昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。また、SNSや各種の匿名掲示板といったインターネット上の場において、様々な内容について個人が意見を表明することも容易になっております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年10月30日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告が、インターネット上のサイトにおいて、自身に関して「わきが」等と掲載されたことがプライバシー権及び名誉権を侵害するものとして、アクセスプロバイダに対して、発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①わきがであるという情報は、一般人の感受性を基準にして他人に知られたくないと感じる私的な事柄であると認められるから、本件記事1は、原告のプライバシー権を侵害するものと認められる。
②「貸した金かえせー」とある部分は、一般閲覧者の通常の注意と読み方を基準とすると、同記事の投稿者が原告に対して金員を貸し付けたが返済を受けるべき時期を過ぎても返済を受けていないとの事実を摘示していると理解されるものというべきであり、上記記載は原告の社会的評価を低下させてその名誉を毀損するものと認められる。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
また、昨今の状況を踏まえて、非常に簡易な罵倒表現であっても名誉毀損などに該当すると判断される場合も多くあり、自分としては問題ないと判断して行った投稿であっても、ネガティブな内容を含む表現には危険が伴うことは十分に注意する必要があります。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。