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「返金保証・成果保証」表示のトラブル対策

2025-10-13

「全額返金保証付き!」「結果に満足できなければ返金します」「絶対に成果が出るまでサポート」

こうした“保証系”の表現は、顧客に安心感を与え、購入の心理的ハードルを下げる効果があります。しかし、実際には返金が難しい条件だったり、成果の定義が曖昧であったりすると、景品表示法違反や特定商取引法違反に該当する可能性があります。

実際に消費者庁から措置命令が出された例もあり、表現内容と契約実態との乖離には特に厳しい目が向けられています。

1 「返金保証」と表示するなら、その条件は広告に明示すべき

返金保証は、あくまで「条件を満たした場合に返金する制度」であるため、保証の内容・条件・期間・返金方法などを明確に表示しないまま“保証付き”と謳うのは有利誤認表示に該当する可能性があります。

典型的なNGパターンとしては、

①「返金保証あり」と大きく表示しているが、実際は厳しい条件(例:使用済み不可、一定期間内に書面申請、返送料顧客負担)

②保証の適用には顧客が予想しない義務がある(例:写真提出、アンケート記入)

③広告に一切条件が記載されておらず、購入後にしか詳細がわからない

こうしたケースは、「実質的に返金されないのに返金されるかのように見せる」ことになり、不当表示や不実告知と判断されかねません。

2 「成果保証」はさらに慎重に扱うべき

「成果保証」は、“結果が出ることを約束する”という意味合いを持ちます。したがって、達成基準や成果の定義が曖昧なまま「保証」を謳うと、法的リスクはさらに高まります。

よくあるNG例としては、

①「英語力アップを保証」と表示しているが、何をもって“アップ”とするのか不明

②「必ず痩せます」→ 体重何kg減?期間は?どんな人でも?

③「売上2倍保証」→ 達成できなかったときの対応が明示されていない

「成果」を保証する以上、その成果が誰にでも、どんな状況でも再現可能であるという合理的根拠資料(エビデンス)が必要です。再現性の乏しい成果を約束することは、不当な表示とされるリスクが極めて高いといえます。

3 表示上の注意点と対応策

返金保証・成果保証に関する広告表現を行う際は、以下の点に注意しましょう。

①保証内容の範囲(返金の対象となる商品・サービス、部分・全部)

②保証の条件・期限(例:30日以内に申請、未使用に限る 等)

③顧客側に発生する手間・コスト(返送料・手数料など)

④申請方法の明確化(フォーム・書類・連絡先の明示)

⑤成果の定義と達成基準(成果保証の場合)

これらの情報は、広告中にしっかり表示するか、リンク先ですぐ確認できるようにすることが求められます。

「保証」は、顧客との信頼関係を築くうえで重要な制度ですが、それを“広告”として活用する以上、誤認のない透明な説明責任が不可欠です。

“条件付きの安心”を誠実に伝えることで、むしろ顧客の信頼を高めることができます。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「無料・0円」表示の落とし穴と注意点

2025-10-08

「初回無料!」「0円スタート!」「完全無料で体験できます」
こうした“無料・0円”という表現は、顧客の心理的ハードルを大きく下げる強力な広告手法です。しかし、実際には費用がかかる、または条件があるにもかかわらず“無料”と表示していると、景品表示法や特定商取引法違反に該当するリスクがあります。

とりわけ、定期購入・サブスクリプション・体験サービスで多発している表示トラブルについて、本稿ではそのポイントを整理します。

1 「無料」表示における法的ルールの基本

景品表示法では、「実際の取引条件より著しく有利であると誤認させる表示」(=有利誤認表示)を禁止しています。

つまり、「無料」と表示する以上、消費者が本当に一切の負担なく利用できることが前提です。

NG表示の典型例としては、

①「0円」と表示しながら、送料や手数料が発生する

②初回無料としつつ、2回目以降の自動継続を前提とした契約である

③「無料相談」と表示しているが、実際には30分を超えると課金される

④「無料トライアル」中に解約しないと自動的に有料契約へ移行するが、その事実が目立たない

このようなケースでは、「無料」という表示が消費者の誤認を誘う不当表示と判断される可能性があります。

2 特に問題になりやすい「定期購入」「サブスク」

「初回無料」「初月0円」などの表示が最も多く使われるのが、定期購入型の商品やサブスクリプション型サービスです。しかし、実際には“1回だけでやめられない”契約条件であるにもかかわらず、「無料」を前面に出している場合、景表法・特商法の両方に抵触するリスクがあります。

たとえば以下のような条件付き契約は要注意です。

①「初回無料だが、最低3回の継続購入が必須」

②「無料期間が終わると、自動的に有料会員に移行」

③「無料体験はクレジットカード登録が必要、登録と同時に有料プランへ自動移行」

これらの条件は、広告上で明確に表示しなければ、「0円」という訴求が誤認表示となりうるため、慎重な対応が必要です。

3 リーガルチェックのポイント

①「0円」「無料」と表示しているが、別途費用が発生していないか?

②定期購入や有料移行の条件を、広告上で明確に示しているか?

③解除・解約の方法は、簡便かつわかりやすく表示されているか?

④「無料相談」や「無料診断」の範囲や時間制限が明示されているか?

⑤表示に対する社内でのチェック体制・表示根拠の保管は整っているか?

「無料」という言葉は、消費者にとって魅力的であるがゆえに、一歩間違えば“騙された”と強く反発を招く表現でもあります。
だからこそ、“無料”は誠実さをもって扱うべきキーワード。透明性をもって説明責任を果たすことが、結果的にブランド信頼と継続利用につながります。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「期間限定・数量限定」の信頼性と表示責任

2025-10-03

「今だけ!」「期間限定セール実施中」「先着100名様限定」「在庫わずか!」

こうした“限定”の表現は、購買の背中を押す非常に強力な広告手法です。しかし、実際には期間や数量の限定がなされていない、あるいは事実と異なる場合には、景品表示法の「有利誤認表示」に該当するリスクがあります。

消費者庁も過去に複数の措置命令を出しており、「煽り系広告」の代表的な規制対象といえる表現です。

1 限定表示は「実態」が伴っていなければNG

景品表示法では、「取引条件が実際より著しく有利であると誤認させる表示」を禁止しています。「限定感」は“有利さ”の演出そのものであり、根拠のないまま使用することは違法とされる可能性が高いのです。

よく見られるNG例としては、

①「期間限定」と表示しながら、終了後も同じ価格や内容で継続販売している

②「残りわずか」としていた商品が、実際には在庫多数存在していた

③「先着100名限定」としていたが、数に達してもキャンペーンを続けていた

こうした表示は、消費者に“今買わなきゃ損”という誤った判断を促すものとして、有利誤認に該当する可能性があります。

2 「期間限定」表示で求められる3つの条件

①具体的な期間を明示していること

例:「2025年4月1日〜4月30日まで」「今週末限定」など

→「今だけ!」「期間限定中」だけでは不十分です。

②その期間を過ぎたら特典が終了すること

終了後も内容が続く場合は、「限定」と呼べません。

③実際に終了・切り替えを行っていること

常に“セール状態”となっている場合、「期間限定」は虚偽表示とされます。

3 「数量限定」表示は特に証拠の保管が重要

「限定100個」「残り5点」「先着50名」などの数量系表示では、“表示通りの数だけ販売した”ことを証明する責任(証明責任)は広告主側にあります。

①表示時点での在庫管理データ

②販売開始・終了日時、対象数量の記録

③在庫表示を自動更新していない場合の手動更新履歴

これらを広告の掲出とあわせて保管しておくことが、万一指摘された場合の“自己防衛策”となります。

「限定」という言葉は、消費者にとって“買う理由”になる強い表現です。だからこそ、そこに根拠と誠実さがなければ、一気に信頼を失う表現にもなり得ます。

“今だけ”をうたうなら、本当に「今だけ」であることを証明できるか?この意識が、企業のブランド価値と法的安全性の両立につながります。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「割引・セール表示」の有利誤認を回避する方法

2025-09-28

「通常価格9,800円 → 今だけ3,980円!」「定価から50%OFF」「期間限定セール実施中」

こうした割引表示は、購買意欲を刺激する広告表現として非常に有効です。しかし、実態に即していない“割引の演出”は、景品表示法上の「有利誤認表示」として違法とされるリスクがあるため、十分な注意が必要です。

1 景品表示法における「有利誤認表示」とは?

有利誤認表示とは、「実際よりも取引条件(価格・サービス内容など)が著しく有利であると誤認させる表示」のことです。割引・セール表示はまさにその代表例であり、“元の価格”が存在しない、または形式的なものであった場合、違法となる可能性が高くなります。

2 NG例:こんな割引表示はリスク大

①「通常価格」として表示している価格が、過去に実際に販売されていなかった

②常に「タイムセール」「期間限定割引」を表示しており、“限定感”が実態と異なる

③ほとんどの顧客が特典を受けられない条件付き価格を、目立つ場所に表示している

④「半額!」と表示しているが、元値が自社で自由に設定された価格(定価ではない)

こうした表示は、実際には消費者に有利でないにもかかわらず、有利に見せることで購買意欲を煽っており、不当表示として措置命令や課徴金納付命令の対象となる可能性があります。

3 「通常価格」には客観的根拠が必要

割引表示の適法性の鍵となるのは、「通常価格」に相当する金額が実際に販売された価格であるかどうかです。具体的には、

①一定期間(目安:過去2週間以上)

②相当な数量・件数(特定の1~2件ではNG)

③継続的に販売されていた価格

これらを満たしていなければ、「通常価格」と表示することはできません。たとえば、一度も9,800円で販売されていない商品に「通常価格9,800円→特価3,980円」と表示するのは違法です。

4 「セール期間」「割引条件」の表示は明確に

割引表示が適法であっても、その適用期間や条件を小さく、あるいは曖昧に表示することで消費者に誤認を与える表現もNGです。

たとえば、

①「期間限定」としながら、実際には常時割引状態

②「会員限定割引」を全体広告で大きく表示し、会員条件を目立たない場所に記載

③「残り〇個!」と表示して在庫を少なく見せる演出が常態化している

これらは、景表法の“実態に即した表示義務”に反する可能性があります。

割引やセール表示は、誠実に運用すれば売上向上に大きく寄与する表現です。しかし、一時的な集客効果を狙って“誇張された価格訴求”を行うと、企業全体の信頼性が損なわれ、法的リスクも大きくなるおそれがあります。

“本当の値引き”こそが、消費者の信頼とリピートにつながることを意識して、表現を設計することが重要です。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

比較広告の合法ラインとNG事例

2025-09-23

「他社より安い」「他社製品より高性能」「従来品と比較して◯%向上

こうした“比較広告”は、商品・サービスの優位性をわかりやすく伝える手段として有効です。しかし、比較の方法や表現の仕方を誤ると、景品表示法違反や不正競争防止法違反に該当する可能性があります。

本記事では、比較広告に関する法的ルールと、実務上の注意点をわかりやすく整理します。

1 比較広告に関する基本ルール

比較広告は、消費者の合理的な選択に資するものであれば許容されるとされています。ただし、次の3つの条件をすべて満たす必要があります(消費者庁「景品表示法に基づく表示に関する公正競争規約等」より)。

①比較内容が客観的事実に基づいていること

②比較方法が公正であること

③他社・他製品を誹謗中傷する内容でないこと

この原則に基づき、広告表現が適切であるかどうかを判断していく必要があります。

2 適法な比較広告の例

①「A社製品と比較して消費電力が30%少ない(当社調べ・2024年3月)」

②「当社のスマホは、同価格帯の他社製品よりも処理速度が平均15%速い(ベンチマーク試験による)」

③「従来品より、吸引力が20%向上(JIS試験方法に準拠)」

これらは、具体的な比較対象・基準・出典・時期が明記されており、かつ客観的な数値に基づいているため、法的にも比較的安全といえます。

3 NG比較広告の典型例

以下のような表現は、景表法違反(優良誤認表示・有利誤認表示)や不正競争防止法(信用毀損)に抵触するリスクがあります。

①「他社製品は古くて時代遅れ。当社だけが最新技術」

②「他社は価格が高すぎる。当社なら激安」

③「B社製品より絶対に効果あり!(根拠不明)」

④「従来品より改善」→ 何がどう改善されたか明記されていない

これらは、事実に基づかない、誤認を招く、または他社を貶める内容であるため、適法性に欠ける可能性が高いです。

4 「従来品との比較」も要注意

比較広告の中でも、「自社の旧モデルと新製品の比較」は比較的使いやすい表現ですが、以下の点に注意が必要です。

①旧製品のスペックやデータを明確に記載しているか?

②新旧製品の条件(使用環境、試験条件等)が揃っているか?

③消費者が誤認しないよう、どの程度の改善かを定量的に記載しているか?

例:「従来品より30%静音化(当社試験による)」はOKですが、「音が気にならなくなった!」のような主観的・あいまいな表現はNGリスクがあります。

比較広告は使い方次第で非常に効果的ですが、「優位性のアピール」と「誤認表示」の間に細い境界線がある表現です。

法的な視点から「比較のしかた」「根拠の出し方」「表現のバランス」を見直すことで、競合と差別化しつつ、信頼される広告を作ることができます。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「医師監修・専門家推薦」表示の法的ハードル

2025-09-18

「医師監修」「専門家推奨」「〇〇士が推薦!」

こうした表現は、商品・サービスの信頼性を高める強力な広告手法です。特に健康・美容・教育・金融など、専門性が重視される分野で多用されますが、実態に伴わない表示を行うと、景品表示法違反や業法違反に該当するリスクがあるため、慎重な運用が求められます。

1 「医師監修」は何を意味するのか?

「監修」とは一般的に、「内容の正確性や専門性について確認・指導すること」を指します。よって、「医師監修」と表示する場合には、実際に医師が内容確認・指導を行っている事実がなければ、虚偽表示や優良誤認表示とみなされる可能性があります。

たとえば以下のような表示には注意が必要です。

①一度だけ意見を聞いただけで「監修」と表示

②医師の関与が古く、現行の内容に影響していない

③名義貸し的に名前だけを使っている

これらは、「監修」と呼ぶには不十分な関与である場合、誤認を与える表示(景表法違反)とされるおそれがあります。

2 「専門家推奨」の場合も根拠が問われる

「〇〇士が推奨」「管理栄養士も推薦」「金融のプロが勧める」といった表現もよく見られますが、これも“誰がどのような根拠で推薦しているのか”が明示されていない場合には、優良誤認表示のリスクがあります。

注意すべきポイントとしては、

①実在の専門家が明確な根拠を持って推薦しているか?

②実際に使用した上での推薦か、それとも金銭的契約によるものか?

③複数の専門家の声を使っている場合、全員の同意・監修実績はあるか?

特に、報酬を受け取って推薦している場合には、ステマ規制の対象にもなるため、「広告表示の明示」が必要になるケースもあります。

「医師も推薦!」「専門家も納得!」など、抽象的な表現は具体的な関与が不明確であり、誤認の原因となります。消費者が、「あたかもその専門家全員が製品の品質を保証している」かのような印象を持つような表示は、避けなければなりません。

3 広告表示の文脈も重要です

また、表示に医師や専門家の顔写真・氏名・肩書きを使用する場合には、本人の許諾を得るとともに、表示する内容の正確性や現在性(最新性)を担保することも必要です。

4 リーガルチェックのポイント

①実在の医師・専門家か? 表示内容について本人の監修・同意があるか?

②推薦の根拠・内容が明確かつ客観的に説明できるか?

③使用している顔写真・肩書き等が事実と相違ないか?

④製品が薬機法対象かどうかを確認済みか?

⑤報酬提供がある場合、「広告表示」がなされているか?(ステマ対策)

「医師監修」「専門家推薦」は、適切に使えば大きな広告効果がありますが、その“信頼性”こそが、最も厳しく問われる表現でもあります。

一時的な訴求力ではなく、長期的に信頼されるブランドを築くためにも、法令遵守に基づいた慎重な運用が必要です。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

体験談・口コミを広告に使う際の落とし穴

2025-09-13

「〇〇を使って人生が変わりました!」「たった1週間で効果を実感!」「家族にも勧めています」

こうした体験談や口コミは、企業が自ら語るよりもはるかに説得力を持つため、広告や販促において非常に効果的です。しかし、消費者に誤解を与えるような使い方をすると、景品表示法違反(優良誤認表示)やステマ規制に抵触するリスクがあるため、注意が必要です。

1 体験談も「表示」として景品表示法の対象になる

景品表示法では、企業が行う広告表現において「実際のものより著しく優良である」と消費者に誤認される表示は禁止されています。そして、体験談・口コミも広告内で使えば“表示”としてこの規制の対象となります。

特に以下のような使い方はNGの典型です。

①個人の体験談を紹介しつつ、それが誰にでも再現できるかのように見せる

②一部の好意的意見だけを抜粋して表示し、実態より良い印象を与える

③実在しない人物による架空の体験談を掲載する

④効果に関する記述に科学的根拠がない(例:「2週間でウエスト5cm減」)

このような表現は、広告主の責任において根拠資料の保存・説明が求められ、行政処分の対象となるおそれもあります。

2 ステマ規制の適用対象にも注意

2023年の景品表示法改正により、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)が表示規制の対象に明確化されました。企業が報酬を支払って提供された体験談や口コミを、あたかも第三者の自然な発信であるかのように見せることは、違法表示とされる可能性があります。

特に次のような場合には注意が必要です。

①無料提供したモニターの声を「一般の顧客の感想」として表示する

②インフルエンサーに報酬や商品を提供して投稿してもらいながら、「#PR」「広告」といった明示をしていない

③企業が内容を監修・編集している口コミを、“自主的投稿”のように扱う

これらはいずれも、「広告であることがわかるように表示していない」=不当表示とみなされる可能性があるため、表示の明確化が必須です。

3 「あくまで個人の感想です」で済むのか?

体験談の末尾によく使われる「※個人の感想です。効果には個人差があります。」という文言は、一定の補足としては有効ですが、これだけで全ての誤認リスクが免除されるわけではありません。

広告の中心的部分に体験談が据えられている場合には、たとえ「個人の感想」だと明記していても、消費者が“一般的効果がある”と誤認すればアウトとなる可能性があります。

4 リーガルチェックのポイント

体験談・口コミを広告に使う場合のチェックリストとしては、

①実際にそのような体験があったか、事実確認と本人の同意を取っているか?

②表示されている内容に、合理的根拠資料が存在しているか?

③再現性のない成功事例を、一般化した表現にしていないか?

④報酬提供がある口コミ・投稿に、「広告」「PR」の表示がなされているか?

⑤「個人の感想」表示が免罪符になっていないか?

体験談・口コミは信頼性の高い訴求手法である一方、広告としての責任が非常に重い表現でもあります。「誰が」「どのような立場で」「どんな意図で語っているのか」を明確にし、誠実なコミュニケーションを心がけることが、法的トラブルの予防にもつながります。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「No.1・シェア表示」はどこまで許されるか?

2025-09-08

「業界No.1」「売上シェア国内トップ」「お客様支持率No.1」
こうした“ナンバーワン”表現は、企業や商品の信頼性・実績を強く印象づける効果があります。しかし、その分、景品表示法上の違反リスクも高く、慎重な運用が求められる広告表現です。本記事では、「No.1表示」「シェア表示」に関する法的リスクと、適法な表示のポイントを解説します。

1 「No.1」表示の根拠が求められる理由

「No.1」は、他の事業者との相対的な優位性をアピールする表現であるため、景品表示法における「優良誤認表示」に該当するか否かが常に問われます。

たとえば、以下のような表示はリスクがあります。

①調査期間や母集団が極端に限定されている

②出典が不明で、消費者が根拠を確認できない

③実際には僅差であり「No.1」と言えるか疑問な数値差

④売上高ではなく広告出稿量など別指標での“1位”を、総合的な優位と誤認させる表現

これらは、調査主体・調査範囲・期間・指標の不明確さによって、消費者に実態以上の印象を与えるおそれがあるため、違反とされる可能性があります。

2 「No.1」表示に必要な3つの原則

①根拠資料が存在すること(客観的データ)

第三者機関の調査結果や、売上統計、POSデータ、特許庁の登録数など、明確な数値データに基づく資料が必要です。

②比較対象・調査母体が適切であること

全国規模の商品であれば、全国の競合を対象にした調査でなければ意味がありません。「自社調査」や「一部地域のデータ」でのNo.1表示は、注意が必要です。

③表示内容に誤認を与える要素がないこと

調査項目・調査方法・期間・対象などを広告内で適切に開示し、消費者が「なぜNo.1なのか?」を判断できるようにすることが求められます。

3 「シェア表示」との違いと注意点

「No.1」と似た表現に「シェア〇%」「業界シェアトップ」などがあります。これも景品表示法上の“相対比較表示”にあたるため、No.1表示と同様に根拠が必要です。

特に注意すべきポイントとしては、

①「市場シェア」の定義を広告内に明記しているか?(例:販売金額ベース、販売数量ベース)

②対象市場が適切か?(例:「〇〇市場」での1位だが、他の競合を除外していないか)

③数字の単位や出典が明記されているか?(例:「矢野経済研究所調べ 2023年」など)

4 リーガルチェックのポイント

①表示している「No.1」に客観的なデータと出典の明示があるか?

②調査の対象期間・方法・母数が明確で、開示されているか?

③「シェア表示」の場合、市場定義・単位(売上数/金額)が正確か?

④広告の文脈から、消費者が不当に誤認しない表現となっているか?

「No.1」表示は、非常に強い訴求力を持つ表現ですが、それゆえに、景表法の厳しい審査対象となる“ハイリスク表現”でもあります。

適切な根拠と表現のバランスをとることで、安心して活用できる“信頼あるナンバーワン”を実現しましょう。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

「ランキング表示」の法的リスクと正しい使い方

2025-09-03

「売上ランキング1位」「お客様満足度ランキング上位獲得」「業界No.1の支持率」——こうした「ランキング表示」は、消費者に強い印象を与え、広告効果の高い表現として多くの企業が活用しています。しかし、このランキング表示が事実に基づいていなかったり、誤解を招く形で使われていたりすると、景品表示法に違反する可能性があります。広告担当者としては、そのリスクを正しく理解し、適切な表現であるかを慎重にチェックする必要があります。

1 景品表示法における「優良誤認表示」とは?

景品表示法では、「実際のものより著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)」を禁止しています。ランキング表示は、一見客観的な数値・評価に見えますが、その根拠が不明確だったり、調査の対象や手法が限定的だったりすると、消費者に誤認を与える可能性があるのです。

たとえば以下のような表示は、リスクが高いとされます:

①出典や調査主体が明記されていない「〇〇ランキング1位」

②狭い範囲(例:自社顧客のみ)での調査結果を、業界全体に通用するかのように表示

③短期間・特定時間帯の一時的な順位を、「継続的なNo.1」として表示

2 適法な「ランキング表示」に必要な4要素

ランキング表示を広告で使用する際には、以下の4つの情報を明確に表示することが求められます。

①調査主体(誰が調査したか)

例:「株式会社〇〇調査研究所 調べ」「〇〇書店販売データによる」

②調査対象(何を・どこで調査したか)

例:「2023年1月~12月 全国ドラッグストア100店舗の販売実績に基づく」

③調査方法(何を基準に順位付けしたか)
例:「POSデータの販売個数に基づき集計」「アンケートによる満足度評価」

④調査時期(いつのデータか)

例:「2023年12月時点」「2023年上半期」

これらを広告上で明記するか、少なくとも容易に確認できるようにしておくことが、適法表示の基本です。

3 「No.1」や「トップクラス」表示との違い

「ランキング1位」と「No.1」は同様に見られがちですが、景表法上では微妙に扱いが異なる場合があります。「No.1」は自社調査や業界団体の調査でも表示可能とされる一方、客観的裏付け資料がないまま使うと、やはり優良誤認表示とされるリスクがあります。

曖昧な表現(例:「人気急上昇中」「売れてます」)も、裏付けがなければリスクがあるため、裏付け資料の存在を前提に、明確で具体的な表示を心がけましょう。

4 リーガルチェックのポイント

①ランキングの出典、調査主体、時期、方法、対象は明記されているか?

②「1位」表示の根拠資料を提出できる状態にあるか?

③実態より過度に優位である印象を与えていないか?

④一時的なデータを恒常的なものとして表示していないか?

ランキング表示は、適切に運用すれば非常に効果的なマーケティング手法です。しかしその裏には、消費者の期待を裏切らない「根拠」と「透明性」が必要不可欠です。企業の信頼は、事実に基づく表現から築かれます。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

法律・士業業界の広告と法的リスク

2025-08-29

弁護士、司法書士、税理士、行政書士、社労士など、士業(専門職)における広告は、依頼者との信頼関係を築く重要なツールです。近年ではWebサイト、リスティング広告、YouTube、SNSなどを活用した広告展開も広がっていますが、過度な成果アピールや曖昧な専門性の表示には、弁護士法や各士業法、景品表示法等の法的リスクが潜んでいます。

1 「実績〇件」「勝率○%」などの表示は根拠と文脈が不可欠

士業広告で特によく見られるのが、「解決実績〇件」「相談実績1万件超」「勝率90%以上」といった表示です。これらは、依頼者にとって信頼の指標となりますが、根拠の明示がない場合、景品表示法の優良誤認表示に該当するリスクがあります。

たとえば以下のような表示は注意が必要です。

①「勝率90%超」→ 実際には、訴訟で争われた件数のうち一部を対象とした数字

②「相談実績1万件」→ グループ全体の累積であり、自事務所単体ではない

③「着手から最短1日で解決」→ 特殊ケースを一般化して表示している

これらの表示には、対象範囲・期間・算出基準などを明示し、合理的根拠資料を保管しておく必要があります。また、過度な印象操作は信頼失墜に直結します。

2 「専門家による対応」「分野特化」の表示には根拠を

「交通事故に強い」「相続専門の弁護士」「不倫慰謝料特化」など、分野特化型の訴求も多く見られますが、これも根拠のないまま表示することは、誇大広告や不実告知にあたるおそれがあります。

士業には専門資格や分野認定がないことも多く、「専門」をうたう場合には以下の配慮が必要です。

①専門表記をするなら、実績件数・講演歴・執筆歴などの裏付けを明記

②「〇〇協会認定」の資格表示をする場合は、民間団体か国家資格かを明示

③他士業や提携先のサービスを掲載する場合は、誰が対応するのか明確にする

なお、弁護士の場合、「専門」という言葉の使用には弁護士会の広告規程にも注意が必要です。

3 「相談無料」「成功報酬制」表示のリスク

費用体系に関する広告も依頼者の関心が高く、「相談無料」「完全成功報酬制」などの表示はよく見られます。しかし、これらは実際には条件付き・例外ありの場合が多く、その表示方法によっては誤認を招くおそれがあります。

①「初回無料」なのに、2回目以降の料金や無料の条件を明記していない

②成功報酬としつつ、着手金や実費が別途かかる旨が小さく表示されている

③電話相談無料でも、実質的に予約後面談が前提となっている

このような表示を行う場合には、無料・成功報酬の定義、対象範囲、適用条件、例外事項を明確に表示することが不可欠です。

4 リーガルチェックのポイント

士業広告で注意すべきポイントとしては、

①実績・勝率などの数値表示には、算出基準・対象期間の明示と根拠資料の保管

②「専門」「特化」などの表現には、裏付けとなる客観的実績の提示

③「無料相談」「成功報酬」表示には、条件や例外を分かりやすく記載

④「弁護士が対応」などの記載は、誰が実際に関与するか明確に

⑤広告規程(特に弁護士)に沿った表現かを所属団体ごとに確認

法律・士業業界において、依頼者は「情報の非対称性」を抱えた立場にあります。だからこそ、誠実で正確な広告は、信頼を得る第一歩。“選ばれる専門家”になるためには、事実に裏打ちされた広告表現が不可欠です。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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