インターネット上の「匿名掲示板」は、自由な意見交換ができる一方で、名指しでの誹謗中傷や根拠のない噂話が横行しやすい場でもあります。匿名性が高いため、「バレない」と思って投稿する人もいますが、違法行為であれば法的責任を免れることはできません。本記事では、匿名掲示板での誹謗中傷と、それに対する実務的な対応方法について解説します。
このページの目次
1 匿名だから訴えられない?という誤解
多くの掲示板では、投稿者の名前や連絡先が表示されないため、「身元がわからないから大丈夫」と考える投稿者も少なくありません。しかし、実際には運営会社やプロバイダが記録しているIPアドレスや接続ログを通じて、投稿者を特定できる仕組みがあります。
日本の裁判実務では、被害者が一定の証拠を揃えれば、発信者情報開示請求を通じて投稿者の身元特定が可能です。
2 実際の流れ:投稿者特定から責任追及まで
①証拠保全
問題の投稿が行われたページのスクリーンショットやURLを保存し、投稿日時や内容を記録します。
②発信者情報開示請求(第一段階)
掲示板の運営会社に対し、IPアドレスなどの開示を求めます。ログの保存期間は短いため、迅速な対応が必要です。
③発信者情報開示請求(第二段階)
IPアドレスを管理するプロバイダに対して、契約者情報(氏名・住所など)の開示を求める手続を行います。
④損害賠償請求
投稿者が特定できた場合、不法行為に基づく慰謝料や弁護士費用の賠償を請求することが可能です。
3 裁判例:掲示板投稿者に対する開示と損害賠償命令
ある裁判例では、「○○は不倫している」「○○会社は詐欺企業」といった虚偽の投稿に対し、名誉毀損を認定。掲示板運営会社に対してIPアドレスの開示が命じられた後、投稿者に対して100万円の損害賠償が命じられました。
このように、匿名掲示板の投稿でも、内容によっては重大な法的責任を問われることになります。
4 掲示板運営者の責任は?
掲示板運営者が投稿を放置し続けた場合、一定の条件下では運営者自身も損害賠償責任を負う可能性があります。特に、被害者から削除要請を受けたにもかかわらず対応を怠った場合には、「注意義務違反」として責任が認められることがあります。
匿名掲示板の投稿により名誉を傷つけられた場合、泣き寝入りする必要はありません。迅速な証拠保全と法的手続によって、投稿者の特定・責任追及が可能です。また、状況によっては刑事告訴や仮処分による削除請求も検討できます。
掲示板の性質や被害内容に応じた最適な手段を選ぶためにも、早めに専門家へご相談ください。