問合せフォームと名誉権侵害

昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。

このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。

本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年7月18日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。

1 事案の概要

A株式会社に勤務していた原告が、被告がA株式会社の問合せフォームにおいて「原告は精神異常者」等と記載して送信したことに対して名誉権を侵害されたものとして、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

①本件通信は本件フォーム(特定の会社に対する問合わせの受け皿)に対する書込みであり、これを閲覧し得るのは原告勤務先等の役員や従業員に限られると考えられること、本件通信は電子メールの形式での通信であり、受信者が意図的に転送等を行う場合を除き、当該データは原告勤務先等の管理下に留まることなどに照らせば、本件通信の内容が広くインターネットのユーザーの目に触れる事態の発生は想定し難い。

②仮に原告勤務先等の従業員等の数が多数におよぶとしても、本件通信に「高度の伝ぱ性」があるとはいえず、その伝ぱ性「ゆえに被害が際限なく拡大」するような危険性も認められない。

上記の裁判所の判断に関しては、法的には肯定できるものですが、被害者の心情としてはなかなか納得できないところだと思います。

会社のフォームを利用したこのような投稿については、基本的には上記の裁判所の判断と同様の考え方が採用されておりますが、あくまでもケースバイケースであり、問合せフォームの仕組みによっては、判断が異なる場合もあり得るものと考えられます。

3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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