提供命令について

昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。また、SNSや各種の匿名掲示板といったインターネット上の場において、様々な内容について個人が意見を表明することも容易になっております。

このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。

このような状況を踏まえ、いわゆるプロバイダ責任制限法の改正が行われ、2022年10月施行の改正法では、「侵害関連通信」に関する発信者の情報が「特定発信者情報」として開示の対象となりました。これに対して、従前の発信者情報に相当するものとしては「特定発信者情報以外の発信者情報」と整理されています。

本日は、法改正に伴い新たに創設された制度をご紹介いたします。

1 提供命令について

提供命令は、改正法により新たに設けられた特別な裁判手続です。

当該手続は、プロバイダ責任制限法第15条において規定されておりますが、具体的には、コンテンツプロバイダが自らアクセスプロバイダを特定して、申立人に対して情報提供することが規定されました。

従来は、申立人がIPアドレスから自分でアクセスプロバイダを特定する必要がありましたが、この手続の新設により、申立人ではなくコンテンツプロバイダ側に負担が移転した形となります。

2 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、その後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。

また、昨今の状況を踏まえて、非常に簡易な罵倒表現であっても名誉毀損などに該当すると判断される場合も多くあり、自分としては問題ないと判断して行った投稿であっても、ネガティブな内容を含む表現には危険が伴うことは十分に注意する必要があります。

インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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