昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年10月8日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
建築、リフォームの請負等を目的とする会社である原告が、被告がインターネット上のサイトにおいて、「何でも追加といってビックリするくらい高い」代金を請求することや、「脅迫じみた事までいってくる」といったことを具体的に指摘した上で、「絶対に購入しないほうがいい」等と投稿したことについて、名誉権を侵害するものとしてアクセスプロバイダに対して、発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①取引先から苦情を受けるという事態は往々にして生じ得るものであり、このことは、本件掲示板の一般閲覧者においても社会常識として認識が共有されているものと解されるから、個人の主観的な意見ないし感想を述べたに過ぎない発言に接した場合、それがたとえ事業者に対する苦情ないし悪評を含むものであったとしても、「そのような意見ないし感想を抱く者もいる」という程度に受け止めるのが通常であると解される。
②したがって、本件掲示板のような口コミ掲示板においては、ことさら侮辱的・攻撃的な表現を用いたり、執拗に書き込みを繰り返したりする等の特段の事情がない限り、発信者の主観的な意見ないし感想を述べるにすぎない発言によって、その対象者の社会的評価が低下することはないものというべきである。
上記の裁判所の判断においては、口コミ掲示板の特性に着目して社会的評価の低下の有無を検討されておりますので、一般的なSNS等における投稿においても同様に考えられるというわけではない点には注意が必要です。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。