Archive for the ‘広告関連法務’ Category

体験談・口コミを広告に使う際の落とし穴

2025-09-13

「〇〇を使って人生が変わりました!」「たった1週間で効果を実感!」「家族にも勧めています」

こうした体験談や口コミは、企業が自ら語るよりもはるかに説得力を持つため、広告や販促において非常に効果的です。しかし、消費者に誤解を与えるような使い方をすると、景品表示法違反(優良誤認表示)やステマ規制に抵触するリスクがあるため、注意が必要です。

1 体験談も「表示」として景品表示法の対象になる

景品表示法では、企業が行う広告表現において「実際のものより著しく優良である」と消費者に誤認される表示は禁止されています。そして、体験談・口コミも広告内で使えば“表示”としてこの規制の対象となります。

特に以下のような使い方はNGの典型です。

①個人の体験談を紹介しつつ、それが誰にでも再現できるかのように見せる

②一部の好意的意見だけを抜粋して表示し、実態より良い印象を与える

③実在しない人物による架空の体験談を掲載する

④効果に関する記述に科学的根拠がない(例:「2週間でウエスト5cm減」)

このような表現は、広告主の責任において根拠資料の保存・説明が求められ、行政処分の対象となるおそれもあります。

2 ステマ規制の適用対象にも注意

2023年の景品表示法改正により、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)が表示規制の対象に明確化されました。企業が報酬を支払って提供された体験談や口コミを、あたかも第三者の自然な発信であるかのように見せることは、違法表示とされる可能性があります。

特に次のような場合には注意が必要です。

①無料提供したモニターの声を「一般の顧客の感想」として表示する

②インフルエンサーに報酬や商品を提供して投稿してもらいながら、「#PR」「広告」といった明示をしていない

③企業が内容を監修・編集している口コミを、“自主的投稿”のように扱う

これらはいずれも、「広告であることがわかるように表示していない」=不当表示とみなされる可能性があるため、表示の明確化が必須です。

3 「あくまで個人の感想です」で済むのか?

体験談の末尾によく使われる「※個人の感想です。効果には個人差があります。」という文言は、一定の補足としては有効ですが、これだけで全ての誤認リスクが免除されるわけではありません。

広告の中心的部分に体験談が据えられている場合には、たとえ「個人の感想」だと明記していても、消費者が“一般的効果がある”と誤認すればアウトとなる可能性があります。

4 リーガルチェックのポイント

体験談・口コミを広告に使う場合のチェックリストとしては、

①実際にそのような体験があったか、事実確認と本人の同意を取っているか?

②表示されている内容に、合理的根拠資料が存在しているか?

③再現性のない成功事例を、一般化した表現にしていないか?

④報酬提供がある口コミ・投稿に、「広告」「PR」の表示がなされているか?

⑤「個人の感想」表示が免罪符になっていないか?

体験談・口コミは信頼性の高い訴求手法である一方、広告としての責任が非常に重い表現でもあります。「誰が」「どのような立場で」「どんな意図で語っているのか」を明確にし、誠実なコミュニケーションを心がけることが、法的トラブルの予防にもつながります。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「No.1・シェア表示」はどこまで許されるか?

2025-09-08

「業界No.1」「売上シェア国内トップ」「お客様支持率No.1」
こうした“ナンバーワン”表現は、企業や商品の信頼性・実績を強く印象づける効果があります。しかし、その分、景品表示法上の違反リスクも高く、慎重な運用が求められる広告表現です。本記事では、「No.1表示」「シェア表示」に関する法的リスクと、適法な表示のポイントを解説します。

1 「No.1」表示の根拠が求められる理由

「No.1」は、他の事業者との相対的な優位性をアピールする表現であるため、景品表示法における「優良誤認表示」に該当するか否かが常に問われます。

たとえば、以下のような表示はリスクがあります。

①調査期間や母集団が極端に限定されている

②出典が不明で、消費者が根拠を確認できない

③実際には僅差であり「No.1」と言えるか疑問な数値差

④売上高ではなく広告出稿量など別指標での“1位”を、総合的な優位と誤認させる表現

これらは、調査主体・調査範囲・期間・指標の不明確さによって、消費者に実態以上の印象を与えるおそれがあるため、違反とされる可能性があります。

2 「No.1」表示に必要な3つの原則

①根拠資料が存在すること(客観的データ)

第三者機関の調査結果や、売上統計、POSデータ、特許庁の登録数など、明確な数値データに基づく資料が必要です。

②比較対象・調査母体が適切であること

全国規模の商品であれば、全国の競合を対象にした調査でなければ意味がありません。「自社調査」や「一部地域のデータ」でのNo.1表示は、注意が必要です。

③表示内容に誤認を与える要素がないこと

調査項目・調査方法・期間・対象などを広告内で適切に開示し、消費者が「なぜNo.1なのか?」を判断できるようにすることが求められます。

3 「シェア表示」との違いと注意点

「No.1」と似た表現に「シェア〇%」「業界シェアトップ」などがあります。これも景品表示法上の“相対比較表示”にあたるため、No.1表示と同様に根拠が必要です。

特に注意すべきポイントとしては、

①「市場シェア」の定義を広告内に明記しているか?(例:販売金額ベース、販売数量ベース)

②対象市場が適切か?(例:「〇〇市場」での1位だが、他の競合を除外していないか)

③数字の単位や出典が明記されているか?(例:「矢野経済研究所調べ 2023年」など)

4 リーガルチェックのポイント

①表示している「No.1」に客観的なデータと出典の明示があるか?

②調査の対象期間・方法・母数が明確で、開示されているか?

③「シェア表示」の場合、市場定義・単位(売上数/金額)が正確か?

④広告の文脈から、消費者が不当に誤認しない表現となっているか?

「No.1」表示は、非常に強い訴求力を持つ表現ですが、それゆえに、景表法の厳しい審査対象となる“ハイリスク表現”でもあります。

適切な根拠と表現のバランスをとることで、安心して活用できる“信頼あるナンバーワン”を実現しましょう。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「ランキング表示」の法的リスクと正しい使い方

2025-09-03

「売上ランキング1位」「お客様満足度ランキング上位獲得」「業界No.1の支持率」——こうした「ランキング表示」は、消費者に強い印象を与え、広告効果の高い表現として多くの企業が活用しています。しかし、このランキング表示が事実に基づいていなかったり、誤解を招く形で使われていたりすると、景品表示法に違反する可能性があります。広告担当者としては、そのリスクを正しく理解し、適切な表現であるかを慎重にチェックする必要があります。

1 景品表示法における「優良誤認表示」とは?

景品表示法では、「実際のものより著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)」を禁止しています。ランキング表示は、一見客観的な数値・評価に見えますが、その根拠が不明確だったり、調査の対象や手法が限定的だったりすると、消費者に誤認を与える可能性があるのです。

たとえば以下のような表示は、リスクが高いとされます:

①出典や調査主体が明記されていない「〇〇ランキング1位」

②狭い範囲(例:自社顧客のみ)での調査結果を、業界全体に通用するかのように表示

③短期間・特定時間帯の一時的な順位を、「継続的なNo.1」として表示

2 適法な「ランキング表示」に必要な4要素

ランキング表示を広告で使用する際には、以下の4つの情報を明確に表示することが求められます。

①調査主体(誰が調査したか)

例:「株式会社〇〇調査研究所 調べ」「〇〇書店販売データによる」

②調査対象(何を・どこで調査したか)

例:「2023年1月~12月 全国ドラッグストア100店舗の販売実績に基づく」

③調査方法(何を基準に順位付けしたか)
例:「POSデータの販売個数に基づき集計」「アンケートによる満足度評価」

④調査時期(いつのデータか)

例:「2023年12月時点」「2023年上半期」

これらを広告上で明記するか、少なくとも容易に確認できるようにしておくことが、適法表示の基本です。

3 「No.1」や「トップクラス」表示との違い

「ランキング1位」と「No.1」は同様に見られがちですが、景表法上では微妙に扱いが異なる場合があります。「No.1」は自社調査や業界団体の調査でも表示可能とされる一方、客観的裏付け資料がないまま使うと、やはり優良誤認表示とされるリスクがあります。

曖昧な表現(例:「人気急上昇中」「売れてます」)も、裏付けがなければリスクがあるため、裏付け資料の存在を前提に、明確で具体的な表示を心がけましょう。

4 リーガルチェックのポイント

①ランキングの出典、調査主体、時期、方法、対象は明記されているか?

②「1位」表示の根拠資料を提出できる状態にあるか?

③実態より過度に優位である印象を与えていないか?

④一時的なデータを恒常的なものとして表示していないか?

ランキング表示は、適切に運用すれば非常に効果的なマーケティング手法です。しかしその裏には、消費者の期待を裏切らない「根拠」と「透明性」が必要不可欠です。企業の信頼は、事実に基づく表現から築かれます。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

法律・士業業界の広告と法的リスク

2025-08-29

弁護士、司法書士、税理士、行政書士、社労士など、士業(専門職)における広告は、依頼者との信頼関係を築く重要なツールです。近年ではWebサイト、リスティング広告、YouTube、SNSなどを活用した広告展開も広がっていますが、過度な成果アピールや曖昧な専門性の表示には、弁護士法や各士業法、景品表示法等の法的リスクが潜んでいます。

1 「実績〇件」「勝率○%」などの表示は根拠と文脈が不可欠

士業広告で特によく見られるのが、「解決実績〇件」「相談実績1万件超」「勝率90%以上」といった表示です。これらは、依頼者にとって信頼の指標となりますが、根拠の明示がない場合、景品表示法の優良誤認表示に該当するリスクがあります。

たとえば以下のような表示は注意が必要です。

①「勝率90%超」→ 実際には、訴訟で争われた件数のうち一部を対象とした数字

②「相談実績1万件」→ グループ全体の累積であり、自事務所単体ではない

③「着手から最短1日で解決」→ 特殊ケースを一般化して表示している

これらの表示には、対象範囲・期間・算出基準などを明示し、合理的根拠資料を保管しておく必要があります。また、過度な印象操作は信頼失墜に直結します。

2 「専門家による対応」「分野特化」の表示には根拠を

「交通事故に強い」「相続専門の弁護士」「不倫慰謝料特化」など、分野特化型の訴求も多く見られますが、これも根拠のないまま表示することは、誇大広告や不実告知にあたるおそれがあります。

士業には専門資格や分野認定がないことも多く、「専門」をうたう場合には以下の配慮が必要です。

①専門表記をするなら、実績件数・講演歴・執筆歴などの裏付けを明記

②「〇〇協会認定」の資格表示をする場合は、民間団体か国家資格かを明示

③他士業や提携先のサービスを掲載する場合は、誰が対応するのか明確にする

なお、弁護士の場合、「専門」という言葉の使用には弁護士会の広告規程にも注意が必要です。

3 「相談無料」「成功報酬制」表示のリスク

費用体系に関する広告も依頼者の関心が高く、「相談無料」「完全成功報酬制」などの表示はよく見られます。しかし、これらは実際には条件付き・例外ありの場合が多く、その表示方法によっては誤認を招くおそれがあります。

①「初回無料」なのに、2回目以降の料金や無料の条件を明記していない

②成功報酬としつつ、着手金や実費が別途かかる旨が小さく表示されている

③電話相談無料でも、実質的に予約後面談が前提となっている

このような表示を行う場合には、無料・成功報酬の定義、対象範囲、適用条件、例外事項を明確に表示することが不可欠です。

4 リーガルチェックのポイント

士業広告で注意すべきポイントとしては、

①実績・勝率などの数値表示には、算出基準・対象期間の明示と根拠資料の保管

②「専門」「特化」などの表現には、裏付けとなる客観的実績の提示

③「無料相談」「成功報酬」表示には、条件や例外を分かりやすく記載

④「弁護士が対応」などの記載は、誰が実際に関与するか明確に

⑤広告規程(特に弁護士)に沿った表現かを所属団体ごとに確認

法律・士業業界において、依頼者は「情報の非対称性」を抱えた立場にあります。だからこそ、誠実で正確な広告は、信頼を得る第一歩。“選ばれる専門家”になるためには、事実に裏打ちされた広告表現が不可欠です。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

自動車販売・整備業界の広告と法的リスク

2025-08-24

新車・中古車の販売から、車検、整備、パーツ交換、カーリース、レンタカーなどを含む自動車関連業界では、多くの広告が展開されています。比較サイトや折込チラシ、Webページでの価格訴求が目立ちますが、価格の誤認、有利誤認表示、整備内容の誇張、保証の不明確な表示などは景品表示法や特定商取引法違反にあたる可能性があり、注意が必要です。

1 「車両本体価格」と「支払総額」の区別を明確に

中古車販売などで多いのが、「車両本体価格を目立たせ、諸費用・税金・整備費用を小さく表記する」ことで、実際の支払額より安く見せる手法です。

例えば、

①「本体価格29.8万円!」と表示しながら、登録費用・整備費用・リサイクル料・法定費用などを別途請求

②総支払額の記載がなく、「本体価格」のみを強調している広告

③条件付き(ローン契約必須、保証なしなど)で安く見せているが、条件の説明が小さい

こうした表示は、消費者にとって実質的な負担がわかりにくく、有利誤認表示に該当する可能性があります。「支払総額(税込・諸費用込)を明示し、条件をわかりやすく記載すること」が基本です。

2 整備・点検内容の表現には事実性を

「納車前整備済」「法定12ヶ月点検実施」「安心の100項目点検」などの表示もよく見られますが、実際には内容が限定的であるにもかかわらず、包括的・完璧な整備がなされているかのような印象を与えると、優良誤認表示に該当するおそれがあります。

特に注意が必要な点としては、

①一部のチェック項目しか実施していないのに「全項目点検」と表示

②「プロの整備士が点検」とあるが、整備士資格を持たないスタッフが作業

③実施していない整備内容を含めた「パック整備」表示をしている

広告上では、整備の内容・範囲・担当資格者の有無・保証の範囲などを明確に表記することが求められます。

3 「長期保証付き」「安心保証プラン」などの保証表示にも要注意

「3年保証付き」「エンジン保証つき」といった安心感を与える保証表示も、実際の保証内容・対象範囲・条件を広告上で明示しない場合、誤認を招く表示となります。

たとえば、

①無償保証ではなく「有料延長保証」にもかかわらず「3年保証」と表示

②「保証付き」と書いているが、対象部品が極めて限定的(例:エンジン本体のみ)

③保証対象に制限があるのに、それを目立たない場所に小さく記載

保証をうたう場合には、以下の情報を広告に盛り込むことが重要です。

①保証期間・対象範囲・免責事項・利用条件

②保証を受けるための手続き・点検の必要性など

4 リーガルチェックのポイント

自動車販売・整備業界における広告の法務チェックポイントとしては、

①表示された価格が「支払総額」か「車両本体価格」かを明確に区別しているか

②諸費用・条件(ローン契約等)をわかりやすく説明しているか

③整備・点検内容が実際の作業内容・担当者資格と一致しているか

④保証表示がその内容・条件・範囲と一致しているか

⑤比較表示(例:他社より安い)がある場合、根拠を説明できるか

自動車は高額な商品であり、広告の表示内容は契約判断に直結します。だからこそ、誠実で透明な情報提供が、顧客の信頼獲得とリピートにつながる最大の武器となるのです。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

福祉・介護業界の広告と法的リスク

2025-08-19

高齢者施設、訪問介護、デイサービス、障がい者支援、生活支援サービスなど、福祉・介護業界では「安心」「信頼」「やさしさ」といったイメージワードを多用した広告が見られます。しかし、こうした感覚的な言葉であっても、実態と乖離していたり、根拠がなかったりすると景品表示法違反などの法的リスクが生じる可能性があります。

さらに、高齢者やその家族が広告に強く依存する傾向があることから、消費者庁も福祉・介護分野の広告に対して厳格なスタンスを取っています。

1 「安心・安全・信頼」の表現は、根拠がなければNG

広告によく見られる次のような表現は、一見問題なさそうに見えますが、裏付けがなければ優良誤認表示に該当する可能性があります。

①「地域で一番信頼されている施設です」

②「24時間体制で安心の見守り」

③「専門スタッフによる安全なケアをお約束」

④「やさしく丁寧な対応が利用者満足度No.1」

これらの表示を行うには、客観的な根拠資料(例:顧客満足度調査、職員配置体制、事故報告データ等)が必要です。また、主観的な満足度調査を一般化する場合には、調査対象、調査期間、方法をきちんと明示することが求められます。

2 実績表示・資格者数などの事実誤認にも注意

①「介護福祉士が常駐」→ 実際は日中の数時間のみ

②「年間1,000件以上のサポート実績」→ 過去の累積数を“年間”と誤認させている

③「医師監修」→ 実態は一度監修に名を貸したのみ

こうした表示は、事実と異なる、あるいは誤認させる形での表現であり、景表法や業界ガイドラインに違反する可能性があります。特に医師や専門職の肩書きを用いる場合は、監修の内容・期間・関与度合いなどを明確に把握し、必要であれば本人の許諾も得ることが重要です。

3 比較・No.1表示、家族の声、利用者の体験談もリスク対象

「地域No.1」「満足度ランキング1位」といった表示は、出典・調査主体・期間・対象者数を示していない場合、違法表示とされる可能性があります。また、「利用者様の声」や「ご家族の体験談」を使う場合も、実在性・許諾・表現の正確性を確保する必要があります。

例えば、

①架空の家族の感想を演出して掲載

②ご家族のSNS投稿を無断で広告に流用

③内容を脚色・短縮したことで、元の文意が変わっている

これらは、景表法のみならず、プライバシー権や著作権などの侵害にもつながりかねません。

4 チェックポイントまとめ

福祉・介護業界における広告のリーガルチェックポイントとしては、

①「安心・安全・信頼」などの表示に、根拠・体制・データの裏付けがあるか

②資格者数・職員配置・看護体制などが、実際の勤務状況と一致しているか

③満足度・実績表示に、調査方法・出典・期間等の明記があるか

④利用者や家族の声が、実在し、許諾を得て、表現が正確であるか

⑤「監修」や「専門家による支援」の表示が、形式的な関与でないことを確認

福祉・介護業界では、広告による信頼の裏切りは、利用者本人だけでなくその家族にも大きな失望と怒りをもたらします。だからこそ、やさしさを“言葉”で伝えるのではなく、“事実”で証明する広告表現が、真の信頼に繋がります。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

Webマーケティング業界の広告と法的注意点

2025-08-14

SEO対策、SNS運用代行、広告運用代行、LPO、Web制作など、Webマーケティング業界では「成果報酬型」の契約形態が増えており、広告においても「成果」や「改善率」を前面に押し出した訴求が多く見られます。しかし、こうした表現が景品表示法や特定商取引法の規制対象となるケースも多く、裏付けのない“成果保証”は法的リスクが極めて高いことに注意が必要です。

1 「売上2倍」「改善率98%」などの表示には根拠が不可欠

Webマーケティング業界で多用される成果表現の例として、以下のようなものが挙げられます。

①「導入後3カ月で売上2倍!」

②「広告費を30%削減」

③「離脱率98%改善」

④「95%のクライアントが効果を実感」

これらは一見インパクトがあり、依頼主の意思決定を促す表現ですが、表示の裏付けとなる『合理的根拠資料』がなければ、優良誤認表示として景表法違反に該当するおそれがあります。

特に問題になりやすいのは以下のようなケースです。

①一部の成功事例のみを取り上げ、あたかも全ての顧客に共通するかのような表示

②数値の根拠となる調査方法が不明確(例:母数・対象・期間を記載していない)

③自社計測のデータに過ぎず、第三者の検証が困難

広告にこうした表現を使用する際は、出典・調査方法・対象期間・対象者数などを明示することが望ましく、根拠資料を保存・管理しておくことも重要です。

2 「成果保証」「返金保証」には特定商取引法の注意が必要

「必ず成果が出ます」「成果が出なければ全額返金」といった保証表現も見かけますが、これは景表法のみならず、特定商取引法(特商法)上の不実告知や誇大広告に該当する可能性があります。

特に以下のような場合、法的リスクが高まります。

①実際には厳格な条件(例:○日以内申請、アクセス解析提出など)があるにもかかわらず、広告上で明示していない

②保証内容に例外条項が多数あるが、利用者には事前に伝えられていない

③成果の定義が曖昧で、契約後に一方的な解釈変更がされる

これらは、消費者契約法違反や不当表示としてトラブルの火種になりやすいため、必ず契約条件と広告表示を整合させる必要があります。

3 「導入実績」「クライアントの声」も実在性・出典の明示を

「1,000社導入」「有名ブランドも導入」などの表示は、信頼感を与える一方、実際の導入実績と異なる場合や許諾を得ていない掲載は不正表示・著作権侵害・名誉権侵害につながる可能性があります。

また、「クライアントの声」として実際の感想を掲載する場合も、以下の点を確認しておきましょう。

①掲載許可の取得(書面が望ましい)

②記載内容が誇張や改変なく、実際の内容と一致しているか

③顔写真や企業ロゴを使用する際の知的財産権への配慮

Web業界だからこそ、「数値」や「効果」で判断される世界です。しかし、だからといって“盛った”表現で短期的に契約を取っても、長期的には法的リスクと信用失墜を招く可能性があります。根拠ある成果、誠実な表現が、真に選ばれるサービスを築く鍵です。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

スポーツ・フィットネス業界の広告と法的リスク

2025-08-09

パーソナルジム、フィットネスクラブ、ヨガ・ピラティススタジオ、オンラインフィットネスなど、健康志向の高まりとともにスポーツ・フィットネス業界は成長を続けています。集客のために「短期間で理想の体に!」「絶対に痩せる!」といった成果訴求型の広告が多く見られますが、こうした表現には景品表示法や健康増進法に基づく厳しいルールがあり、違反すると行政指導・処分の対象になりかねません。

1 「成果保証」「短期間で痩せる」などの断定表現は危険です

この業界で最も問題となりやすいのは、「体重減少」や「筋肉増加」などの身体的変化を断定的に表現する広告です。たとえば以下のような表現は、根拠資料のないまま使用すると、景表法の優良誤認表示に該当するおそれがあります。

①「2カ月でマイナス10kg確実」

②「1回でウエスト-5cm!」

③「週1通うだけで腹筋が割れる」

④「返金保証付き!絶対に結果が出ます」

これらの表現を行う場合には、統計的に再現可能なデータや試験結果など、合理的な根拠資料が求められます。また、「保証」とうたう場合は、その保証条件(例:出席率、食事指導の遵守等)を明示しなければ、誤認を招くリスクが高まります。

2 ビフォーアフター写真の使用には特に注意が必要です

ビジュアルによる訴求が強いこの業界では、「ビフォーアフター写真」がよく使用されますが、これも誤認を招く表示として過去に多数の行政処分がなされています。

リスクのある使い方としては、

①特殊な条件で成功した一例を、全員に当てはまるように見せる

②照明・衣装・角度などを調整し、実際以上の変化があるように見せる

③加工アプリなどで画像を修正している

こうした写真を使用する場合は、「個人の結果であり、全ての方に効果を保証するものではありません」などの注意書きを明示することが最低限必要です。また、加工の有無を含め、誠実な表示であることが求められます。

3 体験談・口コミの活用とステマ規制

「私は3カ月で10kg痩せました!」「人生が変わった!」といった体験談・口コミも有効な広告手段ですが、消費者が実際の利用者の声だと信じてしまうため、内容の真実性・実在性が厳しく問われます。

さらに、インフルエンサーを起用して広告投稿を行う場合には、ステルスマーケティング規制(2023年景表法改正)の対象となるため、企業が関与している投稿には「#PR」など広告である旨の明示が必要です。

4 リーガルチェックのポイント

スポーツ・フィットネス広告における法務チェック項目としては、

①「確実に痩せる」「絶対成果」といった断定表現を使用していないか

②表示されている成果(体重減少・筋肉量等)に根拠資料があるか

③ビフォーアフター写真に加工や演出が含まれていないか、注意書きがあるか

④保証制度の表示に条件や免責の明示があるか

⑤口コミ・体験談が実在の声かつ許諾を得ているか

⑥インフルエンサー投稿にステマ表示(#広告等)がなされているか

スポーツや健康に関するサービスは、身体的・精神的影響が大きいため、誠実な情報提供が不可欠です。信頼を得る広告とは、単に成果を約束するものではなく、そのプロセスや前提条件を丁寧に伝えることによって生まれます。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

エンタメ・イベント業界の広告と法的注意点

2025-08-04

コンサート、演劇、展示会、テーマパーク、オンライン配信イベントなど、エンタメ・イベント業界では、非日常的な体験や感情に訴える広告が多用されます。その表現は自由度が高く、キャッチーであることが求められますが、「満足度」「限定」「話題沸騰」などの表現には、景品表示法をはじめとする法的リスクが潜んでいます。

1 「満足度○%」「話題沸騰」などの実績表示は根拠が必要

エンタメ広告でよく見られる「観客満足度98%!」「リピーター続出」「SNSで話題沸騰中」などの表現は、魅力的ではあるものの、根拠が不明確な場合は優良誤認表示に該当するおそれがあります。

リスクがあるケースとしては、

①アンケート調査の母数が極端に少ない、または自社スタッフによる調査のみ

②「話題沸騰」は一部SNS投稿や自社アカウントの発信にとどまる

③実際は再演なしの単発公演なのに「大好評につき再演決定」のような印象操作

また、満足度や評価、話題性を表示する際には、以下の情報を可能な限り明示することが推奨されます。

①調査実施主体・時期・対象人数・調査方法

②使用しているSNSやメディアの名称(例:X(旧Twitter)、Instagramなど)

③具体的なデータの引用(例:ハッシュタグ投稿数、視聴回数等)

2 「限定」「先着順」「残りわずか」の表示に潜む『誤認誘引』

「限定100名様」「チケット残りわずか」「先着特典あり」など、限定性を強調する表現は、ユーザーの購買意欲を刺激する効果が高い一方で、実態が伴っていない場合には有利誤認表示となり、景表法違反の対象となります。

問題となる例としては、

①実際には人数制限がないにもかかわらず「先着100名」などと表示

②「残りわずか」と表示しておきながら、在庫数は十分に存在

③「1日限り」と告知しつつ、同内容を複数日開催

これらの表示を行う場合には、数量・期間の根拠となる証拠資料を保管しておき、適切に更新・運用する体制が求められます。

3 体験談・インフルエンサー投稿にもステマ規制の影響

近年では、イベント来場者の「体験談」や「SNSでの感想」をそのまま広告に転用したり、インフルエンサーにPR投稿を依頼したりするケースが増えています。ここでも注意すべきは、ステルスマーケティング(ステマ)規制です。

2023年の景表法改正により、「広告であるにもかかわらず、それと分からない表示」は不当表示に該当することとなりました。

ポイントとしては、

①インフルエンサーに金銭や招待等の対価を提供した場合は、「#PR」「広告」などの明示が必要

②一般客の体験談を広告に使用する場合、実在性の確認と本人の許諾が必要

③投稿内容を広告主が編集・指示している場合、「広告表示義務」が発生

4 チェックポイントまとめ

エンタメ・イベント広告での主な法的チェックポイントとしては、

①「満足度」「話題性」の表示に客観的データや調査根拠があるか

②限定性・数量・期間表示が実際の運用と一致しているか

③チケット価格・座席・サービス内容が広告表示と齟齬がないか

④体験談・SNS投稿の転用が許諾・ステマ表示を適切に行っているか

エンタメ業界は感性を刺激する表現が命ですが、その自由な発想が誤認や誇張につながらないよう、法的リスクを常に意識した表現運用が求められます。“楽しかった”の記憶を“また行きたい”に変えるには、広告への信頼が欠かせません。

次回は、「スポーツ・フィットネス業界における広告と“成果保証”“身体変化”の表示リスク」を解説いたします。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

建設・住宅リフォーム業界の広告と法的留意点

2025-07-30

戸建て建築、マンションリフォーム、外壁塗装、水回り工事など、建設・リフォーム業界では、インターネットや折込チラシを通じた広告が盛んに行われています。住宅という高額な取引対象を扱うこの業界では、施工実績や価格、保証制度などに関する表示が消費者の判断に大きな影響を与えるため、景品表示法や建設業法、消費者契約法などの法的リスクに特に注意が必要です。

1 「施工実績」「地域No.1」の表示には客観的根拠を

建設・リフォーム業界では、信頼性や安心感を与えるために「年間施工実績1,000件以上」「地域シェアNo.1」などの表示が多用されます。こうした実績・優位性の表示は、消費者に大きな訴求力を持ちますが、裏付けとなる合理的根拠資料がなければ、優良誤認表示として景表法違反となるおそれがあります。

典型的なNG例としては、

①実際には対応件数ベースなのに「施工件数1,000件」と誇張

②特定の狭い地域(自社営業エリア)のみを母集団にした「No.1」表示

③自社アンケートや顧客満足度調査を客観的ランキングのように見せる

これらの表現を行う場合、出典・調査機関・調査期間・対象範囲を明確に記載し、必要に応じて根拠資料を提示できる体制を整えておくことが求められます。

2 「価格比較」「○○円~」の表示の落とし穴

「他社より30%安い!」「水回りリフォーム一式98,000円~」などの価格訴求は非常に効果的ですが、実際の契約価格と著しく乖離している場合や、適用条件が明確でない場合、有利誤認表示に該当します。

注意すべき点としては、

①表示された価格での施工実績がごく少数しか存在しない

②条件付き価格であるにもかかわらず、適用条件が小さく表示されている

③「比較対象の他社」の具体性がなく、比較根拠が不明確

こうした価格表示を行う際には、「最低価格」「標準価格」の定義や条件を明確にし、適用実績を保管することが重要です。

3 「保証付き」「安心施工」の表示にも誤認リスク

「10年保証」「安心の自社施工」「施工後も安心フォロー」といった保証・サポート体制の訴求もよく見られますが、実態と広告表示に乖離があると問題になります。

以下のようなケースでは注意が必要です。

①実際には「一部部位のみ保証」だが「全体10年保証」と誤認させる表示

②アフター対応が委託業者によるものであるにもかかわらず「自社対応」と表示

③保証を受けるには有料点検契約が必要なのに、その条件を明示していない

保証制度は、契約後のトラブルにもつながりやすいため、条件・範囲・期間などを広告上で正確に表示する必要があります。

4 チェックポイントまとめ

建設・住宅リフォーム広告での法務チェック項目としては、

①実績・No.1表示に客観的な根拠(出典・範囲・時期)があるか

②表示された価格は、現実に適用された例が十分に存在するか

③比較表示は、どの競合と比較しているか、根拠を説明できるか

④保証制度・施工体制の表示が誇張されていないか・条件が明示されているか

⑤リスティング広告・ランディングページでも、広告であることの明示(ステマ対策)がなされているか

建設・住宅リフォーム業界では、「一生に一度」の買い物を支える立場として、広告に対する誠実さが企業の信頼を左右します。売上重視の過剰表現ではなく、根拠ある安心の提示が選ばれる理由になるのです。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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