クビという表現と名誉毀損

昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。

このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。

本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年9月13日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。

1 事案の概要

商工会議者Aの元社員であった原告が、被告がインターネット上のサイトにおいて、「A商工会議所をクビになった●が連続書き込みしている」等と投稿したことについて、名誉権を侵害するものとしてアクセスプロバイダに対して、発信者情報開示請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

①本件投稿の記載内容のうち「A商工会議所をクビになった」との部分は、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告にA商工会議所での勤務を継続できないほどの重大な落ち度や責任があったために、原告がA商工会議所の退職又は解雇を余儀なくされたことを摘示するものと理解できるから、本件投稿は原告の社会的評価を低下させるというべきである。

②本件サイトの性質及び本件投稿の記載内容自体に加え、本件投稿が匿名で行われていることなどの事情を併せ考慮すれば、本件投稿に公益目的があるとは考え難く、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情は存在しない。

上記の裁判所の判断においては、クビになったという程度の表現であっても、名誉権を侵害する表現であると認定しております。

この程度の表現であれば大丈夫だろうと考えて利用されやすい表現ではあると思いますが、名誉権を侵害する表現に該当する点は十分に注意が必要です。

3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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