アパレル・ファッション業界の広告と法的リスク

アパレル・ファッション業界では、季節ごとの新作プロモーション、SNSを活用した販促、ECサイトでのセール表示など、多彩な広告展開が行われています。デザイン性や感性を訴求する業界である一方、表示に法的な裏付けがない場合、景品表示法や家庭用品品質表示法等の法令に抵触するリスクがあるため、注意が必要です。

本業界で特に問題となりやすいのが、以下の3つの表示です。

①素材や原産国に関する表示

②価格(割引)表示

③機能性(防水・UVカットなど)の表示

1 素材表示と原産国表示の注意点

アパレル製品の品質表示には、「家庭用品品質表示法」が適用され、素材(繊維の組成)、洗濯表示、原産国などの正確な表示が求められます。たとえば、以下のような表示は問題になります。

①実際にはポリエステル混紡であるにもかかわらず「100%コットン」と記載

②中国製である商品に「Made in Japan」と表示

③特定の高級素材(例:カシミヤ)を一部しか使用していないのに、製品全体がその素材であるかのような表記

これらは景表法の優良誤認表示、品質表示法違反の両方に該当する可能性があります。

2 セール・割引表示の落とし穴

ECサイトや店頭ポスターで頻繁に見かける「通常価格から○%オフ」「今だけタイムセール」といった表示にも、法的リスクが潜んでいます。

景表法上、「通常価格」とは、過去に相当期間実際に販売された価格でなければならず、存在しない価格を“定価”として大幅割引を訴求すると、有利誤認表示として違法となるおそれがあります。

①常に「タイムセール」「ラスト1点」と表示している

②「通常9,800円→今だけ3,980円!」だが、実際に9,800円で販売された期間が極端に短い

③セール価格を継続的に使用しており、実質的に通常価格となっている

これらは、過去に消費者庁からの措置命令が出された事例もあります。

3 機能性表示・ナンバーワン表示

「UVカット90%」「防水加工済」「業界No.1のリピート率」など、機能性や実績を訴求する表現も人気ですが、これらの表示には合理的根拠資料が必要です。

特に「No.1」「人気ランキング1位」などの表現は、出典・調査機関・時期・調査方法の明示が不可欠です。根拠が不明確な場合、優良誤認表示として規制の対象になります。

4 チェックポイント

アパレル広告でリーガルチェックすべきポイントは以下のとおりです。

①素材や原産国の表示は、実際の商品と完全に一致しているか

②セールや割引価格に使用している「通常価格」は過去に実績があるか

③「限定」「ラスト1点」「人気」などの煽り表現は、実態に即しているか

④機能性表示には、第三者試験・社内試験などの根拠資料があるか

⑤ランキング・No.1表示の際は、出典・条件を明示しているか

アパレル業界では“感性に訴える表現”が中心になりがちですが、だからこそ信頼性ある表示とのバランスが求められます。ファッションの価値は、素材・デザインと同様に、“誠実な伝え方”にも宿ります。

次回は、「旅行・観光業界における広告と『体験談』『価格表示』の法的注意点」を解説いたします。

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