応している美容外科クリニックです。
患者様のまぶたの状態やご希望を踏まえ、施術方法をご提案します。
NG表現2:「キャンペーン!今だけ半額」
「今だけ半額」「期間限定キャンペーン」「大幅割引」などの表現は、医療広告において慎重な検討が必要です。
価格の安さを過度に強調すると、患者の冷静な判断を妨げる広告と評価される可能性があります。
また、モニター価格やキャンペーン価格を掲載する場合には、通常価格、適用条件、期間、追加費用の有無などを明確に表示する必要があります。
修正例
修正前
今だけ半額キャンペーン実施中!
修正後
モニター価格:88,000円(税込)
通常価格:132,000円(税込)
対象条件:症例写真の掲載に同意いただける方
適用期間:2026年○月○日から2026年○月○日まで
追加費用の有無:診察料・麻酔代を含みます。
NG表現3:患者の体験談をホームページに掲載している
美容医療では、患者の口コミや体験談を掲載したくなることがあります。
しかし、医療広告では、患者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告は禁止されています。
仮に内容が事実であっても、治療効果に関する体験談を自院のホームページやSNSに掲載することは避けるべきです。
修正方針
- 治療効果に関する体験談はホームページから削除する
- 「二重になって人生が変わりました」などの主観的感想は掲載しない
- 口コミサイトの内容を自院HPに転載しない
- Googleマップ等の口コミへの誘導も、表示方法によっては慎重に検討する
- 接遇や設備に関する一般的な感想であっても、治療効果と結び付かないよう注意する
保健所への改善報告も重要
ホームページやSNSの修正が完了した後は、保健所に対して改善内容を報告しました。
今回のケースでは、弁護士が以下の内容を整理した改善報告書を作成しました。
- 指摘を受けた掲載箇所
- 修正前の表示内容
- 修正後の表示内容
- 医療広告ガイドライン上の検討内容
- 今後の再発防止策
- SNS投稿を含めた確認体制
単に「修正しました」と伝えるだけではなく、法令・ガイドラインを理解したうえで、適切に対応したことを示すことが重要です。
その結果、今回のケースでは、追加の立入検査や中止命令に進むことなく、行政指導への対応を完了することができました。
美容クリニックが医療広告で注意すべきチェックポイント
美容クリニックのホームページやLP、SNSを運用する際には、少なくとも以下の点を確認する必要があります。
- ビフォーアフター写真に、治療内容・費用・治療期間・回数・リスク・副作用を併記しているか
- 症例写真の近くに必要情報を表示しているか
- 費用を「○円〜」だけで表示していないか
- リスクや副作用を小さすぎる文字で表示していないか
- 写真の加工・修正により効果を強調していないか
- 「No.1」「最高」「絶対安全」などの表現を使っていないか
- 患者の体験談を掲載していないか
- SNS投稿も医療広告ガイドラインに適合しているか
- モニター価格やキャンペーン価格の条件を明確にしているか
- 保健所から指導を受けた場合の対応記録を残しているか
まとめ:ビフォーアフター写真は「削除」ではなく「適法な表示設計」が重要
美容クリニックのビフォーアフター写真は、医療広告ガイドライン上、慎重な対応が必要です。
しかし、必要な情報を適切に表示すれば、症例写真を活用しながら、患者にとって有益な情報提供を行うことは可能です。
重要なのは、次の3点です。
- 写真ごとに、治療内容・費用・治療期間・回数・リスク・副作用を分かりやすく表示すること
- 「地域No.1」「最高峰」「今だけ半額」など、誤認や過度な誘引につながる表現を避けること
- 保健所から指導を受けた場合には、速やかに修正し、改善報告まで丁寧に行うこと
美容医療の広告は、集患上重要である一方、医療広告ガイドライン、医療法、景品表示法、薬機法など、複数の規制が関係します。
自己判断で対応すると、修正したつもりでも違反状態が残ってしまうことがあります。
ホームページ、LP、Instagram、リスティング広告などを制作・公開する段階から、広告法務に詳しい弁護士によるチェックを受けることが、クリニック経営の安定につながります。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
リスティング広告で競合他社名をキーワード登録した事例
1 相談内容
BtoBサービスを提供する会社のマーケティング担当者から、リスティング広告の運用について相談を受けた事例です。
同社では、検索連動型広告の運用において、競合会社であるH社の社名やサービス名をキーワードとして登録し、入札していました。H社のサービス名で検索したユーザーに自社広告を表示し、比較検討の候補に入れてもらうためです。
ところが、H社の代理人弁護士から内容証明郵便が届きました。そこには、「当社の登録商標を無断で使用しており、商標権侵害に当たる。直ちにキーワード登録を削除し、損害賠償を支払え」と記載されていました。
| 項目 | 内容 |
| 相談者 | BtoBサービス提供会社のマーケティング担当者 |
| 問題となった広告 | Google広告等の検索連動型広告 |
| 登録したキーワード | 競合H社の社名・サービス名 |
| 相手方の主張 | 商標権侵害、キーワード削除、損害賠償 |
| 相談者の認識 | 競合名への入札はマーケティング上よくある手法 |
| 主な論点 | キーワード登録が商標法上の「使用」に当たるか |
2 法的見解:キーワード登録だけなら、商標権侵害とはいえない可能性が高い
結論からいうと、競合他社の社名やサービス名を、リスティング広告の管理画面上でキーワードとして登録する行為だけで、直ちに商標権侵害が成立する可能性は高くありません。
検索連動型広告に関する裁判例では、他社の商標をキーワードとして検索した検索結果ページに広告を掲載する行為について、商標法上の「標章の使用」に該当すると認めることは難しいと判断された例があります。
その理由は、キーワード登録は広告配信の条件設定にすぎず、通常、ユーザーの画面上に他社商標が表示されるわけではないからです。商標法上問題となるのは、商標が商品・サービスの出所を示す表示として使用され、需要者に混同を生じさせるような場合です。
| 行為 | 商標権侵害リスク |
| 管理画面で競合名をキーワード登録するだけ | 原則として低い |
| 競合名で検索したユーザーに自社広告を表示する | 広告内容次第 |
| 広告文に競合名を表示する | 高い |
| 「公式」「提携」「認定」などと誤認させる | 非常に高い |
| リンク先ページで競合名を比較・批判的に使用する | 内容次第で商標法・不正競争防止法・景表法リスク |
| 競合ロゴを無断使用する | 高い |
そのため、本件でG社が行っていた「H社名をキーワードとして登録し、検索時にG社広告を表示させる」という行為だけをもって、H社の削除請求や損害賠償請求が当然に認められるとはいえません。
3 注意すべきは「広告文」と「リンク先ページ」
もっとも、キーワード登録が比較的安全だからといって、リスティング広告全体が無条件に安全というわけではありません。
実務上、最も問題になりやすいのは、検索結果画面に表示される広告文のタイトルや説明文です。他社商標を検索キーワードとして設定する行為自体は原則として商標権侵害には当たらないと解される一方で、広告文やリンク先ページで他社を装う表示、公式・正規・認定・提携などと誤認させる表示を行うことがリスクの核心とされています。
たとえば、次のような広告文は危険です。
| 危険な広告文 | 問題点 |
| H社公式パートナーはこちら | 提携・公式関係があるように誤認させる |
| H社より高機能なG社サービス | 他社商標を広告文で使用し、比較広告リスクもある |
| H社からの乗り換えならG社 | 他社商標を誘引目的で使用している |
| H社導入をご検討の方へ | H社名を広告文で使用して集客している |
| H社代替サービスならG社 | 比較・代替表示として商標・不競法・景表法上の検討が必要 |
一方で、次のような広告文であれば、H社名が表示されていないため、商標権侵害リスクは相対的に低くなります。
| 比較的安全な広告文 | 留意点 |
| BtoB業務管理ツールならG社 | 他社名を出していない |
| 業務効率化を支援するクラウドサービス | 一般的なサービス説明 |
| 導入実績多数の法人向けSaaS | 根拠資料は必要 |
| 無料トライアル受付中 | 表示内容の正確性に注意 |
本件では、広告文を確認したところ、タイトル・説明文にはH社名やH社サービス名は含まれていませんでした。リンク先ページにもH社名、H社ロゴ、H社サービスとの比較表は掲載されていませんでした。そのため、少なくとも商標権侵害として損害賠償義務を負うリスクは高くないと判断しました。
4 自動挿入機能・動的広告には注意
G社では明示的にH社名を広告文に入れていませんでしたが、リスティング広告では、意図しない表示が発生することがあります。
特に注意すべきなのは、次のような機能です。
| 機能・設定 | リスク |
| キーワード挿入機能 | 検索語句や登録キーワードが広告文に自動挿入されることがある |
| 動的検索広告 | サイト内容に基づき広告見出しが自動生成されることがある |
| 部分一致 | 想定外の競合名・関連語句で広告が表示されることがある |
| 自動作成アセット | 広告文が自動生成・補完されることがある |
| LP内比較ページ | 広告文に出なくてもリンク先で他社商標を使っている場合がある |
リスティング広告では、部分一致の設定により、意図せず競合他社の商品名・サービス名で広告が表示される場合があります。
そのため、G社には、H社名やH社サービス名を広告文に表示させないだけでなく、自動挿入機能や動的広告の設定を確認し、必要に応じてH社名を除外キーワードや広告文禁止語として管理するよう助言しました。
5 H社への回答方針
H社代理人からの内容証明を無視することは避けるべきです。法的に反論可能な場合でも、無視すれば、相手方が広告プラットフォームに通報したり、SNSや業界内で問題化したり、訴訟前提の対応に進んだりする可能性があります。
そこで、G社には、弁護士名で次の趣旨の回答書を送付しました。
当社は、貴社商標を広告文、広告見出し、説明文またはリンク先ページにおいて、出所表示として使用しておりません。
検索連動型広告におけるキーワード設定は、広告配信条件の設定にすぎず、需要者に対して貴社商標を表示するものではありません。そのため、当該キーワード設定自体が商標法上の商標の使用に該当し、商標権侵害を構成するとの貴社主張には理由がないものと考えます。
また、当社広告は、貴社または貴社サービスと当社との間に、提携、代理、認定、公式関係その他の営業上の関係があるかのような表示をしておらず、出所の混同を生じさせるものではありません。
したがって、当社は、貴社のキーワード削除請求および損害賠償請求には応じかねます。
回答書では、必要以上に挑発的な表現は避けつつ、次の点を明確にしました。
- キーワード登録自体は商標的使用ではないこと
- 広告文にH社商標を表示していないこと
- 出所混同を生じさせる表示はないこと
- 損害賠償請求には応じられないこと
- 今後も広告文にH社商標を使用しないよう管理すること
このように回答した結果、H社側は、法的請求としての追及を継続することは困難と判断し、損害賠償請求を取り下げました。
6 ただし、ビジネス上は「勝てばよい」とは限らない
法的には反論可能であっても、競合名への入札を続けることがビジネス上合理的かは別問題です。
G社がH社名に入札し続ければ、H社も対抗してG社名に入札する可能性があります。すると、両社のブランド名検索で広告枠の競争が発生し、クリック単価が上昇します。結果として、互いに本来安く獲得できた見込み顧客に高い広告費を支払うことになり、消耗戦になりがちです。
| 継続した場合のリスク | 内容 |
| CPC高騰 | 競合入札によりクリック単価が上がる |
| 広告費の消耗 | 比較検討層の奪い合いで費用対効果が悪化 |
| 相互報復 | H社もG社名に入札する |
| 営業関係悪化 | 業界団体、代理店、共通顧客との関係に影響 |
| 法務コスト | 警告書対応、プラットフォーム対応、訴訟リスク |
| ブランド毀損 | 「競合に便乗している」と見られる可能性 |
広告運用の世界では、競合名入札は珍しい手法ではありません。しかし、BtoBサービスでは市場が狭く、顧客、代理店、業界団体、展示会などで競合と接点を持つことも多いため、法的に可能でも、長期的には得策でない場合があります。
7 紳士協定という解決策
最終的に、G社とH社は、弁護士を通じて次のような合意をしました。
| 合意内容 | 目的 |
| 相互に相手方社名・サービス名を入札対象にしない | 広告費の消耗戦を避ける |
| 相手方商標を広告文に使用しない | 商標・混同リスクを避ける |
| 相手方名を除外キーワードに設定する | 意図しない表示を防ぐ |
| 違反を発見した場合は、まず相手に通知する | いきなり通報・訴訟に進まない |
| 一定期間内に修正対応する | 運用ミスに対応する余地を残す |
このような合意は、法的義務として当然に求められるものではありません。しかし、両社が広告費を無駄に消耗しないための実務的な解決策として有効です。
8 社内広告運用ルールの整備
G社には、今後のトラブルを避けるため、リスティング広告運用ルールを整備してもらいました。
| チェック項目 | 内容 |
| 競合名キーワード | 入札の可否を事前承認制にする |
| 広告文 | 他社商標・サービス名を原則使用禁止にする |
| 比較広告 | 法務確認なしに出稿しない |
| 動的広告 | 自動挿入・自動生成設定を確認する |
| 除外キーワード | 競合名・誤認を招く語句を管理する |
| LP確認 | リンク先ページで他社商標を使っていないか確認する |
| 証跡保存 | 広告文、配信設定、変更履歴を保存する |
| 警告書対応 | 受領後すぐに法務・弁護士へ共有する |
特に、広告文で他社商標を使用する場合には、商標権だけでなく、不正競争防止法、景品表示法、比較広告ガイドライン、プラットフォーム規約の確認が必要です。
9 解決結果
本件では、G社の広告文・リンク先ページにH社名は表示されておらず、管理画面上のキーワード登録にとどまっていました。そのため、H社からの商標権侵害・損害賠償請求には応じない方針を取りました。
一方で、今後の相互入札による広告費高騰を避けるため、G社とH社は協議のうえ、互いの社名・サービス名を入札対象にしない運用に切り替えました。
| 対応 | 結果 |
| 広告文の確認 | H社名の表示なし |
| リンク先ページの確認 | H社名・比較表・ロゴ表示なし |
| 弁護士名で回答 | 商標権侵害・損害賠償請求を否定 |
| H社の請求 | 実質的に取り下げ |
| 今後の運用 | 相互に競合名入札を停止 |
| 社内ルール | 競合名入札・広告文チェックを制度化 |
10 弁護士のコメント
リスティング広告で競合他社の社名やサービス名をキーワード登録することは、マーケティング実務では珍しくありません。法的にも、キーワード登録だけで直ちに商標権侵害になるとは限りません。
しかし、広告文やリンク先ページに他社商標を表示する場合は、話が大きく変わります。特に、「公式」「認定」「提携」「乗り換え」「比較」「代替」などの表現と他社商標が組み合わさると、商標権侵害、不正競争防止法違反、景品表示法上の誤認表示が問題になる可能性があります。
また、法的に勝てるとしても、競合入札は広告費の消耗戦になりやすい手法です。BtoBサービスでは、単に「違法ではないか」だけでなく、顧客獲得単価、ブランドイメージ、業界内の関係性、将来の提携可能性まで含めて判断する必要があります。
実務上は、次の整理が有効です。
- 競合名をキーワード登録するだけなら、商標権侵害リスクは比較的低い
- 広告文・見出し・説明文に競合名を出す場合は、法務確認が必要
- 動的検索広告や自動挿入機能で意図せず競合名が表示されないようにする
- 比較広告を行う場合は、根拠資料、公正な比較方法、誤認防止表示を準備する
- 警告書を受けた場合は無視せず、広告設定を確認したうえで回答する
- 必要に応じて、競合との相互不入札の合意も検討する
「広告管理画面の中だけの設定」と「ユーザーに見える広告表示」は、法的評価が大きく異なります。この違いを理解して運用することが、リスティング広告の商標トラブルを避ける基本です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
画像生成AIで作成した広告イラストが「人気アニメに似ている」と炎上した事例と対応
1 相談内容
ゲームアプリ開発会社のプロデューサーから、新作ゲームのSNS広告に使用したAI生成イラストについて相談を受けた事例です。
同社は、新作ゲームのプロモーション用に画像生成AIを利用し、キャラクター風のイラストを作成しました。その画像をSNS広告として配信したところ、ユーザーから次のような指摘が相次ぎました。
- 「人気アニメの〇〇のキャラにそっくり」
- 「これはトレースではないか」
- 「AIで既存キャラをパクったのでは」
- 「ゲーム会社として権利意識が低すぎる」
プロデューサーとしては、特定の作品名やキャラクター名をプロンプトに入力したわけではなく、既存作品を模倣する意図もなかったため、「依拠性がない以上、著作権侵害ではないのではないか」と考えていました。
| 項目 | 内容 |
| 相談者 | ゲームアプリ開発会社のプロデューサー |
| 問題となった素材 | 画像生成AIで作成したキャラクターイラスト |
| 利用媒体 | SNS広告 |
| 発生した問題 | 人気アニメのキャラクターに似ているとの指摘・炎上 |
| 会社側の認識 | 特定作品を模倣する意図はなかった |
| 主なリスク | 著作権侵害、差止請求、損害賠償、炎上、ブランド毀損 |
2 法的見解:AI生成物でも、著作権侵害の判断枠組みは変わらない
AI生成物であっても、人間が描いたイラストであっても、著作権侵害の基本的な判断枠組みは同じです。
文化庁の資料では、あるコンテンツの作成や利用が既存の著作物の著作権侵害となるかは、そのコンテンツを人が作成したか、AIにより生成されたかにかかわらず、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」があるかによって判断されるとされています。
類似性とは、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できることをいいます。単に「雰囲気が似ている」「作風が似ている」「アイデアが共通している」というだけでは足りず、創作的表現が共通しているかが問題になります。
依拠性とは、既存の著作物に接して、それを自らの作品の中に用いることです。AI生成物についても、この要件は不要になるわけではありません。
| 要件 | 意味 | 本件での確認ポイント |
| 類似性 | 既存著作物の表現上の本質的特徴を直接感得できるか | キャラの髪型、衣装、配色、ポーズ、装飾、表情等が創作的に共通するか |
| 依拠性 | 既存著作物に接して、それを利用したといえるか | プロンプト、参考画像入力、担当者の認識、AI学習データ、生成過程 |
| 利用行為 | 複製、公衆送信、翻案等に当たるか | SNS広告として配信したこと |
| 権利制限 | 私的使用等に当たるか | 広告利用であり、通常は私的利用とはいえない |
3 「AIが勝手に似せた」は安全な反論ではない
本件で最も注意すべきなのは、「AIが勝手に生成したので当社に責任はない」という説明が、法的にも広報的にも安全とはいえない点です。
文化庁の資料では、AI生成物の場合の依拠性について、次のように整理されています。
- AI利用者が既存の著作物を認識していた場合
- AI利用者は既存の著作物を認識していないが、当該既存著作物がAI学習に用いられていた場合
- AI利用者が既存著作物を認識しておらず、かつAI学習にも用いられていなかった場合
このうち、AI利用者が既存の著作物を認識していなくても、その著作物がAI学習に用いられていた場合には、通常、依拠性があると推認されるという考え方が示されています。
また、AI利用者が既存著作物を認識していたといえる事情として、既存の著作物そのものを画像入力する場合や、既存作品のタイトル・キャラクター名などの特定の固有名詞をプロンプトに入力する場合が挙げられています。
| 事情 | 依拠性リスク |
| 既存キャラ画像を画像入力した | 非常に高い |
| 作品名・キャラ名・作家名をプロンプトに入れた | 高い |
| 担当者が既存作品を参考資料として共有していた | 高い |
| 生成物が既存作品と高度に類似している | 依拠性推認のリスク |
| AIの学習データに既存作品が含まれていた可能性 | 依拠性が推認される可能性 |
| プロンプトや生成過程を保存していない | 反論が困難 |
| 画像検索・類似性確認をしていない | 過失・管理不備と評価されやすい |
そのため、会社側が「プロンプトでは指定していない」と説明できたとしても、それだけでリスクがなくなるわけではありません。少なくとも、生成過程、プロンプト、使用したAIサービス、参考資料、社内レビュー履歴を確認し、既存作品との類似性を慎重に検討する必要があります。
4 商用広告での利用はリスクが高い
今回のAI生成画像は、社内検討用ではなく、SNS広告として外部に配信されていました。
文化庁の資料でも、AI生成物の生成自体が適法に行える場合でも、生成物をさらに利用しようとする場合には、著作権侵害を生じさせないか確認する必要があるとされています。特に、生成物の利用段階では、インターネットを介した送信等が既存著作物の権利侵害となり得ます。
ゲーム会社の広告画像は、単なる社内利用よりも、次の点でリスクが大きくなります。
| リスク | 内容 |
| 拡散性 | SNS広告は短時間で広範囲に拡散する |
| 商用性 | ゲームの集客・売上に直結する |
| 権利者の反応 | アニメ・ゲーム業界ではキャラクター権利管理が厳格 |
| ユーザー感情 | ファンコミュニティが敏感に反応する |
| 証拠化 | 炎上投稿や広告画像がスクリーンショットで残る |
| 二次被害 | 不買運動、レビュー荒らし、メディア報道につながる |
5 炎上対応:法的反論より先に広告を止めるべき
本件では、法的に著作権侵害が成立するかどうかの判断には時間がかかります。一方で、炎上は即時に拡大します。
ユーザーが「そっくりだ」と感じ、SNS上で比較画像が拡散されている状態で、会社が「法的には問題ありません」と強気に反論すると、かえって「開き直っている」「反省していない」と受け止められるおそれがあります。
そこで、F社には、次の対応を助言しました。
- 問題のSNS広告を即時停止する
- 広告画像を公式サイト・LP・アプリ内告知等からも削除する
- プロンプト、生成履歴、社内レビュー資料を保全する
- 類似性について社内外で再確認する
- 必要に応じて権利者側への説明・連絡を検討する
- 公式リリースで再発防止策を示す
この段階では、侵害を全面的に認める必要はありません。しかし、少なくとも、既存作品との類似性を指摘されたことを重く受け止め、ユーザーや関係者に不安・不快感を与えたことについて説明する必要があります。
6 謝罪・説明リリースの方針
F社には、次のトーンでリリースを作成するよう助言しました。
| 記載事項 | 内容 |
| 事実関係 | プロモーション画像に画像生成AIを使用したこと |
| 意図の説明 | 特定の作品・キャラクターを模倣する意図はなかったこと |
| 類似性指摘への対応 | 指摘を受け、広告配信を停止したこと |
| チェック体制の不備 | 既存作品との類似性確認が十分でなかったこと |
| 謝意・お詫び | ユーザーおよび関係者に不快感・不安を与えたことへの謝罪 |
| 再発防止 | AI生成物の利用ルール、確認フロー、レビュー体制を整備すること |
| 今後の対応 | 当該画像を使用しないこと、キャラクターデザインを変更すること |
7 リリース文案
当社が配信した新作ゲームのプロモーション画像について、既存作品のキャラクターとの類似性を指摘するご意見を多数いただいております。
当該画像は、制作工程の一部に画像生成AIを利用して作成したものです。当社として、特定の作品またはキャラクターを模倣する意図はなく、社内確認においてもそのような指示を行った事実は確認されておりません。
もっとも、広告素材として公開するにあたり、既存作品との類似性に関する確認が十分でなかった点は否定できず、ユーザーの皆様および関係者の皆様にご不安・ご不快の念をおかけしたことをお詫び申し上げます。
当社は、当該画像を使用した広告配信を停止し、今後当該画像を使用いたしません。また、対象キャラクターのビジュアルについては改めて制作・確認を行います。
今後は、生成AIを利用した素材制作に関する社内ガイドラインを整備し、既存作品との類似性確認、制作過程の記録保存、法務確認を徹底することで、再発防止に努めてまいります。
このようなリリースは、著作権侵害を全面的に自認するものではありません。一方で、ユーザーの懸念を軽視せず、会社として広告停止と再発防止に動いていることを示すものです。
8 強気に出る場合のリスク
F社が「法的に問題ない」と強く主張し続けた場合、次のリスクがありました。
| リスク | 内容 |
| 炎上拡大 | ユーザーから「開き直り」と受け止められる |
| 権利者対応 | 権利者が差止請求・警告書・声明を出す可能性 |
| メディア化 | ゲームメディアやまとめサイトで拡散 |
| 不買運動 | 事前登録・課金意欲の低下 |
| 採用・取引影響 | イラストレーター、声優、IPホルダーとの関係悪化 |
| 訴訟リスク | 類似性・依拠性が争点化し、長期化 |
| 証拠不利 | プロンプトや生成過程を保存していない場合、説明が困難 |
特にゲーム・アニメ領域では、法的結論だけでなく、ファンコミュニティの信頼が重要です。たとえ最終的に著作権侵害とまでは認定されない場合でも、炎上対応を誤ると、作品や会社のブランドに長期的なダメージが残ります。
9 今後のAI利用ガイドライン
F社では、今後も生成AIを活用したい意向があったため、社内ガイドラインを策定しました。
(1)禁止事項
| 禁止事項 | 理由 |
| 既存作品名・キャラクター名・作家名をプロンプトに入れる | 依拠性を推認されやすい |
| 既存キャラクター画像を画像入力する | 依拠性・類似性リスクが高い |
| 「〇〇風」「特定作家風」等の指定をする | 作風・表現模倣トラブルの原因 |
| 生成物を確認せず広告・SNSに使用する | 類似性・権利侵害を見落とす |
| プロンプトや生成履歴を削除する | 後日説明できなくなる |
| 主要キャラクターやキービジュアルにAI生成物をそのまま使う | 権利関係・著作物性・ブランド面のリスクが高い |
(2)利用時の必須フロー
| ステップ | 内容 |
| 1 | 利用目的を分類する:社内検討用か、外部公開用か |
| 2 | 使用するAIサービスの利用規約・商用利用条件を確認する |
| 3 | プロンプト、生成日時、生成結果、編集履歴を保存する |
| 4 | 生成物をGoogle画像検索、SNS検索、画像類似検索で確認する |
| 5 | 法務・知財担当が既存作品との類似性を確認する |
| 6 | 広告・キービジュアル等の重要素材は人間のイラストレーターに再制作させる |
| 7 | 公開後の指摘窓口と削除判断フローを決めておく |
(3)AI利用を避けるべき素材
| 素材 | 理由 |
| メインキャラクター | 作品の核となるため、権利帰属・独自性が重要 |
| キービジュアル | 広告露出が大きく、炎上時の影響が大きい |
| 課金アイテム画像 | 商用利用性が高く、紛争時の損害が大きい |
| コラボ企画素材 | 他社IPとの関係で特に慎重な確認が必要 |
| 長期利用予定の素材 | 将来の権利関係が不安定になりやすい |
10 解決結果
F社は、問題となったSNS広告を即時停止し、当該画像を今後使用しないことを決定しました。あわせて、公式リリースで、AI生成画像を使用した事実、特定作品を模倣する意図はなかったこと、類似性確認が不十分だったこと、再発防止策を公表しました。
結果として、一定の批判は残ったものの、「悪意あるパクリ」としての炎上は沈静化し、ゲーム本体への影響を最小限に抑えることができました。その後、問題となったキャラクタービジュアルは人間のイラストレーターにより再制作し、社内の法務・知財レビューを経て公開しました。
| 対応 | 結果 |
| SNS広告停止 | 炎上拡大を抑制 |
| 公式リリース | 意図の否定と再発防止を説明 |
| 画像差替え | 類似性リスクを排除 |
| プロンプト等の保全 | 将来の説明資料を確保 |
| 社内ガイドライン策定 | AI利用のルールを明確化 |
| 法務レビュー導入 | 外部公開素材の事前確認を義務化 |
11 弁護士のコメント
生成AIは、ゲーム開発や広告制作において強力なツールです。しかし、特にキャラクターイラストの領域では、既存作品との類似性が問題になりやすく、法的リスクと炎上リスクが重なります。
「AIが勝手に作った」「プロンプトで指定していない」という説明だけでは、十分な防御になりません。文化庁の整理でも、AI生成物については、既存著作物との類似性と依拠性があれば、通常の著作権侵害と同様に問題となり得ます。
企業がAI生成物を外部公開・広告利用する場合には、少なくとも次の対応が必要です。
- プロンプトと生成履歴を保存する
- 特定作品名・キャラ名・作家名を入力しない
- 既存画像を画像入力しない
- 画像検索・類似性チェックを行う
- 主要ビジュアルは人間のクリエイターによる制作・修正を入れる
- 法務・知財部門の確認を経てから公開する
- 炎上時の停止・説明・差替えフローを事前に決めておく
AIは便利ですが、商用利用する以上、「AIだから責任が軽くなる」わけではありません。むしろ、生成過程が見えにくいからこそ、企業側には記録保存、確認体制、説明責任が求められます。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
楽天市場で二重価格表示を指摘された事例
1 相談内容
ECサイト運営会社の店長から、楽天市場の商品ページで行った二重価格表示について相談を受けた事例です。
同社は楽天スーパーセールに合わせ、目玉商品として、次のような表示を行いました。
通常価格10,000円
セール価格5,000円
50%OFF
ところが、楽天のコンプライアンス部門から「不当な二重価格表示の疑いがある」と警告を受け、商品ページが削除されました。店長は、最悪の場合、違反点数の付与、商品掲載制限、アカウント停止、退店処分につながるのではないかと不安を抱き、相談に来られました。
| 項目 | 内容 |
| 相談者 | ECサイト運営会社の店長 |
| 出店先 | 楽天市場 |
| 問題となった表示 | 「通常価格10,000円→セール価格5,000円(50%OFF)」 |
| 指摘者 | 楽天コンプライアンス部門 |
| 楽天側の対応 | 商品ページ削除 |
| 主なリスク | 有利誤認表示、モール内ペナルティ、措置命令、課徴金 |
| 相談者の認識 | 他店も同様の表示をしているのに、なぜ自社だけ指摘されたのか |
2 法的見解:販売実績のない「通常価格」は使えない
二重価格表示とは、販売価格と、これより高い価格を併記して、販売価格の安さを強調する表示です。二重価格表示それ自体が直ちに違法になるわけではありません。
しかし、比較対照価格として表示する「通常価格」「当店通常価格」「セール前価格」などが実態と異なる場合、消費者に「通常より大幅に安い」と誤認させるおそれがあり、景品表示法上の不当表示、特に有利誤認表示として問題になります。
消費者庁は、価格表示は商品・サービス選択上最も重要な情報の一つであり、価格表示が適正に行われない場合には消費者の選択を誤らせることになるとして、二重価格表示に関する考え方を示しています。ウェブ
価格表示ガイドラインでは、同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とする場合には、不当表示に該当するおそれはない一方で、そのような価格とはいえない価格を比較対照価格に用いる場合には、内容を正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあるとされています。ウェブ
本件で問題となったのは、10,000円という「通常価格」に実績がなかったことです。
3 8週間ルールと2週間要件
過去の販売価格を比較対照価格として使う場合、実務上重要なのが、いわゆる「8週間ルール」です。
一般に、セール開始時点からさかのぼる直近8週間のうち、過半の期間、すなわち4週間以上、その価格で販売されていた場合には、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と評価されやすいとされています。ウェブ
また、これに加えて、当該価格での販売期間が通算2週間以上あること、最後にその価格で販売された日から2週間以上経過していないことも重要です。ウェブ
| 要件 | 内容 |
| 直近8週間の過半 | セール開始前8週間のうち、過半の期間その価格で販売していたこと |
| 通算2週間以上 | 比較対照価格での販売期間が通算2週間以上あること |
| 最終販売日から2週間以内 | その価格で最後に販売した日から2週間以上経過していないこと |
| 同一商品であること | 比較対象価格は同一商品の価格であること |
| 実際の販売価格であること | 架空の価格や一時的な見せかけ価格ではないこと |
楽天市場でも、「当店通常価格」は、最近相当期間にわたって楽天市場のショップにおいて販売されていた価格を指し、直近2週間でその価格での販売実績があることに加え、過去8週間のうち合計4週間その価格で販売実績がある、または販売期間が8週間未満の場合には販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があることが条件と説明されています。ウェブ
4 本件の問題点
E社に販売履歴を確認したところ、10,000円で販売していたのは、セール直前の1週間だけでした。それ以前は、実際には6,000円前後で販売されており、10,000円で継続的に販売していた実績はありませんでした。
つまり、10,000円は実質的には「セール用に作った元値」であり、景品表示法上も、楽天市場のルール上も、比較対照価格として表示するには極めて危険な価格でした。
| 確認事項 | 実際の状況 | 評価 |
| 10,000円での販売期間 | セール直前の1週間のみ | 通算2週間要件を満たさない |
| 直近8週間での販売実績 | 過半に満たない | 8週間ルールを満たさない |
| 通常販売価格 | 実際は6,000円前後 | 10,000円を通常価格とする根拠が弱い |
| 50%OFF表示 | 10,000円を前提に算出 | 消費者に過大な割引感を与える |
| 楽天側対応 | 商品ページ削除 | モール規約違反として扱われる可能性 |
このような表示を見た消費者は、「通常は10,000円で販売されている商品が、今だけ5,000円で買える」と理解します。しかし、実際には10,000円で販売されていた実績が十分でなければ、その割引率は実態よりも大きく見せていることになります。
5 「他店もやっている」は理由にならない
相談者は、「他の店舗も同じような表示をしている」と話していました。
しかし、他店が同じような表示をしているように見えても、実際には販売実績を満たしている可能性があります。また、仮に他店も違反しているとしても、自社の違反が免責されるわけではありません。
ECモールでは、競合店からの通報、ユーザーからの問い合わせ、モール側の自動検知、セール前審査などによって、不当表示が発見されることがあります。特に大型セール時は、モール側も行政処分や消費者トラブルを避けるため、監視を強化する傾向があります。
したがって、「業界慣行」「他店もやっている」「売上のために必要」という理由で、実績のない通常価格を表示することは非常に危険です。
6 楽天への弁明と改善報告
楽天市場などのプラットフォームでは、景品表示法違反の疑いがある表示に対して、行政処分に至る前に自主的に商品ページの削除、掲載制限、違反点数、契約解除等の対応を行うことがあります。
楽天市場の二重価格表示に関する解説でも、違反がある場合、ランキング掲載制限、検索順位低下、媒体掲載制限、一時的な改装中措置、違反金徴収、契約解除などにつながり得るとされています。ウェブ
本件では、楽天側に対して、言い訳を重ねるのではなく、事実を認めたうえで、原因分析と再発防止策を提出する方針を取りました。
| 対応項目 | 内容 |
| 事実確認 | 販売履歴を確認し、10,000円での販売実績が不足していたことを認定 |
| 違反可能性の認識 | 二重価格表示ルールの理解不足を説明 |
| 原因分析 | 担当者の知識不足、販売実績確認フローの不存在を整理 |
| 即時対応 | 問題表示の削除、同種表示の全件点検 |
| 改善計画 | 二重価格表示チェックシートの導入 |
| 再発防止 | セール前に法務・責任者承認を必須化 |
| 証跡保存 | 販売履歴、価格変更履歴、承認記録を保存 |
楽天側への報告では、次のようなトーンを取りました。
当社において販売実績を再確認した結果、当該商品について比較対照価格として表示した10,000円の販売実績が、貴社ルールおよび価格表示ガイドライン上求められる水準を満たしていない可能性があることを確認しました。
当社の確認体制が不十分であったことを重く受け止め、当該表示を停止し、同種商品の表示についても全件点検を行います。
今後は、二重価格表示チェックシートに基づき、販売実績を確認できた商品に限り、責任者承認を経てセール表示を行う運用に改めます。
ポイントは、「知らなかった」「他店もやっている」と反論するのではなく、モール側が安心できる具体的な改善策を示すことです。
7 行政処分リスク
今回は楽天からの警告で済みましたが、同じ表示が消費者庁や都道府県の調査対象になれば、措置命令や課徴金納付命令のリスクがあります。
景品表示法に違反した場合、措置命令により、一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策、同様の違反行為を行わないことなどが命じられる可能性があります。また、課徴金納付命令の対象となる場合、課徴金対象期間の売上額に一定率を乗じた金額が課されることがあります。ウェブ
2024年10月施行の改正景品表示法では、確約手続の導入、課徴金制度の見直し、優良誤認表示や有利誤認表示に対する直罰規定の新設なども整備されています。
EC事業者にとって、景品表示法違反は単なる広告表現の問題にとどまりません。モール内評価、検索順位、セール参加資格、アカウント継続、社名公表、課徴金に直結し得る重大なリスクです。
8 二重価格表示チェックシートの導入
E社には、今後、セール前に必ず確認するチェックシートを導入しました。
| チェック項目 | 確認内容 |
| 商品同一性 | 比較対照価格とセール価格の商品が同一か |
| 比較対照価格の種類 | 当店通常価格、メーカー希望小売価格、参考小売価格等のどれか |
| 販売履歴 | 直近8週間の価格推移を確認したか |
| 販売期間 | 比較対照価格で過半期間販売していたか |
| 2週間要件 | 通算2週間以上その価格で販売していたか |
| 最終販売日 | 最後にその価格で販売した日から2週間以上経過していないか |
| セール期間 | 二重価格表示を継続できる期間を確認したか |
| 証跡保存 | RMS販売履歴、価格変更ログ、スクリーンショットを保存したか |
| 承認者 | 店長または法務担当が承認したか |
| 代替表現 | 要件を満たさない場合の別表現を検討したか |
あわせて、セール後も二重価格表示を継続しすぎないよう、セール期間中も8週間ルールを満たし続けているかを確認する運用にしました。セール開始時点で条件を満たしていても、長期間セールを続けると、過去8週間の過半がセール価格での販売期間になり、通常価格を比較対照価格として表示し続けることが難しくなるためです。ウェブ
9 二重価格に頼らない販促表現への転換
E社には、今後のセール戦略として、二重価格表示に過度に依存しない販促方法を提案しました。
| 危険な表示例 | 問題点 | 代替表現例 |
| 通常価格10,000円→5,000円 | 通常価格の実績が必要 | スーパーセール期間中 5,000円 |
| 50%OFF | 元値の根拠が必要 | 期間限定特別価格 |
| 当店通常価格より半額 | 通常価格の販売実績が必要 | クーポン利用で5,000円 |
| メーカー希望小売価格10,000円 | 公表された希望小売価格が必要 | ポイント○倍対象 |
| 業界最安値 | 競合価格調査が必要 | 送料無料・即日発送 |
二重価格表示を使わなくても、販促手法はあります。
- クーポン配布
- ポイント還元
- 送料無料
- セット販売
- 期間限定特別価格
- 数量限定販売
- レビュー特典
- リピーター限定割引
- メルマガ限定クーポン
- ポイントアップキャンペーン
これらの表現も景品表示法やモール規約に注意する必要はありますが、販売実績のない通常価格を作って「50%OFF」と表示するより、リスクを大幅に下げられます。
10 解決結果
本件では、E社が速やかに問題表示を削除し、楽天側に対して販売実績不足を認めたうえで、具体的な改善計画を提出しました。その結果、退店処分には至らず、当該商品ページの削除と改善指導にとどめる方向で収束しました。
さらに、E社ではセール前の広告表示チェックを顧問弁護士と行う運用に切り替え、販促カレンダー、クーポン企画、ポイント施策、LP表現を事前に確認する体制を整えました。
| 対応 | 結果 |
| 問題表示の削除 | 即時対応 |
| 楽天への改善報告 | 再発防止策を提出 |
| 退店処分 | 回避 |
| 同種商品の点検 | 全商品ページを確認 |
| チェックシート導入 | セール前の確認を義務化 |
| 販促戦略 | 二重価格依存からクーポン・ポイント施策へ移行 |
| 顧問契約 | 広告表示・セール企画を継続的に確認 |
11 弁護士のコメント
EC事業者にとって、「通常価格10,000円→5,000円」「50%OFF」という表示は非常に強い訴求力があります。しかし、その元値に販売実績がなければ、消費者に実際以上のお得感を与える表示になり、景品表示法上もモール規約上も大きなリスクになります。
特に楽天市場などのモールでは、景品表示法違反の疑いがある店舗を放置すれば、モール全体の信頼にも関わります。そのため、モール側は出店者に対して厳格なチェックとペナルティを課します。
「他店もやっている」「セールでは普通」という感覚ではなく、販売履歴を根拠に説明できるかが重要です。二重価格表示を行う場合は、必ず販売実績、価格変更履歴、販売期間、スクリーンショットを保存し、社内で承認を取ってから掲載すべきです。
一方で、売上を作るために必ず二重価格表示を使わなければならないわけではありません。クーポン、ポイント還元、期間限定特別価格、送料無料など、法的リスクを抑えながら訴求できる方法はあります。
EC事業では、広告表現の一つのミスが、商品ページ削除、セール参加停止、アカウント停止に直結します。セール前の表示チェックを仕組み化することが、売上を守るための最も現実的なリスク管理です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
ホームページ画像の無断使用を指摘された事例
1 相談内容
不動産会社の広報担当者から、自社ホームページに掲載している画像について、写真家を名乗る人物の代理人弁護士から内容証明郵便が届いたという相談を受けた事例です。
内容証明には、「当社のホームページに、写真家が著作権を有する写真が無断で掲載されている。広告目的で使用されているため、損害賠償金として100万円を支払うよう求める」と記載されていました。
相談者としては、ホームページ制作は前年にフリーランスのデザイナーへ依頼しており、画像についても「商用利用可能なフリー素材を使用している」と説明を受けていたため、自社が無断使用をしたという認識はありませんでした。ところが、そのデザイナーとは連絡が取れなくなっており、画像の入手元や利用条件を確認できない状態でした。
| 項目 | 内容 |
| 相談者 | 不動産会社の広報担当 |
| 問題となった媒体 | 自社ホームページ |
| 請求者 | 写真家の代理人弁護士 |
| 請求内容 | 写真の無断使用を理由とする損害賠償100万円 |
| 制作経緯 | フリーランスデザイナーにHP制作を外注 |
| 相談者の認識 | 商用利用可能なフリー素材と聞いていた |
| 問題点 | デザイナーと連絡が取れず、権利処理の証拠がない |
2 法的見解:まず画像は速やかに削除すべき
最初に行うべき対応は、問題の画像を速やかに削除することです。
仮に、後で「自社に過失がない」と主張できる余地があるとしても、権利者から具体的な指摘を受けた後に掲載を続けると、故意または少なくとも過失があると評価されるリスクが高まります。
写真は著作物として保護されます。インターネット上で簡単に取得できる画像であっても、撮影者の著作物であり、無断で使用すると差止請求や損害賠償請求に発展する可能性があります。
そのため、D社には、相手方への反論・交渉とは別に、まず該当画像をホームページから削除し、キャッシュ、SNS投稿、広告バナー、過去のLP、チラシPDFなど、同じ画像を使用している可能性がある媒体を洗い出すよう助言しました。
3 「デザイナーに任せていた」は万能の免責理由ではない
相談者は、「騙されたのは当社であり、悪いのはデザイナーではないか」と疑問を持っていました。
この感覚は自然です。しかし、著作権者から見れば、自分の写真がD社のホームページに掲載され、広告として利用されているという事実が重要です。制作会社やデザイナーに外注していたという事情は、D社とデザイナーとの内部関係にすぎません。
もっとも、広告主が常に必ず損害賠償責任を負うとまではいえません。損害賠償請求では、原則として故意または過失が問題となるためです。実際に、広告主が広告制作会社から提供を受けた写真を使用した事案で、広告主に過失がないとして損害賠償責任を否定した裁判例も紹介されています。
他方で、広告主側の責任が肯定された裁判例もあります。たとえば、商品パッケージのデザインを外部委託したところ、第三者のイラストに依拠したデザインが使われた事案では、販売会社が業として商品を販売していた以上、イラスト作成経過を確認するなどして権利侵害を回避すべきであったとして過失が認められています。
つまり、ポイントは「外注していたかどうか」ではなく、D社がどの程度確認すべき立場にあり、実際にどのような確認をしていたかです。
| 事情 | D社に有利に働く可能性 | D社に不利に働く可能性 |
| デザイナーに制作を外注 | 専門業者に任せたとの主張が可能 | 丸投げで確認していないと評価され得る |
| 商用利用可能と聞いていた | デザイナーの説明を信頼した事情 | 口頭のみで証拠がないと弱い |
| 素材の出典リストがない | — | 権利確認体制が不十分と見られやすい |
| 広告・営業目的で掲載 | — | 商用利用として損害額が高くなりやすい |
| 指摘後すぐ削除 | 損害拡大防止の姿勢を示せる | 削除前の掲載期間は問題として残る |
| 同種画像を多数使用 | — | 管理体制全体の問題と見られる可能性 |
4 相手方の100万円請求はそのまま受け入れるべきではない
次に、相手方が主張する100万円という金額が妥当かを検討しました。
著作権侵害の損害額は、実務上、当該写真を正規に使用した場合のライセンス料相当額、逸失利益、掲載態様、掲載期間、媒体の性質、商用利用の程度などを踏まえて検討されます。
著作権侵害の損害額については、請求額と裁判所が認める金額に大きな差が出ることがあります。たとえば、著作権侵害を理由に高額請求がされた事案でも、裁判所が認めた賠償額は大幅に低くなるケースがあるため、請求額をそのまま鵜呑みにせず交渉することが重要とされています。
写真のWeb掲載に関する裁判例でも、原告が高額な損害賠償を請求したのに対し、裁判所は、掲載期間、使用目的、商業的価値、使用料の逓減などを考慮し、請求額より大幅に低い損害額を認定した例があります。
そこで、本件でも次の事情を整理し、相手方の請求額を精査しました。
| 減額交渉で確認した事項 | 確認内容 |
| 写真の権利者性 | 請求者が本当に著作権者か、権利譲渡・管理権限があるか |
| 写真の同一性 | D社掲載画像が相手方写真と同一または実質的に同一か |
| 掲載期間 | いつからいつまで掲載されていたか |
| 掲載場所 | トップページか、下層ページか、広告LPか |
| 画像サイズ | メインビジュアルか、装飾的な小画像か |
| 商用性 | 直接集客に使われたか、単なる背景素材か |
| 使用料相場 | ストックフォト、同種写真、写真家の通常料金 |
| クレジット表示 | 氏名表示が必要な素材だったか |
| 故意・過失 | 権利処理済みと聞いていた事情があるか |
| 指摘後対応 | 削除、謝罪、再発防止策の有無 |
5 交渉方針:早期削除と謝罪を前提に、適正額での和解を目指す
本件では、D社が画像の入手元やライセンス証跡を示せない以上、全面的に争うよりも、早期に削除し、権利者に謝意を示したうえで、金額を適正水準まで下げる交渉が現実的と判断しました。
ただし、相手方の100万円という金額は、1枚の画像使用として高額である可能性がありました。そこで、相手方に対し、権利者性と損害額の根拠資料の開示を求めつつ、D社側の事情を説明しました。
| 交渉上の主張 | 内容 |
| 故意ではない | フリー素材と説明を受けていた |
| 指摘後速やかに削除 | 損害拡大防止に努めた |
| 使用態様は限定的 | 掲載場所・サイズ・期間を確認し過大評価を争う |
| 使用料相当額を基準にすべき | 懲罰的な高額請求は妥当でない |
| 早期解決の意向 | 訴訟ではなく和解で解決する意思を示す |
| 再発防止策 | 素材管理フローを整備することを説明 |
その結果、D社は100万円全額を支払うのではなく、掲載期間や使用態様を踏まえた一定の和解金を支払う方向で交渉を進めました。
6 デザイナーへの求償・責任追及
権利者との関係ではD社が対応せざるを得ないとしても、最終的な原因がデザイナーの無断使用や不適切な権利処理にある場合、D社はデザイナーに対して求償や損害賠償請求を検討できます。
特に、契約書、メール、見積書、チャット履歴などに「商用利用可能なフリー素材を使用する」「権利処理済み素材を使用する」といった記載が残っていれば、デザイナーの契約違反や説明義務違反を主張しやすくなります。
| デザイナーへの請求で確認すべき資料 | 内容 |
| 業務委託契約書 | 権利保証条項、損害賠償条項の有無 |
| 見積書・発注書 | 制作範囲、素材費、権利処理の記載 |
| メール・チャット | 商用利用可能素材と説明した証拠 |
| 納品データ | 画像ファイル名、メタデータ、制作過程 |
| 請求書・振込記録 | デザイナーの住所、氏名、口座情報 |
| 過去のやり取り | 素材の出典を尋ねた記録 |
デザイナーと連絡が取れない場合でも、契約時の住所、振込先口座、請求書記載情報、メールアドレス、SNSアカウント、事業者登録情報などから、所在確認を試みる余地があります。所在が判明すれば、内容証明郵便による請求、支払督促、少額訴訟、通常訴訟などを検討します。
もっとも、デザイナーに資力がない場合や所在不明の場合には、回収可能性が低くなるため、費用対効果を見極める必要があります。
7 再発防止策:外注契約と素材管理フローを見直す
今回の根本原因は、ホームページ制作を外注する際に、素材の権利処理について契約書・納品管理・社内確認が不十分だったことです。
LegalOnナレッジでも、ホームページ制作やコンテンツ制作のように成果物を完成させる業務については、業務委託契約として契約内容を明確にしておくことが重要です。LegalOnナレッジ +1
D社には、今後の外注契約書に、少なくとも次の条項を入れるよう助言しました。
8 契約書に入れるべき条項例
受託者は、本件成果物および本件成果物に含まれる文章、写真、イラスト、動画、フォント、プログラムその他一切の素材について、第三者の著作権、著作者人格権、商標権、肖像権、パブリシティ権その他一切の権利を侵害しないことを保証する。
受託者は、本件成果物に第三者が権利を有する素材を使用する場合、事前に当該素材の出典、利用条件、ライセンス範囲および権利者の許諾内容を委託者に書面で開示し、委託者の承諾を得なければならない。
本件成果物または使用素材について第三者から権利侵害の主張、警告、請求、訴訟その他の紛争が生じた場合、受託者は自己の責任と費用においてこれを解決し、委託者に損害、費用または負担を生じさせないものとする。
前項の紛争により委託者に損害、弁護士費用、調査費用、和解金、賠償金その他の負担が生じた場合、受託者はこれを全額賠償する。
9 納品時に提出させるべき「使用素材リスト」
契約書だけでなく、実務運用も重要です。今後は、納品時に使用素材リストの提出を義務付けるべきです。
| 項目 | 記載内容 |
| 素材番号 | 社内管理番号 |
| 素材の種類 | 写真、イラスト、動画、フォント、アイコン等 |
| 使用箇所 | トップページ、物件紹介ページ、LP等 |
| 出典URL | 素材サイト、購入ページ、作者ページ |
| 権利者・作者 | 氏名、法人名、アカウント名 |
| ライセンス種別 | 有料素材、無料素材、CCライセンス、自社撮影等 |
| 商用利用可否 | 可否、条件、禁止事項 |
| 加工可否 | トリミング、色変更、合成の可否 |
| クレジット要否 | 表記が必要か |
| 証跡 | 購入履歴、利用規約PDF、スクリーンショット |
| 利用期限 | 期間制限の有無 |
特に「フリー素材」という言葉には注意が必要です。無料で取得できる素材であっても、著作権が放棄されているとは限りません。商用利用、改変、広告利用、ロゴ・人物写真の利用、クレジット表記、再配布禁止など、素材サイトごとに条件が異なります。
10 社内チェック体制の整備
D社には、ホームページや広告物を公開する前に、広報部門だけでなく法務・総務部門も含めて素材権利を確認するフローを導入するよう助言しました。
| フロー | 実施内容 |
| 制作発注時 | 権利保証条項を含む契約書を締結 |
| 制作中 | 主要ビジュアルの出典を随時確認 |
| 納品時 | 使用素材リストと証跡を受領 |
| 公開前 | 社内でライセンス条件を確認 |
| 公開後 | 素材リストと掲載ページを紐づけて保存 |
| 更新時 | 過去素材の再利用可否を再確認 |
| 警告受領時 | 速やかに削除・証拠保全・弁護士相談 |
11 解決結果
本件では、D社は問題画像を速やかに削除し、相手方に対して誠実に対応しました。そのうえで、請求額100万円については、権利者性、使用料相場、掲載期間、掲載場所、故意ではない事情を踏まえて減額交渉を行いました。
最終的には、訴訟に発展することなく、一定額の和解金を支払うことで解決を目指す方針となりました。あわせて、デザイナーに対しては、契約関係資料と送金記録をもとに所在確認を進め、求償請求の可能性を検討しました。
| 対応項目 | 結果 |
| 画像削除 | 指摘後速やかに実施 |
| 相手方対応 | 弁護士を通じて回答 |
| 請求額 | 100万円からの減額交渉を実施 |
| 訴訟リスク | 早期和解により低減 |
| デザイナー対応 | 所在確認・求償請求を検討 |
| 再発防止 | 契約書・素材リスト・社内確認フローを導入 |
12 弁護士のコメント
ホームページ制作や広告制作では、「フリー素材を使っています」「権利処理済みです」という一言だけで安心してしまうケースが少なくありません。しかし、著作権トラブルが起きた場合、まず表に出るのは広告主です。
外注先が悪い場合でも、権利者との関係では、掲載している企業が削除対応や交渉の窓口にならざるを得ません。広告主に過失がないと主張できる場合もありますが、そのためには、制作会社に権利確認を求めていたこと、権利処理済みと説明を受けていたこと、合理的に信頼できる事情があったことを示す証拠が必要です。
今後、企業が取るべき対策は明確です。
- 外注契約書に権利保証・補償条項を入れる
- 使用素材リストと証跡を必ず提出させる
- フリー素材の商用利用条件を社内でも確認する
- 主要ビジュアルは有料素材または自社撮影を優先する
- 指摘を受けたら、まず削除し、掲載継続による損害拡大を避ける
「デザイナーに任せたから大丈夫」ではなく、「任せたことを証明できる契約書と素材管理資料を残しているか」が重要です。著作権トラブルは、発生後の交渉よりも、発注時の契約と納品時の証跡管理で防ぐ方がはるかに低コストです。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
「顧客満足度No.1」表示を競合他社から警告された事例
SaaS系IT企業の広報担当者から、自社サービスのランディングページに掲載しているNo.1表示について相談を受けた事例です。
同社は、自社サービスの広告LPで、次のような表示を使用していました。
- 「顧客満足度No.1」
- 「経営者が選ぶツールNo.1」
- 「導入をおすすめしたいSaaS No.1」
これらの表示は、インターネット広告で見つけたリサーチ会社に約300万円を支払い、調査報告書を納品してもらったうえで掲載していたものでした。
ところが、競合他社の代理人弁護士から内容証明郵便が届きました。そこには、同社のNo.1表示は客観的根拠を欠く不当表示であり、景品表示法上の優良誤認表示に当たる可能性があるため、直ちに表示を停止しなければ消費者庁への通報を検討する、という趣旨の警告が記載されていました。
| 項目 | 内容 |
| 相談者 | SaaS系IT企業の広報担当者 |
| 問題となった表示 | 「顧客満足度No.1」「経営者が選ぶツールNo.1」等 |
| 調査費用 | 約300万円 |
| 調査実施者 | 外部リサーチ会社 |
| 警告者 | 競合他社の代理人弁護士 |
| 主なリスク | 景品表示法違反、措置命令、課徴金、社名公表、広告停止による売上減少 |
相談者は、「リサーチ会社の調査結果があるのに、なぜ違法と言われるのか」「広告を止めるとリード獲得が落ちるので困る」と強く懸念していました。
1 法的見解:問題は「No.1」そのものではなく、根拠とのズレ
No.1表示自体が直ちに違法になるわけではありません。
しかし、No.1表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際の商品・サービスよりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認されるおそれがあり、景品表示法上の不当表示として問題となります。
LegalOnナレッジでも、優良誤認表示とは、事業者が一般消費者に対して行う商品・サービスの品質、規格その他の内容に関する表示のうち、実際のものより著しく優良であると示すもの、または事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると示すもので、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示と整理されています。LegalOnナレッジ
本件で問題となったのは、No.1という表現そのものではなく、表示内容と調査内容が対応していなかったことです。
2 報告書を確認して判明した問題点
リサーチ会社の調査報告書を確認したところ、問題の原因はすぐに判明しました。
調査は、実際に同社サービスを利用した顧客を対象にしたものではありませんでした。調査対象者は、一般のWebモニターであり、同社サービスや競合サービスの利用経験を確認しないまま、各社のWebサイトを見せて印象を聞く形式でした。
つまり、実態は「サイトイメージ調査」でした。
| 表示 | 消費者が受ける印象 | 実際の調査内容 | 問題点 |
| 顧客満足度No.1 | 実際の顧客が利用後に満足度を評価した | サイトを見た未利用者が印象で回答 | 表示と調査が対応していない |
| 経営者が選ぶツールNo.1 | 経営者が実際に比較・選定した | 経営者属性の確認が不十分なWebモニター調査 | 調査対象者が不適切 |
| おすすめしたいSaaS No.1 | 利用経験や専門的判断に基づく推奨 | LP閲覧後の印象回答 | 客観的根拠が弱い |
| 導入企業満足度No.1 | 導入企業への調査結果 | 導入経験を問わない一般調査 | 実利用者調査ではない |
消費者庁の実態調査報告書では、イメージ調査とは、対象商品・サービスや比較対象のWebサイトを閲覧させ、その印象に基づいて回答させる調査をいうと説明されています。そして、「満足度No.1」を訴求する表示の根拠としてイメージ調査のみが実施されているケースは、景品表示法上問題となるおそれがあるとされています。
また、「サイトイメージ調査」「本調査はサイトのイメージをもとにアンケートを実施しています」「本ブランドの利用有無は聴取していません」といった注記があっても、「顧客満足度No.1」という表示内容と調査結果が適切に対応していないことに変わりはなく、問題となるおそれがあるとされています。
3 「リサーチ会社に頼んだから大丈夫」ではない
相談者が最も驚いたのは、リサーチ会社に高額な費用を支払い、調査報告書まで受け取っていたにもかかわらず、広告主側に法的責任が残るという点でした。
消費者庁の調査でも、多くの広告主が、調査会社がインターネット上でアンケートを実施していることは把握していた一方で、どのような質問をしていたか、比較対象となる競合他社がどのように選ばれていたか、回答者がどの範囲を見てイメージを回答したか等を十分に把握していなかったことが指摘されています。
No.1表示を行う事業者は、調査会社の報告書を受け取るだけでは足りません。広告主自身が、表示内容に見合う合理的根拠があるかを確認する必要があります。
| 確認項目 | 確認すべき内容 |
| 調査対象者 | 実際の利用者か、属性確認は適切か |
| 比較対象 | 主要な競合サービスが含まれているか |
| 質問内容 | 誘導的・恣意的な質問になっていないか |
| 調査時期 | 表示時点と整合しているか |
| 表示との対応 | 「満足度」「顧客」「経営者」等の文言と調査内容が合っているか |
| 注記 | 一般消費者に明瞭か、主表示の誤認を打ち消せるか |
| 根拠資料 | 行政や競合から求められた際に提出できるか |
消費者庁は、不当なNo.1表示等の防止に向けて、表示の根拠となる情報の確認、共有、管理担当者の設定、事後確認のための措置、不当表示が明らかになった場合の迅速かつ適切な対応など、事業者が講ずべき管理上の措置を徹底すべきとしています。
4 競合他社への回答戦略
競合他社からの内容証明郵便を放置すれば、実際に消費者庁や公正取引協議会等へ通報される可能性があります。また、競合他社がプレスリリースや訴訟を検討する可能性も否定できません。
そこで、まずは問題となるNo.1表示を一時停止するよう助言しました。売上への影響は懸念されましたが、措置命令や社名公表に発展した場合のレピュテーションリスクの方が大きいと判断したためです。
そのうえで、相手方弁護士に対し、次のようなトーンで回答しました。
| 回答方針 | 内容 |
| 違法性の全面自認は避ける | 将来の損害賠償請求や行政対応への影響を抑える |
| 指摘を真摯に受け止める | 紛争拡大・通報を抑止する |
| 調査方法を再確認した旨を伝える | 社内対応を行ったことを示す |
| 表示を自主的に停止した旨を通知 | 行政処分リスクを低減する |
| 今後の表示改善を説明 | 再発防止姿勢を示す |
回答書では、「貴職のご指摘を受け、当社において表示内容および調査方法を再検証した結果、一般消費者に誤認を与える可能性を慎重に考慮し、当該表示を自主的に停止しました」という表現を用いました。
重要なのは、全面的に景表法違反を認めるのではなく、紛争予防と消費者保護の観点から自主的に対応したという建付けにすることです。これにより、相手方の通報意欲を下げ、行政処分に発展する前に事態を沈静化させることを目指しました。
5 適法な広告表示への切り替え
広告を止めたままではリード獲得に影響が出るため、No.1表示に代わる訴求表現を検討しました。
まずは、外部調査に頼らず、自社で客観的に裏付けられる実績データに基づく表現へ切り替えました。
| 従前の表示 | 問題点 | 切替後の表現例 |
| 顧客満足度No.1 | イメージ調査に基づく可能性 | 継続率○% |
| 経営者が選ぶツールNo.1 | 調査対象者の属性確認が不十分 | 導入企業○社突破 |
| おすすめしたいSaaS No.1 | 利用経験のない回答者の印象調査 | 月間利用ユーザー数○万人 |
| サポート満足度No.1 | 実利用者調査ではない | 平均初回返信時間○分 |
| 業界人気No.1 | 比較対象が不明確 | ○○業界の導入企業○社 |
このように、主観的評価によるNo.1表示から、導入社数、継続率、利用者数、対応時間など、検証可能なファクトベースの表示に変更しました。
ただし、これらの表現も、根拠資料が必要です。たとえば「導入企業数○社」と表示する場合は、集計基準、対象期間、有料契約のみか無料トライアルを含むかなどを明確にしておく必要があります。
6 真正な第三者調査を行う場合のチェックポイント
将来的にNo.1表示を再開したい場合には、表示内容に対応した適切な調査を行う必要があります。
消費者庁の報告書では、主観的評価によるNo.1表示が合理的根拠と認められるためには、比較対象となる商品・サービスの適切な選定、調査対象者の適切な選定、公平な調査方法、表示内容と調査結果の適切な対応が必要と整理されています。
| 要件 | 実務上の確認ポイント |
| 比較対象の適切性 | 市場における主要競合を除外していないか |
| 調査対象者の適切性 | 実際の利用者を対象にしているか |
| 公平な調査方法 | 自社に有利な選択肢順、誘導質問、途中終了がないか |
| 表示との対応 | 「顧客満足度」と表示するなら実顧客の満足度調査か |
| 調査会社の独立性 | 利害関係や調査設計の透明性に問題がないか |
| 証拠保全 | 調査票、回答データ、集計方法、競合選定資料を保存しているか |
| 注記の明瞭性 | 調査時期、対象者、比較対象、調査機関を明瞭に表示しているか |
特に、「顧客満足度No.1」と表示する場合は、少なくとも対象サービスを実際に利用したことがある者でなければ、そのサービスに満足したかどうかを適切に判断できません。対象サービスを利用したことがない者や、利用経験の有無を確認せずに調査対象者を選定している場合は、合理的根拠に基づくとはいえないとされています。
7 リサーチ会社への対応
本件では、リサーチ会社が「景表法上問題のないNo.1表示が可能」と説明していたにもかかわらず、実際の調査内容は広告表示に耐えるものではありませんでした。
そこで、同社に対しては、契約内容、提案資料、営業時の説明、納品された報告書、調査設計の妥当性を確認し、調査費用の返還または一部返金を求める交渉を開始しました。
| 検討事項 | 内容 |
| 契約上の義務 | 景表法適合性についてどのような説明・保証があったか |
| 説明義務違反 | 調査の限界や使用可能な表示範囲を説明していたか |
| 報告書の品質 | 表示内容に対応する調査設計だったか |
| 損害 | 広告停止、修正費用、弁護士費用、信用低下リスク |
| 返金交渉 | 調査費用の全部または一部返還を請求できるか |
なお、景品表示法上、直接処分を受ける中心は広告主ですが、調査会社の責任が一切問題にならないわけではありません。特に、景表法に適合する調査であるかのように説明して契約を獲得していた場合には、契約上・民事上の責任を検討する余地があります。
8 解決結果
同社は、問題となるNo.1表示を速やかに停止し、競合他社への回答書を送付しました。その結果、競合他社からの追加警告や消費者庁への通報は確認されず、措置命令や社名公表に至ることなく事態を収束させることができました。
広告面では、No.1表示を一時的に取り下げたうえで、継続率、導入社数、利用者数、サポート対応実績など、客観的な社内データに基づく訴求に切り替えました。その結果、LPの訴求力を一定程度維持しながら、景品表示法リスクを大きく下げることができました。
| 解決内容 | 結果 |
| No.1表示の一時停止 | 行政通報リスクを低減 |
| 競合他社への回答 | 紛争拡大を回避 |
| 表示内容の修正 | ファクトベースの訴求へ変更 |
| 社内審査フロー | 広告公開前の法務チェックを導入 |
| 調査会社対応 | 調査費用返還交渉を開始 |
| 行政処分 | 措置命令・社名公表なし |
9 弁護士のコメント
「お金を払ってリサーチ会社に調査してもらったから大丈夫」という考え方は、現在のNo.1表示規制では非常に危険です。
特に、「顧客満足度No.1」「人気No.1」「おすすめしたいNo.1」といった表示は、消費者に対して、実際の利用者や適切な属性の回答者による評価であるとの印象を与えます。にもかかわらず、実態がサイトイメージ調査にすぎない場合、表示内容と調査結果が対応しておらず、優良誤認表示として問題になる可能性があります。
No.1表示を使う場合は、少なくとも次の点を確認すべきです。
- 表示文言と調査項目が対応しているか
- 実際の利用者を対象にしているか
- 比較対象となる主要競合が適切に含まれているか
- 回答を誘導する設計になっていないか
- 調査対象者、調査時期、調査機関、比較対象を明瞭に注記しているか
- 調査票、集計データ、競合選定資料を保存しているか
- 調査会社の営業文句を鵜呑みにせず、自社で根拠を確認しているか
No.1表示は、短期的には強い広告効果があります。しかし、根拠の弱いNo.1表示は、競合からの警告、消費者庁への通報、措置命令、課徴金、社名公表という大きなリスクを伴います。
広告表現は、止めるか出すかの二択ではありません。適法な根拠に基づく表現へ組み替えれば、売上への影響を抑えながらリスクを下げることができます。No.1表示を使う前に、調査設計と表示文言が景品表示法上耐えられるかを確認することが、結果的には最もコストの低いリスク管理です。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
