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広告におけるリーガルチェックの重要性とは?
1 広告におけるリーガルチェックの重要性
商品やサービスを広く消費者に届けるために欠かせない方法である『広告』ですが、近年では、SNSやインフルエンサーを活用したマーケティングも活発になり、企業にとって『広告』をどのように作成し、どのように運用するかということがますます重要となっています。
しかし、その一方で、広告表現や広告方法を誤った場合、法的リスクや企業イメージの失墜といった重大な問題を招く可能性があります。
そこで重要になるのが、広告の『リーガルチェック』です。
リーガルチェックとは、広告表現が適法かどうか、また、関連する法令に違反(抵触)していないかを事前に確認するプロセスであり、広告に関する法令に詳しい弁護士が実施、関与することで、企業としての法令遵守体制を強化することができます。
2 広告表現には注意が必要です
広告に関連する主な法令としては、「景品表示法(景表法)」が挙げられます。
景表法では、消費者を誤認させるような「不当表示」や、過剰な景品類の提供を禁止しています。
たとえば、「業界No.1」、「99%が効果を実感!」、といった表現は、具体的な根拠がないまま使用すると、優良誤認表示として景表法違反となるおそれがあります。
特に注意すべきは、表示に「客観的な裏付け」が求められる点です。広告表現の根拠として、試験データや統計情報、アンケート調査などの「合理的根拠資料」が求められ、それが不十分であると、後から行政による調査や指導、最悪のケースでは行政処分が課されることもあります。
また、SNSやYouTubeなどを活用した『インフルエンサーマーケティング』においては、「広告であることの明示」が求められるようになりました。
2023年の景表法改正により、いわゆる「ステルスマーケティング(ステマ)」が規制対象となっており、インフルエンサーの投稿が広告であるにもかかわらず、そのことを隠している場合、企業側が処分の対象となるリスクがあります。
これらのリスクを避けるためには、広告を公表する前の段階で、専門的な知識に基づいたリーガルチェックを行うことが非常に重要です。制作チームやマーケティング部門だけでなく、法務部門や外部の弁護士が適切に関与することで、リスクを未然に防ぐことができます。
弊事務所では、広告に関するリーガルチェックの経験が豊富な弁護士が在籍しておりますので、広告に関してご不明な点やご不安な点がある場合には、お気軽にお問い合わせください。
口コミやレビューと景表法違反
近年、インターネット上の口コミやレビューサイトは、商品やサービスの選択に大きな影響を与える存在となっています。
しかしながら、これらの口コミやレビューが不適切な形で操作されている場合、消費者を誤認させる不当表示として、景品表示法(以下「景表法」)等に違反するリスクがあります。本記事では、口コミやレビューサイトと景表法違反の関係性について解説します。
1 景表法とは?
景表法は、事業者が商品やサービスの品質や価格などについて消費者に誤認させるような表示を行うことを禁止する法律です。この法律の目的は、公正な競争を確保し、消費者の利益を守ることにあります。
具体的には以下の3つの不当表示が規制対象となります:
①優良誤認表示
実際の品質や性能よりも優れていると誤認させる表示。
②有利誤認表示
実際の価格や条件よりも有利であると誤認させる表示。
③その他、内閣総理大臣が指定する不当表示(おとり広告など)。
口コミやレビューに関しては、特に優良誤認表示が問題となるケースが多いです。
2 口コミやレビューにおける景表法違反の典型例
口コミやレビューサイトが景表法違反に該当する可能性があるのは、次のような場合です。
(1)サクラレビューの掲載
事業者が自ら、または第三者に依頼して実際には体験していない人物による「サクラレビュー」を投稿させる行為です。これにより、商品やサービスの品質が実際よりも高く評価されていると誤認させる場合、優良誤認表示に該当します。
(2)レビュー内容の操作
事業者が自社商品やサービスに対する低評価レビューを削除し、高評価レビューのみを残すような行為です。これも消費者に誤解を与える行為とみなされる可能性があります。
(3)インセンティブ付きレビュー
商品購入者に金銭やクーポンなどの報酬を与えることで、好意的なレビューを投稿させる行為です。特に、インセンティブを受け取ったことを明記せずに投稿された場合、消費者に誤認を与える可能性があります。
(4)実在しない評価の捏造
ランキングや評価点数が事実に基づかず、事業者が恣意的に操作している場合も優良誤認表示として問題となります。
3 景表法違反のリスク
口コミやレビューに関して景表法違反が認定された場合、事業者は以下のようなリスクを負うことになります。
(1)行政処分
景表法違反が認定されると、消費者庁から措置命令が下されます。この命令に従わない場合、さらなる罰則が科される可能性があります。
(2)罰則・課徴金
重大な違反の場合、課徴金が科されることがあります。課徴金の額は売上高の一定割合で算定され、事業者にとって大きな経済的負担となる可能性があります。
(3)信用の失墜
口コミやレビュー操作が発覚した場合、消費者や取引先の信頼を大きく損なう可能性があります。一度失った信用を取り戻すことは非常に難しいため、経営に重大な影響を及ぼすこともあります。
限定価格の強調と景表法
広告において「限定割引」や「限定特価」といった表現が使われることはよくあります。
このような広告表示は、消費者にお得感を与え、購買意欲を高める効果的な方法です。しかし、これらの表現が不適切に使用された場合、景品表示法(以下「景表法」)に違反する可能性があります。
今回は、これらの広告表示がどのような場合に景表法に違反するかについて、具体例を交えながらご説明します。
1 景表法の基本的な規定
景表法では、不当な表示によって消費者に誤解を与え、不利益を被らせる行為を禁止しています。特に、次の2つの類型が「限定割引」や「限定特価」といった広告表示で問題となる可能性が高いです。
①有利誤認表示
実際にはそれほどお得でないのに、消費者に著しく有利な条件であると誤認させる表示。
②おとり広告
広告で特価商品を謳いながら、実際には十分な在庫を用意していない、または消費者を誤解させる表示。
2 よくある問題点と具体例
(1)根拠のない割引表示
「通常価格10,000円の商品が、限定割引で50%オフ!」と広告されている場合、実際にはその商品が通常価格10,000円で販売された実績がなかったり、販売期間が極端に短かったりすると、有利誤認に該当します。
消費者に「今買わなければ損をする」という誤解を与えるため、景表法上問題となります。
例えば、あるオンラインショップが「通常価格15,000円のバッグを、期間限定特価10,000円!」と広告しました。しかし、そのバッグは過去6か月間、15,000円で販売された実績がほとんどなく、常に10,000円程度で販売されていました。このケースでは、通常価格が虚偽であるため、景表法における有利誤認表示に該当しました。
(2)在庫不足によるおとり広告
「数量限定!先着50名様に特価3,000円!」と広告されていても、実際には在庫がわずか数点しか用意されていなかった場合、消費者を店舗やウェブサイトに誘引するための不当な広告とみなされることがあります。これが「おとり広告」に該当します。
例えば、家電量販店が「大型冷蔵庫、限定50台を特別価格50,000円で販売!」と新聞広告を掲載しました。しかし、広告開始直後に店舗を訪れた消費者が「既に売り切れた」と告げられたため調査が行われたところ、実際には5台しか在庫がなかったことが判明しました。この事例では、おとり広告として景表法違反が認定されました。
(3)割引期間の事実と異なる表示
「今週末限定特価!」と広告されているにもかかわらず、実際には翌週以降も同じ価格で販売が継続されている場合も問題です。消費者に「この期間を逃すと値段が上がる」という誤解を与える行為は、景表法の有利誤認に該当します。
例えば、家具店が「週末限定で全品20%オフ!」とチラシを配布しましたが、その後も同じ価格で販売が続けられていました。このケースでは、「限定」という表示が消費者を誤認させたとして行政指導を受けました。
3 広告表現で悩んだ場合は専門家にご相談ください
「限定割引」や「限定特価」といった表現は、消費者に強い購買意欲を与える一方で、不適切な使用によって景表法に違反するリスクも高まります。
事業者の皆さまには、広告表示を適正に管理し、消費者に誤解を与えないよう配慮することを強くお勧めします。
広告表現に関して少しでも不明確な点がある場合には、まずは専門家にご相談ください。
限定品のアピールと景表法
広告において「限定モデル」や「特別仕様」といった表現が使われることは珍しくありません。このような表現は消費者に対し、商品の希少性や特別感をアピールするための強力な手段です。
しかし、景品表示法(以下「景表法」)の観点からみると、不適切な使い方をすることで違反となるリスクがありますので注意が必要です。
1 景表法における「優良誤認表示」とは?
景表法の規定において、商品の品質や性能に関する表示が実際よりも著しく優良であると誤認させる場合、それは「優良誤認表示」に該当します。
「限定モデル」といった表現は、商品の特別感を演出するものですが、事実と異なる内容であれば、優良誤認とみなされる可能性があります。
2 「限定モデル」という広告表現の問題点
「限定モデル」として広告する際に問題となるケースには、以下のようなものがあります。
①数量限定の根拠がない場合
「数量限定100台!」と広告していながら、実際には100台以上を生産・販売している場合、これは虚偽の表示とみなされます。
このような表示は、消費者に「早く購入しなければなくなる」という心理的なプレッシャーを与え、不適切な取引を誘発する恐れがあります。
②期間限定の事実がない場合
「夏季限定モデル」と広告した商品が、実際には年中販売されている場合も問題となります。
このような場合、消費者は「今しか買えない」と誤解し、本来は購入しなかったはずの商品を購入する可能性があります。
③特別仕様でない場合
「特別仕様モデル」と宣伝した商品が、実際には通常モデルとほとんど同じ仕様である場合、これは優良誤認に該当する可能性があります。
たとえば、通常モデルに単純な付属品を加えただけで「特別仕様」とするケースがこれにあたります。
3 具体的な事例
ある家電メーカーが、夏季キャンペーンとして「夏季限定モデル」のエアコンを販売しました。このモデルは通常販売されているエアコンに「特別なデザイン」を施したものでした。
しかし、後に調査が行われた結果、その「特別なデザイン」が実際には通常モデルと全く同じものであることが判明しました。このケースでは、景表法における優良誤認に該当すると判断され、事業者に対し課徴金が科される事態となりました。
また、別のケースでは、ある店舗が「数量限定50台!」と広告した商品を、実際には広告期間終了後も継続的に販売していたことが明らかになり、これも有利誤認として問題視されました。
4 違反を防ぐために事業者が取るべき対策
①数量や期間に関する表示の根拠を明確化する
「数量限定」や「期間限定」といった表現を使用する場合は、その根拠となる事実をしっかりと記録し、必要に応じて証明できるようにしておく必要があります。
②商品仕様の説明を正確に行う
「特別仕様」や「限定デザイン」といった表現をする場合、その違いが具体的かつ明確であることを消費者に説明する責任があります。
③広告内容を第三者にチェックさせる
自社の広告表示が景表法に違反していないか、専門家や法律顧問にチェックを依頼することも有効です。
特売セールと景表法
今回は、夏休みや年末年始に頻繁に行われる「特売セール」を謳う広告が、時に景品表示法(以下、「景表法」)に違反する可能性があるという点についてお話ししたいと思います。
1 景表法とは?
景表法は、不当な表示や過大な景品付与によって、消費者が商品やサービスの内容を誤認し、不利益を被ることを防ぐための法律です。特に、商品の価格や品質、取引条件に関する表示が誤解を招くものでないかどうかを規制しています。広告表示が景表法に違反すると、事業者に対して措置命令や課徴金納付命令が下される可能性があります。
2 よくある問題点
特売セールの広告で景表法に違反するケースとして、以下のようなものがあります。
(1)有利誤認表示
有利誤認表示とは、商品の価格や取引条件が実際よりも著しく有利であると誤認させる表示のことを指します。
例えば、「通常価格10,000円のところ、50%オフで5,000円!」という広告があったとします。しかし、調査してみると、その「通常価格10,000円」という価格で販売された実績がほとんどなく、実際には常に5,000円程度で販売されていた場合、これは有利誤認に該当します。
(2)優良誤認表示
優良誤認表示とは、商品の品質や性能が実際よりも著しく優良であると誤認させる表示です。例えば、「この夏だけの限定モデル」として特別感を演出する広告があったとしても、実際には前年から同じモデルが販売されていた場合、この表示は優良誤認に該当する可能性があります。
(3)おとり広告
「おとり広告」とは、広告で目を引く特別価格の商品を宣伝しながら、実際には十分な在庫を用意せず、消費者を店舗に誘導する行為です。
たとえば、「数量限定10台!50%オフ!」と広告した商品が、実際には広告開始後すぐに売り切れてしまうような場合、消費者を欺いたとして問題視される可能性があります。
3 具体的な事例
ある大型家電量販店が「年末年始大セール!」として、多くの商品を割引価格で販売すると広告を出しました。
その中に「通常価格150,000円のテレビが、期間限定100,000円!」という表示がありました。しかし、この店舗では過去6か月間、そのテレビを常に100,000円で販売していたことが発覚しました。このケースでは、「通常価格150,000円」が事実に反し、景表法における有利誤認に該当すると判断されました。
4 特売セールにおいて事業者が気をつけるべきポイント
特売セールの広告を行う際には、以下の点に留意する必要があります。
①通常価格の根拠を明確にする
通常価格として表示する価格が、実際に一定期間販売された価格であるかを確認することが重要です。
②限定や特別感を過剰に演出しない
「限定」「特別」といった言葉を使用する場合には、それが事実に基づいているかを確認する必要があります。
③十分な在庫を確保する
広告で目玉商品を掲載する場合、消費者の需要を見越した十分な在庫を確保しておくことが求められます。
ガチャと優良誤認表示
スマホゲームの「ガチャ」(「ガシャ」と呼ばれる場合もある)は、多くのユーザーにとって楽しみの一つですが、その表示や提供内容が景品表示法(以下、「景表法」)に違反し、優良誤認表示と判断されるケースがあります。今回は、ガチャにおける優良誤認表示の具体例と法的なポイントについてご紹介します。
1 景表法と優良誤認表示とは
景表法は、消費者を不当な取引から保護するための法律です。
その中で、「優良誤認表示」とは、商品やサービスの内容について、実際よりも著しく優良であると消費者に誤認させる表示を指します(景表法第5条第1号)。
具体例として以下が挙げられます。
①実際には低品質の商品を「最高級」「特別限定」と誇大に宣伝する
②実際に得られる結果が異なるのに「必ず成功」などと保証する表示
ガチャにおいては、キャラクターやアイテムの出現確率や性能が実際よりも高く見えるように表示された場合が該当する可能性があります。
2 ガチャにおける優良誤認表示の具体例
スマホゲームのガチャにおいて、以下のような表示が優良誤認に該当する場合があります。
①出現確率の虚偽表示
「最高ランクキャラクターが10%の確率で当たる!」と宣伝しながら、実際には5%以下である場合
②限定アイテムの誤解を招く表現
「今しか手に入らない限定アイテム」と宣伝しておきながら、後日同じアイテムが別のガチャで提供される場合
③誇張された性能表示
「この武器があればバトルで無敵!」と宣伝しながら、実際には他の武器と性能差がほとんどない場合。
④確率の非公開や誤解を招く演出
ガチャ演出で豪華なエフェクトが表示されると高ランクアイテムが出るように見せかけながら、実際にはランダムで選ばれる場合
3 法的責任と制裁措置
ガチャの表示が優良誤認表示に該当すると、公正取引委員会や消費者庁から措置命令が下される場合があります。この命令により、事業者は表示の是正や消費者への通知を求められます。
また、次のような制裁措置が課されることもあります。
①課徴金の支払い
優良誤認表示で得た不当な売上の一定割合を課徴金として支払う義務
②消費者トラブルへの対応
詐欺や損害賠償請求が発生する可能性があり、ゲーム事業者に多大な影響を与えることもあります
4 トラブルを防ぐための事業者側の注意点
スマホゲーム事業者は、景表法に抵触しないために以下の点を意識する必要があります。
①ガチャの出現確率や仕様を正確かつ明確に表示する。
②誇張された広告表現を避け、ユーザーが誤解しないよう努める。
③ユーザーからの苦情や指摘に迅速かつ誠実に対応する。
5 ユーザーとしての注意点
一方、ユーザーもトラブルを防ぐために以下を意識しましょう。
①ガチャの確率や仕様を公式サイトで確認する
②誇大な広告に踊らされず、冷静に判断する
③トラブルが発生した場合は消費者庁や弁護士に相談する
適格消費者団体とは
先日は『適格消費者団体による合理的根拠資料の開示要請』についてご紹介いたしました。
ただ、そもそも、『適格消費者団体』について良く知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本日は、消費者保護の観点から非常に重要な「適格消費者団体」についてご説明します。昨今、消費者トラブルの増加に伴い、景品表示法や特定商取引法に基づく団体の役割が一層注目されています。
事業者の皆様にとっても、適格消費者団体の役割や動きを正しく理解しておくことは、リスク管理の観点から非常に重要です。
1 そもそも適格消費者団体とは?
適格消費者団体とは、消費者の利益を守るため、法律違反の疑いがある事業者に対して不当な契約条項や表示の是正を求める活動を行う団体です。
主に、消費者契約法、景品表示法、特定商取引法に基づく団体です。
適格消費者団体は消費者庁の認定を受けた団体であり、一定の基準(組織体制や活動実績など)を満たすことが求められています。
2 適格消費者団体の主な役割
①不当な契約条項の差止請求
適格消費者団体は、不当な契約条項(消費者に一方的に不利益を与える条項など)が含まれている場合、事業者に対して差止請求を行うことができます。
例えば、利用規約に「事業者側に一切の責任はない」といった不当な免責条項がある場合、団体が是正を求める活動が可能です。
②不当表示の是正要請
景品表示法に基づき、不当表示(優良誤認表示、有利誤認表示など)が行われている場合、適格消費者団体はその表示の根拠を求めたり、行政機関に報告するなどして是正を促します。
2024年10月の景品表示法改正では、団体が事業者に対して合理的根拠資料の開示を求める制度も導入されました。
③消費者被害の予防と啓発活動
適格消費者団体は、消費者への啓発活動や被害予防のための情報提供を行い、社会全体の消費者トラブルの減少を目指しています。
3 改めて事業を見直すことも重要です
適格消費者団体は、消費者の権利保護を目的とし、不当な契約条項や表示を是正するための活動を行う存在です。事業者にとっては、日頃から法令遵守を徹底し、適格消費者団体からの指摘や要請にも誠実に対応することが求められます。
特に、景品表示法における合理的根拠資料の開示要請制度が導入されたことで、事業者は表示内容の裏付けをより一層意識する必要があります。
法令違反が疑われないよう、広告や契約内容のチェック体制を整え、必要に応じて弁護士など専門家に相談することをお勧めします。
適格消費者団体による合理的根拠資料の開示要請について
2024年10月1日に景品表示法の改正が施行されました。
本日はその中でも『適格消費者団体による合理的根拠資料の開示要請』についてご紹介いたします。
1 改正の背景と目的
従来、事業者が提供する商品やサービスについて「優良誤認表示」や「有利誤認表示」といった不当表示が疑われた場合、消費者庁や地方自治体が主導して調査して、違反の事実が認められれば指導、措置命令や課徴金納付命令といった行政処分を課す方式がとられてきました。
しかしながら、行政機関だけではリソースが限られており、多くの不当表示を取り締まることは現実的には難しく、見過ごされているケースも少なくありませんでした。
そこで、適格消費者団体に対して、事業者に対する広告表示の根拠資料の開示を求める権限を新たに認めたのが今回の改正です。
2 開示要請の内容
改正法では、適格消費者団体が事業者に対して「合理的な根拠資料」の開示を求めることができるようになりました。
「合理的な根拠資料」とは、広告や表示の内容が事実であることを裏付ける証拠となる資料を指します。
例えば、健康食品の広告で「◯◯を飲むと1週間で体重が10kg減る」等と表示されている場合、その効果を示す臨床試験データや科学的なエビデンスがこれに該当します。
ただし、注意点としては、事業者はあくまでも「努力義務」として、開示要請に応じることが求められているにとどまります。そのため、強制的に開示を命じる権限が適格消費者団体に与えられたわけではなく、事業者側としてはあくまで任意の対応となる点には注意が必要です。
3 開示要請を受けた場合の事業者の対応
事業者が開示要請を受けた場合、大まかには以下のような対応が考えられます。
①合理的根拠資料を提出する
広告表示の内容の根拠が明確であれば、その資料を提出することで不当表示の疑念を払拭できます。本来は、故の対応が求められております。
②資料が不十分または存在しない場合
この場合には、広告表示内容を直ちに見直し、誤認を招く広告や表示を速やかに取り下げる必要があります。
③対応を拒否する
任意の要請であるため対応を拒否することも可能ですが、消費者団体が不当表示を消費者庁に報告し、結果的に行政機関による調査等が行われるリスクが高まります。
4 今後の対応が重要です
今回の改正で導入された「適格消費者団体による開示要請」は、消費者側の権利を保護し、不当表示の早期是正を促進する制度です。
事業者にとっては、広告や表示に対する厳格な管理が求められることになりますが、ある意味では当然の対応を求められているに過ぎないともいえます。
強制力こそありませんが、適格消費者団体の要請を軽視することは、企業の信頼低下や行政調査のリスクにつながりかねません。
万一広告表示に関してご不明な点等ございましたら、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
ステルスマーケティング規制の現状
2023年10月1日にステルスマーケティング(いわゆる『ステマ』)規制が施行されてから1年超経過いたしました。その間、事業者がステマ規制に違反するケースも出てきておりますので、本日は、改めてステマ規制の概要をご説明します。
1 景品表示法の概要
景表法は、消費者が商品やサービスを選ぶ際に、正確かつ公平な情報を得られるようにするための法律です。
事業者が行う「不当表示」や「過大な景品類の提供」を禁止しています。
【主な不当表示】
①優良誤認表示
実際よりも著しく優れていると誤認させる表示
②有利誤認表示
実際よりも価格や取引条件が有利だと誤認させる表示
2 ステルスマーケティング(ステマ)とは?
ステマとは、実際には事業者が行う広告表示であるにもかかわらず、その事実を隠して消費者に情報を伝える行為を指します。
事業者が広告主であることを示さず、あたかも第三者の意見やレビューのように装うことで、消費者を誤認させる点が問題の中核です。
3 景表法上のステマ規制
2023年10月1日、景表法の下でステマ規制が施行されました。
【規制のポイント】
①表示内容が広告であること
広告主が、報酬や利益供与を伴う形で情報発信を依頼している場合。
②消費者が広告であることを認識できない
表示が第三者の独立した意見に見えるため、消費者が広告と気づかないと考えられる。
4 問題となり得るステマ事例
【事例①インフルエンサーによる隠れ広告】
ある企業がインフルエンサーに商品を提供し、SNSでその商品を紹介するよう依頼しました。
しかし、投稿には「広告」「PR」などの表示がなく、あたかも本人が自然に商品を推奨しているように見えるものでした。
【事例②口コミサイトでの偽レビュー投稿】
企業が口コミサイトに対して報酬を支払い、自社商品について高評価のレビューを投稿させたケース(さらに、競合他社の製品には低評価レビューを書かせた)。
5 ステマ防止のための具体的対策
事業者がステマとならないためには、以下の点に注意が必要です。
①広告であることを明確に表示する
「広告」「PR」「Sponsored」などの表記を必ずつけること。
②消費者の誤認を防ぐ
第三者のレビューを装う形で情報発信しない。
③インフルエンサーや関係者への法規制の遵守徹底
依頼する際に、「広告表示」の明示をルールとして徹底させる。
6 ステマ規制には改めてご注意を
ステルスマーケティング規制は、消費者の合理的な選択を守るために重要な制度です。
広告主や事業者は、「広告であることを隠さない」という基本原則を徹底し、消費者に正確な情報を提供しなければなりません。
SNSや口コミサイトを活用する企業が増える中、ステマに対する消費者の目も厳しくなっています。事業者は、法令を遵守しながら健全な広告活動を行うことで、長期的な信頼の構築につながるでしょう。
もし、ステマ規制や景表法に関して不安や疑問があれば、弁護士にご相談いただき、適切な広告表示を行っていただくことを強くお勧めいたします。
機能性表示食品の広告表示には改めてご注意を
本日は、「機能性表示食品」に関連する広告や表示上の注意点を、消費者庁のガイドラインをもとに概要をご説明します。
昨今、改めて機能性表示食品が問題となるケースが出ておりますので、事業者は、消費者に誤解を与えないように、法律を正しく理解し運用する必要があります。
1 そもそも機能性表示食品とは?
機能性表示食品とは、科学的根拠に基づいて健康維持や特定の機能を表示できる食品です。これは『消費者庁』に届け出を行うことで、このような表示が可能になります。
しかしながら、『医薬品』ではありませんので、病気の治療や予防を謳うことは許されません。
2 適切な広告表示のための留意点『景品表示法の禁止事項』
①優良誤認表示の禁止
商品が実際よりも著しく優れているかのように表示することは禁止されています。
②合理的な根拠
消費者庁は、広告表示の裏付けとなる科学的根拠の提出を求めることができます。
根拠を示せない場合、その広告は「不当表示」とされますので、常に合理的な根拠の存在は確認する必要があります。
3 適切な広告表示のための留意点『健康増進法の留意点』
①疾病の治療・予防効果を謳わない
「この食品を飲めば糖尿病が治る!」といった疾病治療や予防を示唆する表示は、健康増進法に違反します。
②正確な情報の提供
届け出た機能性表示内容から逸脱しないよう、科学的根拠に即した正確な表示が求められます。
4 消費者を誤認させないための表示基準
①届出表示の範囲を守る
機能性表示食品として届け出た内容以外を強調することは、消費者の誤解を招くため、厳しく制限されています。
②医薬品や特定保健用食品と混同しない表示
医薬品のように「病気が治る」と誤認させる表現は禁止ですし、「消費者庁長官の許可を受けた」と誤解されるような文言も避けるべきです。
5 事業者として心がけるポイント
①事実を正確に表示する
②科学的根拠を確保する
③法律を確認する
6 機能性表示食品を取り扱う事業者は改めてご注意ください
機能性表示食品の広告や表示には、景品表示法と健康増進法等による厳しいルールがあります。
事業者は消費者に対して正確な情報を提供し、誤解や過度な期待を与えないよう注意することが求められます。また、意図せずに違法な広告表示をしてしまうと、一般消費者からは『悪徳業者』等とのレッテルを貼られてしまうリスクがありその後の事業の運営にも大きな影響があります。
少しでも不安や疑問があれば、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
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