インターネットの普及、老若男女問わずSNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
著名人に対する名誉毀損に関するニュースも連日報道されており、一般の方々の関心も以前にもまして増加しているものと思われます。
もっとも、インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が依然として非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和元年11月25日、をご紹介いたします(なお、一部を省略、要約した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告は企業の経営コンサルタント等をを営む株式会社の代表取締役であるところ、被告は、インターネット上ブログにおいて、原告がわいせつ行為を行っている等の投稿を繰り返し行った。そして、この投稿に関しては、原告が代表取締役を務める会社が書き込んだような体裁をもって投稿したり、報道機関によるもののような体裁をもって投稿していた。これに対して、原告が被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①不法行為の被侵害利益としての名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価のことであり、この客観的な社会的評価を低下させる行為には名誉毀損による不法行為が成立し得る。そして、ある表現行為の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該表現についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。
②本件各記事は、一般の読者の普通の注意と読み方によれば、原告が強制わいせつの被疑者として取調べを受けていること、原告が強制わいせつの被疑事実で逮捕されたこと、原告が強制わいせつに該当する行為に及んだが被害女性と示談ないしは和解をしたこと等を認識させるものであり、原告の品性、徳行等についてその社会から受ける客観的評価を低下させるものである。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。