昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年6月10日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
不動産仲介業等を運営する会社である原告が、被告がインターネット上の匿名掲示板において原告代表者の家族の情報や原告代表者が違法行為を行っているかのような投稿を繰り返し行ったことでプライバシー権及び名誉権を侵害されたものとして、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①本件情報は、原告の本名をフルネームで記載し、原告の「娘」であることを特定した上で、「障害児らしい」と記載するものであり、一般的な閲覧者が原告の娘に何らかの障害があると認識しても不合理であるとはいえない。したがって、本件投稿は、原告のプライバシー権を侵害するというべきである。
②本件情報は、単なる意見や感想にとどまらず、原告がマンションオーナーを欺罔して不動産を販売し続けているという事実を摘示していると認めるのが相当である。そして、上記摘示事実は、原告の社会的評価を低下させることは明らかであるから、原告の名誉を毀損するというべきである。
上記の裁判所の判断に関しては、妥当なものといえます。
株式会社は、その事業内容についてある程度の第三者からの批判等は甘受すべきとされておりますが、代表者のプライバシー権を侵害するような内容の投稿は許容されず、また、批判を超えた誹謗中傷に関しては厳格な対応が行われますので、批判と誹謗中傷との違いについては改めて注意する必要があります。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。