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広告炎上時の初動対応

2026-07-30

「ジェンダー差別ではないか」「不謹慎だ」「他社作品のパクリではないか」「特定の属性を揶揄しているのではないか」。

SNSが日常的な情報発信の場となった現在、企業広告は、テレビCMや新聞広告だけでなく、X、Instagram、TikTok、YouTube、ウェブメディアなどを通じて、瞬時に拡散されます。広告主が意図していなかった表現であっても、受け手の文脈によっては批判が集中し、いわゆる「炎上」に発展することがあります。

広告炎上の怖さは、法的責任の有無だけでは収まらない点にあります。著作権侵害や景品表示法違反が明らかなケースはもちろん、法的には違法とまでは言えない表現であっても、社会的には「企業姿勢に問題がある」と受け止められることがあります。逆に、世論に押されて安易に謝罪や責任承認をしてしまうと、後の損害賠償交渉や訴訟で不利になる可能性もあります。

そのため、広告炎上への対応では、広報部門だけでも、法務部門だけでも不十分です。広報は世論の反応、メディア対応、ブランド毀損リスクを見ます。一方、法務は権利侵害、契約違反、行政規制、訴訟リスクを見ます。両者が連携し、「何を認め、何を認めないのか」「どのタイミングで、誰に、どの表現で説明するのか」を判断することが重要です。

1 炎上発生直後に行うべきこと

炎上が起きた直後、企業内では「すぐ謝るべきだ」「無視した方がよい」「反論すべきだ」と意見が分かれがちです。しかし、最初にすべきことは、方針を決めることではなく、事実関係を把握することです。

具体的には、次の情報を短時間で整理します。

確認項目確認すべき内容
問題となっている広告掲載媒体、公開日時、広告素材、コピー、画像、動画
批判の内容差別表現、不謹慎、権利侵害、誤認表示、炎上便乗など
拡散状況SNS投稿数、著名人・メディアの反応、検索トレンド
法的論点著作権、商標権、景表法、薬機法、名誉毀損、契約違反
関係者広告代理店、制作会社、出演者、インフルエンサー、媒体社
契約関係責任分担、表明保証、補償条項、広告取り下げ権限
事業影響販売停止、不買運動、問い合わせ増加、株価・取引先対応

この段階で重要なのは、SNS上の批判の声量だけを見て判断しないことです。批判が多く見えても、実際には一部の投稿が拡散しているだけの場合もあります。一方で、投稿数は少なくても、法的に重大な権利侵害や差別表現が含まれている場合には、早急な対応が必要です。

炎上対応では、「騒がれているか」だけでなく、「何が問題なのか」を分解して把握する必要があります。

2 「静観」「謝罪」「反論」の判断

広告炎上時の初動方針は、大きく分けると、静観、謝罪、説明・反論の3つです。どれが正しいかは、事案の性質によって異なります。

【初動判断の流れ】

批判内容を把握する

        ↓

法的リスクを確認する

        ↓

社会的受け止めを評価する

        ↓

関係者・契約上の影響を確認する

        ↓

静観・謝罪・説明・反論を選択する

明らかに自社に非がある場合

著作権侵害、商標権侵害、景品表示法違反、薬機法違反、差別的表現など、法的または倫理的に問題が明確な場合には、速やかに広告を停止し、謝罪と再発防止策を公表することが基本です。

この場合、対応が遅れるほど「問題を軽視している」「批判されるまで放置していた」と受け止められます。特に、権利侵害が明らかな広告を公開し続けると、損害が拡大し、相手方から差止めや損害賠償を請求されるリスクも高まります。

法的には違法と断定できないが、社会的批判が強い場合

一方、表現の解釈が分かれる場合や、特定の属性への配慮不足が問題となっている場合には、法的責任の有無と社会的対応を切り分ける必要があります。

このようなケースで、いきなり「当社が違法行為を行いました」「権利侵害を認めます」と表明すると、後の交渉や訴訟で不利になるおそれがあります。他方で、「当社に問題はありません」とだけ発信すると、世論の感情を逆なでし、炎上が拡大することもあります。

そのため、たとえば「ご指摘を真摯に受け止め、表現の意図や制作過程を確認しております」「不快に感じられた方がいることを重く受け止めています」といった形で、法的責任を断定せずに、受け止めと調査方針を示す表現が有効な場合があります。

明らかな事実誤認・誹謗中傷の場合

批判の内容が明らかな事実誤認に基づく場合や、悪質なデマ、なりすまし、虚偽投稿が拡散している場合には、一定の説明や反論が必要です。

ただし、反論のトーンには注意が必要です。企業が強い言葉で個人ユーザーを攻撃すると、「大企業が一般人を黙らせようとしている」と受け止められることがあります。反論する場合でも、感情的な表現を避け、確認済みの事実、誤っている点、今後の対応を淡々と示すことが重要です。

3 謝罪文・リリースに必要な要素

炎上時の謝罪文は、単に「不快な思いをさせて申し訳ありません」と書けばよいわけではありません。この定型文だけでは、「何が問題だったのか分かっていない」「批判を受けたから形式的に謝っているだけだ」と受け止められることがあります。

適切なリリースには、少なくとも次の要素が必要です。

要素内容注意点
事実関係いつ、どの広告で、何が問題となったのか未確認情報を断定しない
問題の認識どの表現について、どのような指摘を受けているか批判内容を矮小化しない
受け止め不快感、懸念、誤解を与えたことへの姿勢法的責任の承認とは切り分ける
原因企画・制作・確認体制のどこに課題があったか関係会社への責任転嫁に見えないようにする
対応広告停止、調査、関係者への確認、問い合わせ窓口実施済みと予定を分けて書く
再発防止チェック体制、研修、外部確認、承認プロセス抽象論ではなく具体策を示す

特に、法的責任が確定していない段階での表現には注意が必要です。

たとえば、著作権侵害が疑われている段階で、「当社は著作権侵害を行いました」と断定すると、後の損害賠償交渉で不利になる可能性があります。実際には、類似性や依拠性、権利の帰属、利用許諾の有無など、確認すべき点が残っている場合もあります。

このような場合には、次のような表現にとどめることが考えられます。

【表現例】

・本広告について、第三者の作品と類似しているとのご指摘を受けております。

・当社はこのご指摘を重く受け止め、現在、制作過程および権利関係を確認しております。

・確認が完了するまでの間、当該広告の掲載を停止いたします。

・調査結果を踏まえ、必要な対応を速やかに行ってまいります。

このように、批判を無視せず、誠実に受け止めながらも、未確定の法的責任を過度に認めない文言設計が重要です。

4 広告を取り下げるべきか

炎上時には、「広告を削除すれば収まる」と考えがちです。しかし、広告取り下げは、単純な削除作業ではありません。広告の停止は、世論対応、法的リスク、契約関係、媒体対応、社内外の説明責任を伴う経営判断です。

広告を取り下げるかどうかは、次のような事情を総合的に考慮します。

判断要素確認内容
法的リスク権利侵害、法令違反、不当表示の可能性
社会的リスク差別、不謹慎、ハラスメント、ステレオタイプ助長
拡散状況SNS、報道、著名人投稿、取引先からの問い合わせ
広告媒体テレビCM、屋外広告、SNS広告、店頭POP、LP
契約関係広告代理店、制作会社、媒体社、出演者との契約
代替対応注記修正、差し替え、配信停止、説明追加
事業影響キャンペーン中止、販売計画、在庫、株主・取引先対応

テレビCMの場合、放送局の考査、スポンサー契約、広告枠の取扱いが関係します。ウェブ広告の場合は、配信プラットフォームごとの停止手続きや、広告代理店とのオペレーションが必要です。インフルエンサー投稿であれば、投稿者本人、所属事務所、広告主、代理店の責任分担も確認する必要があります。

また、炎上元となった画像や動画を削除しても、ネット上にはスクリーンショットや転載が残り続けます。削除だけを行い、説明をしないと、「証拠隠滅」「逃亡」「批判を無視した」と受け止められることがあります。

そのため、広告を取り下げる場合には、少なくとも次の点を説明することが望ましいです。

【取り下げ時に説明すべき事項】

・どの広告を停止または削除したのか

・なぜ停止または削除したのか

・現時点で何を確認しているのか

・今後どのように調査・対応するのか

・問い合わせ先はどこか

広告の取り下げは、炎上対応の終わりではなく、説明責任の始まりです。

5 広報と法務の役割分担

炎上対応では、広報と法務が同じテーブルで対応方針を決める必要があります。それぞれの視点が異なるからです。

部門主な役割
広報世論、メディア、SNS、ブランドイメージ、問い合わせ対応
法務法令違反、権利侵害、契約責任、訴訟・行政対応
事業部門広告の目的、商品・サービス内容、販売計画、顧客影響
経営陣会社としての方針決定、謝罪・説明のレベル判断
外部専門家客観的評価、文言調整、権利者・行政・媒体対応

広報だけで対応すると、世論を鎮めるために法的責任を過度に認めてしまうリスクがあります。逆に、法務だけで対応すると、法的には正しくても、冷たく防御的なメッセージになり、批判を拡大させることがあります。

たとえば、法務の視点では「違法性は認められない」と言えるケースでも、広報の視点では「不快に感じた人への配慮を示す必要がある」と判断される場合があります。反対に、広報が「全面謝罪したい」と考えるケースでも、法務の視点では「権利侵害を断定する文言は避けるべき」と判断されることがあります。

重要なのは、法的責任の認定と、社会的な受け止めへの対応を分けて書くことです。

6 炎上を予防するためのリーガルチェック

最も有効な炎上対策は、炎上後の対応ではなく、公開前の予防です。

広告制作の現場では、商品の魅力を伝えるために、強いコピー、印象的なビジュアル、挑戦的な演出が求められます。しかし、社内や制作チームでは「面白い」「目立つ」と評価された表現が、社会からは差別的、攻撃的、不謹慎、時代遅れと受け止められることがあります。

公開前には、次の観点でチェックすることが重要です。

チェック観点確認する内容
ジェンダー性別役割の固定化、性的対象化、偏見の助長がないか
人権・差別人種、国籍、障害、年齢、職業、地域への差別表現がないか
宗教・文化特定の信仰、慣習、文化を軽視・揶揄していないか
災害・事件不謹慎と受け止められる時期・表現ではないか
知的財産既存作品、写真、音楽、キャラクター、ロゴに類似していないか
肖像・パブリシティ人物画像、著名人、インフルエンサーの権利処理は済んでいるか
表示規制景表法、薬機法、特商法、業法上の広告規制に反していないか
ステルスマーケティング広告であることが明確に表示されているか
契約制作会社・出演者・媒体社との権利処理や責任分担は明確か

特に、ジェンダー、人権、宗教、災害、病気、家庭環境、職業差別などのテーマは、企業側に悪意がなくても炎上しやすい領域です。広告担当者だけで判断せず、法務、広報、外部専門家、場合によっては当事者視点を持つ第三者のレビューを入れることが望ましいです。

7 社内体制として整えておくべきこと

広告炎上は、起きてから体制を作るのでは遅いことがあります。炎上時には、数時間単位で判断を求められるため、平時から対応ルールを整えておく必要があります。

【平時に整備すべき体制】

広告審査フロー

        ↓

炎上時の初動連絡網

        ↓

広報・法務・事業部門の合同判断体制

        ↓

広告停止権限の明確化

        ↓

謝罪文・説明文の承認ルート

        ↓

SNS・メディア監視体制

        ↓

再発防止策の実行・記録

具体的には、広告公開前の承認フロー、外部制作会社との契約上の責任分担、権利処理の確認方法、SNS炎上時のモニタリング体制、問い合わせ窓口、リリース文の承認者、広告停止の決裁権者を明確にしておくべきです。

また、制作会社や広告代理店との契約では、第三者の権利侵害がないことの表明保証、素材の出所確認、炎上時の協力義務、損害が発生した場合の責任分担を定めておくことが重要です。広告炎上は、広告主だけでなく、制作会社、代理店、出演者、媒体社を巻き込むため、契約上の備えも欠かせません。

8 弁護士のコメント

広告炎上対応で最も避けるべきなのは、感情的な初動です。批判に驚いてすぐ全面謝罪する、逆に「問題ない」と強く反論する、あるいは何の説明もなく広告を削除する。いずれも、状況によっては火に油を注ぐ結果になります。

法的責任の有無と、世論が納得するかどうかは別問題です。違法ではないからといって社会的批判を無視してよいわけではありません。一方で、世論が厳しいからといって、未確定の権利侵害や法令違反を安易に認めるべきでもありません。

弁護士は、批判の内容が法的根拠に基づくものなのか、どの表現がリスクになるのか、謝罪文でどこまで認めるべきか、広告を取り下げる場合にどのような説明が必要かを整理します。広報部門と連携することで、法的リスクを抑えながら、社会的にも誠実な対応を設計できます。

広告表現は、企業の価値観を社会に示すものです。だからこそ、公開前には、社内の常識が世間の非常識になっていないか、第三者の視点で確認する必要があります。炎上後の危機対応だけでなく、炎上を起こさないためのチェック体制を整えることが、企業ブランドを守る最も確実な方法です。

比較広告はどこまで許されるのか

2026-07-25

アメリカのテレビCMやウェブ広告では、競合他社の商品名をはっきり出して、自社商品の優位性を強調する比較広告がよく見られます。たとえば、飲料、通信、保険、自動車などの分野では、競合商品と価格、性能、満足度を並べて比較し、「当社の方が優れている」と訴求する広告手法が一般的に使われています。

一方、日本では、特定の競合他社を名指しして攻撃的に比較する広告は、それほど多くありません。これについては、「日本人は対立を好まないから」「企業文化として名指しの批判を避けるから」と説明されることもあります。

しかし、法的な観点から見ると、それだけではありません。日本で比較広告が慎重に運用されている背景には、景品表示法、不正競争防止法、商標法、さらに名誉毀損や侮辱に関するリスクが存在します。

もっとも、比較広告そのものが禁止されているわけではありません。景品表示法も、競争事業者の商品・サービスとの比較自体を禁止しているのではなく、自己の商品・サービスが競争事業者のものより著しく優良または有利であると一般消費者に誤認される表示を規制しています。消費者庁も、比較広告が適正に行われれば、消費者が商品やサービスを選択する際の有用な情報になり得るとの考え方を示しています。

つまり、比較広告は「禁止されている広告」ではなく、「設計を誤ると違法リスクが高い広告」です。適切な根拠を準備し、公正な比較方法を採用すれば、自社の強みを分かりやすく伝える有効なマーケティング手段となります。

1 比較広告が問題となる典型場面

比較広告には、さまざまな形があります。競合他社を名指しするものもあれば、「A社」「B社」と匿名化して比較するもの、「業界平均」「従来品」「一般的な商品」と比較するものもあります。

実務上、問題になりやすいのは、次のような広告です。

広告表現の例問題になりやすい理由
「他社製品より2倍長持ち」比較対象・試験条件・根拠データが不明確になりやすい
「業界No.1」調査範囲、調査時点、評価項目の設計が問題になりやすい
「A社より安い」価格比較の時点、地域、割引条件を明示する必要がある
「従来品より高性能」どの従来品と、どの性能を比較したのかが重要
「競合品は壊れやすい」不正競争防止法上の信用毀損や名誉毀損のリスクがある
「日本で当社だけ」実際に他社も同様の技術を採用していないか確認が必要

消費者庁は、問題となる比較広告の例として、「この技術は日本で当社だけ」と表示したが実際には他社も同じ技術を採用していた例、大学合格実績No.1と表示したが他校と異なる方法で数値化していた例、自社に不利な割引サービスを除外して料金比較をした例、周辺の価格調査をせずに「この辺で一番安い店」と表示した例などを挙げています。

これらに共通するのは、比較広告の結論が消費者にとって魅力的であっても、その根拠や比較方法に問題があれば、不当表示となり得るという点です。

2 適法な比較広告に必要な3要件

消費者庁の「比較広告に関する景品表示法上の考え方」では、比較広告が不当表示とならないためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があるとされています。

【適正な比較広告の3要件】

① 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること

        ↓

② 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること

        ↓

③ 比較の方法が公正であること

この3要件は、比較広告のリーガルチェックにおける基本フレームです。広告制作の段階では、キャッチコピーのインパクトだけでなく、この3要件を順番に確認する必要があります。

① 主張内容が客観的に実証されていること

まず、比較広告で主張する内容は、客観的に実証されていなければなりません。

たとえば、「A社製品より洗浄力が高い」「競合品より通信速度が速い」「業界で最も満足度が高い」と表示するのであれば、その主張を裏付ける試験、調査、測定結果が必要です。

ここで重要なのは、実証が必要な範囲は、広告で主張する範囲と一致していなければならないという点です。消費者庁ガイドラインは、ある市での調査結果をもとに「A商品よりB商品の方が優秀」と表示する場合、その市において比較調査が行われ、表示どおりの調査結果が出ていることが必要であると説明しています。

したがって、限定的な条件で行った試験結果をもとに、あたかも常に優れているかのように表示することは危険です。たとえば、特定温度、特定環境、特定ユーザー層だけで得られた結果を、一般的な性能差であるかのように広告することは、優良誤認表示につながる可能性があります。

また、「美味しい」「使いやすい」「心地よい」といった主観的評価を比較する場合には、特に注意が必要です。主観的な感想をまったく使えないわけではありませんが、「満足度No.1」「選ばれている」「一番使いやすい」といった客観的事実のように見える表現にする場合には、調査設計、サンプル数、調査対象、質問項目、集計方法が適切であるかを検証する必要があります。

② 数値や事実を正確かつ適正に引用すること

次に、実証されたデータを正確かつ適正に引用する必要があります。

データ自体が存在していても、その見せ方が不適切であれば、不当表示となるおそれがあります。たとえば、調査結果の一部だけを切り取り、自社に有利な数値だけを強調する、他社に有利な条件を除外する、試験条件を小さく表示する、比較対象を分かりにくくする、といった方法は問題になり得ます。

消費者庁の資料でも、店頭チラシの料金比較で、自社に不利となる割引サービスを除外して自社が最も安いように表示した例が、問題となる比較広告として示されています。ウェブ

価格比較であれば、比較時点、地域、プラン、割引条件、契約期間、送料、手数料などを正確に示す必要があります。性能比較であれば、試験機関、試験方法、測定条件、対象機種、サンプル数などを、消費者が誤解しない程度に明示すべきです。

「数字は正しいが、見せ方が不公平」という広告は、実務上よく問題になります。広告審査では、数字そのものだけでなく、一般消費者が広告全体からどのような印象を受けるかを確認する必要があります。

③ 比較の方法が公正であること

最後に、比較方法そのものが公正でなければなりません。

たとえば、自社の最新モデルと他社の旧モデルを比較し、そのことを明示せずに「当社製品の方が高性能」と表示するのは、公正な比較とはいえません。また、競合他社の商品群の中から性能が低い商品だけを選んで比較し、あたかも競合全体に対して優位であるかのように表示することも問題です。

比較広告は、同じカテゴリー、同じ用途、同じ条件で比較することが基本です。比較対象の選び方が恣意的であれば、たとえ個別の数値が正確でも、広告全体として消費者を誤認させるおそれがあります。

3 不正競争防止法上のリスク

比較広告は、景品表示法だけでなく、不正競争防止法上の問題にもなります。

特に注意すべきなのが、競合他社の商品やサービスについて、虚偽の事実を告知・流布し、その営業上の信用を害する行為です。このような行為は、不正競争防止法上の不正競争に該当する可能性があります。

たとえば、根拠が不十分なまま「A社の製品は壊れやすい」「B社の商品は有効成分が少ない」「C社のサービスはセキュリティが弱い」と表示すれば、競合他社から、広告の差止め、損害賠償、信用回復措置などを求められるリスクがあります。比較広告によって他社製品を不当に劣位に見せる場合には、信用毀損行為や品質等誤認表示として問題となる可能性があるとされています。

この点で、景品表示法と不正競争防止法は、問題となる場面が少し異なります。

法律主な保護対象・機能比較広告で問題となる例
景品表示法一般消費者の適正な商品選択自社商品が実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示
不正競争防止法競争秩序・事業者の営業上の信用他社商品の品質や信用を害する虚偽・不公正な比較
刑法上の名誉毀損・侮辱人や法人の社会的評価事実摘示や侮辱的表現により相手方の社会的評価を低下させる表現

つまり、消費者に対して自社商品を実際以上に優れているように見せれば景品表示法の問題となり、競合他社を不当に貶めれば不正競争防止法や名誉毀損の問題となり得ます。

広告担当者としては、「自社の優位性を言っているだけ」と考えがちですが、比較広告は常に、相手方の商品や信用を相対的に下げる側面を持ちます。そのため、競合他社からの反論や法的請求に耐えられるだけの根拠を準備しておく必要があります。

4 商標・ロゴ・商品画像の扱い

比較広告では、他社の社名や商品名を出すべきかどうかも問題になります。

公正な比較広告として必要な範囲で、競合他社の商品名やサービス名を記載することは、一般に、直ちに商標権侵害になるとは限りません。なぜなら、その表示は自社の商品やサービスの出所を示すためではなく、比較対象を特定するために使われているにすぎないと考えられる場合があるからです。

しかし、実務上は慎重な判断が必要です。相手方のロゴマーク、パッケージ画像、広告写真、キャラクター、ウェブサイトのスクリーンショットなどを無断で使うと、商標権だけでなく、著作権、意匠、パブリシティ、信用毀損など、複数のリスクが生じる可能性があります。

特に、相手方のロゴを大きく表示し、その横に否定的なメッセージを置くような広告は、相手方から強く反発される可能性が高いでしょう。

実務上は、次のようにリスクを段階的に考えるのが有用です。

使用方法リスク感
「A社製品」「B社サービス」と文字で比較対象を示す比較的低いが、表示内容の正確性は必要
登録商標である商品名を必要最小限で記載する必要性・態様によって判断
相手方のロゴを使用するリスクが高い
商品パッケージや広告画像を無断掲載する著作権・商標権等のリスクが高い
相手方のブランドイメージを揶揄する演出を行う信用毀損・名誉毀損のリスクが高い

日本では、競合他社を明示する場合でも、必要最小限の文字表示にとどめる、または「A社」「B社」「主要他社」などの表現を用いる運用が多く見られます。ただし、匿名化すれば常に安全というわけではありません。消費者や業界関係者が特定の会社を容易に想起できる場合には、実質的に名指し広告と同様のリスクが生じます。

5 比較広告を実施する前のチェックリスト

比較広告を実施する際は、広告表現が完成してから法務確認を行うのではなく、企画段階からエビデンスを設計することが重要です。

【比較広告のリーガルチェック手順】

① 何を比較するのかを決める

   価格、性能、満足度、成分、実績など

② 比較対象を特定する

   競合商品、業界平均、旧モデル、従来品など

③ 実証資料を準備する

   試験データ、調査結果、価格調査、仕様書など

④ 引用方法を確認する

   条件、時点、対象範囲、注記の表示を確認

⑤ 表現のトーンを調整する

   誹謗中傷、揶揄、過度な断定を避ける

⑥ 商標・画像の使用を確認する

   商品名、ロゴ、パッケージ画像の利用範囲を検討

⑦ 競合から反論された場合の説明資料を準備する

   根拠資料、調査方法、社内確認記録を保管

また、消費者庁の景品表示法ガイドブックでは、事業者が表示を行う場合には、その根拠となる情報を確認し、関係部門で共有し、事後的に確認できるようにすることが重要であるとされています。

広告は、一度公開されると、SNSや比較サイトで拡散され、競合他社や行政機関の目にも触れます。根拠資料が社内に残っていなければ、後から「なぜその表示をしたのか」を説明できません。特に比較広告では、広告公開前のチェック記録、試験データ、調査票、集計結果、比較対象の選定理由を保存しておくことが重要です。

6 弁護士の活用

比較広告は、自社の強みを短時間で消費者に伝える強力な手段です。価格、品質、性能、実績などを競合と並べて示すことで、通常の広告よりも説得力を持たせることができます。

しかし、その分、法的リスクも高くなります。景品表示法上の不当表示として行政処分の対象となるリスク、競合他社から不正競争防止法に基づく差止請求や損害賠償請求を受けるリスク、商標・著作権・名誉毀損をめぐる紛争リスクがあるためです。

弁護士によるチェックでは、単に「この表現は強すぎる」といった感覚的な確認ではなく、次の点を具体的に検証します。

チェック項目確認内容
エビデンスの十分性広告で主張する範囲を裏付けるデータがあるか
調査・試験方法社会通念上妥当な方法で実施されているか
引用の正確性数値や事実を都合よく切り取っていないか
比較対象の公正性同等条件の製品・サービスと比較しているか
表現の適切性誹謗中傷、断定、過度な煽りになっていないか
知的財産権他社の商標、ロゴ、画像を不適切に使用していないか
紛争対応力競合他社や行政から指摘を受けた場合に説明できるか

攻めた広告を行うときほど、守りの設計が必要です。比較広告は、法的要件を満たせば、自社の優位性を示す有効な武器になります。一方で、根拠が弱いまま競合を名指ししたり、自社に有利な条件だけを切り取ったりすると、広告効果以上の法的・ reputational な損失を招きかねません。

比較広告を成功させるポイントは、「相手を攻撃すること」ではなく、「消費者が合理的に選択できる情報を、公正な方法で示すこと」です。事前にエビデンスを整え、表現を精査し、反論に耐えられる状態で公開することが、実務上もっとも重要です。

情報商材・投資系商材の広告表現と法的リスク

2026-07-20

「スマホだけで月収100万円」「1日5分で不労所得」「上場確実な未公開株」「誰でも再現性100%」――SNSや動画広告では、このような情報商材や投資話の広告が頻繁に表示されます。

しかし、こうした商材は、購入するまで中身を確認しにくく、購入後に「内容が薄いPDFだけだった」「説明されたようには稼げなかった」「返金保証があると言われたのに返金されない」といったトラブルが生じやすい分野です。内閣府資料でも、情報商材について、儲け話や内職などのノウハウをインターネットで販売するものと説明した上で、「中身が大したものではなかったので解約したい」「情報提供者と連絡が取れない」「儲けるために違法行為をさせられる」といった相談が急増していることが紹介されています。

情報商材や投資系商材の広告では、「売れるコピー」を優先するあまり、景品表示法、特定商取引法、消費者契約法、金融商品取引法、刑法上の詐欺罪などに抵触するリスクがあります。特に、収益を保証する表現、販売者情報を隠す表示、実態のない返金保証は、行政処分や返金請求、決済停止の引き金になります。

1 「誰でも簡単に稼げる」は危険な表示

情報商材のランディングページでよく見られるのが、次のような表現です。

  • スキル不要
  • 初心者でも必ず稼げる
  • 1日5分で月収100万円
  • 再現性100%
  • スマホだけで不労所得
  • 完全自動で収益化
  • 参加者全員が初月から黒字
  • リスクゼロ
  • 今だけ限定で確実に稼げる

これらは、購入者が同じ結果を得られるかのように誤認させる表示です。実際には、ごく一部の成功例にすぎない、前提条件が特殊である、追加費用や相当な作業が必要である、そもそも実績が存在しないといった場合には、景品表示法上の優良誤認表示や有利誤認表示、特定商取引法上の誇大広告に該当する可能性があります。

特定商取引法では、通信販売について、表示事項等に関し、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良または有利であると人を誤認させるような表示が禁止されています。また、消費者契約法では、将来における不確実な事項について断定的判断を提供する行為が問題となり得ます。

「誰でも」「必ず」「確実」「100%」といった言葉は、情報商材広告では特に危険です。収益は、本人の能力、作業量、市場環境、広告費、在庫、資金力、プラットフォーム規約、運用タイミングなどに左右されるため、原則として保証できません。

2 一部の成功例を一般化してはいけない

実績表示にも注意が必要です。

「受講生Aさんが月収300万円達成」「主婦でも初月100万円」「サラリーマンが副業で年商1億円」といった事例を掲載する場合、その実績が本当に存在するのか、証拠があるのか、同じ商材を購入した一般消費者が通常期待できる結果なのかを確認する必要があります。

実績が一部の例外的な成功者だけのものなのに、購入者の多くが同じ成果を得られるかのように見せる広告は危険です。広告塔となる人物、預金残高画像、収益画面、顧客の声が架空・加工・誇張であれば、詐欺的商法と評価される可能性もあります。

情報商材被害の特徴として、勧誘ページでは「月収●万円達成できる」「誰でも億万長者になれる」と記載されている一方、購入するまで具体的な手法が分からないこと、広告塔が高額な残高画像などを示して、同じように稼げると勧誘することがあると指摘されています。

広告で実績を示すなら、少なくとも次の点を明確にすべきです。

  • 実績の対象期間
  • 実績者の属性
  • 必要だった作業量
  • 広告費・仕入費・外注費などの費用
  • 売上なのか利益なのか
  • 税引前か税引後か
  • 再現性の限界
  • 同様の成果を保証しない旨

ただし、注意書きを入れれば何でも許されるわけではありません。本文で「誰でも月収100万円」と強く訴求し、末尾に小さく「効果には個人差があります」と書いても、広告全体として誤認を招く場合は問題になります。

3 特定商取引法に基づく表示義務

情報商材の多くは、インターネット上で販売されるため、特定商取引法上の通信販売に該当します。通信販売では、販売価格、送料その他消費者が負担する金額、支払時期・方法、商品の引渡時期、返品・解除に関する事項、販売業者の氏名・名称、住所、電話番号などを表示する必要があります。

特に問題になりやすいのは、販売者情報です。

  • 住所が虚偽
  • バーチャルオフィスだけで実態がない
  • 電話番号が記載されていない
  • 連絡先がLINEだけ
  • 販売者名が個人名・屋号だけで不明確
  • 責任者名がない
  • 海外法人を装っている
  • 返金窓口が存在しない

これらは、トラブル時に消費者が販売業者へ連絡できない状態を作るものであり、特定商取引法違反のリスクがあります。消費者庁も、特定商取引法について、消費者トラブルを生じやすい取引形態を対象に、事業者の不適正な勧誘・取引を取り締まる行為規制や、トラブル防止・解決のための民事ルールを定めていると説明しています。

また、通信販売では、契約の申込みとなることを誤認させる表示や、申込み内容について誤認させる表示も禁止されています。申込ボタンの直前で、総額、継続課金の有無、返品条件、追加費用を明確に表示しない設計は危険です。

4 「返金保証」は条件を明確にしなければならない

情報商材広告では、「稼げなければ全額返金」「成果が出なければ返金保証」といった表示がよく使われます。これは消費者に安心感を与える強い訴求ですが、実際の返金条件が極端に厳しい場合、有利誤認表示となるリスクがあります。

たとえば、次のような条件は問題になりやすいです。

  • 365日毎日ブログを更新した場合のみ返金
  • 事業者指定の作業をすべて実施した証拠を出した場合のみ返金
  • 返金申請期間が極端に短い
  • 返金保証と表示しながら、規約では返金不可
  • サポートに1回でも返信しなかったら返金不可
  • 追加プラン購入者だけ返金対象
  • 成果が出なかったことの証明を消費者に過度に求める
  • 返金窓口が実質的に機能していない

返金保証を表示する場合は、保証対象、保証期間、申請方法、必要資料、除外条件、返金時期、返金対象となる金額を明確にしなければなりません。広告の目立つ部分で「全額返金」と表示し、細かい規約でほとんど返金されない仕組みにしている場合、消費者を誤認させる表示になります。

また、通信販売では返品に関する事項の表示が重要であり、返品の可否、返品期間、条件、送料負担の有無を表示する必要があります。

5 消費者契約法上の取消しリスク

情報商材では、販売ページだけでなく、LINE、Zoom、電話、無料セミナー、オンライン説明会での勧誘も問題になります。

消費者契約法は、事業者の一定の行為により消費者が誤認・困惑した場合、契約の申込みまたは承諾の意思表示を取り消せる制度を定めています。不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知、不退去、退去妨害などが問題となります。

たとえば、次のような勧誘は取消しリスクが高いです。

  • 「必ず利益が出る」と断言する
  • 「全員が初月から黒字」と虚偽説明する
  • 「追加費用はない」と言いながら後で高額プランを勧める
  • 「このツールは独自AIで自動収益化する」と言いながら実態がない
  • 「返金可能」と言いながら条件を隠す
  • 「今日契約しないと二度と参加できない」と虚偽の限定性を示す
  • 消費者金融での借入れを指示する
  • 断っているのに長時間勧誘を続ける

広告と個別勧誘の内容は、一体として証拠化されます。LPだけを適法に整えても、LINEや電話で断定的な収益保証をしていれば、法的リスクは避けられません。

6 決済・チャージバックのリスク

情報商材トラブルでは、クレジットカード決済、決済代行会社、電子マネー、収納代行、銀行振込などが関係します。内閣府資料でも、情報商材は販売する個人、サイト業者、カード会社、海外の決済代行会社等が絡み、トラブル時の解決が困難なケースがあると指摘されています。

クレジットカード決済では、商品が届かない、購入した商品やサービスが想定と違う、カード不正利用があったなどの場合に、カード利用者がチャージバックを申し立てることがあります。チャージバックが認められれば、取引が取り消され、加盟店側は売上を失う可能性があります。

また、決済代行会社側から見ると、詐欺的商材を扱う加盟店は重大なリスクです。チャージバックが多発すれば、加盟店契約の解除、売上金の留保、アカウント停止につながります。情報商材被害の救済実務でも、クレジットカード決済や電子マネー決済の場合、決済代行業者に販売業者の情報開示を求め、決済代行業者を介して返金を求めることがあるとされています。

販売者だけでなく、広告代理店、アフィリエイトASP、決済代行会社、プラットフォーム事業者も、悪質な商材に関与していると評価されると、レピュテーションリスクや法的請求の対象となる可能性があります。少なくとも、加盟店審査、商材審査、広告審査、苦情件数の監視、チャージバック率の管理は必須です。

7 アフィリエイター・広告代理店の責任

情報商材は、販売者本人だけでなく、アフィリエイターや広告代理店を通じて拡散されることが多い分野です。

アフィリエイターが「この商材で誰でも月収100万円」「私も初月で回収できました」といった虚偽・誇大表示を行えば、消費者の誤認を招きます。広告主がその表現を指示・承認・放置していた場合、広告主自身の表示として問題になる可能性があります。

広告代理店も、「クライアントが言っただけ」「LPは制作しただけ」とはいえません。詐欺的商材であることを認識しながら、煽り広告を制作・運用し、集客に深く関与していた場合には、不法行為上の責任を問われるリスクがあります。

実務上は、次のような管理が必要です。

  • アフィリエイト用禁止表現リストを作る
  • 収益保証表現を禁止する
  • 実績表示の根拠資料を確認する
  • LPと広告クリエイティブを事前審査する
  • アフィリエイター投稿を定期監視する
  • 違反表示は即時修正・停止させる
  • 苦情・返金請求・チャージバック率を監視する
  • 契約上、法令違反時の解除・損害賠償条項を入れる

8 販売前に確認すべきチェックリスト

情報商材や副業・投資系講座を販売する前に、最低限、次の点を確認してください。

  • 「必ず」「確実」「100%」「誰でも」といった断定表現がないか
  • 月収・年収・利益実績の根拠資料があるか
  • 売上と利益を混同していないか
  • 追加費用の有無を明示しているか
  • 返金保証の条件が明確かつ実行可能か
  • 特商法表示の氏名・住所・電話番号が正確か
  • 申込最終画面に総額・返品条件・継続課金が明示されているか
  • LINE・電話勧誘でLP以上の断定表現をしていないか
  • 利用者の声や残高画像が実在・真正なものか
  • アフィリエイターが誇大広告をしていないか
  • 金融商品取引法上の登録が必要な投資助言に当たらないか
  • 苦情・返金・チャージバック対応体制があるか

「まっとうなノウハウを売っている」という認識があっても、広告表現が過激であれば、消費者からは詐欺的商材と見られます。特に、収益性を売りにする商材では、広告コピーの一語一句がリスクになります。

9 まとめ

情報商材や投資系商材の広告では、「スマホだけで月収100万円」「1日5分で誰でも稼げる」「再現性100%」「稼げなければ全額返金」といった表現は、景品表示法、特定商取引法、消費者契約法上の重大なリスクを伴います。

情報商材は、購入前に中身を確認しにくく、販売者の宣伝文句だけが判断材料になりやすいため、トラブルが起きやすい商品です。内閣府資料でも、情報商材について、購入前に内容を確認できず、宣伝文句だけが判断材料になるためトラブルが起きやすいと指摘されています。

通信販売では、販売業者名、住所、電話番号、価格、支払方法、引渡時期、返品条件などを正確に表示する必要があり、誇大広告も禁止されています。また、将来の収益について断定的判断を提供した場合、消費者契約法上の取消しや返金請求の対象となり得ます。

さらに、クレジットカード決済では、商品・サービスが想定と異なる場合などにチャージバックが問題となり、加盟店契約解除や売上留保につながる可能性があります。販売者、広告代理店、アフィリエイター、決済代行会社は、広告表現と販売スキームを事前に精査し、違法・詐欺的と評価される表示を排除する体制を整える必要があります。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

探偵業・結婚相談所の広告表現に関する法的注意点

2026-07-15

探偵業や結婚相談所は、利用者が深刻な悩みや不安を抱えて相談することが多いサービスです。浮気調査、所在調査、結婚相手の紹介などは、利用者の私生活や将来に大きく関わります。そのため、広告で過度に期待をあおったり、結果を保証するような表現を使ったりすると、景品表示法、特定商取引法、探偵業法などの問題が生じます。

特に、「成功率100%」「必ず見つけます」「絶対に結婚できます」「追加料金一切なし」といった表現は、利用者の不安や焦りにつけ込むものと評価されやすく、行政処分やトラブルにつながるおそれがあります。これらの業種では、広告表現の誠実さそのものが事業者の信用を左右します。

1 「100%成功」「必ず結婚」は使ってはいけない

探偵業や結婚相談所では、サービスの性質上、結果を保証することは困難です。

浮気調査で証拠が取れるか、人探しで対象者を発見できるか、結婚相談所で成婚に至るかは、依頼内容、対象者の行動、利用者本人の条件、相手方の意思、調査環境など、多くの事情に左右されます。事業者が一方的に結果をコントロールできるものではありません。

そのため、次のような表現は避けるべきです。

  • 成功率100%
  • 絶対に見つけます
  • 必ず証拠を取ります
  • 必ず結婚できます
  • 全員成婚
  • 失敗なし
  • 完全成功報酬
  • 業界最安値
  • 追加料金一切なし
  • 返金保証で安心

これらは、景品表示法上の優良誤認表示や有利誤認表示、特定商取引法上の誇大広告に該当する可能性があります。特定商取引法は、特定継続的役務提供について、役務の内容等に関し、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良または有利であると人を誤認させるような表示を禁止しています。

「成功率98%」などの数値を使う場合も同様です。その「成功」の定義、算出期間、分母・分子、対象案件、除外案件を説明できなければなりません。たとえば、探偵業で「報告書を提出したら成功」と定義しているのに、広告上は「浮気の決定的証拠が取れる成功率」であるかのように見せれば、消費者を誤認させます。

2 料金表示は「安さ」よりも総額の明確性が重要

探偵業でも結婚相談所でも、料金トラブルは非常に多い分野です。

「1時間3,000円」「成功報酬のみ」「追加料金なし」と広告しておきながら、実際には車両代、機材費、深夜料金、報告書作成費、延長料金、交通費、登録料、月会費、成婚料、紹介料、システム利用料などが別途発生する場合、広告表示と実際の契約内容が食い違うことになります。

特に、「追加料金一切なし」と表示するのであれば、利用者が通常想定する追加費用が本当に発生しない設計でなければなりません。別途費用が発生する可能性があるなら、広告段階でその内容と条件を明示すべきです。

結婚相談所では、初期費用、月会費、紹介料、イベント参加費、成婚料、中途解約時の精算方法を明確に表示する必要があります。探偵業では、基本料金、稼働時間、調査員人数、車両費、機材費、実費、延長料金、成功報酬の発生条件を明確にしておくべきです。

3 探偵業では届出と契約書面が重要

探偵業を営むには、探偵業法に基づく届出が必要です。利用者にとっても、探偵業届出証明書が交付されている事業者かどうかは、信頼性を確認する重要なポイントになります。探偵業界団体の説明でも、探偵業者を選ぶ際の確認事項として、探偵業届出証明書が交付されているか、広告や宣伝が誇大ではないか、探偵業法に則った契約書か、契約書にクーリング・オフの説明があるかが挙げられています。

探偵業の広告では、届出済みであることや届出番号を表示することが望ましく、少なくとも、無届業者であるかのような疑念を生じさせない表示が必要です。また、届出をしているからといって、調査内容が何でも許されるわけではありません。

探偵業では、差別的取扱いや違法行為につながる調査、ストーカー行為を助長する調査、対象者の生活の平穏を不当に害する調査は許されません。広告でも、「どんな情報でも調べます」「相手にバレずに何でも調査」「勤務先・住所・交友関係を完全把握」など、違法・不当な調査を連想させる表現は避けるべきです。

4 結婚相談所は特定継続的役務提供に該当する

結婚相手紹介サービスは、一定の期間・金額を超える場合、特定商取引法上の特定継続的役務提供に該当します。特定商取引法ガイドでは、結婚相手紹介サービスは「結婚を希望する者への異性の紹介」とされ、期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるものが対象とされています。

この場合、事業者は契約締結前後に法定書面を交付し、クーリング・オフや中途解約に関する事項を明記しなければなりません。契約書面には、役務の内容、対価、支払時期・方法、役務提供期間、クーリング・オフ、中途解約、事業者名・住所・電話番号、担当者名、契約日、特約などを記載する必要があります。

また、契約書面では、クーリング・オフに関する事項を赤枠の中に赤字で記載することなど、書面の表示方法にも細かなルールがあります。

5 クーリング・オフと中途解約を妨げてはいけない

結婚相手紹介サービスの特定継続的役務提供では、契約書面を受領した日から8日間はクーリング・オフが可能です。クーリング・オフは無条件撤回であり、事業者は違約金や手数料等の対価を請求できません。

したがって、次のような表示や契約条項は問題になります。

  • 契約後はいかなる理由でも返金不可
  • 入会金は理由を問わず全額没収
  • クーリング・オフはできません
  • 着手後は一切解約不可
  • 中途解約しても残金は返金しません
  • キャンペーン価格なので解約不可

特定商取引法では、クーリング・オフ期間経過後でも、消費者は将来に向かって特定継続的役務提供契約を中途解約できます。その際、事業者が請求できる損害賠償等には上限があります。そのため、「いかなる場合も返金しない」という一方的な表示は、法律上無効となるリスクがあります。

また、契約を急がせる広告にも注意が必要です。「今すぐ契約しないと手遅れ」「今日決めないと一生結婚できない」「調査を始めなければ相手に逃げられる」といった不安を過度にあおる表現は、トラブルの原因になります。特定商取引法では、勧誘時の不実告知や威迫行為により、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフを行わなかった場合、クーリング・オフ期間が延長されることがあります。

6 探偵業でもクーリング・オフ対応が必要となる場合がある

探偵業そのものは、特定継続的役務提供の6業種に含まれているわけではありません。しかし、探偵業者が消費者と契約する場面が、訪問販売や電話勧誘販売など特定商取引法の規制対象となる場合には、クーリング・オフ対応が必要になることがあります。

探偵業界団体の説明でも、探偵業者が消費者と契約するときに、特定商取引法の指定する訪問販売に該当する場合には、クーリング・オフ対応の契約書が必要であるとされています。

したがって、探偵業でも、事務所で依頼者が自ら来訪して契約したのか、事業者が自宅等に出向いたのか、電話勧誘から契約に至ったのか、インターネット申込み後にどのような勧誘があったのかによって、特定商取引法上の対応が変わります。

広告・LP・申込フォームでは、契約方法に応じて、クーリング・オフの有無や解約条件を適切に案内できる体制が必要です。

7 「成婚率No.1」「成功率No.1」表示の注意点

結婚相談所では、「成婚率No.1」「会員満足度No.1」「短期成婚実績No.1」といった広告が使われることがあります。探偵業でも、「調査成功率No.1」「顧客満足度No.1」といった表示が見られます。

これらのNo.1表示には、客観的かつ合理的な根拠が必要です。No.1表示等の根拠を確認する際には、第三者機関による調査があるかどうかを確認するだけでは不十分であり、調査内容と表示内容が適切に対応しているか、合理的な根拠があるかを確認する必要があると指摘されています。

結婚相談所では、特に「成婚」の定義が問題になります。たとえば、次のように事業者ごとに意味が異なり得ます。

  • 交際開始を成婚とする
  • 真剣交際開始を成婚とする
  • 婚約を成婚とする
  • 結婚意思の確認を成婚とする
  • 退会時点を成婚とする
  • 入籍を成婚とする

「成婚率No.1」と表示するなら、成婚の定義、算出期間、対象会員、分母、比較対象、調査主体を明確にしなければなりません。定義が異なる他社と比較してNo.1を表示することは、消費者を誤認させるおそれがあります。

探偵業の「成功率」も同様です。成功の定義が曖昧なまま数値を掲げることは危険です。依頼者は、通常「目的を達成できる可能性」と理解します。事業者側が「一定時間調査を実施したこと」や「報告書を提出したこと」を成功と数えている場合、広告上の印象と実態が乖離します。

8 実績・口コミ・体験談の管理

探偵業や結婚相談所では、利用者の声や成功事例が広告に使われることがあります。しかし、サービスの性質上、プライバシー性が極めて高いため、体験談の利用には慎重さが必要です。

次のような表示は避けるべきです。

  • 実在しない利用者の体験談
  • 事業者が創作した成功事例
  • 一部の成功事例だけを一般的成果のように見せる表示
  • 利用者の同意なく掲載した写真・年齢・職業・地域
  • 成功の可能性が高いかのように誤認させる加工
  • 失敗例やリスクを隠した過度に成功寄りの表示

体験談を掲載する場合は、本人の同意を取得し、必要に応じて匿名化し、事案が特定されないよう配慮する必要があります。また、「個人の感想であり、結果を保証するものではありません」といった注意書きだけでは、誇大な本文表示を当然に免責できるわけではありません。本文の表示自体を適正にすることが重要です。

9 広告審査で確認すべき項目

探偵業・結婚相談所の広告を出す前に、少なくとも次の点を確認してください。

  • 結果保証と受け取られる表現がないか
  • 成功率・成婚率の定義と根拠があるか
  • No.1表示の調査内容と広告表現が一致しているか
  • 料金総額と追加費用が明確か
  • 「追加料金なし」と表示する根拠があるか
  • クーリング・オフや中途解約の説明が適切か
  • 契約書面と広告内容に矛盾がないか
  • 探偵業届出に関する表示が適切か
  • 違法・不当な調査を助長する表現がないか
  • 体験談・写真・口コミの利用同意があるか
  • 不安を過度にあおる表現になっていないか
  • 個人情報保護上の問題がないか

広告の目的は問い合わせを増やすことですが、問い合わせを増やすために利用者を誤認させることは許されません。特に、人生・家族・結婚・私生活に関わるサービスでは、誇大な広告は深刻なクレームや行政対応につながります。

10 まとめ

探偵業や結婚相談所では、「成功率100%」「必ず見つけます」「絶対に結婚できます」「追加料金一切なし」といった表現は、景品表示法や特定商取引法上の問題を生じやすい表現です。特定商取引法は、特定継続的役務提供について、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁止しています。

結婚相手紹介サービスは、期間2か月超・金額5万円超の場合、特定継続的役務提供に該当し、契約書面、クーリング・オフ、中途解約に関するルールが適用されます。契約書面を受領した日から8日間はクーリング・オフが可能であり、事業者は違約金や手数料等を請求できません。

また、「成婚率No.1」「成功率No.1」などの表示には、調査内容と表示内容が対応した合理的な根拠が必要です。第三者機関の調査があるだけでは足りず、その調査が広告表現を支える内容になっているかを確認する必要があります。

探偵業・結婚相談所はいずれも、利用者の不安や期待に深く関わる信用ビジネスです。広告では、過激な訴求よりも、根拠のある実績表示、明確な料金表示、適法な契約手続、誠実なリスク説明を優先すべきです。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

学習塾・予備校の合格実績広告と景品表示法上の注意点

2026-07-10

学習塾や予備校にとって、「東大○名合格」「医学部合格者○名」「地域No.1の合格実績」といった広告は、保護者や生徒に強く訴求する重要な情報です。塾選びでは、授業料や立地だけでなく、合格実績が大きな判断材料になるためです。

しかし、合格実績は、表示方法を誤ると景品表示法上の優良誤認表示に該当する可能性があります。消費者庁も、景品表示法上の優良誤認表示の例として、予備校の合格実績広告について、実際には他校と異なる方法で数値化し、適正な比較をしていないにもかかわらず、あたかも「大学合格実績No.1」であるかのように表示する例を挙げています

学習塾の広告では、「何人合格したか」だけでなく、「誰を合格者として数えたのか」「どの年度の実績なのか」「正規塾生だけなのか、講習生や模試受験者を含むのか」を明確にしなければなりません。数字が正しくても、集計方法が不適切であれば、保護者・生徒を誤認させる広告になります。

1 合格実績広告が問題になりやすい理由

合格実績は、学習塾の指導力や教育サービスの質を示すものとして受け止められます。そのため、実際よりも多く見せる、他塾より優れているように見せる、比較条件を明示しないといった表示は、保護者や生徒の塾選びに大きな影響を与えます。

景品表示法では、商品・サービスの品質、規格その他の内容について、実際のものや競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示が、優良誤認表示として禁止されています。

学習塾の場合、合格実績、合格率、成績向上率、利用者満足度、講師の質、料金比較などが、いずれも広告上の重要な表示になります。近年も、学習塾やオンライン家庭教師サービスについて、「利用者満足度No.1」や料金比較表示が景品表示法上問題となり、措置命令の対象となった事例が紹介されています。

2 「合格者」として数えられる生徒の範囲

合格実績を表示する場合には、対象となる生徒の範囲を明示し、その年度の実績なのか、過年度を含む累計なのかを明らかにする必要があります。

学習塾業界の自主基準では、合格実績を表示する場合、対象となる生徒の範囲を明示し、当年度実績か過年度の累計・積算かを明示するものとされています。また、塾生徒の範囲を決定する基準として、受験直前の6か月間のうち、継続的に3か月を超える期間その学習塾に在籍し、通常の学習指導を受けた者とする旨が示されています。

この考え方からすると、次のような生徒を、何の注記もなく正規の合格実績に含めることは避けるべきです。

  • 体験授業を1回受けただけの生徒
  • 模試だけを受けた生徒
  • 短期講習だけを受講した生徒
  • 合格実績作りのために名義だけ登録した生徒
  • 実質的な通常授業を受けていない特待生
  • 他塾で主に指導を受けていた生徒
  • 通信教材を一部購入しただけの生徒
  • イベントや説明会に参加しただけの生徒

もちろん、講習生や模試受験者を一切広告に出せないという意味ではありません。しかし、その場合には「本科生のみ」「講習生を含む」「模試受験者を含まない」「○○講座受講生を含む」など、集計範囲を明確に区別して表示する必要があります。

最も危険なのは、正規塾生の合格実績であるかのように見せながら、実際には短期講習生、模試受験者、無料特待生などを広く含めているケースです。保護者は、その塾の通常指導によって合格した人数だと理解する可能性が高いためです。

3 合格実績を表示する際の必須チェック項目

合格実績を広告に掲載する際は、少なくとも次の項目を確認してください。

  • 対象年度
  • 対象校・学部・学科
  • 現役生のみか、既卒生を含むか
  • 正規塾生のみか、講習生を含むか
  • オンライン受講生を含むか
  • グループ校・提携校の実績を含むか
  • 他地域校舎の実績を含むか
  • 同一生徒の複数合格をどのように数えるか
  • 補欠合格・繰上合格を含むか
  • 合格確認資料が保存されているか
  • 生徒本人・保護者の同意を得ているか

特に大学受験では、1人の生徒が複数大学・複数学部に合格することがあります。「合格者数」と「合格件数」は意味が異なります。たとえば、1人が3学部に合格した場合に「3名合格」と表示すると、実際より多くの生徒が合格したかのように受け止められる可能性があります。広告では、「合格者数」なのか「延べ合格件数」なのかを明確にしましょう。

4 「No.1」表示には客観的根拠が必要

「地域No.1」「合格実績No.1」「満足度No.1」「口コミ人気度第1位」といった表示は、強い訴求力があります。その反面、景品表示法上のリスクも高い表現です。

消費者庁は、No.1表示について、表示内容に見合った調査が行われていない場合、景品表示法上の不当表示として問題となるとしています。近時のNo.1表示に関する違反事例も、表示内容に見合った調査が行われていなかったことなどを理由に違反と認められた点で共通すると説明されています。

学習塾や予備校がNo.1表示を使う場合には、少なくとも次の事項を明確にする必要があります。

  • 比較対象の範囲
  • 地域の範囲
  • 調査期間
  • 調査主体
  • 調査方法
  • 調査対象者
  • 比較項目
  • 合格者数なのか、合格率なのか
  • 満足度なのか、認知度なのか
  • 調査結果と広告表現が対応しているか

たとえば、「地域No.1」と表示する場合、「○○市内の学習塾における2025年度高校受験の○○高校合格者数No.1」なのか、「保護者満足度No.1」なのかでは意味が全く異なります。表示を見た人が、何についてNo.1なのか分からない広告は危険です。

また、調査会社に依頼したからといって安全とは限りません。消費者庁のNo.1表示に関する調査報告書では、広告主が調査会社を信頼していた、調査内容を把握していなかった、他社も同じ調査会社を使っていたので問題ないと思っていた、といった実態が紹介されています。しかし、広告主は、自社が使う調査結果の中身を確認する責任があります。

5 利用者満足度No.1表示の危険性

学習塾・オンライン家庭教師の広告では、「利用者満足度No.1」「口コミ人気度第1位」といった表示がよく使われます。しかし、この種の表示は、調査対象者や調査方法が広告表現と一致しているかが厳しく問われます。

実際に、オンライン個別学習指導に関する広告で、「オンライン家庭教師で利用者満足度No.1に選ばれました」などと表示していた事業者について、調査が同種サービスの利用者満足度を客観的に調査したものではなかったため、優良誤認表示と判断された事例が紹介されています。

つまり、「利用者満足度No.1」と表示するのであれば、実際にそのサービスおよび比較対象サービスを利用した者を対象に、合理的な方法で満足度を調査している必要があります。単にウェブサイトを見せて印象を聞いたイメージ調査をもって「利用者満足度No.1」と表示することは、広告表現と調査実態が一致しない可能性があります。

6 合格体験記・生徒の声の注意点

合格体験記や生徒・保護者の声も、学習塾広告では非常に重要です。しかし、これらにも法的リスクがあります。

まず、実在しない生徒の体験談を掲載することは当然できません。また、実在する生徒のコメントであっても、塾側が内容を大きく書き換え、本人が述べていない成果や感想を述べたかのように見せることは問題です。

たとえば、実際には「先生が親切でした」と書いただけのコメントを、「この塾のおかげで偏差値が20上がり、志望校に合格できました」と改変すれば、広告を見た保護者・生徒に誤認を与えます。

また、生徒の氏名、写真、映像、画像、文章を広告に掲載する場合には、本人および保護者の同意が必要です。学習塾業界の自主基準でも、生徒の氏名を公表する場合には保護者の同意も得ること、生徒の写真・映像・画像・文章等を公表する場合も同様であることが定められています。

実務上は、次の対応が必要です。

  • 掲載前に本人・保護者の書面同意を取得する
  • 掲載媒体を明示する
  • 掲載期間を明示する
  • 氏名、学校名、顔写真の掲載可否を個別に確認する
  • コメントを改変する場合は本人確認を取る
  • 退塾後・卒業後の掲載継続について同意範囲を確認する
  • 同意書を保管する

個人情報保護と肖像権の観点からも、合格体験記の管理は慎重に行うべきです。

7 使ってはいけない表現

学習塾広告では、次のような表現に注意が必要です。

  • 「必ず合格」
  • 「全員合格」
  • 「誰でも成績アップ」
  • 「偏差値20アップ確実」
  • 「合格率100%」とだけ表示する
  • 「地域No.1」とだけ表示する
  • 「日本一の指導力」
  • 「最高の講師陣」
  • 「絶対に成績が上がる」
  • 「完全個別指導」と表示しながら実態は集団指導
  • 「追加費用なし」と表示しながら教材費・管理費が別途必要

学習塾業界の自主基準でも、「日本一」「全国一」「ナンバーワン」「最高」「最大」などの最高級の優位性または唯一性を意味する用語は、客観的事実に基づく数値または確実な根拠なしに使用しないこと、「完全」「100%」「絶対」等の完璧性を意味する用語は使用しないこと、「全員合格」「○○点上昇確実」等、生徒の将来を保証するような表示は使用しないことが定められています。

成果は、生徒本人の努力、学力、受験校、家庭環境、受講期間などに左右されます。したがって、塾の指導だけで必ず結果が出るかのような表示は避けるべきです。

8 広告表示の社内監査体制

学習塾の広告は、新年度募集、春期講習、夏期講習、冬期講習、受験直後など、短期間で大量に制作される傾向があります。そのため、広告ごとに現場判断で数字や表現が使われると、誤表示が起きやすくなります。

社内では、少なくとも次の体制を整えるべきです。

  • 合格実績の集計基準を文書化する
  • 正規塾生、講習生、模試受験者を区別する
  • 合格者数と延べ合格件数を区別する
  • 校舎別実績と全社実績を区別する
  • 実績の根拠資料を保存する
  • No.1表示は法務・コンプライアンス部門の事前承認制にする
  • 合格体験記は同意書の取得を必須にする
  • 広告公開前にダブルチェックを行う
  • 公開後も定期的に表示内容を確認する
  • 過年度実績を最新実績のように見せない
  • 措置命令事例を社内研修で共有する

消費者庁の景品表示法資料でも、事業者が講ずべき表示管理上の措置として、表示等に関する情報の確認、情報共有、表示管理担当者の設置、表示根拠となる情報を事後的に確認するための措置、不当表示が明らかになった場合の迅速かつ適切な対応などが挙げられています。

9 まとめ

学習塾・予備校の合格実績広告は、保護者や生徒の意思決定に大きく影響します。そのため、合格者数、合格率、No.1表示、合格体験記を表示する際には、景品表示法と業界自主基準に沿った厳格な管理が必要です。

合格実績に含める生徒は、原則として、受験直前の6か月間のうち継続的に3か月を超えて在籍し、通常の学習指導を受けた者を基準に考えるべきです。体験授業のみ、模試のみ、短期講習のみ、名義だけの登録といった生徒を、正規塾生の合格実績であるかのように表示すると、優良誤認表示となるリスクがあります。

また、「地域No.1」「満足度No.1」といった表示には、客観的かつ合理的な根拠が必要です。調査会社に依頼した場合でも、調査対象、調査方法、比較対象、調査期間が広告表現と一致しているかを広告主自身が確認しなければなりません。

教育機関である学習塾が広告で誤認を招く表示を行えば、法的リスクだけでなく、教育事業者としての信頼を大きく損ないます。合格実績を公表する前に、集計基準、根拠資料、同意書、No.1表示の根拠を毎年点検し、法務担当者または外部専門家による広告監査を行うことが重要です。

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

金融商品・投資広告で使ってはいけない表現と法的リスク

2026-07-05

「絶対に儲かる」「元本保証」「月利20%確定」「今だけ参加すれば必ず利益が出る」――SNS広告やWeb広告では、このような投資勧誘の表現を見かけることがあります。

しかし、株式、FX、投資信託、ファンド、暗号資産、投資助言サービスなどの広告・勧誘は、金融商品取引法、資金決済法、各業界団体の自主規制、金融庁の監督指針等によって厳しく規制されています。一般の商品広告よりも、誇大表現やリスク説明不足に対する規制は格段に厳しいと考えるべきです。

投資広告は、消費者の財産に直接影響します。違法な広告を出した場合、広告主である金融商品取引業者が行政処分を受けるだけでなく、広告に関与したアフィリエイター、インフルエンサー、オンラインサロン運営者、マーケティング会社も、行為の内容によっては法的責任を問われる可能性があります。

1 金融商品広告で禁止される典型表現

金融商品取引法では、金融商品取引業者等による広告や勧誘について、虚偽表示、誇大広告、断定的判断の提供、損失補填・利益保証などが厳しく規制されています。

特に問題となるのは、次のような表現です。

  • 「絶対に儲かる」
  • 「確実に利益が出る」
  • 「必ず値上がりする」
  • 「月利20%確定」
  • 「リスクゼロ」
  • 「元本保証」
  • 「損失は当社が補填」
  • 「金融庁登録済みだから安全」
  • 「誰でも簡単に資産が倍増」
  • 「今だけ参加すれば勝率100%」

金融商品取引法上、金融商品取引業者等は、顧客に対して虚偽のことを告げる行為をしてはならず、不確実な事項について断定的判断を提供したり、確実であると誤解させるおそれのあることを告げて勧誘したりすることも禁止されています。

また、広告等において、利益の見込み、損失の負担、利益保証、手数料、業者の実績などについて、著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させる表示をすることも禁止されています。

したがって、将来の値上がりや利益を断定する表現、損失が出ないかのような表現、元本が守られるかのような表現は、基本的に使用できません。

2 「元本保証」「損失補填」は特に危険

金融商品広告で特に危険なのが、「元本保証」「損失補填」「利益保証」といった表現です。

投資商品は、預金とは異なり、原則として価格変動や元本割れのリスクを伴います。それにもかかわらず、「元本保証」「損したら補填する」「最低利回りを保証する」と表示すると、投資家にリスクのない商品であるかのような誤解を与えます。

金商法上、広告において、契約に係る損失の全部または一部の負担、利益の保証に関する事項について、著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させる表示をしてはならないとされています。また、金融庁関連の資料でも、元本保証でないのに「元本保証」などと虚偽の説明をすることは、金融商品取引法で禁止されていると説明されています。

「元本確保型」「元本保証型」といった名称を使う場合でも、法的にどの範囲で、どの条件で、誰が、どの通貨建てで元本を確保するのかを明確にしなければ、投資家を誤認させる表示になり得ます。投資信託等の広告においても、単に「元本確保型」と表示するのではなく、元本確保の定義や条件を併記し、顧客に元本の安全性を誤認させないようにする必要があるとされています。

3 広告に必ず表示すべき事項

金融商品広告では、魅力的な利回りや運用実績だけを強調してはいけません。リスク、手数料、登録情報など、投資判断に必要な情報を明瞭に表示する必要があります。

金融商品取引業者等が広告を行う場合、商号・名称、金融商品取引業者等である旨、登録番号、顧客が支払う手数料等、元本損失・元本超過損が生じるおそれがある旨など、法令上求められる事項を表示する必要があります。屋外広告物等においても、商号、登録番号、元本損失・元本超過損のおそれ、契約締結前交付書面等を十分に読むべき旨などの表示が求められます。

特に重要なのは、リスク表示を目立つ形で行うことです。リスクや手数料を極端に小さな文字で、画面の最下部に薄い色で表示するような方法は、実質的に分かりやすい表示とはいえません。広告等では、顧客が商品・サービスの内容を正確に理解するために必要な事項を明瞭かつ正確に表示する必要があり、重要事項を他の記載事項と比べて不当に目立ちにくくすることは問題になります。

少なくとも、広告には次の情報を分かりやすく表示すべきです。

  • 金融商品取引業者等の商号・名称
  • 登録番号
  • 加入協会
  • 投資対象・商品内容
  • 元本割れリスク
  • 価格変動リスク
  • 為替変動リスク
  • レバレッジ取引の場合の元本超過損リスク
  • 手数料・スプレッド・成功報酬等
  • 過去実績が将来成果を保証しない旨
  • 契約締結前交付書面等を確認すべき旨

4 「金融庁登録済み」を安全性の根拠にしてはいけない

金融商品取引業者として登録されていること自体は、広告に表示すべき重要情報です。しかし、「金融庁登録済みだから安全」「国が認めた投資商品」「金融庁公認の案件」などと表現することは危険です。

財務局も、金融商品取引法上の登録や届出を行っている業者について、金融庁・財務局がその業者の信用力等を保証するものではないと注意喚起しています。したがって、登録番号を表示することと、国が収益性や安全性を保証しているかのように表示することは全く別です。

「金融庁登録業者が扱う商品です」と表示する場合でも、その意味は、あくまで登録制度上の登録を受けているという事実にとどまります。投資元本の安全性、利回り、信用力、将来の成果を金融庁が保証しているわけではありません。

5 暗号資産広告での注意点

暗号資産に関する広告では、金融商品広告以上に、価格変動リスクや無登録業者の問題に注意が必要です。

暗号資産は、日本円や米ドルのような法定通貨ではなく、価格が大きく変動する可能性があります。そのため、暗号資産交換業者の広告では、暗号資産が本邦通貨または外国通貨ではないこと、価格変動により損失が生じるおそれがあることなどを明確に表示する必要があります。

「急騰中」「今買わないと乗り遅れる」「必ず上がる」「上場確定」「元本保証型暗号資産」などの表現は、投資家の射幸心を過度にあおり、価格上昇を確実視させる危険があります。暗号資産は値動きが大きいからこそ、リスク情報を利益訴求と同程度に明確に示す必要があります。

また、暗号資産交換業の登録を受けていない者が、国内居住者に向けて交換サービスや投資商品を広告・勧誘する場合、無登録営業として問題になり得ます。暗号資産関連の広告では、広告主が登録業者か、海外業者の場合に日本向け勧誘が適法か、アフィリエイト先が無登録業者ではないかを必ず確認すべきです。

6 インフルエンサー・アフィリエイターの責任

近年は、証券会社や暗号資産交換業者だけでなく、インフルエンサー、YouTuber、アフィリエイター、オンラインサロン運営者が投資案件を紹介するケースが増えています。

単に一般的な投資教育コンテンツを発信するだけであれば、直ちに登録が必要とは限りません。しかし、有償で、特定の銘柄や金融商品について、売買のタイミングや投資判断を具体的に助言する場合には、投資助言・代理業の登録が必要になる可能性があります。

無登録で金融商品取引業を行った場合、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、またはその併科の対象となり、法人には5億円以下の罰金が科されると説明されています。また、無登録で金融商品取引業を行っている者については、その名称が公表される可能性もあります。

財務局も、SNSをきっかけとする無登録業者からの勧誘トラブルが多発しているとして、無登録業者からの勧誘に応じないよう注意喚起しています。

したがって、インフルエンサーが次のような行為を行う場合は、特に慎重な検討が必要です。

  • 有料オンラインサロンで個別銘柄を推奨する
  • 「今買うべき銘柄」を有料配信する
  • 特定のFX・暗号資産取引を継続的に推奨する
  • 成功報酬型で投資案件に誘導する
  • 無登録業者の投資商品を紹介する
  • 「この案件は元本保証」などと説明する
  • 損失が出た場合の補填を約束する
  • 登録業者の名義を借りて勧誘する

広告主側も、「インフルエンサーが勝手に言った」とは簡単に逃れられません。金融商品取引業者が広告表現の作成、投稿内容の承認、報酬支払い、リンク誘導、訴求内容の指示に関与している場合、広告主側の広告規制違反として問題になり得ます。

7 アフィリエイト広告の管理

金融商品のアフィリエイト広告では、広告主が直接作成したLPだけでなく、アフィリエイターが作成する比較サイト、ランキングサイト、レビュー記事、SNS投稿も問題になります。

たとえば、アフィリエイターが次のような表現を使っている場合、広告主側も管理体制を問われる可能性があります。

  • 「この証券会社なら絶対勝てる」
  • 「初心者でも月利20%」
  • 「元本保証の投資案件」
  • 「損しないFX自動売買」
  • 「金融庁公認の安全な投資」
  • 「リスクなしで不労所得」
  • 「今登録しないと損」

金融商品広告では、広告主が、広告代理店やアフィリエイター任せにせず、事前審査、禁止表現リスト、投稿後モニタリング、違反時の修正・削除要請、契約上の遵守義務を整えることが重要です。

8 広告制作時のチェックポイント

金融商品・投資関連の広告を出す前に、少なくとも次の点を確認してください。

  • 将来の利益を断定していないか
  • 「元本保証」「損失補填」と誤認される表現がないか
  • 過去実績を将来成果の保証のように見せていないか
  • リスク表示が利益訴求と比べて不当に目立たなくなっていないか
  • 手数料、スプレッド、成功報酬等を明確に表示しているか
  • 登録番号、商号、加入協会を正確に表示しているか
  • 金融庁・財務局が商品を保証しているような表現がないか
  • 無登録業者への誘導になっていないか
  • インフルエンサーの投稿内容を事前確認しているか
  • アフィリエイトサイトの表示を継続的に監視しているか
  • 投資助言・代理業登録が必要なサービスになっていないか
  • 暗号資産の場合、価格変動リスクと法定通貨でない旨を明示しているか

9 まとめ

金融商品・投資広告では、「絶対に儲かる」「確実に利益が出る」「元本保証」「損失補填」といった表現は極めて危険です。金融商品取引法では、虚偽告知、不確実な事項についての断定的判断の提供、確実であると誤解させる勧誘、重要事項について誤解を生じさせる表示などが禁止されています。

また、広告では、登録番号、商号、手数料、元本損失・元本超過損のおそれなど、投資判断に必要な情報を明瞭に表示する必要があります。リスクや手数料を小さく目立たない形で表示し、利益だけを強調する広告は、金融庁の監督上も問題となり得ます。

さらに、SNSやオンラインサロンで投資案件を紹介する個人、インフルエンサー、アフィリエイターも、具体的な投資助言や無登録業者への勧誘を行えば、無登録営業や不法行為責任を問われる可能性があります。無登録で金融商品取引業を行った場合には、刑事罰や業務停止命令等の対象となり得ます。

金融商品の広告は「売れる表現」よりも「誤認させない表現」が優先されます。広告を出す前に、金融法務に詳しい専門家によるリーガルチェックを受け、広告主、代理店、アフィリエイター、インフルエンサーを含めた管理体制を整えることが重要です。

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

不動産広告における「おとり広告」と表示規約違反のリスク

2026-06-30

不動産会社にとって、SUUMO、LIFULL HOME’S、at homeなどのポータルサイトや自社ウェブサイトへの物件掲載は、集客の中心的な手段です。特に賃貸仲介や売買仲介では、インターネット上の広告が問い合わせ数を大きく左右します。

しかし、不動産広告は、一般の広告よりも厳しい規制の対象になります。景品表示法、宅地建物取引業法に加え、不動産業界の自主ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」、いわゆる表示規約が適用されるためです。表示規約は、一般消費者の利益と不動産業界の公正な競争を確保するため、広告表示について細かなルールを定めています。

特に注意すべきなのが「おとり広告」です。実際には取引できない物件を掲載して問い合わせを集める行為は、消費者を誤認させるだけでなく、業界全体の信頼を損なう重大な違反です。「削除し忘れただけ」「担当者が忙しかった」という説明では済まされません。

1 不動産広告に適用される主なルール

不動産広告には、主に次の3つのルールが関係します。

第一に、景品表示法です。実際よりも著しく優良・有利であると一般消費者に誤認させる表示や、不動産のおとり広告に関する表示は、景品表示法上の不当表示として問題になります。

第二に、宅地建物取引業法です。宅建業法では、誇大広告等の禁止、広告開始時期の制限、取引態様の明示などが定められており、違反した場合には指示、業務停止、免許取消などの行政処分につながる可能性があります。

第三に、表示規約です。表示規約は、景品表示法に基づき公正取引委員会と消費者庁から認定を受けた不動産業界の自主規制ルールであり、広告開始時期、必要表示事項、表示基準、特定用語、おとり広告、二重価格表示などを細かく定めています。

これらの規制は、新聞折込チラシやパンフレットだけでなく、インターネット広告にも適用されます。表示規約上、必要な表示事項の規制を受ける媒体には、インターネット広告、SNS、掲示板等も含まれると説明されています。

2 「おとり広告」の3類型

表示規約では、次の3つの広告が「おとり広告」として禁止されています。

1つ目は、物件が存在しないため、実際には取引できない物件に関する表示です。たとえば、架空の好条件物件を掲載し、問い合わせた顧客に「その物件は埋まったので別の物件を紹介します」と誘導するケースです。

2つ目は、物件は存在するものの、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示です。典型例は、すでに成約済みの物件を「募集中」として掲載し続けるケースです。また、他人の不動産で、処分を委託されていない物件を掲載する場合も問題になります。表示規約の解説でも、成約済みの不動産や処分を委託されていない他人の不動産は、実際には取引の対象となり得ないものの例として挙げられています。

3つ目は、物件は存在するものの、実際には取引する意思がない物件に関する表示です。たとえば、広告に掲載しているにもかかわらず内見を拒否する、貸主・売主が取引する意思を失っている、広告上の条件では契約する意思がない、といった場合です。

これらは、いずれも消費者を呼び込むための不当な誘引になります。不動産公正取引協議会の資料でも、おとり広告として、契約済み物件の掲載が売買・賃貸ともに多い違反事例であることが指摘されています。

3 「消し忘れ」も重大なリスクになる

実務上最も多いのは、架空物件よりも、成約済み物件の掲載継続です。

ポータルサイトに多数の物件を掲載している場合、成約・申込み・募集停止・条件変更の情報が営業担当、管理会社、元付業者、広告担当者の間で共有されず、掲載情報が古いまま残ることがあります。しかし、消費者から見れば、掲載されている物件は「現在取引できる物件」と受け止められます。

不動産公正取引協議会の資料でも、おとり広告の原因として、「システムの不具合で契約済みのものを再度掲載してしまった」「掲載サイトのパスワードが不明で長期間掲載されてしまった」などの説明をするケースが増えていること、複数サイトに多数物件を掲載して管理できていないケースが急増していることが指摘されています。

つまり、「故意ではなかった」「管理が追いつかなかった」という事情があっても、広告管理体制の不備として評価されます。掲載開始よりも、掲載後のメンテナンスこそが重要です。

4 徒歩所要時間の表示ルール

不動産広告では、駅や施設までの距離・所要時間についても細かいルールがあります。

徒歩所要時間は、道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満の端数が生じた場合は1分として切り上げて表示します。たとえば、道路距離が85メートルであれば、1分ではなく2分と表示しなければなりません。

また、徒歩時間は直線距離ではなく道路距離で計算します。マンションやアパートでは、2022年の改正により、起点は建物の出入口とされました。表示規約の資料でも、マンション・アパートの場合、施設から最も近い建物の出入口を起点として算出することが説明されています。

さらに、道路距離または所要時間を表示するときは、起点および着点を明示することが求められます。駅徒歩表示では、最寄駅名、物件から駅までの徒歩所要時間を正確に表示する必要があります。

注意すべきなのは、信号待ち、坂道、踏切待ち、混雑などは通常この計算に含まれない点です。したがって、広告上「徒歩5分」と表示できる場合でも、実際の体感時間とは異なることがあります。ただし、だからといって自社の感覚で「歩いてみたら短かった」といった理由で、規約より短い時間を表示することはできません。

5 特定用語の使用制限

不動産広告では、消費者に強い印象を与える用語についても制限があります。

表示規約では、抽象的な用語や他物件・他社と比較するような用語について、具体的・客観的事実に基づく場合などを除き、原則として使用が禁止されています。

たとえば、次のような表現には注意が必要です。

  • 「完全」
  • 「完璧」
  • 「絶対」
  • 「万全」
  • 「日本一」
  • 「業界一」
  • 「当社だけ」
  • 「他に類を見ない」
  • 「抜群」
  • 「特選」
  • 「厳選」
  • 「最高」
  • 「最高級」
  • 「格安」
  • 「掘出物」
  • 「激安」
  • 「破格」

これらの用語は、根拠資料を保有していることや、根拠となる事実を併せて表示することが求められる場合があります。たとえば、「完全」「完ぺき」「絶対」「日本一」「業界一」「特選」「厳選」などは、合理的な根拠を示す資料が必要な特定用語として整理されています。

また、「最高」「最高級」「極」「特級」などの品質を示す表現や、「格安」「激安」「掘出物」など価格の有利性を示す表現については、根拠となる事実を併せて表示する必要があるとされています。

リフォーム物件でも注意が必要です。「フルリフォーム済み」「完全リノベーション」などと表示する場合は、どの部分をいつ、どの程度改修したのかを具体的に示すべきです。壁紙だけを張り替えたにもかかわらず、全面的な改修をしたかのように表示すれば、不当表示と評価される可能性があります。

6 二重価格表示にも注意

「通常賃料10万円のところ、今だけ8万円」「旧価格3,000万円から値下げ」などの二重価格表示も、慎重に扱う必要があります。

過去に実際にその価格で販売・募集していた実績がないにもかかわらず、値下げしたように見せる表示は、消費者に有利な条件であると誤認させるおそれがあります。表示規約では、不当な二重価格表示も禁止事項として位置付けられています。

二重価格表示を行う場合は、旧価格での募集期間、旧価格の公表日、値下げ時期、現在価格の根拠などを確認し、規約に沿って表示する必要があります。単に「お得感」を出すために、根拠のない旧価格を設定することは避けてください。

7 違反した場合のペナルティ

不動産広告の違反は、単なる注意で済まないことがあります。

景品表示法違反の場合、消費者庁による指導や措置命令の対象となり得ます。宅建業法違反の場合には、指示、業務停止、免許取消などの行政処分につながる可能性があります。また、表示規約違反の場合には、不動産公正取引協議会から、注意、警告、厳重警告、違約金課徴などの措置を受けることがあります。違約金は、初回50万円以下、2回目以降は最大500万円とされ、事業者名等を公表できる規定もあります。

さらに実務上大きいのが、ポータルサイトへの掲載停止です。主要ポータルサイトから一定期間掲載を停止されると、新規問い合わせが激減し、実質的に営業活動に大きな支障が出ます。不動産広告の違反は、法的処分だけでなく、集客基盤そのものを失うリスクを伴います。

8 社内で整備すべき広告管理体制

おとり広告や誤表示を防ぐには、担当者任せにせず、社内で広告管理体制を整備する必要があります。

少なくとも、次の対応を行うべきです。

  • 掲載物件ごとに広告責任者を定める
  • 掲載開始前に物件の募集状況・取引条件を確認する
  • 成約・申込・募集停止の情報を広告担当へ即時共有する
  • ポータルサイトごとの掲載状況を一覧管理する
  • 定期的に掲載物件を棚卸しする
  • 成約済み物件は即日削除する
  • 徒歩所要時間は道路距離で再計算する
  • 価格、賃料、敷金、礼金、管理費、保証料を最新情報に更新する
  • 特定用語を使う場合は根拠資料を保存する
  • 二重価格表示を行う場合は旧価格の実績を確認する
  • 広告掲載前にダブルチェックを行う
  • 規約改正時に広告テンプレートを見直す

広告掲載数が多い会社ほど、掲載後の削除・更新フローが重要です。複数のポータルサイトに同じ物件を掲載している場合、1つのサイトだけ削除して他サイトに残るというミスが起きやすいため、掲載媒体ごとの管理表を作成することが必要です。

9 まとめ

不動産広告では、集客効果を高めたいあまり、実際には取引できない物件や、条件が変更された物件を掲載し続けることが重大なリスクになります。表示規約上、おとり広告は、①実在しない物件、②実在するが取引対象にならない物件、③実在するが取引する意思がない物件の広告として禁止されています。

特に多いのは、成約済み物件の掲載継続です。これは「削除し忘れ」であっても、おとり広告として問題になり得ます。不動産公正取引協議会の資料でも、契約済み物件の掲載は売買・賃貸ともに多い違反事例とされています。

また、徒歩所要時間は道路距離80メートルを1分として計算し、1分未満の端数は切り上げる必要があります。「完全」「絶対」「日本一」「特選」「最高級」「格安」などの特定用語も、根拠なく使用することはできません。

違反した場合には、景品表示法・宅建業法上の処分に加え、表示規約に基づく警告、違約金、事業者名公表、ポータルサイト掲載停止など、営業上重大な影響が生じます。広告は「出して終わり」ではなく、常に最新かつ正確な状態に維持する管理体制が不可欠です。

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

SNSプレゼントキャンペーンの法的リスクと実施時の注意点

2026-06-25

Twitter(X)やInstagramでよく見かける「フォロー&リポストでプレゼント」「いいね&コメントで抽選」というSNSキャンペーンは、短期間で認知度やフォロワーを増やせる有効な施策です。

しかし、手軽に実施できる一方で、法的には注意すべき点が少なくありません。特に問題となるのが、景品表示法上の景品規制、ステルスマーケティング規制、そして各SNSプラットフォームの利用規約・ガイドラインです。

「他社もやっているから大丈夫」「SNS上の企画だから法律はあまり関係ない」と考えて高額な景品を設定したり、応募条件を曖昧にしたまま実施したりすると、景品表示法違反、炎上、アカウント制限、キャンペーン中止といったリスクが生じます。大規模なキャンペーンほど、企画段階で法務チェックを行う必要があります。

景品表示法は、事業者が過大な景品を提供することにより、消費者が景品に惑わされて不利益な取引をしてしまうことや、事業者間の不健全な競争が生じることを防ぐため、景品類の最高額や総額などを規制しています。消費者庁も、景品表示法では、景品類の最高額・総額等を規制することにより、一般消費者の利益を保護し、過大景品による不健全な競争を防止していると説明しています。

1 景品表示法上の基本的な考え方

景品表示法上の「景品類」に該当するかどうかは、単に「プレゼントを配るかどうか」では決まりません。重要なのは、①顧客を誘引するための手段として、②自己の商品・サービスの取引に付随して、③物品、金銭その他の経済上の利益を提供しているかどうかです。

そのため、SNSキャンペーンであっても、商品購入、来店、サービス利用、レシート提出、有料会員登録、購入商品の感想投稿などを応募条件にする場合には、取引に付随する景品提供として、景品規制の対象になる可能性が高くなります。

2 フォロー&リポストは「オープン懸賞」と整理できる場合が多い

SNSキャンペーンで最初に確認すべきなのは、その企画が「オープン懸賞」なのか、それとも景品規制の対象となる一般懸賞・共同懸賞・総付景品なのかです。

消費者庁は、ウェブサイト等で広く告知され、商品・サービスの購入や来店を条件とせず、ウェブサイトや電子メール等で申し込める抽選企画については、景品規制が適用されないと説明しています。このような企画は一般に「オープン懸賞」と呼ばれ、現在、提供できる金品等について具体的な上限額は定められていません。

たとえば、商品の購入を条件とせず、誰でも公式アカウントをフォローし、対象投稿をリポストすれば応募できるキャンペーンは、一般にオープン懸賞として整理できる場合が多いです。実務解説でも、SNS上の公式アカウントをフォローしたり、特定の投稿をリツイートしたりする行為は、商品購入をしなくても可能であり、購入によって応募や当選が容易になるものでもないため、取引付随性が認められず、景品表示法の規制を受けないと整理されています。

もっとも、SNSで実施すれば常にオープン懸賞になるわけではありません。たとえば、次のような条件がある場合には、景品規制の対象になる可能性があります。

  • 商品購入者だけが応募できる
  • レシート画像の投稿・アップロードが必要
  • 購入商品の感想投稿が応募条件になっている
  • 来店者限定で応募コードを配布する
  • 有料会員だけが応募できる
  • 商品パッケージ内のシリアルコードが必要
  • サービス利用者だけに抽選権を与える

このように、購入や利用によって応募が可能または容易になる設計では、取引付随性が認められる可能性があります。

3 一般懸賞に該当する場合の上限額

キャンペーンが一般懸賞に該当する場合、景品の最高額と総額に制限があります。一般懸賞では、懸賞に係る取引価額が5,000円未満の場合は取引価額の20倍まで、取引価額が5,000円以上の場合は10万円までが景品類の最高額とされ、総額は懸賞に係る売上予定総額の2%以内とされています。

したがって、SNSキャンペーンであっても、購入者限定の抽選や、購入商品の感想投稿を条件にする企画では、景品額の上限を必ず確認する必要があります。

一方で、購入を条件としない完全なオープン懸賞であれば、消費者庁の説明上、景品規制は適用されず、具体的な上限額はありません。ただし、高額景品を設定する場合には、法的な上限だけでなく、応募者への表示の明確性、抽選の公正性、税務上の取扱い、プラットフォーム規約、炎上リスクも含めて検討すべきです。

4 プラットフォーム規約・ガイドラインの確認

SNSキャンペーンでは、法律だけでなく、各プラットフォームの利用規約やキャンペーンガイドラインも重要です。景品表示法上問題がない場合でも、プラットフォーム側からスパム行為、不正なエンゲージメント誘導、タグ付けの乱用、複数アカウント応募の助長などと判断されると、投稿の削除、キャンペーン停止、アカウント制限・凍結につながる可能性があります。

特に注意すべきなのは、次のような設計です。

  • 複数アカウントでの応募を促す
  • 同じ内容の投稿を大量にさせる
  • 関係のないユーザーへのタグ付けを求める
  • 「いいね」「リポスト」「フォロー」を過度に対価化する
  • 実際には存在しない景品や過大な当選確率を表示する
  • 当選者に広告投稿をさせるのにPR表記を求めない
  • 個人情報の取得目的や利用範囲を明示しない

プラットフォーム規約は変更されることがあるため、キャンペーン開始前に最新版を確認し、応募条件や禁止事項を応募規約に反映することが必要です。

5 抽選・当選者選定の公正性

「抽選で100名様に当たる」と表示した以上、実際に公正な抽選を行い、表示どおりに景品を提供しなければなりません。

たとえば、実際には抽選していない、社内関係者や特定のインフルエンサーを優先的に当選させている、当選者数を表示より少なくしている、景品を発送していない、当選発表後に条件を変更している、といった運用は重大な問題です。景品表示法上の有利誤認や不当表示の問題になり得るだけでなく、企業の信用を大きく損ないます。

実務上は、次の事項を事前に定めておくべきです。

  • 応募期間
  • 応募資格
  • 応募方法
  • 景品内容
  • 当選者数
  • 抽選方法
  • 当選通知方法
  • 当選辞退・無効条件
  • 景品発送時期
  • 個人情報の利用目的
  • 複数応募・不正応募への対応
  • キャンペーン中止・変更時の取扱い

応募規約には、「厳正なる抽選」といった抽象的表現だけでなく、不正応募を無効にできること、当選連絡期限、景品発送先の制限、個人情報の利用目的などを具体的に記載する必要があります。

6 ステルスマーケティング規制への注意

SNSキャンペーンでは、当選者やインフルエンサーに投稿を依頼する場面でも注意が必要です。

2023年10月1日から、景品表示法上の不当表示として、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示、いわゆるステルスマーケティングが規制対象となりました。これは、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示を問題とするものです。

事業者が第三者に対して投稿内容を依頼・指示している場合や、明示的な指示がなくても、無償の商品提供を受けた第三者が事業者の方針に沿った投稿をしていると評価される場合には、事業者の表示と判断される可能性があります。

そのため、当選者に対して「商品を使った感想を投稿してください」「指定ハッシュタグでレビューしてください」「好意的な内容で紹介してください」と依頼する場合には、投稿上、広告・PR・キャンペーン参加投稿であることが一般消費者に分かる表示を求めるべきです。

具体的には、次のような対応が考えられます。

  • 「#PR」「#広告」「#キャンペーン提供」等の明確な表示を求める
  • Instagramではタイアップ投稿等の機能を利用する
  • 投稿依頼文にPR表記義務を明記する
  • 投稿内容を事業者が事前承認する場合は特に広告性を明示する
  • インフルエンサー契約にはステマ規制対応条項を入れる
  • 投稿後にPR表記が抜けていないか確認する

「当選者が自発的に投稿しただけ」といえる場合と、事業者が投稿を依頼・誘導した場合とでは、リスクが異なります。景品を渡して投稿を求める設計にする場合は、ステマ規制を前提に運用するべきです。

7 応募規約に入れるべき主な項目

SNSキャンペーンを実施する場合、応募規約は必須です。少なくとも次の項目を入れてください。

  • キャンペーン名
  • 主催者
  • 応募期間
  • 応募資格
  • 応募方法
  • 景品内容・当選者数
  • 抽選方法
  • 当選通知方法
  • 当選連絡期限
  • 景品発送時期
  • 応募無効事由
  • 複数アカウント・不正応募の禁止
  • 投稿内容に関する禁止事項
  • 第三者の権利侵害禁止
  • 個人情報の取扱い
  • キャンペーンの変更・中止
  • プラットフォームがキャンペーンに関与していない旨
  • 問い合わせ先
  • 準拠法・管轄

特に、XやInstagramのキャンペーンでは、偽アカウントによる当選連絡詐欺が発生しやすいため、当選連絡方法を明確にし、「クレジットカード情報の入力を求めない」「当選通知は公式アカウントからのみ行う」などの注意喚起も入れるべきです。

8 実施前のチェックポイント

SNSキャンペーンを始める前に、最低限、次の点を確認してください。

  • 商品購入・来店・サービス利用を応募条件にしていないか
  • 購入によって応募や当選が容易になる設計になっていないか
  • 一般懸賞に該当する場合、景品額・総額が上限内か
  • 景品内容、当選者数、応募期間が明確か
  • 抽選方法が公正で説明可能か
  • プラットフォーム規約に違反していないか
  • 複数アカウント応募やスパム投稿を助長していないか
  • 当選者に投稿を依頼する場合、PR表記を求めているか
  • 個人情報の取得・利用目的を明示しているか
  • 応募規約を公開しているか
  • キャンペーン運用担当者が規約どおりに対応できるか

9 まとめ

フォロー&リポスト型のSNSキャンペーンは、商品購入や来店を条件とせず、誰でも応募できる設計であれば、オープン懸賞として景品表示法上の景品規制を受けないと整理できる場合が多く、具体的な景品額の上限も定められていません。

一方で、商品購入、レシート提出、来店、購入商品の感想投稿などを条件にする場合には、取引付随性が認められ、一般懸賞等として景品額の上限規制を受ける可能性があります。一般懸賞では、取引価額が5,000円未満の場合は取引価額の20倍まで、5,000円以上の場合は10万円まで、総額は売上予定総額の2%以内という制限があります。

さらに、SNSキャンペーンでは、プラットフォーム規約、抽選の公正性、個人情報管理、ステマ規制への対応も不可欠です。当選者やインフルエンサーに投稿を依頼する場合には、広告・PRであることが分かる表示を求める必要があります。ウェブ企画段階で、景品額、応募条件、投稿依頼の有無、抽選方法、応募規約を確認してから実施することが重要です。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

メルマガ配信後に問題となる特定電子メール法対応

2026-06-20

前回の記事では、メルマガやステップメールを配信する際に、まず確認すべき「特定電子メール法の対象」と「オプトイン規制」について解説しました。
もっとも、広告宣伝メールは、事前同意を取得すればそれで終わりではありません。
特定電子メール法では、適法に同意を得て送信する場合であっても、メール本文に一定事項を表示する義務があります。また、受信者が配信停止を希望した場合には、その意思に反してメールを送り続けることはできません。
さらに、事業者は、同意を取得したことを証明する記録を保存する必要があります。メール配信業務を外部業者に委託する場合でも、配信リストの適法性や配信停止対応を確認せずに任せきりにすることは危険です。

本記事では、メルマガやステップメールの運用段階で特に問題となる、表示義務、オプトアウト、同意記録の保存、委託先管理について解説します。

1 メール本文に必要な表示義務

特定電子メール法では、適法に同意を取得している場合であっても、メール本文中に一定事項を表示する義務があります。
実務上、メール本文の末尾などに、少なくとも次の事項を分かりやすく記載する必要があります。

①送信者の氏名または名称
法人であれば会社名、個人事業主であれば氏名または屋号を正確に表示します。ブランド名やサービス名だけでは、送信主体が明確でない場合があります。

②配信停止・受信拒否の方法
「配信停止はこちら」「メールの受信を希望されない方はこちら」といった導線を設け、受信者が容易に配信停止できるようにします。

③受信拒否の通知先
配信停止フォームのURL、受信拒否用メールアドレスなどを記載します。リンク切れ、ログイン必須、複雑な手続を要求する設計は避けるべきです。

④送信者の住所
メール本文またはリンク先ページで表示する方法が考えられます。ただし、リンク先で表示する場合でも、受信者が容易に確認できる必要があります。

⑤苦情・問い合わせ先
電話番号、メールアドレス、問い合わせフォームURLなど、苦情や問い合わせを受け付ける窓口を表示します。

表示義務については、「どこかに書いてあればよい」というものではありません。受信者が容易に認識できる場所に、分かりやすく表示する必要があります。
たとえば、極端に小さい文字、背景色と近い色、画像だけで表示してテキストとして確認できない形式、長いフッターの中に埋もれている表示などは、実務上問題となる可能性があります。
配信停止リンクについても、リンク先が分かりにくい、手続が複雑である、退会理由の入力を必須にしている、何度も確認画面を表示する、といった設計は避けるべきです。

2 オプトアウト後の送信は禁止

オプトインと並んで重要なのが、オプトアウト、すなわち受信拒否への対応です。
いったん適法に同意を取得していたとしても、その後、受信者が「配信停止」を申し出た場合には、以後、その意思に反して広告宣伝メールを送ることはできません。
実務上、次のようなケースは典型的なリスク場面です。
①配信停止リンクが機能していない
②配信停止処理が完了するまでに長期間を要する
③複数の配信リストの一部だけ停止され、別リストから配信が続く
④CRMとメール配信システムの同期不備により再登録される
⑤営業担当者が個別に送信するメールが停止対象から漏れる
⑥委託先に停止リストが共有されていない
⑦「重要なお知らせ」と称して実質的な広告メールを送る

特に、複数のシステムを利用している企業では、オプトアウト情報の一元管理が重要です。
ECカート、MAツール、CRM、SFA、問い合わせ管理システム、営業担当者の手元リストなどが分断されている場合、あるシステムでは配信停止済みであるにもかかわらず、別のシステムからメールが送信されることがあります。
配信停止の申出を受けた場合には、単にメール配信ツール上で「解除済み」にするだけでなく、企業全体として同じ相手に広告宣伝メールを送らない運用を構築する必要があります。

3 同意記録の保存義務

特定電子メール法では、オプトインの同意を取得するだけでなく、その同意を証する記録を保存する義務も定められています。
たとえば、Webフォームでメルマガ配信の同意を取得する場合、実務上は次のような記録を保存しておくことが考えられます。
①同意したメールアドレス
②同意取得日時
③同意取得ページのURL
④同意取得時のチェックボックス文言
⑤同意取得画面のスクリーンショット
⑥同意取得時の利用規約・プライバシーポリシーの版
⑦IPアドレスやユーザーIDなどのログ
⑧ダブルオプトインを採用している場合の確認メール送信・クリック履歴

保存期間については、特定電子メール法上は、広告宣伝メールを最後に送信した日から1か月が一つの目安となります。ただし、特定電子メール法に基づく措置命令を受けた場合には、より長期の保存が必要となる場合があります。
また、ECサイトや通信販売に関連する電子メール広告の場合には、特定商取引法上の記録保存義務が問題となり、3年間の保存が必要となる場合があります。
したがって、実務上は「特定電子メール法では1か月だから、1か月で削除してよい」と短絡的に判断するのではなく、自社のメールが特定商取引法上の電子メール広告にも該当しないかを確認する必要があります。
特にECサイト、サブスクリプションサービス、オンライン講座、デジタルコンテンツ販売などでは、3年間保存を前提に運用設計する方が安全です。
また、保存義務期間を過ぎた後も、クレーム対応や紛争予防の観点から、必要な範囲で記録を保持することが望ましい場合があります。
他方で、メールアドレスや行動履歴は個人情報に該当し得るため、不要な個人情報を漫然と保持し続けることにもリスクがあります。個人情報保護法上の安全管理措置、利用目的、保存期間との整合性も含めて検討すべきです。

4 委託先にメール配信を任せる場合の注意点

メール配信業務は、外部のメール配信会社、広告代理店、マーケティング支援会社、営業代行会社などに委託されることが少なくありません。
しかし、外部業者に委託したからといって、広告主・依頼企業が法的責任から当然に解放されるわけではありません。
実務上、委託先管理で確認すべき事項は多岐にわたります。
①配信リストの取得経路は適法か
②オプトインの同意記録が保存されているか
③配信停止者がリストから除外されているか
④配信停止情報が委託元・委託先間で共有されるか
⑤メール本文に必要な表示事項が入っているか
⑥送信者名・Fromアドレスを偽装していないか
⑦架空アドレス宛の送信を行っていないか
⑧苦情・問い合わせ対応の窓口と責任分担が明確か
⑨委託終了後のリスト削除・返還が定められているか
⑩再委託先がある場合、その管理体制が確認されているか

契約書上も、メール配信委託契約、広告運用委託契約、MA運用支援契約などにおいて、特定電子メール法、特定商取引法、個人情報保護法を遵守する義務を明記することが重要です。
さらに、配信リストの適法性保証、同意記録の提供義務、オプトアウト情報の即時反映、苦情対応、損害賠償、再委託制限、監査権限などを定めておくべきです。
特に、外部業者が保有するリストを利用して配信する場合には、そのリストがどのように取得されたものか、広告宣伝メールの受信について適法な同意があるのかを慎重に確認する必要があります。

「業者が大丈夫と言っている」「過去にも使われているリストだから問題ない」といった説明だけで利用すると、違法配信に関与したと評価されるリスクがあります。

6 特定商取引法・個人情報保護法との関係

メールマーケティングでは、特定電子メール法だけを見ていれば足りるわけではありません。
まず、ECサイトや通信販売に関する電子メール広告については、特定商取引法の規制が重なる場合があります。
特定電子メール法は、主に電子メールの送受信上の支障防止を目的とする法律です。これに対し、特定商取引法は、消費者保護や取引の公正を目的とする法律です。目的や規制対象が異なるため、同じメールについて両方の法律が問題となる場合があります。
特定商取引法が適用される場合には、請求・承諾のない者に対する電子メール広告の禁止、記録の作成・保存義務、受信拒否者への送信禁止、表示義務などを確認する必要があります。
次に、メールアドレスや氏名、購入履歴、閲覧履歴、問い合わせ履歴などは、個人情報または個人関連情報として個人情報保護法上の検討対象となります。
メールマーケティングにおいては、次の点も確認が必要です。
①メールアドレスの取得時に利用目的を適切に通知・公表しているか
②広告宣伝目的で利用することが利用目的の範囲内か
③共同利用や第三者提供がある場合に必要な措置を講じているか
④外部委託先に対する安全管理措置・監督を行っているか
⑤配信停止後の個人情報の取扱いが整理されているか
⑥行動履歴に基づくターゲティング配信について説明しているか

特定電子メール法上の同意と、個人情報保護法上の同意・利用目的の問題は、似ているようで別の論点です。
メルマガ配信についてオプトインを取得していても、個人情報の利用目的や第三者提供の整理が不十分であれば、別途問題となる可能性があります。

6 実務で整備すべきチェックリスト

企業がメールマーケティングを適法に運用するためには、法務部門、マーケティング部門、情報システム部門、営業部門、外部委託先が連携して、少なくとも以下の点を確認する必要があります。

(1)配信前の確認

①広告宣伝メールに該当するか
②特定電子メール法の適用対象か
③特定商取引法の電子メール広告にも該当するか
④配信対象者から事前同意を取得しているか
⑤例外に依拠する場合、その根拠が明確か
⑥受信拒否者が除外されているか
⑦配信リストの取得経路が適法か
⑧外部リストを利用する場合、同意の内容を確認しているか

(2)フォーム・同意取得画面の確認

①メルマガ配信に同意する旨が明確に表示されているか
②同意文言が小さすぎたり分かりにくかったりしないか
③同意の対象となるメールの種類が明確か
④チェックボックスや同意ボタンのログが残るか
⑤同意取得時の画面構成を保存しているか
⑥利用規約・プライバシーポリシーとの整合性があるか

(3)メール本文の確認

①送信者の氏名または名称を表示しているか
②住所を表示しているか、または容易に確認できるリンクを設けているか
③配信停止方法を分かりやすく表示しているか
④受信拒否通知先のメールアドレスまたはURLを表示しているか
⑤苦情・問い合わせ先を表示しているか
⑥From名や送信元アドレスが誤認を招かないか
⑦配信停止リンクが正常に機能するか

(4)配信後の確認

①配信停止申出が即時または合理的期間内に反映されるか
②複数システム間でオプトアウト情報が同期されるか
③営業担当者による個別送信にも停止情報が反映されるか
④苦情・問い合わせへの対応フローがあるか
⑤同意記録・配信記録を保存しているか
⑥委託先から必要な記録の提供を受けられるか

7 まとめ

広告宣伝メールは、事前同意を取得すれば自由に送れるものではありません。
メール本文には、送信者情報、配信停止方法、住所、問い合わせ先などを分かりやすく表示する必要があります。また、受信者が配信停止を申し出た場合には、その意思に反してメールを送り続けることはできません。
さらに、同意を取得したことを証明する記録を保存し、必要に応じて説明できる状態にしておくことが重要です。ECサイトや通信販売に関連するメールでは、特定商取引法上の記録保存義務も併せて確認すべきです。
メール配信を外部業者に委託する場合も、委託先に任せきりにするのではなく、配信リストの適法性、表示義務、配信停止対応、記録保存、個人情報管理について契約上・運用上の管理体制を整える必要があります。
メールマーケティングは、適切に運用すれば顧客との関係構築に有効な手段です。他方で、法令対応を軽視すれば、行政処分、刑事罰、苦情対応、信用低下につながりかねません。
メルマガやステップメールの配信体制に不安がある場合には、配信開始前に、同意取得画面、メールテンプレート、配信停止フロー、委託契約、個人情報管理体制を総合的に確認することが重要です。

メルマガ配信でまず押さえるべき特定電子メール法

2026-06-15

ECサイトで商品を購入した顧客、資料請求をした見込み顧客、展示会やセミナーで名刺交換をした相手に対して、新商品、キャンペーン、セール、ウェビナー、ホワイトペーパーなどの案内をメールで送ることは、多くの企業にとって重要なマーケティング施策です。
近年は、CRMツール、MAツール、メール配信システムの普及により、顧客属性や行動履歴に応じて、メルマガ、ステップメール、休眠顧客向けメール、カゴ落ちメール、アップセル・クロスセルメールなどを自動配信することも一般的になりました。
しかし、企業が「メールアドレスを持っている」ということと、「広告宣伝メールを送ってよい」ということは、法律上まったく別の問題です。
広告宣伝を目的とする電子メールについては、主に「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、いわゆる特定電子メール法による規制を受けます。同法は、原則として、あらかじめ同意した者に対してのみ広告宣伝メールの送信を認める「オプトイン方式」を採用しています。

「以前購入してくれた顧客だから大丈夫だろう」「名刺交換をしたから営業メールを送っても問題ないはず」「BtoBの法人宛メールだから規制対象外だろう」といった感覚で一斉配信を行うと、法令違反となる可能性があります。
違反した場合、行政上の措置命令の対象となるだけでなく、送信者情報を偽った送信や命令違反など一定の場合には、刑事罰が科される可能性もあります。
本記事では、企業がメルマガやステップメールを配信する際に、まず押さえておくべき「特定電子メール法の対象」と「オプトイン規制」について解説します。

1 特定電子メール法の対象となるメールとは

特定電子メール法が問題となるのは、主に「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」です。典型例は、商品・サービスの購入、契約、申込み、資料請求、セミナー参加などを促すメールです。
具体的には、次のようなメールが問題になり得ます。
①ECサイトの購入者に送る新商品・セール情報
②資料請求者に送るサービス紹介メール
③展示会で名刺交換した相手への営業メール
④ウェビナー参加者への有料サービス案内
⑤休眠顧客に対する再購入促進メール
⑥無料会員に対する有料プラン案内
⑦他社商品の広告を掲載したメール
⑧SMSによるキャンペーン案内

メール本文の形式が「お知らせ」「ニュースレター」「ご案内」「重要なお知らせ」となっていても、実質的に商品・サービスの広告宣伝を目的としていれば、特定電子メール法の規制対象となる可能性があります。
特に注意が必要なのは、取引連絡や事務連絡に広告宣伝を混在させるケースです。たとえば、購入完了メール、発送通知、契約更新案内など、取引上必要な連絡を主目的とするメールであっても、本文中にキャンペーン情報や関連商品の案内を大きく掲載する場合、広告宣伝メールとしての評価が問題となることがあります。
実務上は、「そのメールの主たる目的が何か」「広告宣伝部分が付随的といえるか」「受信者が広告宣伝メールとして受け取ることを予見できるか」を慎重に検討する必要があります。

2 原則はオプトイン―事前同意がなければ送れない

特定電子メール法の中心的なルールは、オプトイン規制です。
同法は、一定の例外を除き、あらかじめ特定電子メールの送信を求める旨、または送信に同意する旨を通知した者など以外に対して、特定電子メールを送信してはならないと定めています。
簡単にいえば、広告宣伝メールを送るには、原則として、受信者から事前に同意を取得しておく必要があります。
ここで重要なのは、単にメールアドレスを取得しただけでは足りないという点です。たとえば、次のような事情だけでは、直ちにメルマガ配信の同意があるとはいえません。
①商品購入時にメールアドレスを入力してもらった
②問い合わせフォームから連絡を受けた
③名刺交換をした
④セミナー申込時にメールアドレスを取得した
⑤展示会でアンケートに回答してもらった
⑥Web上に掲載されているメールアドレスを取得した

これらは、あくまで連絡先を取得した、または一定の取引・接点があったという事実にすぎません。広告宣伝メールを送るには、原則として「広告宣伝メールを受け取ること」についての同意が必要です。

3 同意取得フォームの設計

実務上、ECサイトや申込フォームでは、以下のような仕組みを設けることが一般的です。
「当社からの商品・サービスに関するお知らせ、キャンペーン情報、メールマガジンの配信を希望します。」
このような文言を表示したうえで、チェックボックス、ラジオボタン、同意ボタンなどにより、ユーザーが同意したことを記録できる形にしておく必要があります。
もっとも、同意取得の設計には注意が必要です。表示が小さすぎる、色が薄く目立たない、利用規約の末尾に埋め込まれている、何に同意しているのか分からない、といった場合には、受信者が広告宣伝メールの受信を認識して同意したとは評価されにくくなります。

オプトインの同意は、形式だけ整えればよいものではありません。受信者が「広告宣伝メールが送られてくること」を容易に認識できる表示であることが重要です。
また、同意の対象となるメールの範囲も明確にしておくべきです。たとえば、「メールマガジン」とだけ記載するのではなく、商品・サービスの案内、キャンペーン情報、セミナー案内、関連サービスの紹介など、どのような内容のメールが届くのかを可能な限り具体的に示すことが望ましいでしょう。

4 オプトインの例外――名刺交換・取引関係・公開アドレスの扱い

特定電子メール法には、事前同意がなくても送信できる一定の例外があります。
たとえば、自己の電子メールアドレスを通知した者、取引関係にある者、自己の電子メールアドレスを公表している団体または営業を営む個人などは、一定の場合に送信対象となり得ます。
このため、展示会や商談で名刺交換をした相手、既存の取引先、Webサイト上で問い合わせ用メールアドレスを公表している法人などについては、特定電子メール法上、一定の範囲で例外的に広告宣伝メールを送信できる場合があります。
しかし、ここで「例外があるから自由に送れる」と理解するのは危険です。

第一に、受信拒否の意思表示がある場合には送信できません。たとえば、名刺やWebサイトに「営業メールはお断りします」「広告メールの送信を希望しません」といった表示がある場合、それを無視して送信すれば法的リスクが高まります。

第二に、特定電子メール法以外の法律も問題になります。ECサイトや通信販売に関連する電子メール広告については、特定商取引法の規制も重なって適用される場合があります。

第三に、BtoBメールであっても、相手方の担当者個人に対する過度な営業メール、無差別な一斉送信、配信停止の意思表示を無視した送信は、企業の信用を大きく損ないます。法令違反の有無だけでなく、レピュテーションリスク、迷惑メール通報、ドメイン評価の低下、メール到達率の悪化といった実務上の不利益も無視できません。

したがって、例外に該当する可能性がある場合でも、実務上は、可能な限り明示的な同意を取得し、配信停止手段を明確に設け、配信対象を必要最小限に限定する運用が望ましいといえます。

5 まとめ

メールマーケティングを始める際に最初に確認すべきことは、「メールアドレスを持っているか」ではなく、「広告宣伝メールを送る法的根拠があるか」です。

特定電子メール法では、広告宣伝メールについて、原則として事前同意、すなわちオプトインが求められます。

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