インターネットとSNSの普及により、企業がインフルエンサーや一般の消費者になりすまして商品・サービスを宣伝するステルスマーケティング(ステマ)が問題視されてきました。
このステマが景品表示法の規制対象となり、正式に「不当表示」の一つとして位置づけられました。
企業の法務担当者や経営者は、自社の広告宣伝が意図せずステマ規制に抵触しないよう、この新しい規制の具体的な内容と対策を理解する必要があります。
このページの目次
1 ステマ規制の概要
ステマ規制が目指すのは、「事業者の広告・宣伝であるにもかかわらず、それが広告であると消費者に伝わらないこと」を防ぐことです。
ステマ規制に違反すると判断されるのは、以下の二つの要件を同時に満たす場合です。
①事業者が自己の供給する商品・サービスについて行う表示であること。規制の主体は、広告を依頼・実施する事業者(企業)です。
②一般消費者が、その表示が事業者の表示であることを判別することが困難であること。ここでの「事業者の表示」とは、事業者が自己の利益のために行う広告・宣伝を指します。
重要なのは、規制の対象が「意図的かどうか」ではなく、「消費者が広告だと判別できるかどうか」という外形的な事実に基づいて判断される点です。
2 誰が規制されるのか?事業者の責任の範囲
ステマ規制により責任を問われるのは、広告主である「事業者」です。
インフルエンサーやアフィリエイター(広告の実行者)が、広告主の意図を超えて「これは広告ではない」と虚偽の発言をした場合でも、広告主である事業者が関与・指示をしていれば、責任を免れることはできません。
事業者は、外部の広告代理店やインフルエンサーに業務を委託する際にも、広告である旨の明示(広告表示)が適切に行われるよう、管理・監督する責任を負います。
3 広告だと判別させるための具体的な表示方法
では、消費者に「これは事業者の広告だ」と判別してもらうためには、どのように表示すればよいのでしょうか。
| 媒体 | 望ましい表示方法(例) | NGな表示方法(例) |
| SNS/ブログ記事 | 投稿の冒頭・末尾など目立つ位置に「広告」「宣伝」「PR」「#ad」などと記載する。 | ハッシュタグの中に混ぜる、背景と同化する小さな文字で記載する。 |
| ウェブ記事 | 記事タイトルや記事の冒頭に「[PR]」「〇〇社提供」と明記する。 | 記事の途中の目立たない場所に記載する。 |
4 法務・経営者が取るべき具体的な対策
ステマ規制は、広告活動におけるコンプライアンスのレベルを引き上げました。
景表法違反による措置命令や課徴金のリスクを回避するため、以下の対策を直ちに実行すべきです。
①外部委託先の厳格な管理
インフルエンサーやアフィリエイターと契約する際は、「広告であることの明記」を義務付ける条項を契約書に盛り込みます。さらに、実際に投稿された内容を定期的にチェックするモニタリング体制を構築し、違反が見つかった場合は速やかに是正させることが必須です。
②社内教育の徹底
マーケティング、広報、法務など、広告に関わる全社員に対し、ステマ規制の「意図は関係なく、判別困難なら違反となる」という原則を理解させるための研修を行います。
③広告審査フローへの組み込み
新規の広告案件やインフルエンサー施策を企画する際、法務部門やコンプライアンス部門が、「広告表示の明瞭性・視認性」をチェック項目として組み込み、必ず事前承認を行う仕組みを徹底します。
ステマ規制の導入は、企業に対し、全ての広告活動において透明性と誠実さを求める時代の流れを象徴しています。消費者からの信頼を失わないためにも、法務部門主導で社内の広告審査体制を強化することが、今の経営層に求められています。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
