SNSや動画配信プラットフォームの進化により、ライブ配信中に商品を紹介・販売する「ライブコマース」が急拡大しています。視聴者とリアルタイムで交流しながら商品を紹介できる点が魅力とされ、インフルエンサーや芸能人、一般の配信者まで参入が進んでいます。
しかしながら、ライブ配信という即時性のある手段であるがゆえに、景品表示法・薬機法・特商法などへの違反が生じやすく、トラブルが多発しているのが現実です。本記事では、ライブコマースに潜む法的リスクと、関係者が負う責任の範囲について解説します。
このページの目次
1 ライブ配信で問題となる典型的違反例
①景品表示法違反(誇大広告)
「これを飲めば1週間で5キロ痩せます!」「絶対に儲かる投資案件です!」といった根拠のない表現は、景品表示法が禁じる優良誤認表示・有利誤認表示に該当します。
②薬機法違反
健康食品や化粧品について「がんが治る」「シミが完全に消える」などと効能効果をうたう行為は、医薬品的効能の広告として違法です。
③特定商取引法違反
返品不可であるにもかかわらず表示を怠ったり、会社概要の表示が不十分なまま商品を販売する行為は、特定商取引法に基づく表示義務違反となる可能性があります。
④著作権・商標権侵害
偽ブランド商品や許諾のないキャラクターグッズをライブ中に販売する行為も、権利侵害として刑事・民事上の責任を問われ得ます。
2 裁判例:インフルエンサーの薬機法違反に対する処分
近年の行政処分では、フォロワー数10万人を超えるインフルエンサーが**「このサプリで妊娠体質に変わった」などと発言したことが薬機法違反に該当**するとされ、当該企業が行政指導を受けた例があります。
このように、配信者自身が企業の「広告媒体」として評価される場合、企業側だけでなく、発信者個人にも連帯的な責任が及ぶ可能性があります。
3 配信者と運営者、それぞれの責任
①配信者個人の責任
虚偽や誇張表現を用いた場合、消費者に対して不法行為責任(民法709条)や行政処分の対象となる可能性があります。企業との契約内容によっては、損害賠償請求もあり得ます。
②企業・プラットフォームの責任
企業が配信内容を管理・指示していた場合、または広告委託していた場合には、配信者の違法行為について連帯責任を問われることがあります。
また、明らかに違法な販売行為を放置していた場合、プラットフォーム運営会社にも注意義務違反の問題が生じる可能性があります。
4 実務上の対策ポイント
①広告ガイドラインの作成と配布
配信者に対し、法律で許されない表現やNGワードを明記したガイドラインを提供します。
②リアルタイム監視体制の整備
企業としてライブ配信の内容をモニタリングし、問題があれば即座に指摘・修正を促す体制を整えましょう。
④販売ページ・契約条件との整合性チェック
ライブ配信での説明内容と、ECサイトの販売条件が一致していることが重要です。
ライブコマースは、臨場感があり消費者の購買意欲を刺激する一方、法令遵守が後回しになりがちな危険な販売手段でもあります。
「広告」としての性質を常に意識し、企業・配信者の双方が法的リスクに備えた体制づくりを怠らないことが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。

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