インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。
もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年8月25日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告と被告は、同じ協会のメンバーであったところ、被告が当該協会の理事会において行った発言(原告が当該協会において活動を行うには不適切な人物であることを指摘する内容)を行った。これに対して、原告は、名誉毀損であることを理由として、被告らに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①被告の発言は、個人の意見表明であれば本件協会の内部情報の公表を行っても構わないなどという原告の説明は受け入れられず、原告を同じ組織体において議論する仲間の人間として認めることができないとの意見ないし論評の表明をしたものであるということができる。かかる発言は、広く同じ業界に属する者に原告が本件協会において活動を行うには不適切な人物であるとの印象を与えるものとして、原告の社会的評価を低下させることは否定し難い。
②同じ組織体において議論する仲間の人間として認めることができないと評することが意見ないし論評の範囲を逸脱するとまでいうことはできない。以上によれば、本件発言は、原告の社会的評価を低下させるものであるとしても、違法性を欠くものであるというべき
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
協会の理事会における必要な発言であったとしても発言する内容によっては名誉毀損や侮辱等の違法行為に該当するリスクがあります。必要な発言であっても、話す内容は十分に吟味した上で発言を行っていただくことが必要です。