ネット上のなりすましレビューと刑事・民事責任

飲食店、医療機関、宿泊施設、ECサイトなど、あらゆる業種でネットレビューが重要な影響力を持つようになった現代。その中で、「なりすまし」による虚偽のレビュー投稿が社会問題となっています。他人を装って好意的または悪意的な評価を投稿する行為は、法的に重大な責任を問われる可能性があります。本記事では、なりすましレビューの具体例と、それに伴う刑事・民事の法的リスクを解説いたします。

1 なりすましレビューとは?

なりすましレビューとは、次のような行為を指します。

①他人の名前・写真・勤務先情報などを使ってレビューを投稿

②実在する顧客・患者・取引先を装い、虚偽の内容を投稿

③第三者のふりをして、自社に高評価・競合に低評価を投稿

④SNSや掲示板で「○○さんがこう言っていた」と虚偽記載する

これらの行為は「発言者の身元を偽る」点で悪質性が高く、単なる口コミを超えたなりすまし行為=違法行為として取り扱われます。

2 適用される法的責任

①名誉毀損罪・信用毀損罪(刑法230条、233条)

他人を装って、その人物に不利な情報を流す行為は、名誉毀損罪または信用毀損罪に該当する可能性があります。企業や医療機関などが標的となった場合には、業務妨害罪(刑法234条)も問題となります。

②不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)

虚偽のレビューによって、営業上の信用や社会的評価を失った場合、損害賠償(慰謝料、売上減少分、弁護士費用等)を請求される可能性があります。

③プラットフォーム利用規約違反

レビューサイトやGoogleマップなどの利用規約では、「虚偽の身元での投稿」を禁止しており、アカウント停止やIP制限等の措置が講じられることもあります。

3 裁判例:なりすましレビューによる損害賠償命令

ある裁判例では、他人の名前を用いてある美容クリニックに対して「最悪の対応だった」「効果がない」とする虚偽レビューを投稿したユーザーに対して、名誉毀損・信用毀損が認定され、80万円の損害賠償命令が下されました。

この裁判例では、「口コミという形式を用いても、人格権を侵害する表現は許されない」と明確に述べられています。

4 被害を受けた場合の対応

①証拠保全

スクリーンショット、投稿日時、IPアドレス(開示が可能な場合)などを保存します。

②削除申請

プラットフォームに対し、規約違反・虚偽記載・なりすましを理由に削除を申し立てます。

③発信者情報開示請求

投稿者が匿名である場合、IPアドレスを特定し、プロバイダへ契約者情報の開示請求を行うことが可能です。

④損害賠償請求・刑事告訴

投稿者が特定された場合、民事・刑事の両面から法的責任を追及することができます。

ネットレビューは、言論の自由の下で一定の保護を受けますが、それは**「正しい情報に基づいた誠実な評価」であることが前提**です。
なりすましによって評価を偽装することは、他者の権利を侵害し、重大な違法行為として厳しく追及される可能性があることを忘れてはなりません。

事業者の方は、虚偽のレビューを見つけたら、放置せずに速やかに削除申請と証拠保全を行い、必要に応じて法的措置を検討されることをお勧めします。

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

0358774099電話番号リンク 問い合わせバナー