教授会における侮蔑的発言

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。

もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年2月26日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告と被告は同じ大学の教授であるところ、教授会において被告が原告との間の裁判の結果などを述べたことについて、原告が、名誉毀損及びプライバシー侵害であることを理由として、被告らに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①敗訴した事実があったからといって、裁判所が、原告の主張する被害事実を認定しなかったことを意味するにすぎず、不当提訴であることを当然に意味するものではないから、上記事実を明らかにしたことが上記民事訴訟を提起した者の社会的評価を低下させるとはいえない。

②本件発言は、教授会という閉鎖された場で口頭でされたにすぎず、その内容も公開の手続で行われた訴訟に関するものであり、原告の社会的評価の低下をもたらす内容とまではいえず、原告の受ける不利益の程度が大きいとは認められない。以上によれば,本件発言は,受忍限度を超えて原告のプライバシーを違法に侵害するとはいえない。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、その後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。

インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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