現代社会において、SNSは個人のコミュニケーションだけでなく、仕事・情報発信・ブランド構築にも活用される重要な手段となっています。しかしその反面、アカウントの「乗っ取り」被害が後を絶ちません。乗っ取りによって個人情報や信頼が損なわれ、なりすまし投稿により被害が拡大するケースもあります。本記事では、SNSアカウントの乗っ取り被害と、法的救済手段について解説します。
このページの目次
1 SNSアカウント乗っ取りとは?
アカウント乗っ取りとは、他人のSNSアカウントに不正にログインし、投稿・プロフィール変更・DM送信などを勝手に行う行為を指します。主な手口には以下があります。
①パスワードの漏洩や弱いパスワードの使用
②フィッシング詐欺によるID・パスワードの詐取
③他サービスとの使い回しによる不正アクセス
④不正なアプリ連携による情報流出
乗っ取られたアカウントは、詐欺や誹謗中傷に利用されることも多く、被害者本人だけでなく、フォロワーや第三者にも影響が及びます。
2 法的にはどのような問題になるか
①不正アクセス禁止法違反
他人のID・パスワードを利用してログインする行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)により禁止されています。違反した者には刑事罰が科される可能性があります。
②なりすましによる名誉毀損・プライバシー侵害
乗っ取ったアカウントで虚偽の投稿や個人情報の流出が行われた場合、名誉毀損やプライバシー侵害として民事責任を問うことができます。
③損害賠償請求(民法709条)
SNSを業務に利用していた場合には、信用低下や営業損害を理由に損害賠償を請求することも可能です。
3 裁判例:SNSアカウント乗っ取りによる損害賠償
ある裁判例では、元従業員が退職後に前職のSNSアカウントを不正に利用し、なりすまし投稿を行った事案について、裁判所は「不正アクセスと名誉毀損が認められる」とし、被告に150万円の損害賠償を命じました。
この判決は、乗っ取り行為が刑事的にも民事的にも重大な違法行為であることを裏付けています。
4 被害に遭った場合の対応策
①プラットフォームへの通報・復旧申請
SNS運営者に対し、不正アクセスによるアカウント被害であることを報告し、復旧・ログイン制限などの対応を求めます。
②投稿削除・被害拡大の防止
アカウントが回復できる場合は、問題となる投稿の削除やアプリ連携の解除を行いましょう。
③警察への被害届提出
不正アクセス禁止法に基づき、警察へ被害届を提出することが可能です。証拠となるスクリーンショットやログを準備しておきましょう。
④発信者情報開示請求
加害者が誰か特定できない場合でも、ログインIPアドレス等の情報から追跡を行う法的手続があります。
⑤損害賠償請求
業務妨害や名誉毀損が認められる場合には、民事訴訟により損害賠償請求が可能です。
SNSアカウントは現代における“デジタルな人格”ともいえる存在です。乗っ取り行為は単なるイタズラではなく、重大なプライバシー侵害・信用毀損・刑事犯罪に該当し得ます。
被害に気づいたら、まずは冷静に証拠を確保し、運営会社・警察・弁護士と連携して迅速な対処を行うことが重要です。

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