インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。
もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年3月27日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告と被告は、交際関係にあったが、交際関係を終了するにあたり、裁判手続をとった。この訴訟係属中に、被告は警察署に対し、原告の行動について相談するとともに、転居先の自治体に対し、原告が被告の住民票等の写しの交付申請を行った場合に支援措置を採るよう申出を行った。これに対して、原告は、当該申出が名誉毀損であることを理由として、被告らに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
すなわち、住民基本台帳事務における支援措置は、ストーカー行為及びこれに準ずる行為等の加害者が住民票の写し、戸籍の附票の写しの交付等の制度を不当に利用してそれらの行為の被害者の住所を探索することを防止し、もって被害者の保護を図ることを目的としたものであることからすると、同支援措置に係る申出が、事実上又は法律上の根拠を全く欠く場合において、敢えて相手方の名誉を毀損するなど害意をもって同申出を行うなど住民基本台帳事務における支援措置の趣旨目的に照らし著しく相当性を欠くと認められるときに限って違法な行為として不法行為を構成すると解するのが相当である。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、その後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。 後悔先に立たずといいますので、まずは自分が行う投稿等が法的に問題となる可能性があるかどうかを冷静に考えてから投稿することをお勧めいたします。