SNSや動画投稿サイトの普及により、日常の一コマや他人の姿を気軽にインターネット上に投稿する機会が増えました。
しかし、そのような投稿が思わぬ「プライバシー侵害」や「肖像権侵害」と評価され、法的責任を問われるケースが増えています。本記事では、インターネットにおけるプライバシーと肖像権に関する基本的な法的枠組みと、裁判例を踏まえた注意点を解説します。
このページの目次
1 プライバシー権と肖像権の違い
まず、プライバシー権とは、「私生活上の事実をみだりに公開されない権利」を指します。住所、家族構成、病歴、交際関係などが典型例です。一方、肖像権は、「自己の容貌や姿態を無断で撮影・公開されない権利」であり、外見に関する人格的利益の保護に主眼が置かれています。
両者はしばしば重なり合いますが、例えば人混みで撮影された写真にたまたま映り込んだ通行人は、肖像権の問題にはなり得るものの、プライバシー侵害には必ずしも該当しないという違いがあります。
2 裁判例:イベント撮影を巡る肖像権侵害の認定
ある裁判例では、イベント会場で撮影された写真に原告が明確に映っており、その写真が営利目的で無断使用されたことが問題となりました。裁判所は、本人の承諾なく顔が判別できる形で公表されたことを理由に肖像権侵害を認定し、約30万円の損害賠償を命じました。
この裁判例は、本人の認識がないまま撮影されたとしても、画像が特定性を持って公開されることで肖像権侵害が成立する可能性を示したものです。
3 SNS投稿と法的責任
たとえ善意であっても、他人の写真や私的情報を本人の許可なくSNSに投稿する行為は、プライバシー権・肖像権の侵害に該当するおそれがあります。特に、子どもを含む第三者が写り込んでいる写真を投稿する際には、トラブル防止のためにも事前に同意を得ることが重要です。
また、監視カメラ映像や迷惑行為を撮影した動画を「晒す」行為も、名誉毀損やプライバシー侵害と評価される可能性があるため、注意が必要です。
他人が写っている写真や私生活上の情報をネットに投稿する際には、「その人がこの投稿を知ったらどう思うか」という視点を持つことが大切です。投稿後に削除しても、拡散されたデータを完全に消すことは困難です。
少しでも不安を感じた場合には、投稿前に専門家に相談することが、トラブル予防の一歩になります。

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