カスタマーレビューと名誉権侵害

昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。

このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。

本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年8月8日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。

1 事案の概要

コンサルティング会社を経営する原告が、被告がインターネット上のサイトにおいて、原告が出品した書籍に関して、ネガティブな評価や内容のレビューを投稿し名誉権を侵害したものとしてアクセスプロバイダに対して、発信者情報開示請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

①記載内容に加え、カスタマーレビューが一個人の意見や感想等を自由に投稿できる場であることも踏まえれば、本件サイトの一般の閲覧者をして、原告の社会的評価が低下したことが明らかとはいえない。

②その記載内容も、原告を必要以上に揶揄、中傷するものとはいえず、本件サイトのカスタマーレビューとして、本件各書籍やセミナーの内容をときには批判的に紹介するものであることからすれば、本件レビューは、公共の利害に係る事実に関し、専ら公益を図る目的で投稿された可能性が否定できないというべきである。

上記の裁判所の判断に関しては、カスタマーレビューの特性を踏まえた具体的な判断が行われておりますが、カスタマーレビューにおいても悪質な投稿が行われることは多くあり、そのような投稿までを許容する判断ではありません。

そのため、カスタマーレビューであればどのような内容の記載を行っても個人の感想である等の方便は通用しないという点は十分に認識しておくことが必要です。

3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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